逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話 作:LR44(ゆっくり)
流星の如き必殺の一撃。レグルスさんのHPを消し飛ばすには十分な威力を誇る矢が放たれた。
直進。もはや今からではレグルスさんに出来ることなど無い……ように思われたが
『まだだぁっ!!』
レグルスさんは生き残った。
全く、これだから変に極まってる人はいやになる。このゲームはMMOなんだから、そう何でもかんでも気合や根性やら勇気やらで乗り越えられちゃぁたまったもんじゃないんだよなぁ。
《流星》のデメリットによる死亡は残機がまだあるのでどうとでもなるが、復活する一瞬は体の制御がうまくいかない。レグルスさん相手に空中で体制を崩してしまっては命取りだ。
《障壁》を足場にしようにも、《流星》のせいで俺のMPはすっからかんだ。スキルによるリジェネを起動しているが、足場に出来るだけの《障壁》を展開するだけのMPがたまるよりも、レグルスさんの攻撃が当たるのが早いだろう。
手詰まりか……? いや、何かあるはず……そうだ、
「これだ! 《アタックエンハンス》!」
足場に出来るだけの《障壁》展開には足りずとも、最下級のバフ程度なら発動できる。それが今俺に使える唯一の手札なら、それを活用する他無い。
バフをただ使うだけではどうにもならないが、
『実装しててよかったぜ、ゴルディオンネイルをなぁ!!』
「間に……合えぇっ!!」
突っ込んできたレグルスさんが振るった爪を、弓で防ぐ。本来ならば間に合わないはずの防御は、暴発カースのおかげで辛うじて間に合う。
『そういやぁ、お前の武器は耐久値のない破壊されない代物だったな』
「ユニーク称号についてきた装備ですからね!」
防御は間に合ったものの、レグルスさんに弾かれて地面に墜落する。レグルスさんからの追撃があるかと思っていたが、【空間認識能力】には一切の反応がない。
不審に思いながら地面を転がり、どうにか体制を立て直すと、レグルスさんは堂々とした立ち姿で真正面に立っていた。
『なあ、飛燕。一つ提案があるんだが』
「……聞きましょうか」
レグルスさんから提案? アーマーがフルパワーで使えないにしても、あれだけの速度を出せるのなら、出力が1割でもあれば先に殴って勝てるレグルスさんから?
いったいどんな思惑が?
『どうせお互い満身創痍。先にまともな1発を食らった方が負けるんだ。なら、真正面からぶつかり合って強かった方が勝者。そういう方が分かりやすくていいだろう?』
「やけに潔いじゃないですか。ご自慢の推進力で追撃すれば勝ってたでしょう?」
『無茶言うな。正直アーマー維持することすらきついんだよ。お前以上に戦闘をMPに頼ってるんだ、こっちは』
ふと気になって【鑑定】してみると、レグルスさんのMPは毎秒とんでもない勢いで回復しながら、それを上回る速度で減少するとかいうちょっとエグワガンナイ*1ことになっていた。
えぇ……こんな状況、【神格将来】使ったしらゆきちゃんくらいでしか見たこと無いぞ?
レグルスさんは満身創痍だが、それはこちらも同じこと。会話のおかげでMPは多少戻ったが、それでもまともな戦闘ができるほどにはなっていない。【魔力の泉】*2とレグルスさんの攻撃の余波とでHPもほとんど残っていない。多分次、攻撃をガードすればそれだけでアウトだろう。
「その勝負、乗りましょう。どうせこっちもそれしか勝ち筋が無いんですから」
『よっしゃぁっ! それじゃあ、行くぜ!!』
ただ、このまま正面からぶつかり合っても勝ち目は薄い。見たところ、ゴルディオンアーマーによるバフは相当のものだし、そもそもの火力が違いすぎる。俺が自爆前提で出せる火力をポンポンと出せるような奴と真正面からやりあえば……まあ、結果は火を見るより明らかだな。
『ヘル・アンド・ヘブン!』
ほれ見ろ。レグルスさんのヘル・アンド・ヘブンなんて、俺のコンボ込みでの最大火力でも相殺できるかどうかって攻撃だ。
そもそも《流星》で勝てる前提で立ち回ってたからなぁ。こんな状況自体想定外だ。どうにかする手札は……まあ、あるにはあるが賭けだな。それもかなり分の悪い。
「まあ、やるだけやってみるか! 《旋刃》《加速》!」
だが、分の悪い賭けでもやらないのは違うだろう。腹くくってやってやろう。
飛距離でダメージが上がる《旋刃》にユニーク装備の『飛距離に応じでダメージ上昇』を乗せて放つ。そこに《加速》を乗せて威力を底上げする。
『ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ――』
レグルスさんがいつも通りの詠唱をしながら両手を組む。十分に距離を稼げていない《旋刃》では、相殺どころか1秒も拮抗できないだろう。
ただ、そのわずかな時間があれば、出来ることがある。
「展開時間修正。展開位置誤差無し。レーンスタンバイ!」
レグルスさんが突撃してくるまでの間に、こちらも準備を整えておく。
紋章の展開時間を削って、少しでも消費を抑える。その上で、展開位置をコンマ単位で微調整する。当然、展開時間を削るのだから展開タイミングもシビアなものになる。
展開時間が0.3秒を切ると、いくら【空間認識能力】展開率が二十割でも展開タイミングにミスが出てくる。だが、展開時間を削らなければMPが足りない。まずこれが一つ目の賭け。
『ウィータァッ!!』
「紋章、多重展開!」
展開する紋章は《加速》《障壁》《減退》の3種。《加速》は矢と
ここで問題になるのがレグルスさんの速度と軌道だ。その両方が俺の予測から外れていれば、多重展開した《減退》の紋章は意味をなさない。これが二つ目の賭けだ。
展開した《障壁》は紙屑のように次々と割られていく。《加速》込みの《旋刃》と《減退》込みのレグルスさんが衝突し、辛うじて均衡状態となる。
「《矢斬》!!」
そして、ほんの一瞬動きの止まったレグルスさんに《加速》レーンを利用して肉薄する。ここで放つのは【弓闘術・流星】のアーツの中で最も出が早い《矢斬》。バフ目的のアーツなので火力には乏しいが、それでも矢で素殴りするよりは幾分かマシだ。
そう。
要するに、ハードルの高い前2つの賭けに勝ったとしても、乱数次第で負ける最後の賭けがある、ということだ。そう、最後は運ゲーだ。こればかりは俺の努力でどうにかなる問題ではない。
「削れろぉっ!!」
『当たれぇっ!!』
右手に握った矢をレグルスさんに振り下ろす。残り僅かなレグルスさんのHPが削れて行き……0になった。最後の賭けにも、無事勝ったようだ。
念のため暫く警戒を続けるが、『Winner』の文字が見えると同時に警戒を解く。
「ふぅ。何とかなったみたいだな」
今回ばかりは流石に負けるかと思ったぞ。
◇
『決着ぅぅぅぅぅ!! Bブロック決勝戦、熾烈な戦いを制したのは、ナギ&飛燕です!!』
『とても見ごたえある勝負だったわね。特に、アーテルの《特化付与》の切り替えや飛燕の紋章多重展開には目を見張るものがあるわね。当然、ナギのとっさに飛燕を逃がす行動や、レグルスの最大の武器を盾にしてでも生き残る判断も素晴らしいものだったわよ』
『えぇ。そうですね! 私としてはゴルディオンフィンガーの再現度の高さに驚かされましたね!!』
わぁっと会場が沸き上がる。手に汗握るバトルに、会場は大いに盛り上がっている。それもそうだろう。こんなゲームをしている人で合体ロボットの必殺技が嫌いな人などいるのだろうか? いや、いない(反語)
『じゃあ、一足先に終わったAブロックの結果も含めて、トーナメント表を更新するわ』
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Aブロック
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Bブロック
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『お、という事は決勝戦は
『【舞姫】は、数少ない【戦闘狂】が不利取ってるプレイヤーだものね。ただ、今回はペアでの戦闘。どっちに転ぶか分からないのも面白いところよ』
『えぇ、それも当然そうですね! ところで、決勝戦はどっちの会場で行われるんですか!?』
『
『一応ですよ、一応。ソロの部見てない人のために説明もしとかないといけませんからね!』
『はぁ、まあいいわ。決勝戦は、移動時間もあるから10分後に始まるわ。トイレに行きたい人は今のうちに済ませときなさい』
決勝戦の対戦カードを告げる宣言に、再び会場は大いに沸き立った。片や、全プレイヤー中トップクラスの強さを誇り、去年のユニーク称号トーナメントでも決勝で戦った二人。片や、PvP最強格に、アタッカーからサポートまで柔軟にこなす抜群の連携を見せる二人。見ごたえある試合になるだろうことはだれの目にも明らかだった。
『では、私も少し休憩してきましょうかね! 正直大声出しすぎて若干声が嗄れ気味なんですよ!』
『あなたは、ちょっとは加減ってものを覚えなさいな』
◇
「さあ、セナちゃん。今日は私が勝たせてもらうよ!」
「上等! 通算では私が勝ってるからね。悪いけど今日も勝つのは私だよ!」
十分な休息のおかげで頭も休まり、とうとう迎えた決勝戦。セナさんはナギが不利取ってる相手だし、藜さんも決して有利とは言えないしむしろ不利と言っても過言ではない相手だ。
まあ要するに、かなりきつい戦いになるのは明らかだ。俺は別に長時間&反復作業が得意で、それプラス慣れからくる経験則のおかげでプレイヤースキルが高いってだけだからなぁ。こういったPvPはどっちかって言うと不得手だしなぁ。
「正直、俺らの方が大分不利なんですよねぇ、この対面。まあ、やるだけやらせて貰いますよ」
「どの口が、言ってるん、ですか。ナギさんが、いる、時点で、どう転んでも、おかしく、ない、ですよ」
「まあ、それもそうなんですけどね」
ただ、藜さんの言う通り、ナギがいる時点でどっちに転んでもおかしくないのは事実だ。なんせ、ユニーク称号のおかげでナギはPvP限定でステータスの暴力で殴りかかれる訳だしな。
「そんなことどうでもいいじゃん。早く始めようよ。私、待ちきれないよ」
「まさに【戦闘狂】、だね。でも、待ちきれないのは私も同意だよ!」
「はぁ、あっちは乗り気みたいですし、こっちも始めちゃいましょうか。お手柔らかにお願いしますね」
「だから、どの口が、言ってるん、ですか!」
軽く言葉を交わした後、全員が武器を構える。
カウントが0になり、ついに決勝戦が始まったのだった。
前書きでも書きましたが、脳内でレグルスさんが勝手に動くせいで負けさせるのが大変でした。モチーフが悪いよモチーフが……
因みに、今回始まった『ナギ&飛燕VSセナ&藜』が本作ラストバトルになります。
<今回のオリジナル要素&ネタ解説>