第60話 紛糾する作戦会議
~管制室~
私達は真剣な面持ちで向き合っている。
千冬「では、現状を説明する。3時間ほど前、ハワイ沖で試験稼働中のアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型軍用IS、
セシリア「はい。」
千冬「オルコット。」
セシリア「目標ISの詳細なスペックデータを要求しますわ。」
千冬「いいだろう。但し、これは二国間の最重要軍事機密だ。絶対に漏らすな。漏らした瞬間に査問委員会による裁判と最低2年の監視が付く。」
セシリア「分かりました。」
私達はデータを見始める。
セシリア「広範囲殲滅を目的とした特殊射撃型…私のISと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですね。」
鈴「攻撃と機動の両方を特化した機体ね。厄介だわ。しかも、スペック上はあたしの甲龍(シェンロン)を上回っているから、向こうのほうが有利。」
シャルロット「この特殊武装が曲者だね。」
ラウラ「しかも、格闘性能が未知数だ。持っているスキルもわからん。偵察は行えないのですか。」
千冬「無理だな。この機体は現在も超音速で飛行中だ。アプローチは一回きりだ。」
一夏「なら、一撃必殺の攻撃を出来る俺の出番か。」
千冬「お前の零落白夜で落とすということか。」
確かにそれは一理あるが…。
鈴「アタシは反対ですね。」
一夏「なんでだよ。」
鈴「織斑の命中率じゃ、期待できない。」
箒「成程、一理あるな。」
セシリア「むしろ自滅してこちらが巻き込まれるまでありますわ。」
シャルロット「なら、僕達全員で一斉に攻撃して、少しずつ削っていくのが良さそうだね。」
ラウラ「そうだな。」
束「ちょーっと待ったー!」
姉さんがいきなり天井から現れる。
千冬「おい束、幾らお前でもここは立ち入り禁止だ。」
束「今の作戦に致命的欠陥があると言ったら?」
千冬「…。話してみろ。」
束「先に言っておくけど、あんた達の装備じゃこの機体は止められないよ。出力が違いすぎて全滅するのがオチ。」
千冬「それで。」
束「だから、確率が低くてもいっくんの零落白夜に賭けるしかないよ。」
それを聞いた私達は一様に不機嫌になる。
セシリア「嫌ですわね。これほどの高性能機なら機動力はあゆみさんと互角以上。そして彼はあゆみさんに未だ一度も攻撃を当てたことがありませんわ。」
ラウラ「その通りだ。成功率0%の作戦なんて、誰がやるか。」
一夏「おい、そこまではっきり言うか。」
ラウラ「当然だ。バカげた作戦は人的資源も通常資源も浪費するだけだ。」
束「凡人が束さんの作戦を批判する資格なんてないよ。」
千冬「静かにしろ束。兎に角、それ以外に作戦を考えた者はいるか。」
管制室が静まり返る。
千冬「何も言わないということは、誰も思いつかないという事か。」
全員が黙って頷く。
千冬「この2つの作戦はどちらも実行するには致命的弱点を抱えている。だが、代案を出せる者もいない。よって、能力不足のため、この任務は我々では対処できないと回答するしかないな。」
エドワース「専用機持ちが6人もいて、対処できないとは情けないですね。」
千冬「仕方あるまい。相手は軍用機だ。」
それを聞いた皆は一様に悔しそうにしている。専用機持ちはそれ相応の責任があるというが、実力不足で対処できないと言われるのはかなり悔しいのだろう。
鈴「情けないわね。実力不足で任務をこなせないのって。」
シャルロット「うん。こんな時、あゆみならきっと何かいい考えを出してくれるのに…。」
セシリア「それですわ。」
シャルロット「え?」
セシリア「これまで、色々な事件が起きましたけど、その中にはいつもあゆみさんがいました。そして、あゆみさんはいつもその場その場で最良の対処法をしてきましたわ。」
鈴「そうだったわね。」
千冬「よし、坂上を招集しろ。何かいい考えを持っているかもしれん。」
エドワース「織斑先生、坂上さんは一般生徒です。巻き込んで怪我でもしたら…。」
千冬「そんなことは分かっている。だが坂上は只の一生徒ではないし、そのことを自覚しているから心配はいらない。オルコット、凰、坂上を呼んで来い。」
セシリア・鈴「「はい!」」
セシリアと鈴が飛び出す。2人が飛び出すや否や、姉さんが織斑先生に近づく。
束「なんで一般生徒のアイツ(目障りな奴)を招集するのさ。」
千冬「取れる手段は全て尽くすだけだ。そう言うお前はいい作戦でもあるのか。」
束「だから、いっくんの零落白夜で…。」
千冬「残念だが、織斑の命中率が当てにできないというのは私も同感だ。一発の被弾が致命傷になりかねない軍用機相手では、まず確実性が必要だ。」
早くあゆみを連れて来てくれ。姉さんが横槍を入れ出すとどうなるか分からない。