逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話   作:LR44(ゆっくり)

9 / 84
第7話『やっと見つけた、【集う聖剣】』

 イベント開始と共に、浮遊感が発生し視界が切り替わる。目の前には鬱蒼とした木々。右を見ても木。左を見ても木。後ろにも木で上には木々の間に覗く青空。周囲の確認が終わったナギが、インベントリから杖を取り出し口を開く。

 

「初期地点は森かぁ。近くにプレイヤーの気配も無いし、まずはどっちに行く? これで決める?」

「それでいいだろ。近くに何かある感じでも無いし」

 

 その言葉を聞くと同時にナギは持っていた杖を地面に立てた。倒れた方向は……多分北東と北北東の間くらい。確か北東微北とか言うんだったか。

 装備をAgl特化装備に変更した俺とナギは、杖の倒れた方向に駆けだした。

 

 ……のだが、

 

「結局何も無かったな」

「うん。何もなかったね」

 

 一日目に出会ったのはプレイヤー数人とモンスター数十体。全て瞬殺してきたのだが、碌なものを落とさなかった。モンスターに関しては初心者が出会っても即死しないようにという配慮か、あまり強く無く経験値も多く無かったし、ドロップも最初の町周辺程度のアイテムばかりだった。プレイヤーに関しては前回上位勢と出会う事もなく、運よくメダルを手に入れたプレイヤーがいることも無かった。

 

「どうする? 野営する? それとも走り続ける?」

「まあ、リアルならともかくゲームの中なら2,3徹したところで大した影響無いしな。走り続けるか」

「そうだね。早く世界の端に着かないとマップも満足に作れないもんね」

 

 ==========

 一日目。

 初期地点は森の中。一先ずは特設フィールドの端を目指してひたすら進むことにした。モンスターを数十体、プレイヤーも数人倒したが特筆すべきドロップは無し。これといった収穫もなく一日が終わった。

 そういやこのイベントの特設フィールドはどんな形状なんだろうな。UPO第二回イベントでは確かバイク艦隊とか【写術翁】【限定解除】の手によって島であることが判明して、ユキさんの発見とかからバックストーリーも明らかになってるんだよな。こっちはスレ覗いた感じでは砂漠とか山岳地帯とか海とかがあるけど、一番多いのは平原と森って感じみたいなんだよな。

 ==========

 

 あの後走り続けて、最初とはまた別の森林地帯に着いた俺たちは朝食がてら小休止を取っていた。

 

「やっぱり資金的な問題が解決できるならバイクは俺らみたいな鈍足プレイヤーにとっちゃ理想的な移動手段だよな」

「確かにね。NWO(こっち)にはそもそも無いし、UPO(あっち)でも維持が大変だから持ってないけど、これが終わったらバイク艦隊のところで買ってみてもいいかもね。確か今は招待性になってるらしいからユキさんに頼まなきゃだけど」

 

 そんなことを話していると、こちらに近づいてくる気配を感じた。それも最近見たことのある……これは、確か

 

「「クロムさん?」」

「うぉ!!? って何だ、ナギと……誰だ?」

「飛燕です、イベント直前に会ってますよ」

「ああ、そういや見た気がするな」

 

 後ろからクロムさんのパーティーメンバーも合流し、情報交換をすることになったのだが……

 

「そっちは一日中移動してたのか? 森林に平原に山でまた森、か」

「そういうクロムさんの方はどうだったんですか?」

「ああ、俺らはついさっき死に戻りしたところだ」

 

 ナギの質問に答えたクロムさんの言葉が、あまりにも爆弾すぎた。

 

「……プレイヤーですか、それともモンスターですか?」

「モンスターだな。向こうにある雪山の頂上にあった祠の魔法陣から挑めるボスだったんだが、とんでもなく強くて俺でも瞬殺だったな」

 

 クロムさんの指さした先は奇しくも俺らの進行方向。……トップタンクであるクロムさんが瞬殺されるボス、か。トッププレイヤーのフルパーティーでも勝てないんじゃないか? それ。流石にユキさんが出会ったっていう『伊邪那美之姫』ほどではないが明らかにこの段階で出てはいない強さのボス。それも伊邪那美之姫のように逃亡推奨の死界の主という訳ではなく、自分から挑みに行けるモンスター。たちが悪いってレベルじゃないぞこれは。

 

「……見た目と行動パターンは?」

「倒すつもりか? 俺らの後にメイプルとサリーが挑戦するみたいだから、多分倒されてるんじゃないか?」

 

 いくらメイプルさんでもこれは……なんか都合よく起死回生のスキルでも湧いて勝っちゃいそうだな。んでもって報酬としてトンチキスキルかトンチキアイテムでも獲得ってとこまで想像できる。目に浮かぶぞ。

 

「後でこのイベントの概要を纏める時に情報が欲しいだけです。それに、もし教えてくれるならいい取引がありますよ?」

「そういう事なら分かった。名前は『銀翼』。でっかい白銀の鳥だったな。で、俺らが確認できた攻撃パターンはデカい氷を飛ばしてくるのと、小さい……つららくらいの氷を連発してくるのだけだな。デカい氷で【不屈の守護者】が発動して、小さい氷で後ろ諸共なぎ倒された」

 

 基本攻撃でトップタンクが即死ダメージ……確かクロムさんは防御はそこそこでHP高めのリジェネ搭載HPタンクだったか。それでも一応防御力は全プレイヤー中トップクラスだったはず。だとすると……うん。

 

「「一般プレイヤーに攻略させる気が無いボスだな(だね)」」

 

 倒せないレベルのステータスで挑んだプレイヤーを死に戻りさせるのが目的のお邪魔要素……いやいくら何でもそんなのが通る訳が……訳が……通りそうだな。

 

「まあ、一応可能性としては何かしらのギミックで弱体化できるってのも考えられるが」

「基本的に倒せないお邪魔要素と仮定した方がよさそうだね」

 

 ==========

 二日目。

 クロムさんと遭遇。どうやら雪山の頂上の祠にあった魔法陣から挑めるボスに瞬殺されたらしい。……タンク失格レベルで死にまくるとは言え、トップタンクであることには間違いないクロムさんが瞬殺されるボス? 倒させる気が無いだろう。どうやらクロムさんたちの次にメイプルさんたちが挑戦するらしいから……メイプルさんなら何か勝ってそうな気がする。でもってとんでもない“何か”を手に入れてそう。その後ナギとクロムさんが最初に持っていたメダルを交換していた。判定次第ではあるけどこれでメダル5枚が手に入る可能性があるのだ。やっておいて損はないだろう。

 因みにクロムさんと件の祠を見に行ったのだが、魔法陣は消えていたので恐らくメイプルさんとサリーさんが倒したのだろう。

 クロムさんと別れた後はモンスターを数十体、プレイヤーも10人ほど倒したが今日も特筆すべきドロップは無し。夕暮れ時に特設フィールドの端にたどり着く。平原の先に突如として切り立った断崖が聳えており、登ろうとするとシステム障壁にはじかれたのだ。左右どちらに行くかコイントスで決定し、再び走り出した。どうせなら海とかで隔ててくれた方が風情があってよかったのになぁ。せめて平原の先に突如として断崖絶壁が現れるのは雰囲気ぶち壊しだからやめてほしかった。

 ==========

 ついに迎えた三日目……も、

 

「今日も一切収穫無かったな」

「うん。そうだね」

 

 一切の収穫が無いまま終わろうとしていた。流石に今日は野営しようかという話になり、野営にいい場所は無いか探していると……

 

「ねえ飛燕、あれって」

「……アレは」

「「やっと見つけた、【集う聖剣】。メダル持ってるプレイヤー(ボーナスモンスター)」」

 

【集う聖剣】のペイン、ドレッド、ドラグ、フレデリカのパーティーを発見した。それも野営の準備中のようで哨戒から帰って来たドレッドが何か話していた。

 

「え~っと……『変な気配を感じる事はあったが、近くにプレイヤーはいない』、だと思う」

「ナギ……お前読唇術とかできたのか?」

「勉強中なんだ。あの『大惨事正妻戦争』で会話の内容が分からなかったのが残念だったからね」

「それでどうする? いつ仕掛ける?」

「……ちょっとだけ気配を漏らして警戒させ続けて、警戒し疲れたところに奇襲を仕掛ける、とか?」

「それでいくか。じゃあ俺は少し先の地形を確認してくるから、ナギはあいつらの見張りを頼む」

「分かった。気を付けてね」

 ==========

 三日目。

 昨日までは割と丁寧に行っていた探索をやめ、速度重視で特設フィールドの外周を駆ける。モンスターとプレイヤーは昨日までの約半分程度しか倒せなかったので当然ながら特筆すべきドロップは無し。クロムさんが見つけた祠のような強力なボスに挑める場所は無いかそれなりに注意はしていたが、それらしいものも見つからず。

 それと、【集う聖剣】を見つけた。

 ==========

 




 オリキャラには一切のユニーク要素無しでトップ勢に食らいついてもらうことにしたので今回の話はとんでもなく書きにくかったです。防振りの醍醐味を消し飛ばすスタイルの二次創作。『嫌いじゃないわ』とか言ってくれる読者の方がいれば嬉しいのですが…

<今回のオリジナル要素&ネタ解説>

・特設フィールドの端
・クロムの負け方
 書いてるうちに生えてきた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。