逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話 作:LR44(ゆっくり)
湖でのレベリング後、スローター防止モンスターに数回出くわしながらモンスターの分布なんかを調べ続けた。その結果レベルは20を超え、現在の戦い方の中核を担っているスキルも十分に成長した。
そんなこんなで迎えた第二回イベント当日。イベント開始まで2時間ほどの今、俺とナギは
「もうすぐイベントが始まるのに、こっちにいていいんですか?」
いつものように魔導書ビットで料理を運びながら爆弾をいじっていたユキさんがそんな質問を投げかけてきた。まあ、でも
「作戦の確認するならこっちの方がいいですし。それに昨日ちゃんと確認したのでアイテムにも漏れは無いはずですし」
「後、私がイベントで一位取っちゃったせいで、たまに面倒なのがいたりするからギリギリまであっちに入りたくないんだよね」
因みにナギと話し合った作戦というのは『サーチ&デストロイ。メイプルやクロムといった交流のある上位陣と出会ったらメダルの交換を持ちかけてみる。断られたらやっぱり殺す』という程度のものでしかなかったりする。ナギは第一回イベントでペインとドレットを相手にして勝てたらしいので集う聖剣か炎帝ノ国の1パーティーくらいなら取り合えず挑んでみるつもりだったりする。
「それにしても、結局イベントに関する詳細はあの後一切アナウンス無しか。実際にイベントに参加してからのお楽しみって感じなんだろうが、せめてメダルで交換できるスキルの方向性くらいは公開して欲しかったなぁ」
「確かに、最低限欲しいメダルの枚数とかが分からないしね。でもそれより……」
ナギが不安そうな顔をして口を開く。
「今回のイベントで第二第三のメイプルちゃんが現れないかが心配なの」
「……確かに」
「あり得ない……とは言い切れませんしね」
ナギの言葉を聞いた俺の脳裏には、運営が悪ふざけで実装したとしか思えないぶっ壊れスキルやぶっ壊れ装備を引っ提げたプレイヤーが何人も現れ、それらがメイプルさんと意気投合しぶっ壊れしかいないギルドが作られる光景が浮かび……頭を振ってそれを否定した。そんなことになったならば【極天】よりもたちが悪い。
UPOの極振り達は唯一無二と言えるものは求道スキルとユニーク称号、それとユキさんの【常世ノ呪イ】のようなごく一部のスキルのみで、基本的に極まったステータスをぶっ飛んだPSによって無理矢理制御しているだけ。あくまで
『頭のネジがダースどころがグロス単位で飛んでたり最初から無かったりするPSオバケ通り越してもはや人外の集団』であるUPOの極振りと『
「ま……まあ、運営が悪ふざけで実装したとしか思えない要素……仮に『運営の悪ふざけシリーズ』とでも呼ぶか。それを獲得するプレイヤーがいないか、いてもメイプルさんほどのぶっ壊れじゃないことを祈るしかないか」
「別に飛びぬけて巧い訳でもない初心者が最強クラスになれるような要素がそう何個もあってたまるかって話なんですがね。それにしてもNWOは件のメイプルさんへの苦情がUPOの極振りへの苦情以上に殺到してそうなものなのに、全くそういうのが無いのはどういうことなんでしょうね」
「それは本当に謎なんですよね。訳の分からない力によって見たこともないとんでも装備でとんでもスキルを持ってるプレイヤーへの苦情を入れることなく、ろくに検証もしないプレイヤーが集まっている……としか言いようがないんじゃないでしょうか」
ユキさんとあーでもないこーでもないと話し合っている内にかなりの時間が過ぎていたようで、イベント開始30分前に鳴るように設定していたアラームが店内に鳴り響いた。
「あっ、もうこんな時間ですか。すっかり話し込んじゃいましたね」
「そろそろNWOの方に行かなきゃね。じゃあ、お邪魔しました」
「はい。お二人ともイベント頑張って下さいね」
◇
二人そろってログインしたNWO第二の町。お知らせにイベント参加者は中央の広場にいなければいけないと書いてあったので、広場の隅で最終チェックをしていたところ、見知った顔がちらほらと現れてきた。
「【集う聖剣】のペインさん、ドレッドさん、ドラグさん、フレデリカさん。【炎帝ノ国】のミイさん、シンさん、マルクスさん、ミザリーさん。無所属のカスミさん、クロムさん。私含めて前回の上位勢は大体出揃ったかな?」
「後はメイプルさんくらいだっけか。……ヒーラーとタンクがPvPイベント上位にいるのはホントよく分からんな」
飛燕とそんなことを話していると、リアルでもよく知った黒髪と茶髪の二人組がログインしてきた。メイプルちゃんとサリーちゃんだ。私たちには気付かなかったみたいで、キョロキョロと辺りを見回している。
「初めてのイベントだし、緊張するなあ」
「前と同じくらい人がいるよ。やっぱりイベントは皆参加するんだね」
「メイプルちゃん、サリーちゃん!」
なので、こっそり後ろから近づいて驚かしてみる。二人とも驚いたように振り返り、私の顔を見てなんだとでも言いたげな表情を浮かべた。
「うわっ、びっくりしたぁ」
「なんだ、ナギかぁ。驚かせないでよ」
「ごめんごめん。あっ、クロムさん」
二人と話していると、割と交流がある赤い鎧が歩いてきた。『一日に10回死んでるのを見た』『タンク失格レベルで死なれた』という噂のあるイベント10位のタンク、クロムさんだ。さっき飛燕も言ってたけど『キル数、与ダメ、被ダメで順位が決まるPvPイベント』でタンクが上位に入れるのは本当によく分かんないね。
「おう、ナギにメイプルじゃないか。久しぶり」
クロムさんとメイプルちゃんが話をしている中、周りを見回してみるとミイさんが演説を始めていた。大勢の信者……もとい【炎帝ノ国】のメンバーに囲まれ、その周りをその他のプレイヤーが取り囲む形で行われていた。
「いいか、このイベントで我ら【炎帝ノ国】の名を高らしめるのだ。約束しよう、私と共にある限り勝利の二文字あるのみだと。【炎帝ノ国】、そのメンバーである誇りを胸に地の果て、空の彼方までもついてくるがいい。大地も空も、私たちの情熱の炎で焼き尽くそうではないか」
相変わらず気合入った演説だなぁと思いながら見ていると、飛燕が少し考えるような表情をした後、ポツリと呟いた。
「アレは……演技だな。それも結構無理してる」
「あ、やっぱりそうだよね。あれだけ無理してるならやめればいい……てのはもう無理なんだろうね」
相手のソレがロールプレイかただ単にセリフを真似ているだけか。体感、他のゲームよりロールプレイしてる人が多い気がするUPOでは割とコレを一目で判別できると便利だったりするのだ。特にPvPがメインの私みたいなプレイスタイルの人にとっては。
その後、運営のマスコットである赤い竜のぬいぐるみが改めてイベント概要を説明し、第二回イベントが始まったのだった。
今回はギリギリUPO部分とNWO部分の文字数が同じくらいにできたぞ。キャラが勝手に動くせいでほっとくとUPO部分が倍くらいに膨れ上がりそうだったから一応自重。そうなると今話で第二回イベントが始まるかどうか微妙な文字数…というか第1話みたいにUPOパートだけで1話出来かねない。
<今回のオリジナル要素&ネタ解説>
・スローター防止モンスター
フィールドのモンスターを短時間で狩りすぎると現れるモンスター。元ネタはシャンフロの『黒死の天霊』。元ネタとは異なり非常に強いわりにドロップも経験値もおいしくない。SAOクローバーズリグレットの『黄金の処刑人』を数倍強くした感じのイメージ。
・上位プレイヤーに絡む面倒なの
防振りアニメじゃ見なかったし、Web版でもそれっぽいタイトルは無かったからメイプルに関してはクロム達がメイプルの耳に入らないようにしている設定。だから他の上位プレイヤーには普通にいる。因みにUPOでは『極振りとつるんでるやべー奴』なのでごく一部のバカが絡んでくる程度。
・クロムの噂
事実。ユニーク装備入手時点で4桁死んでるのはタンク失格だと思う。片手間に計算してみると1日10回は死んでるし。ちょっとクロムさんや、Luk極振りと同じくらい死んでるとかタンクとして恥ずかしくないですか?(『第15話 第1回イベント②』より序盤のユキは1日10回は死んでいた)
・ロールプレイか判別できると便利
極振り読み直してたら何となく思いついたので入れてみた設定。例えば元ネタ知ってればアキさんの剣の名前聞いた時点で効果が推測できるとかブランさんの詠唱聞いた時点で何が召喚されるか推測できるとか。