逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話 作:LR44(ゆっくり)
ペットイベが終わってから2~3週間後の12月初め。UPOでもNWOでもイベントの予告が行われていた。
NWOでは週末から開催される第5回イベント。イベントモンスターを倒すことで手に入るポイントを収集するイベントで、ポイントが最も高いモンスターはレアアイテムとしてクリスマス以降開けられるプレゼントを落とすそうだ。
まあ、要するに第3回イベントとほとんど変わらないんだよな。イベントモンスターが複数種出る事と、追加でプレゼントボックスを落とす敵がいるって程度の違いしかないんだよ。
因みにポイントを集めて何ができるかは一切判明してない。今までのイベントと同じなら、ポイント上位のギルドには常時ステータスアップアイテムが配られるって感じだろうな。
UPOでは今週末から来週末にかけて開催される【正月礼賛、餅つき兎は最強の夢を見るか REVIVAL】。昨年も開催されたPvPイベント、その復刻版? である。そう、PvPイベント。1年で最もナギが輝くイベントである。
とは言え、昨年のイベントにはいろいろ問題が合ったようで、去年から変更されている点もいくつか存在した。
今年はイベントで行われるPvPトーナメントが、ソロの部・ペアの部・パーティーの部の3つに分けられている。そして最終日に、イベント期間中のPvP参加回数と戦績を総合した上位プレイヤーによる決勝トーナメントが行われるそうだ。
尚、去年最終日に開催されたバトロワは今年は無いらしい。去年のバトロワでは極振りが暴れ散らかした上、去年と比べて全体的にプレイヤーの能力が上昇しているため、バトロワを開催するのはイベントとサーバーが壊れかねないと判断したみたいだ。掲示板ではみんな口をそろえて『妥当だ』と言ってるし、俺もそう思う。
で、だ。俺とナギ、それとシルクさん&リンさんのUPO出身【楓の木】メンバーはNWOの方のイベントは余裕があればプレゼントを取りに行く程度の参加で、基本的にUPOの方に集中することにしている。
と言うのも、UPOの方では去年同様イベントトーナメントに参加することでポイントがたまり、たまったポイントを使って様々なアイテムを交換する事が出来る。
そのラインナップの中には幸運極振りでも無ければ滅多に手に入らない『スロット10の白紙の魔導書』や『狂気神話系の魔導書』、極振りのバ火力の源『無垢なる○○』シリーズ。それに黒化ボスの特殊泥や新大陸ダンジョンボスのレア泥クラスのアイテムも含まれていて。
そんなものまでラインナップされているとなれば、当然全力周回で必要なアイテムを回収するのがゲーマーの性。NWOのイベントなんてほっぽり出して全力でイベント周回するつもりだ。
因みに最近ナギはNWOをほっぽり出してUPOで、新大陸の開拓拠点に居座って辻PvPばかりやっていた結果相当腕を上げたらしい。
俺も実際に見た訳では無いが、夕食の席で聞いた話では今までそもそもの技術で負けてる上プレイスタイルで不利を取っていたセナさんやカオルさんに対して安定して4~5割ほどの勝率を維持できるようになったそうだ。
今までが勝率3割程度だったことを考えると相当勝率が上がっていることになるな。……本当に腕上げすぎだろ。それに対して俺は、最近弓を近接武器として扱うのが上手くなったくらい……
いや、冷静に考えたら弓矢を近接武器にするのって相当頭狂ってるな……それでもって近接武器として使いだす前より確実に強くなってるとか……
……うん。俺も十二分に異常側って事だな。
「さて、PvPの練習がてら、【
イベント概要を一通り確認し終えた俺は、ギルドハウスを後にするのだった。
◇
「……そこまでは理解した。だが、この状況はどう考えてもおかしいだろ。俺」
「何を言っているんだ。最近運営がこのクエストのAIを強化したの知ってるんだぞ。俺の考えなんてお見通しだろ」
「いくら高性能AIでも狂人の考えなんて分かる訳無いだろ!!! 」
【虚構舞踏会】に来てみたんだが、何故かAIに怒鳴られてしまった。解せぬ。
「狂人だなんて失礼だな。俺はただ、近接戦闘の練習のために素手戦闘を挑んでいるだけだぞ?」
「それが狂ってるって言ってるんだよ!! 」
「何を言ってるんだ? いたって正常な考えだろ?」
PvPなんだから、人によっては武器を手放させようとしてくるに決まってるだろ。
元々素手戦闘前提で、武器も意図的に手放させるのが困難な籠手を使ってるナギならいざ知らず。弓をメイン武器に、サブ武器……と言っていいのかは分からないけど矢自体も武器として使ってる俺は武器を手放させられたら【紋章術】しか使えない木偶の某の出来上がりだ。
同レベル帯の人相手にそんな状況になったら、先ず勝ち目なんてないからもしもの時のために素手戦闘もできるようになっておきたいだけだ。
そんなことを懇切淡々と説明したのだが、AIは未だに納得がいっていないようだ。
……いやまぁ、俺だって理解してるぞ。弓手兼支援役が素手戦闘の練習をするのは頭が狂ってるって。だがまぁ、最悪の場合でもナギの足を引っ張らない程度にはなっておきたいからな。
「ってな訳だからとっとと始めるぞ。イベント始まるまでに付け焼刃レベルでもいいから最低限実戦で使えるようにはしときたいんだ」
「まあ、納得は出来ないが理解したんだが……俺もお前も素手戦闘は初心者だぞ?」
「だからだよ。俺が成長するたびに同じだけ成長するAI、これ以上ない練習相手だろ?」
「そう……なのか? いや、何かおかしい気が……」
「まあまあ、とっとと始めるぞ」
「はいワンツーワンツー」
「的確に人体急所を狙ってくるな! AIでも反射的に避ける場所なんだよ!!」
「え~っと……袈裟固めは……」
「ギブギブ! 的確に寝技を決めてくるんじゃない!!」
「ジャブを《加速》して……」
「あっぶな!」
「足元《障壁》でバランス崩して……」
「流石にそれは読めてるぞ!!」
「はいフックを《歪曲》」
「人体の構造の限界を超えて曲げてくるなぁっ!!!」
「そういやゲームでも頸動脈締めたらダメージ増えたり気絶したりするのかな?」
「って言いながらチョークスリーパーホールドをかけるのはやめてくれ!」
「これが船の上で、相手が異性で、後ろに審判がいれば完璧だったな」
「お前は何を言っているんだ!?」
◇
「ん? ナギからメッセージなんて珍しいな」
【虚構舞踏会】での素手戦闘訓練もひと段落つき、休憩しながら装備構成を見直していた時。珍しいことにナギからのメッセージが届いていた。
普段は俺もナギも【月下の門】ギルドホームにいる事が多いし、何かあってもリアルで話すことの方が多いからな。
「え~っと……話したいことがあるから新大陸に来てくれ? よく分からないがとりあえず行っておくか」
「で、一体何なんだ? 詳しいことは何も聞かされてないんだが」
「えっとね、
そんな訳でやって来た新大陸開拓拠点。ナギに話したい事とは何なのかを質問する。
聞けばセナさんと話していたら思いついたことらしい……何となく嫌な予感がするな。
「名付けて、ペアの部の決勝トーナメントをユニーク称号エキシビションにしちゃおう大作戦!」
「……作戦名まんまだな」
「今さっき考えたからね。セナさんは藜ちゃんと参加するらしいよ」
「他には……
うちのギルドでペアって言うとこの辺りだろうな。後は俺とナギと……あぁ、常夜さんとサニーさんも最近はよくペアで動いてるか。
「後
「決勝トーナメントは8組だから……俺ら含めて今誘ってる人たちが全員参加するならそれで枠が埋まるのか。で、ユニーク称号エキシビションにするって、具体的にはどうやって全員を決勝に進めるんだ?」
現状判明している範囲ではあるが、仕様的に意図的に特定の人達を決勝に進めるのは難しい気がするんだが……
「ユニーク持ってない上位プレイヤーの人に事情を説明して、ペアの部への出場を控えて貰えばそれだけで解決だね。元々上位帯の人はほとんどソロか固定パーティーかだから、ペアの部に出る人は少なかったし、ほとんどの人が二つ返事で受け入れてくれたよ」
「あぁ、そっか上位帯でペアの人って少ないのか。なら何とかなるな」
ユニークホルダーの人ならそんじょそこらのプレイヤーに負ける事なんてまず無いし、負けるとしても同じユニークかどうか区の上位プレイヤーくらい。で、上位プレイヤーはペアの部参加が殆どいないから負けるとしてもユニーク同士での潰し合い。
でもって、イベントに参加するユニークがペアの部に集まるから、他の人もペアの部さえ避ければ決勝に進むチャンスが増える。むしろ上位プレイヤーの人からすれば対抗馬になるユニーク持ちがいなくなってありがたい話……なのか?
まあ、とにかくこれならペアの部決勝をユニーク持ちで埋めるのも、大分現実的だろうな。
「じゃあ俺も対人の練習にここで辻PvPでもしようかな?」
「おっ! じゃあ私とどっちが多く連勝できるか勝負しようよ」
「ナギに勝てるビジョンが見えないんだが……面白そうだから受けて立つ!!」
尚、結局この後ダブルスコアどころかトリプルスコア付けられて大敗を喫したのであった。
PvPで【戦闘狂】──PvP回数トップのユニークホルダーに勝てる奴なんて極振り除けばほとんどいないからな。当たり前だ。
実はこの話を書き終わった辺りから一人暮らしを始めまして。環境の変化やら何やらでしばらくの間更新が不定期になる可能性があります。ご了承ください。
<今回のオリジナル要素&ネタ解説>
・ポイントを集めて何ができるかは一切判明してない
Web版を流し読みしたけど、第5回イベントの情報が殆ど無かったため考える事を放棄した。イベント概要なんかを考える脳のリソースは極振りの方に回します。
作者本人が途中から、第5回イベントは敵を倒してプレゼントを獲得して、それを開けてスキルを貰うイベントだと勘違いしてるんじゃないかってくらいポイントについての説明が一切なかった。
・これが船の上で、相手が異性で、後ろに審判がいれば完璧だったな
詳しくは『妙楽』さんの『妖姫の櫛飾り』と『酔っぱらった奴らの死亡フラグTRPG』をご覧ください。