私の思い出が駆け巡る。軍で鍛えられたこと、ISに適合できずに出来損ないと罵られたこと、教官に指導してもらったこと…。これが走馬灯というやつか。私も長くないな…。
グッ
暖かい感触が手に伝わる。これは…。その瞬間、何が何でも生きなければならないと思い始めた。そして、次の瞬間には布団に潜り込んできた。私が心配なのだろう。そのうちに、他の気配は去った。そうするうちに意識がはっきりしてくる。
ラウラ「坂上か。」
あゆみ「あ、ボーデヴィッヒさん。目を覚ましたんだね。良かった…、本当に良かった…。」
ラウラ「泣くな。そんなに私のことが心配だったのか。」
あゆみ「うん。」
ラウラ「心配かけてすまなかったな。」
千冬「どうやら、無事に目覚めたようだな。」
ラウラ「教官、立ち去ったのではなかったのですか。」
千冬「坂上が涙ぐむ声が聞こえてきてな。引き返してきた。」
ラウラ「はっ、そう言えば、一体何が...。」
千冬「慌てるな。順を追って説明してやる。坂上、機密事項があるから席を外せ。」
坂上が出て行ったあとで教官が話し始めた。
千冬「Valukiry Trace システムは知っているな。」
ラウラ「ええ。もしかして、それが私のシュヴァルツィア・レーゲンに搭載されていたのですか!?」
千冬「その通りだ。最もお前は知らなかったようだし、あれは搭乗者の命を危険にさらすからな。今回の件に関して、学園はドイツの強制調査と抗議文書の提出は行うが、お前には責任はないということで処分は無しだ。」
ラウラ「そうですか。じゃあ、自室に戻りますね。」
千冬「まあ待て。話はまだある。」
教官が私を制する。
千冬「坂上がお前を助け出したのは知っているな。」
ラウラ「ええ。」
千冬「アイツは罰を喰うことを承知の上であれをやった。」
ラウラ「突然飛び込んできた時はびっくりしましたが、まさかルール違反を承知でやるなんて…。」
千冬「あいつは私ですら驚くようなことを平然とやるからな。今回も、暴走する原因になったお前を説得するとかいう作戦を提案してきた。普通なら力づくで抑えるところを、あいつは説得して止めると言い出し、それをやり切ってしまったからな。」
ラウラ「これが、教官が言っていた坂上の強さなのですか?」
千冬「そういうことだ。」
ラウラ「信じられない。私ですら躊躇するのに...。」
千冬「聞けば、別の世界で戦士だったらしい。もっとも今は力を失って、只の一般人として生活しているそうだがな。」
ラウラ「その話、私も信じますよ。」
千冬「さてと、これで話は終わりだ。坂上、入っていいぞ。」
坂上が入ってくる。
ラウラ「教官、心配かけてすみませんでした。」
千冬「フッ、礼なら坂上に言え。さてと、坂上、昨日指令室に無断立ち入りした罰として、放課後トイレ掃除をしてもらうぞ。」
あゆみ「は、はい。」
織斑先生が出ていく。
あゆみ「ボーデヴィッヒさんは、御咎めなし?」
ラウラ「ああ。私の責任ではないということで、何の処分もなしだ。」
あゆみ「じゃあ私は授業があるから、行くね。」
ラウラ「ま、待て。」
あゆみ「ん、何?」
ラウラ「放課後のトイレ掃除、私も手伝うぞ。原因を作ったのは私だからな。」
あゆみ「じゃあ、お願いするね。」
ラウラ「あ、ああ…。」
ドキッ
なんだ、こいつの顔を見ているだけで胸がドキドキしてくる。これは一体…。よし、クラリッサに相談しよう。私はクラリッサに電話をかける。
~シュヴァルツェ・ハーゼ基地~
ここはドイツ最強のIS部隊だ。そして、私、クラリッサ・ハルフォーフはここの副官をしている。
プルルルル
隊長からだ。
クラリッサ「はい、クラリッサです。」
ラウラ「クラリッサ、私は今、困っている。」
クラリッサ「何でしょうか?」
ラウラ「クラスメイトの坂上あゆみについてだ。」
クラリッサ「それで、隊長は一体、何を困っているのです。」
ラウラ「あゆみのことを考えるだけで、胸がドキドキしてくる。あゆみが他の誰かと仲良くしていると、何故か妬ましく思えてしまう。」
クラリッサ「それは恋ですね。」
ラウラ「こ、これが恋か…。」
クラリッサ「であれば、早々に隊長の嫁にするべきかと。」
ラウラ「嫁?」
クラリッサ「日本では気に入った相手を自分の嫁にするといいます。それから、周りに見せつけるべきですね。」
ラウラ「そうか。助言、感謝するぞ。」
ピッ
私は電話を切る。