逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話   作:LR44(ゆっくり)

81 / 84
 予定:あと2話


第67話『貰ったぁぁぁぁぁッ!!』

「【特化紋章術】、模倣。天候、限定制圧――

 

 接近戦をする裏で、魔導書ビットでこっそり描いていた魔法陣が光り輝く。

 

 【コート・オブ・アームズ】には、紋章を正確に描くことで、他の【付与魔法】系統の魔法も使用できるという特徴がある。

 そして、去年の極振りエキシビションでアキさんが披露したように、一部の【特化紋章術】ならば天候を展開することが出来る。

 

 ――静寂の黄昏」

 

 故に、【コート・オブ・アームズ】さえあれば、下準備に時間はかかるが好きな天候を展開することが出来る。当然、アキさんがやってたように天候のカスタムも可能だ。

 これを思いついた時から、セナさん・藜さんとの戦闘での切り札はこれにしようと決めていた。未だに、天候を扱えるのはトップ層でも一握りの者達だけだ。だからこそ、あちら側も俺たちが()()()()()()天候を使ってくるなど、思いもしなかっただろう。

 

 地平線まで夕焼けに塗りつぶされる。吹いていた風は完全に消え去る。炎に塗りつぶされた空はそのままに、静寂で満たされた夕暮れ時――黄昏の姿がそこにはあった。

 これが、俺の切り札、天候『静寂の黄昏』。天候破壊へのある程度の耐性と、風をはじめとする自然影響の完全排除。そして、スキル持続時間100%上昇効果を持つ天候だ。

 

「《雨垂》!」

 

 自然影響が完全排除されたおかげで、狙いがかなりつけやすい。矢が素直に真っすぐ飛んで行ってくれる。

 

「天候を、使った事には、驚きましたが……」

 

 牽制目的で放ったアーツは、たやすく回避される。構えからしてアーツを使うつもりだろうと、弓を合わせて受け流す用意をする。

 

「《クロノス・ドライブ》!」

 

 ……する。するのだが、流石にそれは無理だ。槍系の中でもヒット数に優れた【旋風槍】系統のアーツの中でも、特にヒット数と基礎威力の高い、高位のアーツ。

 弓はユニーク称号についてきた装備なので耐久力は問題ないのだが、障壁は到底強度が足りない。障壁が破壊されたら、余波で俺のHPは消し飛ぶだろう。故に――

 

「あっぶねっ!!」

 

 ――無理やりにでも回避する。今ここで俺が死んでしまっては作戦が台無しだ。ただ……少々避け方が露骨すぎたみたいだな。

 

「やっぱり、特化紋章術の、デメリットで、HPが残ってないん、ですね」

「……やっぱりばれますか」

 

 特化紋章術は、メリットとデメリットの双方を設定することで、他の【付与魔法】派生よりも強力なバフが使える魔法。天候を書き換えるような魔法だと、当然、デメリットも相応に重いものになる。例えば……毎秒4桁単位のスリップダメージを受ける、とかな。

 

「特化紋章術の、天候なら、使用者が、いなくなれば、元に戻ります、よね」

「『汚染残留』とかはつけられないので、そうなりますね」

「だったら」

 

 そういった瞬間、藜さんの動きが変わる。重視するものが一撃の威力から攻撃速度へと。

 特化紋章術発動前ならまだしも、今の状況では非常に不味い。残機(イコール)攻撃を受けられる回数だし、弓で受けても障壁が少しでもずれたら余波だけで死にかねない。非常に不味い。

 

「《レイ・ストライク》!」

「チィッ、《障壁》ッ!!」

 

 あぁ、ほら。俺に余裕がないことをもう見抜いて連撃系アーツ、それも藜さんが一番使い慣れているものを使ってきた。

 初撃の光線は受け流せないので《障壁》で受ける。3連撃の1発目は受け流し、2発目はもう一度《障壁》で受け止める。3発目にも《障壁》を合わせるが……《障壁》が持たない。回避が間に合わない。残機で受けるほかない。

 残機はまだ少し余裕があるが、復活で一瞬硬直するのが不味い。“神化幻明・稲荷火”は、()()()はまだ展開中だ。その上、藜さんはまだ【十六夜の衣】*1を使用していない。

 こんな状況で一瞬とは言え隙をさらしてしまっては、ほぼ確実に()()が来るだろう。

 

「ナギ、すまん。しくじった」

「《ゲイボルグ》!」

 

 ◇

 

「【四天死闘】!!!」

 

 HPが0に落ちる直前、スキルを発動する。

 このスキル【四天死闘】は、神獄塔イベントの踏破報酬で貰えたスキルの1つ。『発動条件:HP0% ※HP0の時は発動不可』なんて一文のせいで飛燕達検証勢の人たちからは『どうやって使えばいいか理解できない』なんて称されてたスキル。

 だけど、神獄塔イベントのラスボス素材を使った装備なら話は別だ。この装備のセット効果の一つ『②HPかMPの割合を発動条件とする有利な効果を無条件で発動出来る』のおかげで、この発動条件を無視して効果の発動が出来る。発動条件の厳しさに見合った、14秒という異例な長さの無敵スキルが発動できる。

 それに加えて――

 

「おっ、飛燕。ナイスタイミングゥ!」

「無敵スキル、それに……天候まで⁉」

 

 ――飛燕が発動する天候もある。私の装備のスキル持続時間50%上昇と、飛燕の天候のスキル持続時間100%上昇。合わせて150%上昇で、無敵の時間は35秒もある。

 それに、【四天死闘】は%強化の後、倍率強化が入るかなり特殊な形のバフがあるからね。ステータスの上がり具合は普通のバフとは比べ物にならないよ!*2

 

「【点火(イグニッション)】!」

 

 30秒。

 少し距離が空いているから、加速機構を使って一気に距離を詰める。

 無敵スキルを使ってるおかげで、部位破壊を伴うもの以外の攻撃は無視できる。

 

「今度こそ、七つ目ッ!」

 

 29秒。

 再度爆発的に上がったステータスにセナちゃんが対応する前に、一気に決めきる。そのつもりで、今度こそ七つ目を当てていく。残り残機はこれで2つ、後3回攻撃を当てれば私の勝ちだ。

 

「八っつうッ!!」

「甘いよ!!」

 

 27秒。

 セナちゃんに勝った後で飛燕が抑えてくれてる藜ちゃんの方に行くには、残り時間が心もとない。少々無理してでも攻撃を当てるため、前回は失敗した震脚+発勁でゼロ距離から攻撃する。

 ただ、無理は少々ではなく大分だったみたいで、セナちゃんの反撃で左腕を落とされる。

 

「片腕が無くなった程度でッ!!」

「《フェイタルエッジ》!!」

 

 25秒。

 続く攻撃にはアーツを合わせられる。流石、【舞姫】。ステータスは2倍近く上がってるはずなのに、もう適応してきた。

 確か《フェイタルエッジ》は短剣系の高位アーツで、部位破壊やら状態異常付与率やらに補正がかかるアーツだったはず。無敵スキル発動中でも部位破壊は通るのを利用して、無力化しにかかってるね、これは。

 

「まだまだッ! 九つッ!!」

 

 22秒。

 気合と根性で、無理やり押し込んで九つ目を当てる。これでセナちゃんの残機はゼロ。後一撃。後一撃当てられれば。

 

「狐雨、オーバークロック!」

 

 20秒。

 後がなくなった。そんなもの、【舞姫】を止める理由にはならない。ついさっき私が死にかけた、空からの刃の雨。それが今度は銃弾と炎のおまけまでついて、さっきよりも激しく降り注いだ。

 流石に無敵とは言え、その攻撃の前には動きを止めざるを得ない。私が動きを止めた瞬間、セナちゃんは攻撃の雨を利用してジャスト回避カウントを貯めつつ離脱した。

 

「雨粒はようよう、太くなりゆくばかりなり。だったっけ?」

 

 19秒。目の前からセナちゃんが消える。【空間認識能力】すら置き去りにして、瞬く間に私の後ろに移動していた。

 一瞬遅れて、切られたことを思い出したかのようにダメージエフェクトが噴き出す。早い。早すぎる。私じゃ、この速度域には対応出来ない。

 

「まだだぁッ!!」

 

 対応できない? なら、今ここで対応すればいい。

 18秒。

 半分以上勘で、無理矢理攻撃を防御する……が、タイミングが合ってない。ほんの僅かに間に合わず、またしても体からダメージエフェクトを撒き散らす。

 明らかに極振りの速度域に片足突っ込んでいる。それに、【空間認識能力】で捉えきれて無いから正確には分からないけど、2撃目の方が速かった気がする。

 

「ここまで来て――」

 

 17秒。

 またしても捉えられない。予想よりも速い。いや、予想より速くなっている?

 どちらにせよ、このままじゃ不味い。残り秒数コレで逃げ切られかねない。よしんば捉えられたとしても、その頃には右腕も無くなってるかもしれない。右腕が無事でも、藜ちゃんの相手をする時間は残って無いかもしれない。

 

「ここまでして――」

 

 16秒。

 かすった。防御ではなく迎撃を目的に振るった拳が、僅かにセナちゃんを捉えた。

 これで、速度に目星が付く。速度に目星がつけば、迎撃の難易度はガクッと下がる。それでも勝率は五分五分。次の攻撃で捉えられる可能性はよくて5割といった所。普通ならもう少し情報が欲しいところだけど……不味い予感がする。私の第六感が、次で決めないとダメって言ってる。

 分の悪い賭けではあるけど――

 

「――負けられないッ!!」

「――ッ、まずッ⁉」

 

 ――勝った。

 15秒。

 振るった拳が、セナちゃんの銃剣を捉えた。まさかこんなに早く対応されると思っていなかったのか、セナちゃんの目が驚きで見開かれる。目の前にいるのはちゃんと本物であると、【空間認識能力】が告げている。

 これで、終わり。何が何でも逃さないようにもう一歩、踏み込んで拳を振るう。

 

「貰ったぁぁぁぁぁッ!!」

 

 14秒。これで、私の勝ち。14秒あれば飛燕の方に行く余裕は、十分にある。これなら勝てる。そう思った瞬間。拳がセナちゃんに当たる寸前――

 

 ――世界が、ガクンと止まった。突如として、ステージがフリーズした。

 【空間認識能力】が捉えたのは、飛燕の謝罪の言葉。そこで私は、この現象の正体に思い当たった。《ゲイボルグ》、槍系アーツで最大ヒット数を誇るアーツ。それを、【十六夜の衣】やらスキルやらで更にヒット数を増やしてやれば、世界がラグって判定が残留する。実質残機貫通の攻撃だ。残機で受ける前提で作戦を立てていた飛燕には、到底耐えられない。

 

 飛燕が消滅していく。それに伴い、展開されていた黄昏も消えていく。それはつまり、天候によって発動していた『スキル持続時間100%上昇』も消滅するということで。

 スキル効果時間は35秒から21秒に。つまり――

 

「届かなかった、かぁ。次は絶対勝つからね」

「そうはいかないよ! 次も私が勝たせてもらうからね!」

 

 ――効果時間が1()4()()減少。残り14秒だったカウントが一気にゼロになり、私は消失していくのだった。

 

Congratulations

【Champion セナ&藜】

*1
【オーバーロード】のユニーク装備。攻撃ヒット数16倍

*2
UPOでは『%表記が加算処理』された後『倍率表記が乗算処理』される。




 何だかんだ、本作で一番頑張った戦闘シーンだったかもしれません。
 因みに計算してみたところ、【四天死闘】発動中のナギのStrは89021もありました。ちょっと盛りすぎたかもしんねぇ……

<今回のオリジナル要素&ネタ解説>
・【四天死闘】
 元ネタは『至天征伐戦』に登場する『熾凍龍(しとうりゅう)ディスフィロア』の復活ギミック。『至天』の『熾凍』で【四天死闘】。

・狐雨(オーバークロック)
 名前の元ネタはリンバスカンパニーのシステム『オーバークロック』。攻撃の元ネタは狐雨(イサン)の侵食スキルに、シャンフロの『龍よ、龍よ!』のサンラク君の【臨界速】。
 一応設定上はセナさんのペットが『残機が減るほど基礎ステータスを上昇させる』っていうスキルを獲得してて、セナさん本人が『ダメージを与えるたびに加速する』ってスキルを獲得してたから速度が急に上がった、って感じ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。