千冬「よし、坂上、教科書の7ページを読め。」
あゆみ「ISは指定場所以外で許可なく展開することは禁じられています。...」
私は教科書を読んでいる彼女のことが気になって仕方ない。坂上あゆみ。あいつは強い。一夏との戦いを見ていたが、攻撃を一切せずに一夏を圧倒していた。力で一夏を圧倒するならわかるが、全く攻撃しないというのは異色だ。是非ともその強さを知りたい。だが、あいつの周りにはいつも大勢の人がいる。なんとも声をかけづらい。どうすればよいのだろうか。
キーンコーンカーンコーン
考えているうちに休み時間になってしまった…。
本音「でね、お姉ちゃん、お菓子作るのは上手いけど、料理は駄目なんだ~。」
あゆみ「それは変じゃないかな。」
本音「本人も努力しているけど、何故か失敗するのだ~。」
あゆみ「そうなんだ。ん。」
篠ノ之さんがこっちを見ている。何か言いたそうだ。
本音「あゆみんどうしたの。」
あゆみ「篠ノ之さん、何か言いたそう。本音さん、また後で。」
本音「分かったのだ~。」
私は篠ノ之さんに近づく。
あゆみ「篠ノ之さん、私に何か?さっきからずっと見ているけど。」
箒「は、話がある。昼休み、いいか。」
あゆみ「いいよ。2人きりがいいなら、屋上に行こうか。」
箒「う、うむ。」
まさか向こうから声を掛けてくれるとは。
・・・・・
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・・
・
昼休みになり、私は篠ノ之さんと共に屋上に来ていた。4月の風が心地よく抜けていく。
あゆみ「それで、話って何?」
箒「お願いだ、お前の強さの秘訣を教えてくれ。」
あゆみ「い、いきなりどうしたの?」
箒「一夏との戦い、じっくり見させてもらった。お前の強さ、学ぶべきものだと思う。」
あゆみ「篠ノ之さんには必要ないと思うけどなあ。剣道大会女子の部で全国優勝する人に、強さを教えても釈迦に説法だと思うけど。」
箒「な、何故それを知っている!?」
あゆみ「クラスメイトのデータ、ネット上で入手できるものはここ数日で全部調べたよ。」
箒「全員分か。」
あゆみ「うん。篠ノ之さんはセシリアさん、織斑君に続いて三番目に情報量多かったよ。」
箒「そうか。凄いな。」
あゆみ「それで、どうして、強さを知りたいの。」
箒「私は、その大会で過ちを犯した。その頃、私は重要保護人物に指定されていて、心が荒み、姉さんに対する恨みつらみを対戦相手にぶつけ、傷付けるだけの剣道をしていたのだ。あのような過ちはもう二度としたくない。」
あゆみ「過ち、か。」
私は黙る。
箒「どうしたのだ?」
あゆみ「私も、篠ノ之さんと同じ過ちをしたことがある。中学の時、今住んでいる町に転校してきて、最初のうち思い通りにいかなかったんだ。それを周りのせいにしていたら、それを誇大に受け取った友人が暴走したんだよ。」
その友人とは、フーちゃんのことだ。
箒「そ、そうなのか!?」
あゆみ「だけど、その友人をどうしたらいいかわからない私の前に、後に私の親友になる人達が現れた。その人達の励ましのお陰で、私は友人の暴走を止めることができたんだ。」
箒「そうか、お前は親友に恵まれたのか。しかし、友人がいない私は一体どうすれば...。」
あゆみ「大丈夫だよ。」
箒「え?」
あゆみ「篠ノ之さんにそういう人がいないなら、私がなるよ。私の親友に比べると頼りないだろうけど、出来ることはやるから。」
箒「いいのか?」
あゆみ「困った人を助けるのに理由は要らない。私の親友の一人の名言だよ。」
箒「うう、うわあああ!」
私はこらえきれなかった。姉さんの発明したインフィニット・ストラトスが兵器として使われ始めて以降、誰一人、こうして普通に接してくる人はいなかった。溢れる気持ちを抑えきれない。涙が、後から後から出てくる。
あゆみ「篠ノ之さんの心、随分無理をしていたんだね。ここで全部洗い流しちゃおう。」
箒「う、うむ...。」
そこに、
一夏「てめえ、何箒を泣かせてやがる!」
織斑君がやって来た。タイミング最悪だ。
あゆみ「ええ。誤解だよ。」
篠ノ之さんが泣いているのは確かだけど、私が泣かせたわけじゃ...。
一夏「五月蠅い!」
パンチを繰り出してくる。私には受け止めることはできないけど、ここは逃げちゃ駄目。篠ノ之さんを庇わないと。そう思っていると、
バシィ
箒さんの竹刀が受け止めた。
箒「随分と酷い早とちりだな、一夏。」
怒っている。篠ノ之さんが怒っている。それも、プリキュアの皆が大切なものを傷付けられた時に見せる、本気の怒りだ。
一夏「イテテ...。竹刀で受け止めることはないだろ。」
箒「先に攻撃してきたのはそっちだ。ごちゃごちゃ言われる筋合いはない。それに、彼女は私の悩みを理解し、励ましてくれたのだ。」
一夏「箒、じゃあなんで俺に言ってくれなかったんだよ。メールで愚痴るくらいできただろうが。」
箒「それで気が晴れるのなら。だが、愚痴っても会うことはできない。」
一夏「...。でも、今は違うだろ。」
箒「お前が弱すぎて、相談を持ち掛けられる状態ではない。」
一夏「箒!言っていいことと悪いことがあるぞ。」
箒「はあ、剣道を3年間サボっていて何を言い訳している。」
一夏「あれはバイトしていたからだ。」
箒「にしても、1日5分素振りすることぐらいはできたはずだ。そんなのだから、この前も坂上に無残に負けたのだ。」
一夏「あれは坂上がセコイ手を使ったからだ。それに、負けてない。」
箒「フン、そう言って乱入機に無残に負けて対戦相手に助けられたのはどこの誰だ。」
篠ノ之さんは立ち上がって歩いていく。私は慌てて後を追う。
あゆみ「いいの?あんなこと言って。」
箒「心配いらん。今の私にとっては、坂上との関係の方が大事だ。」
あゆみ「そっか。じゃあ、放課後剣道場に行くね。篠ノ之さんの腕前、見てみたいから。」
箒「そうかそうか。待っているぞ。」
嬉しそうだ。自分のことを見てもらえるのだから当然か。
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放課後になる。いつもなら特訓する時間だ。
セシリア「今日の特訓は何にしますか。」
あゆみ「ゴメン、今日は別の用事があるんだ。」
セシリア「でしたら、私とブルー・ティアーズだけで特訓しますわ。」
あゆみ「うん。」
私は剣道場に急ぐ。篠ノ之さんがいた。
あゆみ「剣道や柔道をやる人は心身を鍛えるのが目的だって聞いたけど...。」
箒「そうだ。試しにやってみるか。」
あゆみ「うん。」
私は竹刀を構え、振ってみる。
あゆみ「思ったより軽い。」
箒「重いのは防具の方だからな。私が付けよう。」
面、小手、胴、を付ける。
あゆみ「い、息苦しい...。」
箒「ぴったりしていないと相手に撃たれたときにずれて危険だからな。一つ私とやってみないか。」
あゆみ「え、でも、勝負になんて...。」
箒「勝ち負けではない。今の私を見てほしいのだ。」
あゆみ「分かった。でも、篠ノ之さんからは絶対攻撃しないでね。」
箒「そうだな。」
お互いに構える。
箒「どうした。いつでもいいぞ。」
篠ノ之さんはそう言うけど、今の彼女は一分の隙も無い。下手に動いたらその瞬間にやられる。でも、これは剣道。ISを使った競技の時と違って、回避を連続でやるのは相手に失礼だ。
あゆみ「はあーっ!」
私は篠ノ之さんに向かって進むが、
箒「面!」
バシィ
あっさり面を取られる。
あゆみ「参りました...。」
箒「私の太刀筋はどうであった。」
あゆみ「鋭い。触れるだけで切れそうなくらい。だけど、それ以上に、心に乱れがなくて、隙が無かった。どう動いてもやられそうで...。」
箒「そうか。私は基本的に一人で練習するとしよう。ただ、偶にはアリーナの方にも顔を出すつもりだ。その時はよろしく頼むぞ。」
あゆみ「うん。じゃあまたね、篠ノ之さん。」
私は剣道場を後にする。