逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話   作:LR44(ゆっくり)

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第35話『ナギだって人のこと言えないだろ!?』

 

 新大陸、森林エリア最奥部。

 新大陸引きこもり生活2日目の簡易拠点とした場所にて、俺は手ごろな岩に腰掛けながらメニューを前に頭をひねっていた。

 

「う~む……悩ましい」

「どうしたんです?」

「あ、ユキさん」

 

 そうだ、折角だしちょっと相談に乗って貰えないか聞いてみるか。

 

「ちょっと相談したいことがあるんですが、大丈夫ですか?」

「ええ、いいですよ。この間のイベントのスキルですかね?」

「ご名答、です。どのスキルを取ろうか悩んでまして」

 

 この間のイベントのクリア報酬として貰った『Sレアスキル取得チケット(神獄塔)』。取得可能スキルには癖が強いものの、使いこなせれば相当に強力だろうスキルが並んでいた。

【四天死闘】みたいにどうやって使うのか理解できないスキルもあったけどな。無敵スキルで、追加効果もかなり強力なのはいいんだが、どうやって発動するんだよ『発動条件:HP0% ※HP0の時は発動不可』って。俺たちは禅問答してるんじゃないんだぞ。

 

「飛燕さんが悩んでるとなると……【背理の一射】か【正負の天秤】かって所ですかね?」

「そっちもご名答、です。今後攻撃と支援、どっちをメインにするかに関わってくるので」

 

【背理の一射】は自身が放った矢弾を、MPを10払うごとに1°曲げることが出来る、というスキルだ。純粋な火力には直結せず、MP消費もそれなりに重いものの、今まで紋章を使って行っていた事に、紋章のリソースを裂かずに済むというのは純粋に魅力的だ。

【正負の天秤】は、ステータスを上昇させるスキルやアーツの効果を倍にする代わりに、増加分と同じだけのステータス減少効果を追加するというスキル。減少するステータスは上昇ステータスごとに固定みたいだが、既存バフ効果が倍になるというのは純粋に強力だ。デバフ追加も準極だらけのうちのギルドなら大したデメリットにはならないしな。

 

「で、ユキさんならこういう時どんな基準で選ぶんだろうって思いまして」

「そうですね……俺なら、面白そうな方、ですかね?」

「面白そうな方……ですか……」

 

 そっか。ユキさんの原点は『幼馴染がガチ勢だったから、ネタに走った』ことだったな。そっか、そっか……

 

「よし! 決めました」

「そうですか。助けになったのなら良かったです」

 

 ◇

 

「ってな訳で、俺にも接近戦の稽古つけてくれないか? ナギ」

「良いけど、どうして急に接近戦?」

 

 スキルを決めた、その日の昼。俺はナギに接近戦の稽古をつけてくれるよう頼んだ。

 まあ、ナギが疑問の声を上げるのも当然だよな。今まで後衛してたのに、急にだし。

 

「あぁ、【弓闘術】取ったからな」

「【弓闘術】!? あの、リンちゃんがネタスキル認定した!!?」

 

 そう。俺が取ったのは、弓を使った近接戦闘スキル【弓闘術】。文字通り弓矢で殴り掛かったりするスキルで、近距離で攻撃を避けつつ弓を撃つ戦い方をしているリンさんが言う事には『どうまかり間違っても弓矢は近接武器ではありません。射撃武器です』とのことだ。取得した結果碌に使えなくてネタスキル認定されていた。

 

「あぁ。NWOの方のイベントでな、テンションがおかしくなった時に『弓矢は近接武器』なんて口走っちゃったんだよ。折角だしそれを実現してみようかと」

「そんな理由でスキル選んだの!?」

 

 そんな理由とは失礼な。ネタに走るってのはユキさんもやってる由緒正しい強化方法なんだぞ。きっと古事記にだってそう書いてるはずだ。

 

「ところでナギはどのスキル取得したんだ?」

「【四天死闘】だよ。純粋にメリット凄いし」

「ナギだって人のこと言えないだろ!?」

 

 あんな禅問答みたいなスキル取ったのかよ!? 

 

「一応どうにかする当てならあるし。今ウルスさんに頼んでるところなんだけど──」

 

 件のウルスさんから返事が届いたのか、ナギがメニューを確認する。

 ナギは少し悩む素振りを見せたが、すぐに返事を返したみたいだ。

 

「何だったんだ? ウルスさんからの返事?」

「返事と言うより、相談? 自分だけじゃ手に余るかられーちゃんとかザイルさんとかに協力仰いでもいいか、だってさ」

「ウルスさんでも手に余るレベルとかどんな注文したんだよ……」

 

 ウルスさんって生産職の中でもかなり上位に入るプレイヤーだぞ? それでも手に余るレベルってなると、ユキさんの魔導書ビットとかTS装備とか。そうじゃなきゃアキさんが列奏モードで使うような装備くらいのものじゃないのか? 

 

「まあ、ちょっとね。この間のイベントのボス素材を皆から買い取ったでしょ」

「あぁ……あ、もしかしてそういうことか?」

 

 確かに元ネタ的にはあり得そうではあるが……

 いや、運営も流石にあんな禅問答みたいなスキルをただただ実装するとは思えないし、これを想定してたのか? 

 

「あ、ウルスさんから返事来た。ザイルさんとれーちゃんとの共同制作になったから何かいい素材無いか、だって」

「それなら、この先のエリアのボス素材でも渡せばいいんじゃないか?」

 

 確か機械系のボスだったはずだし。丁度いいんじゃないか? 

 

「丁度そう思ってたところだよ。じゃあみんなが来たら早くいこうよ」

「だな」

 

 ◇

 

「はい、じゃあ素材預かりますね。それと、飛燕さんは【弓闘術】取ったんでしたっけ?」

 

 翌日。無事、ボス素材を大量に確保した俺たちは素材を受け取りに来たウルスさんと少し話をしていた。

 

「ですね。とは言え、弓矢は近接武器じゃ無いので使いにくいったらありゃしませんが」

「やっぱりそうですよね。でしたら折角ですし、飛燕さんの弓も一緒に預かりましょうか?」

 

 ウルスさんからの申し出は願っても無いものだった。

 勿論こちらからも頼むつもりではあったが、ウルスさんが乗り気なのはとてもありがたい。

 

「いいんですか、ありがとうございます。矢の方は特化制作持ってるんで自分で調整できますけど、弓の方は本職の人に見てもらわないとどうにもなりませんからね」

「まあ、そもそも弓を近接武器にするとか聞いたこともないんで。こっちとしても手探りになるでしょうから時間かかるのは覚悟しておいてくださいね」

 

 まあ、そりゃあ当然だろうな。そもそも弓矢って近接武器として使うものじゃ無いし。それを近接武器にしようって言うんだから、時間がかかるのは当たり前だのクラッカー。……自分で言っててなんだが、今これ分かる人いるのか? 

 

「じゃあ、【皇氷之弓】は預けちゃうんで、しばらくは【碌式紅焔弓】の方使いましょうかね。……あ、」

「どうしました?」

 

 これは……結構不味い気がするぞ。最悪この後の予定を変えないといけない可能性も……

 

「【皇氷之弓】って、天廊の番人……レイドボス素材使ってますけど、ストックありましたっけ?」

「……殆ど無いですね。いくら何時でも戦える相手とは言え、レイドボスを今から狩るのは相当骨が折れますよ」

 

 そう。俺の装備は一式、新大陸で何時でも戦えるレイドボス素材をふんだんに使用したものとなっているのだ。そして件のレイドボスと戦える場所はここからだと森を抜けた反対側。遠い。

 それに、相手は腐ってもレイドボス。いくら極振りがいたとしてもそう易々と狩れる相手ではない……とは思う。いや、別のレイドボスはとある極振りが張り付いてワンパンリスキル祭りしたせいで挙動が少しおかしくなっちゃったらしいけど……

 

「【天廊の番人】くらいでしたら問題ないですよ。今から行きましょうか?」

「「ユキさん!?」」

 

 いや、マジか! 薄々そんな気はしてたけどユキさんにとっては【天廊の番人】って“くらい”なのか!! 

 まだまだ極振りは遠いなぁ。まだ影も踏めそうにないや。

 

 この後めっちゃ【天廊の番人】を乱獲した。




<今回のオリジナル要素&ネタ解説>

・【弓闘術】
 元ネタはヒャッハー。本作のは、元ネタの方とは大分違っている。
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