~事情聴取室~
私が事情聴取を受けている。
千冬「またお前が巻き込まれたわけか。」
あゆみ「まあ、そういう体質ということで。凰さんが上手く対応してくれたので、誰も怪我せずに済みましたし。防御システムには不満ありですけど。」
千冬「探知できなかったのだ。かなりのステルス性能だな。それはそうと、凰の動きが鈍かったようだが。」
あゆみ「秘策が効いたようですね。」
千冬「一体何なんだ。お前が何も話さないから、学校全体でその噂で持ちきりで、我々教師まで気になって仕方なかった者がいたぞ。」
クスッ
私は思わず笑う。
千冬「何がおかしい。」
あゆみ「つまり、皆見事に引っ掛かったということですね。」
千冬「なっ、お前、もしかして秘策など最初からなかったのか!?」
あゆみ「いえ、秘策自体はありました。秘策があると噂を流し、それを聞いた鳳さんが動揺する。これが秘策だったんです。そして、鳳さんが私相手に動揺する要因があるとはっきり分かっていたから、仕掛けたのです。でなければ、ばれた時のリスクが高いこの作戦はしません。」
千冬「というと?」
あゆみ「彼女がこの学校に来てから、私はいろいろと彼女を助けていたのです。事務所を案内したり、恋愛相談に乗ったり。ですが、織斑君と模擬戦した時、彼女は調子に乗って勝利宣言したのです。1組の代表が私だと知らずに。それを知った私は、言葉に注意する意味も込めて、この作戦を考えたのです。」
千冬「えげつない作戦だな。しかし、あいつにはいい薬ってわけか。」
あゆみ「そういうことです。」
千冬「だが、後始末はちゃんとしろよ。いつまでも噂が消えないと中国から抗議が来るのでな。秘策があるとなれば、機体に重大な欠陥があるかもしれんと勘繰るだろう。」
あゆみ「それですが、欠陥の方もあったんですよね。こっちは完全に想定外でした。まあ、そのお陰で負けずに済みましたが。」
千冬「...。そっちも報告しとけ。」
私は聴取室を出る。入れ替わりに凰さんが入る。
鈴「あたしは何も言えることはないですよ。訳分からないまま坂上さんの言うままに攻撃して、終わりましたし。」
千冬「そうか。なら一つだけ。」
鈴「何ですか。」
千冬「友達は大事にしろよ。」
鈴「は、はい…。」
~1020室~
本音「あゆみん、あのままやっていたら勝てたのにね~。」
あゆみ「仕方ないよ。未確認機の乱入だから。それに、皆が軽いパニックになっていたからね。」
織斑先生の安全宣言に続き、凰さんが倒したとオープンチャネルで叫んだことで大事にはならなかったが、あのままだったらパニック状態だった。
コンコン
あゆみ「はい。」
鈴「坂上さん、いいかな。」
あゆみ「本音さん、席外してくれるかな。」
本音「分かったのだ~。」
本音さんと入れ替わりで凰さんが入ってくる。
鈴「...。」
あゆみ「...。」
お互い無言のまま時間が過ぎる。
鈴「坂上さん、あの、その...。」
あゆみ「ん?何かな?」
鈴「ゴメン!」
あゆみ「それって、この前の勝利宣言?」
凰さんが頷く。
あゆみ「別に気にしていないよ。ただ、ちょっとだけ使わせてもらったけどね。」
鈴「え?」
あゆみ「私が秘策があるって言ったら、凰さんは絶対気にするから、普段通りの動きができないって作戦。」
鈴「じゃあ、何も話さなかったのは...。」
あゆみ「作戦の一環。別に凰さんのこと嫌いになったりしてないよ。」
鈴「良かった~。」
あゆみ「でも、これに懲りたら二度と不用意な発言はしないように。」
鈴「うん。」
あゆみ「それから、
鈴「ええ、そうなの!?」
あゆみ「微妙な空気の変化が、タイミングと角度を取りやすくしている。」
鈴「参ったわね。それじゃ欠陥機じゃない。」
あゆみ「誰もが出来るかどうかは別として、欠陥であるのは確かだね。」
鈴「本国に連絡して、改善してもらわないと。にしても、いいの?よその国の最新機の欠陥を指摘するなんて。」
あゆみ「私達、友達でしょ?その友達が命取りになりかねないこと抱えているなら、芽のうちに指摘するのも優しさだと思うよ。」
鈴「坂上さん...。」
あゆみ「お茶入れるね。」
鈴「あ、ありがとう。」
私達はお茶を飲む。
あゆみ「それにしても、危なかったなあ。どこの誰だろう、無人機を乱入させるなんて。」
鈴「ホント。あたしの衝撃砲が当たってなかったら、どうなるかと思った。」
あゆみ「上手く誘導できてよかったけど、外れていたらこの前みたいになるところだったよ。」
鈴「えっ、来ると分かっていたの!?」
あゆみ「ラファールが教えてくれたんだよ。それで、これが一番いいかな~って思って。」
鈴「信じられない…。」
あゆみ「あ、
甲龍(シェンロン)「当然。訓練機にできることが専用機にできなくてどうすんのよ。」
あゆみ「そっか。」
鈴「な、なに独り言を呟いているのよ。」
あゆみ「独り言じゃなくて、甲龍(シェンロン)と話していたんだよ。手を握って。」
ギュッ
鈴さんが私の手を握る。
鈴「
鈴「う、うん…。なんかあたしそっくり。」
あゆみ「ISは搭乗者の性格に似せて進化するんだって。」
鈴「へ~。」
あゆみ「誰でも気づくと思ったけど、結構凄いことだったんだ。」
あゆみ「どういたしまして。」
鈴「ところで、この前の時はどうだったの?」
あゆみ「その時はまだ会話できなくて、接近してくることに気付けなかったんだ。それで、私は逃げようとしたけど、織斑君が突撃して、反撃を食らって気絶して、他のアリーナに逃げたよ。もう少しで大惨事になるところだったなあ。」
鈴「はあ!?アイツ、何馬鹿やってんのよ。」
あゆみ「私は止めたんだけど、乱入に腹が立っていたみたいで、かなり無理のある攻撃をしてたよ。衝撃波があったから正面から行くのは危険なのに…。」
鈴「呆れてものが言えないわ。」
あゆみ「そうかな~。私の親友も結構無茶なことしているよ。それを押し通しちゃうあたりは流石だけど。」
鈴「ちゃんと出来るなら問題ないわよ。じゃあ、あたしは部屋に帰るわ。」
あゆみ「また明日ね。」
~鈴の部屋~
鈴「あ、あたしよ。友人が指摘してくれたんだけど、
ピッ
あたしは電話を切って呟く。
鈴「一夏よりあゆみの方がよっぽどいいわ。決めた。あゆみに付いていく。」