逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話 作:LR44(ゆっくり)
夕凪の『NWOって知ってる?』という発言の後、学校へ向かいながら凡その事情を確認したところ、
・友人に誘われて始めてみた
・プレイ時間≠強さなようで、PvPイベントで一位になった
・もうすぐ次のイベントがある
・ロボット掃除機目当ての懸賞でNWOのソフトが当たった
・件の友人と、どうせだし俺も誘おうという話になった
とのころだった。プレイ時間≠強さというのがよく分からなかったので詳しく聞いてみたところ、UPOみたいにPSである程度補えるという訳でも、某ソードがアートなオンラインの妖精郷オンラインのように非レベル制でドが付くほどのPS重視という訳でもないようなのだ。訳が分からない。夕凪──ゲーム内なので恐らくいつも通り“ナギ”はUPOと同じくStr-Vit二極ビルドであろうから、どれだけPSがあろうともプレイ時間がそこまで多くない夕凪が優勝できたこと自体がレベル制MMORPGとしておかしい。後、実際のキル数は50行くかどうからしい。それでいいのかNWO。
続きは件の友人が来てから話すという事だったので、教室にて今日の予定なんかを確認しながら待っていたところ、リアルでも3割くらいで展開できている空間認識能力に二組の集団が反応した。片方は良く知っている『狼と鷹と調理された羊』な先輩二人とクラスメイト一人だろう。どうやら2年の教室の方に向かうようなのでこちらは気にしなくてもよさそうだ。もう一組の気配は……一応クラスメイトだったはずだが正直よく覚えてないんだよな。え~っと、確か夕凪と話してるのを見かけることがある……
「白峯さんと本条さん?」
「「えっ!?」」
ガラガラというドアが開く音と二人の驚愕の声はほぼ同時に聞こえてきた。開いたドアから顔を確認してみると、ちゃんとあっていたようなので内心ほっとする。これで外れてたら恥ずかしいどころじゃないからな、よかったよかった。
「えっ、ちょっ……なんでドア開ける前から分かったの!?」
「まあ、一応私も何となくだけど分かってたし。私より精度良い飛燕なら普通に分かっても不思議じゃないしね」
黒髪の方──多分本条さんは驚きすぎて固まっているようで、茶髪ポニーテールの方──確か白峯さんは夕凪にどういう事なのか質問したが、
その後、何とか落ち着いた二人から事情を聴いたのだが……
「NWOって運営陣大丈夫なのか?」
「ああ……運営、○○なんだよね……」
俺の疑問に対する夕凪の返答は、『ああ、そりゃそうなるか』と納得させられるものであった。
「え? NWOの会社って何か悪い噂とかあったっけ?」
「……白峯さんって本当にゲーマーなのか?」
「まあ……一応マイナーと言えばマイナーな話かな? そっちの方に興味がないなら知らなくてもおかしくはないんじゃない?」
そうか……確かに言われてみれば、クソゲー界隈に興味が無ければあの会社の
「どういう事?」
「NWOの運営会社の前身の会社はな……
「つまり、そんな会社の後釜が作ったゲームならどれだけ無茶苦茶でも納得できるってことだね。実際私も半分以上怖いもの見たさでプレイしてるところがあるし」
「そ……そんな会社の運営してるゲームだったんだ……」
そう言えば、と俺はふと思ったことを口にしてみる。
「話は全く変わるんだが俺、幼馴染にロボット掃除機目当ての懸賞のハズレのソフト貰ってVRMMO始めた人の話聞いたことがあるんだが?」
「奇遇だね。私も渡した側の話聞いたことあるよ」
夕凪も俺と同じことを思っていたのか、俺と同じく遠くを見るような目をしながらそう答えた。
◇
「あ、飛燕? ミンチが結構安いよ?」
「お、じゃあ今日はハンバーグにでもして、後は……」
放課後。俺は小学校の時は少し弓道をやってたけど、中学入ってからはバイトのために部活には入っていない。夕凪は一応運動部に入ってはいるものの結構緩い部活みたいで、同じ部の先輩にはVRMMOでトッププレイヤーやってる人もいるくらいだ。
そして今日は俺のバイトのシフトも夕凪の部活もない日。とっとと帰ってNWOのキャラビルドしようかと話している最中に、冷蔵庫がすっからかんだったことを思い出してスーパーに寄ってから帰ることにしたのだ。夕凪と何を買おうか考えながらスーパーを歩いていると、
「あ、来島さん。そちらも買い物ですか?」
ふと知っている気配を感じて振り向くと同時に、聞きなれた声で話しかけられる。
「幸村先輩。ええ、今日は二人とも放課後に用事が無かったので」
「瀬名さんに赤座ちゃんも。もしかして今日はお泊り?」
後ろにいたのは一つ上の先輩である幸村 友樹先輩と瀬名 沙織先輩。そしてクラスメイトの赤座 空さん。何の偶然か、UPOにおける非常に有名な三人が同じ学校だったのだ。この三人とは以前はたまに話す程度の仲だったのだが、高校で出会ってからはこうして会えば軽く話す程度の仲になったのだ。因みに俺が儀式魔法を育てているのもこの先輩の影響だったりする。
「うん。そっちもいつも通りお泊りかな?」
「うん。私がやってた別のVRMMOを飛燕もプレイしてくれるから、今日は泊まり込みで色々教えるの」
瀬名先輩と夕凪は、二人とも非常にそっくりな笑顔を浮かべる。俺達2人と幸村先輩たち3人の間で、誰が一番仲がいいかと聞かれれば考えるまでもなくこの二人だろう。何かと波長が合ったようで、よく一緒に狩りをしているところを見かけたりする。
「別の、VRMMOって、NWOって奴、でしたっけ?」
「ああ、あれですか。運営会社で敬遠してあまり評判なんかも調べてないですが、どんなゲームなんですか?」
「え~っと……何というか」
「何ていうかね、うん」
「「軽くMMOとして破綻してるね(してますね)」」
「「「え?」」」
俺と夕凪の『MMOとして破綻している』発言に、三人は何が何やら分からないとでも言いたげな顔をする。まあ、常識的に考えて最近話題のVRMMOが実はMMOとして破綻してましたなんて到底あり得ない話だろう。話題になっているのがKOTYでもない限り。
「ステータスはStr、Vit、Int、Agl、DexとHP、MPですね。HPとMPは自然上昇が無くて、ポイントを振らないと上がりません」
「後、ステータスを上げるポイントは2レベルに1回しか貰えないのと、10の倍数の時は倍のポイントが入るって仕様だね」
夕凪が説明した方は少し違和感があるが、まあこれは俺がMMOについてよく知らないだけだろう。Vitが物防と魔防を兼任しているのもまあそこまでおかしくはないし。
「で、スキルは取得数制限なし。店売りとかクエスト報酬とか、後一部行動でも取得できるみたいです。HP1割以下で味方を庇うとか」
「因みに、簡単にクリアできるクエストの報酬でステータスアップスキルが貰えるんだけど、全部そろえるとその上昇量が最大レベルで28レベル分相当もあるんだよ。初期レベルでも7レベル相当あるし」
これだけのステータスの底上げが出来るにも関わらず、全て揃えているプレイヤーはナギ程度のものらしい。クエストを受ける条件の最低限のステータスを装備で補えば基礎値0でも受けられるのに、だ。一応【
「それだけ聞くとそこまで破綻しているようには思いませんが?」
「うん。ちょっと荒削りって印象は受けるけど、破綻してるって程じゃないんじゃ?」
まあ、ここまでの説明ならそこまで破綻している印象は受けないだろう。ただ、
「じゃあここからが問題点ですね。まず、スキル補正は装備補正の上からかかるので、高倍率の補正スキルがあるだけでステータスがバカみたいな数値になります。その上ステータスアップスキルが全部乗算処理されますし」
「どっちかって言うと、装備補正は素のステータスを直接上昇させてる形なのかな? 後、現状ステータスアップスキルを複数積める実用的なビルドは極振りだけだよ。物防と魔防が共通だから難しいこと考えずにVit極でいいし。初期の100ポイント全部Vitに振っただけでウサギ……UPOでのレッサーラビット相当のエネミーの攻撃ノーダメだしね」
スキル補正は装備補正の上から。ステアップスキルは乗算処理。Vitが100あれば最弱モンスはノーダメ。これが分からない。これじゃあ運営がVit極を推奨しているようではないか。取得条件も厳しくない上に、極振りなら常時ステ倍化されるぶっ壊れスキルも存在することだし。
「とーくん、流石にこれはやばくない?」
「だな。でも、攻撃が効かないなら柔らかい所を狙うなり群れで襲うなりされるんじゃ──」
「NWOにはそんなAIありませんね。逃げるパターンがつい最近追加されたくらいですし」
「ついでに、部位によるダメージ補正は存在しないから理論上はレベル1のプレイヤーがウサギの攻撃を目で受けてノーダメもあり得るよ。一応部位によるクリティカル率の補正はあるけど」
攻撃が効かなくても1時間以上延々と愚直に突進を繰り返すAIを搭載している運営がそこまで凝った仕様を導入してる訳無いってことだな。ぶっ壊れ隠しスキルとかより、こっちに力を入れるべきでは?
更に因みにだが、慣性によるダメージ補正もないのではないかとのことだ。え? UPOでも当然のごとくあるし、何ならスプルドやら何やらのNWOと同じくらい有名なタイトルなら当然のごとく存在する仕様だぞ?
「2つ目の問題点として、ダンジョンについてですね。一層で一般に見つかってるダンジョンは2つ。片方は二層に行くためのダンジョンで、もう片方は突破報告が極端に少ないダンジョンです」
「前者のボスは条件を満たさないとダメージが通らない上にリザレクションからの発狂モードまで備えているボス、後者のボスは毒無効+ある程度の防御力で完封できるボスです。後、友人が見つけた隠しダンジョンのボスはStrが初期武器による補正分しかない低レベルプレイヤーが40分殴ってれば死にます」
この辺りは本当によく分からない。何故【毒無効】で完封できるボスが何故メイプルさんが攻略するまで放置されていたのか、とか何故殆どのプレイヤーにとって最初のボスになるであろう相手がいきなりギミックボスなのか、とか。因みに現在一層二層合わせても、見つかっているギミックボスは件の1体のみだそうだ。
「確かに、ボスの、バランスが、悪い、気は、しますが」
「さっきの奴に比べたらまだまし……ってのはちょっと感覚麻痺してるね」
まあ、確かにこっちは最初のに比べると多少はマシに聞こえる……けど次のと相まってかなり質の悪い仕様になってるんだよなあ
「でもって、一番ヤバいのが……」
俺は、周囲に他に聞いている人がいないかしっかり確認してから口を開く。
「ダンジョンボスを初回かつ単独で撃破したプレイヤーは正真正銘唯一無二のユニーク装備が獲得できるそうです。しかも性能はかなりのぶっ壊れ」
「装備補正はトップ鍛冶師の作品を超える値だし、現状トップ鍛冶師でもめったに作れないスキル付きの装備。その上読んで字のごとくな【破壊不能】とか、破壊されると性能上昇する【破壊再生】なんてスキルまでついてくる。文字通りゲームバランスを崩壊させる装備だね」
『一人しか獲得できなかったから実質ユニーク』や『大会一位や何かの
「それは流石に……」
「本当に、一番、ヤバい、です、ね」
「そこまでいくと破綻しているっていうのも納得ですね」
幸村先輩たちはどうやら絶句しているようだ。まあ、仕方ないだろう。流石にこれは俺も聞いたとき自分の耳を疑ったし。
「後まあ、これは蛇足みたいなものですが、NWOは謎にwikiが過疎ってるんで検証勢みたいなのが多分存在しませんね。掲示板での情報交換は盛んなのに」
「え? ……何で?」
「私たちにもさっぱり原因が分からないんだよ」
そう。NWOでは何故かwikiが過疎っているのだ。別にUPOみたいな『同一人物が同じ行動をしても完全に同一のスキルは生まれない』という謎のスーパーテクノロジーが使われていたりはしないのだ。掲示板での情報交換も盛んなのだ。それだというのに何故かwikiが過疎っているのだ。本当に訳が分からない。訳が分からな過ぎて白い変な生き物にボクと契約して魔法少女になってよと言われそうだ。残念ながらそれは幸村先輩の仕事だ。一昨日の配信面白かったです。
あれ…防振り側のキャラが出てる時と極振り側のキャラが出てる時の文字数が…(前者約1500、後者約3000)
<今回のオリジナル要素&ネタ解説>
・イベントの順位
一位:ナギ 二位:メイプル 三位:ペイン 四位:ドレッド 五位:ミイ 六位:ドラグ 七位:カスミ 八位:シン 九位:マルクス 十位:クロム (ミザリーは十一位に繰り下げ)
ナギは有名プレイヤーに挑み続けていたため、後半に“倒せなかった”メイプルを除く上位勢全員の得点を根こそぎ奪っていった結果ダントツの一位。ナギのせいで他プレイヤーの得点が伸び悩んだためメイプルが二位。そして後は原作通りの順番となっている。
・飛燕と夕凪の学校
極振り原作主人公&ヒロインである幸村 友樹(ユキ)と瀬名 沙織(セナ)、赤座 空(藜)と同じ学校。ユキとセナの後輩であり藜のクラスメイト。
・NWOの運営会社
『あそこまで無茶苦茶な運営ならこんくらいの設定あってええやろ』というノリで作った独自設定。
・夕凪の部活
セナ=サンと同じ部活。運動部に所属しているけどMMOでトッププレイヤー出来てるとか極振り作中で大会とかの話が一切なかった(…はずな)ことからかなり緩い部活だと予想。因みに筆者は帰宅部並みに緩い文化部だったので運動部の諸々なんて何一つもこれっぽっちも分かりません。悪しからず。
・部位補正、慣性補正について
多分あの運営ならないだろうっていう予想が半分。スプルドの名前を出したかったってのが半分の独自設定。
・スプルド
小説家になろうに投稿されており、書籍化もされているVRMMO小説『ランダムでキャラを作ったんだが詰んだかもしれない』のゲーム『spread world online』の略称。『VS.PK決着』にて質量と速度による威力補正があることが判明している。
・ボスの体力
アニメの描写やツ●ヤでレンタルした漫画版からの推測。でもいくら何でも少なすぎだとは思う。
・wikiが過疎ってる
こうでもしないと飛燕が真面目にプレイしなさそう。