薫子「いよいよ決勝戦です。2組の凰さんは先日の模擬戦で1組相手に勝利宣言。対する1組の坂上さんは、凰さんに対する秘策があるとのこと。ですが、その内容は謎に包まれています。楯無さんは何か知っていますか?」
楯無「私も知らないわ。そもそも、あの機体には弱点らしい弱点がない。勝つには力で圧倒するしかないけど、訓練機ではそれは絶対あり得ない。私が調べても見つからない弱点を、あの子が見つけられるとは思えない。」
薫子「ですが、秘策は確実にあるとのことです。でなければ、絶対負けるとまで言ってましよ。」
楯無「そうね。ハッタリとは思えないのよ。顔が嘘言ってないから。なんにせよ、その秘策が何なのか、じっくり見させてもらうわ。」
「両選手、スタート位置に移動してください。」
そのアナウンスを聞いて、私と凰さんがスタート位置に移動する。
鈴「ねえ、あたしに対する秘策、一体何なのよ。」
私は答えない。沈黙を貫く。無視されることほど、こういう時に恐ろしいものはない。
ピーッ
「試合開始!」
鈴「答えないなら、力づくで聞かせてもらうわ!」
ドォン
衝撃砲が放たれる。だけど、私は難なく回避する。
鈴「何で、何で当たらないのよ。」
凰さんがムキになって撃って来るけど、全部回避する。資料を見た時は弱点がないと思ったけど、この衝撃砲は撃つ時に周りの空気が僅かに乱れる。だから、見えなくても空気の微妙な変化で撃つタイミングと角度が分かる。後は回避するだけだ。人づきあいは空気を読むことにも長けていないといけないのが、思わぬ形で役に立った。
~実況室~
薫子「ああっと、凰さんに焦りの色が見えます。一方の坂上さんは余裕十分。」
楯無「どうやら、何か掴んだようね。でなければ、あの衝撃砲を回避し続けることなんてできないわ。」
~観客席~
清香「一体、何がどうなっているの。」
セシリア「あれは衝撃砲ですわ。空間に圧力をかけ、その余波で空気を相手にぶつけるのですわ。しかも、向きは自由自在。真上にも真後ろにも撃てる、第三世代型兵器ですわ。」
箒「何だ、それでは弱点がないではないか。」
セシリア「ええ。そのはずです。ですが、あゆみは私達にも分からない弱点を見つけたようですわ。ここまで何十発も放たれているのに、一発も食らっていませんもの。」
~ステージ~
鈴「不味い。けど、打開策が...。」
何故か分からないけど、龍砲が通用しない。龍砲を封じられたら、付属武器の青龍刀、双天牙月だけでは坂上さんを仕留められない。一夏と対戦した時のビデオを見たけど、適度な距離を保たれて、無駄にエネルギーを使うのがオチだ。中近接型で武器の種類が少ないのが恨めしい。
私は間合いを測っていた。いくら私が優位とはいえ、凰さんにはハッタリは通用しないから、さっきみたいな体当たり未遂は使えない。その時、
ラファール7「未確認機が接近しています。」
あゆみ「また?けど、この間みたいになったら...。そうだ。ラファール、上手く誘導して衝撃砲を当ててもらおう。」
ラファール7「いい考えですね。」
私は急上昇する。
鈴「急に単調な動きになったわね。」
よし、衝撃砲を撃ってきた。私は後ろに回避する。
鈴「馬鹿ね。後ろに逃げてもぶつかるわよ。」
ドォン ドォン
未確認機がアリーナの壁を突き破る音がする。間髪を入れず、衝撃砲が未確認機に命中した。
鈴「な、何あれ。」
凰さんが驚いている。
あゆみ「凰さん、龍砲で仕留めて。こっちからだと凰さんに当たっちゃう。」
鈴「わ、分かった。」
慌てている仲間には具体的な攻撃を指示するのがいい。
ドォン
衝撃砲が命中し、未確認機の動きが止まる。
ラファール7「今交信しましたが、反応がありません。無人機ですね。」
あゆみ「凰さん、思いっきりやっちゃって。」
鈴「ええっ!?中にいる人はどうなるのよ。」
あゆみ「心配いらないよ。無人機だから。」
鈴「ありえないでしょ。」
あゆみ「じゃあ、ちょっと顔の装甲を剥がせばいいよ。それで判断できるはず。」
無人機?ありえないでしょ。ISは人が乗らないと動かないのだから。あたしは顔の装甲を剥がす。
鈴「嘘でしょ…。」
あるのは無機質な機械の塊のみ。
鈴「破壊する。木っ端微塵に。」
凰さんが木っ端微塵に破壊する。
ラファール7「どうやら、完全に破壊されたらしいですね。全命令系統が機能停止しました。」
あゆみ「良かった~。前回みたいにパニックになったら大事だよ。」
千冬「坂上、凰、怪我はないか。」
織斑先生から通信が入る。
あゆみ「大丈夫です。凰さんの攻撃が先に命中したのが幸いして、被害はありません。今回も無人機です。」
千冬「そうか。だが、試合は中止だ。」
~吾輩は猫である~
束「ああもう。マジで腹立つ。」
私は椅子を蹴っ飛ばす。
束「どれだけ悪運強いのさ。相手が撃ってきた砲弾が無人機に当たるなんて。」
クロエ「そうでしょうか。私にはそうは思えないのですが。」
束「どういうこと、クーちゃん。」
クロエ「もし、来ると分かっていて、誘導したとしたら…。」
束「そんなのありえないよ。」
クロエ「ですが、今計算したところ、偶然こうなる確率は十万分の一です。相当低いですよ。」
束「…。仕方ない、作戦変更だよ。」
この私に作戦を変更させるなんて。坂上あゆみ、覚えてなさい。