じっと観察していたけど、デュノア君は休み時間のたびに女子に追いかけ回されている。なら、この作戦で行こう。
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昼休みになり、授業が終わるや否や、私は勉強用具をそのままにしてデュノア君の手を掴む。
シャルル「えっ?ちょ、ちょっと。」
あゆみ「人がいないところに行くよ。飛ばすからしっかりついてきて!」
私は全速力で教室を飛び出す。
「坂上さん、抜け駆け禁止!」
「者ども出会え出会え!」
皆が追い掛けてくる。でも残念、死角に隠れれば気付かない。私とデュノア君は上手くやり過ごす。
「どこ行った~!」
「まだ遠くには行って無いはず。」
「探せ探せ~!」
シャルル「驚いたよ。」
あゆみ「ゴメンね、休み時間のたびに女子が囲んでくるのはキツイだろうし、昼休みが終わるギリギリまで私の部屋に隠れていよう。」
シャルル「そうだね。」
~1020室~
本音さんはお昼を食べているのか、部屋にいない。私は紙に字を書く。
~以下、全て筆談~
あゆみ「ここから先は筆談でやるよ。盗聴器があったら大変だからね。」
シャルル「随分慎重なんだね。」
あゆみ「貴方の秘密に関わることだから。本題はむしろこっちだよ。」
シャルル「秘密って...。」
あゆみ「貴方が男装しているってこと。違っていたら謝るけど。中学時代、貴方に容姿がそっくりな男装の麗人が親友にいたんだ。」
シャルル「...。」
あゆみ「沈黙は肯定と捉えて良いよね。」
シャルル「僕の負けだよ。君の言う通り、僕は男装している。」
あゆみ「やっぱり。」
シャルル「僕のことは煮るなり焼くなり好きにしていい。」
あゆみ「どうしてそんな投げやりに?」
シャルル「どうせ遅かれ早かれこうなるだろうって思っていたから。」
あゆみ「じゃあ、やるよ。目を閉じて。」
ピンッ
私はデコピンをする。
あゆみ「はい、終わり。」
シャルル「え、これだけ?」
あゆみ「だって、私はデュノアさんのこと助けたいから。」
シャルル「助ける?」
あゆみ「私の親友は、家の事情でやむなく男装していたけど、他の親友の助言もあって、なりたい自分になることができた。だったら私も同じやり方をするべきだと思う。」
シャルル「ありがとう。でも、僕の場合、そうもいかないんだ。」
あゆみ「どうして?」
シャルル「君の親友の場合はやましいことはなかったでしょ。」
あゆみ「そうだけど。」
シャルル「でも僕は違う。スパイとして送り込まれてきたんだ。」
あゆみ「スパイ?」
シャルル「ああ、もうこんな時間だ。続きは後で話すね。」
あゆみ「うん。でも、スパイなんてしちゃ駄目だよ。」
シャルル「分かっているよ。」
~1年1組~
あゆみ「本音さん、今日の夜何時くらいに部屋に戻ってくる?」
本音「今日は生徒会の仕事があるし、その後ご飯食べるから20時くらいかな~。」
あゆみ「分かった。じゃあ、明日以降埋め合わせするから、今日は私の分もお願い。」
本音「あゆみんのお願いなら仕方ないのだ~。」
一夏「シャルル、どこ行っていたんだ。」
シャルロット「ちょっとね。」
一夏「お前のことは俺が面倒を見ろって言われたんだが。」
シャルロット「別に全部が全部織斑君の助けが必要な訳じゃないよ。」
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授業が終わる。
一夏「シャルル、俺とお前は同じ部屋だし、一緒に帰ろうぜ。」
シャルロット「ゴメン、僕用事があるんだ。先に帰っていて。」
一夏「何だよ、付き合い悪いな。」
私は中庭を歩きながら考えを纏めている。
あゆみ「先生に相談すべきかどうか...。でもまだ話全部聞いてないし、それからでも遅くないか。」
ラウラ「何故です、教官。」
あ、織斑先生が他の人と話している。
千冬「くどいぞ。」
あゆみ「あれは、ボーデヴィッヒさん。一体何を...。」
ラウラ「教官はこのような場所にいて良いような方ではありません。我がドイツでもう一度指導を...。」
千冬「随分と偉くなったものだな、ボーデヴィッヒ。まあ、去年までならお前の言い分も分からないでもなかったが、今年は違うぞ。凄い新人が入ってきてな。そいつが周りに好影響を及ぼしている。ああいう奴がいると、教師としても教え甲斐があるという物だ。」
ボーデヴィッヒ「なっ、教官にそこまで言わせるとは...。一体誰です。」
千冬「そこにいる。」
織斑先生が私のことを見る。
ボーデヴィッヒ「よし、ならば今すぐにアリーナで品定め...。」
千冬「止めておけ。奴の強さは戦闘力じゃない。」
ボーデヴィッヒ「戦闘以外に強さなどありえません。」
千冬「そのうち分かる。まあ、せいぜい自分を磨くことだな。でないと、あっという間にあいつのペースに巻き込まれるぞ。」
~1020室~
あゆみ「思ったより遅くなっちゃったね。」
シャルロット「お互いにね。じゃあ、始めようか。」
~以下筆談~
シャルロット「僕はフランスのIS企業のデュノア社の社長の子供なんだ。」
あゆみ「良いところのお嬢さんじゃない。」
シャルロット「待って、続きがあるんだ。愛人の子供なんだよ。」
あゆみ「あー、そういうことか。愛人の子供だから、声を大にして言えないってことか。」
シャルロット「そう。デュノア社は業績不振で、このままだと開発の権利も剥奪される可能性がある。そんな時、僕のIS適正が高いことが分かり、非公式だけどIS操縦者になったんだ。そして、男装させてIS学園に入学させ、織斑君のデータを取ってくるように言われたんだ。操り人形なんだよ。」
あゆみ「だったら、誰かがその糸切っちゃえばいいんだよ。人形の方は自分で動く意思があるんだから。」
シャルロット「でもどうやって?」
あゆみ「デュノアさんはお父さんとどれくらい会った?」
シャルロット「たった2回、時間にして1時間ほどだけど。」
あゆみ「お父さんに会おう。」
シャルロット「え?」
あゆみ「1時間なんて、私より会っている時間少ないってことだよ。それはつまり、お父さんはデュノアさんの気持ちをちゃんとわかっていないってことになる。本社に行って、お父さんと直接話をするべきだよ。」
シャルロット「分かった。それで、坂上さんも一緒に来てほしい。僕にこんな決断をさせたのは君だから。」
あゆみ「行きたいけど...。海外へ行くのって高いから、私の持っているお金じゃキツイんだよね...。」
格安チケットならともかく、こんな急じゃ正規料金になってしまう。
シャルロット「僕が出すよ。代表候補生は給料をもらえるから。」
あゆみ「いくらこういう事とはいえ、他人のお金を使うのは...。」
シャルロット「じゃあ、出世払いってことで。」
あゆみ「分かった。チケットは別々に取った方がいいよね。」
シャルロット「外出許可もね。」