3組の部屋に移る。私は襖を開けようとして辞める。
あゆみ「…。」
菜月「どうしたのですか。」
あゆみ「ちょっと聞き耳立ててください。」
榊原先生が聞き耳を立てる。
「訓練中止とか訳わかんないよね。」
「てか、何で坂上さんだけ別扱いなのよ。」
「きっと専用機持ちと近しい関係だからだわ。」
「キーッ!」
菜月「やれやれ、とんだ逆恨みね。」
あゆみ「まあまあ、こういう時の対処法は知っていますよ。」
ガラッ
私は襖を開ける。
あゆみ「今私のことを呼んだ気がするんだけど、気のせいかな?」
「き、気のせいよ。」
「そ、そうそう。」
あゆみ「そっか。それで、私は今パニックを起こしている人がいないか見回りをしているんだけど、人手が足りなくて困っているんだ。良ければ手伝って欲しいんだけど、大丈夫かな?」
「え、えーと、私達もちょっと混乱していて…。」
「遠慮しておきます。」
あゆみ「分かった。じゃあまた後で。」
ガラ
私は襖を閉める。
菜月「上手い物ね。」
あゆみ「慣れていますから。」
「あ、危なかった…。」
「聞かれたわよ。あれは絶対聞いている顔よ。」
「やっぱり噂をすると影が差すっていうのは本当ね。」
「大人しくしていよう…。」
次の部屋に移る。
あゆみ「…。」
菜月「もしかして、また?」
私は無言で頷く。
あゆみ「何で3組の人は私のことを嫌っているのでしょうか。」
菜月「思い浮かばないわね。坂上さんが3組に行ったことは?」
あゆみ「2組はありますけど、3組と4組はないですよ。」
菜月「なら、私が行くわ。」
あゆみ「それじゃあ、お願いします。」
榊原先生が襖を開ける。部屋の中にいた人が一斉に榊原先生を見る。
菜月「パニックを起こしていないか見回りに来たけど、大丈夫そうね。それだけ元気なら、部屋の中でもできる訓練をやろうかしら。」
「だ、大丈夫じゃないです。」
菜月「そう。なら、静かに待つべきね。五月蠅くしていると指示が通らないわ。」
「「「は、はい。」」」
榊原先生が襖を閉める。
あゆみ「鮮やかですね。」
菜月「高校生に負けては先生の名が廃るわ。」
私達は4組に移る。
あゆみ「こ、これは…。」
青い髪の眼鏡をかけた女の子がどんよりとしたオーラを発していて、部屋全体を包み込んでいている。
あゆみ「一体、何が?」
田嶋「ああ、気にしないで。いつものことだから。」
あゆみ「いつものことって、どういうこと?」
田嶋「ちょっと外に出ていいかしら?ここじゃ話しづらい。」
菜月「ええ。」
私と榊原先生と4組の子が旅館の外に出る。
田嶋「私は田嶋
あゆみ「1組のクラス委員の坂上あゆみです。」
田嶋「で、さっきのどんよりした空気を醸し出しているのが日本の代表候補生の更識簪さん。」
あゆみ「え、代表候補生?」
田嶋「うん。専用機もあるんだけど…。」
あゆみ「え?じゃあなんで今回の作戦に加わってないの?」
専用機持ちは全員招集されたはずだ。
田嶋「その専用機、開発が凍結されて、未完成状態なんだ。」
あゆみ「そうか、それで色々思うところがあるんだね。」
田嶋「そう。だから、そっとしておいて欲しい。」
それは私のモットーに反する。
あゆみ「私の辞書には、『困っている人を放っておく』、という文字はないんだけどなあ。」
田嶋「初めは皆そう思った。だけど、誰一人、彼女の力になれなかった。当然だよね。専用機を完成させるのは、そんな簡単なことじゃないから。」
あゆみ「成程…。」
となると、今の私に出来ることはない。とは言っても、完全な放置は良くない。
あゆみ「よし、今は非常事態だからこの件はこれで終わりにするよ。でも、彼女に伝えて。もし私の助けが必要なら、何時でも言ってほしいって。」
田嶋「分かった。でも、彼女は他人の助けを拒んでいるから、必要ないと思うけどなあ。」
あゆみ「?どういうこと?」
田嶋「それは私にも分からない。話してくれないから。」
あゆみ「そっか…。」
そこに、セシリアさんと鈴さんが駆け付けてくる。
セシリア「ここにいましたか。」
鈴「探したわよ。」
あゆみ「2人共どうしたの?」
セシリア「あゆみさん、直ぐに来てください。」
鈴「あゆみにも作戦に加わって貰うわよ。」
あゆみ「分かった。榊原先生、後はお願いします。私、行かないといけません。」
菜月「ええ。私に任せて、坂上さんは坂上さんのやるべきことを全うして。」
私達は管制室へ行く。
田嶋さんがさっきの子を連れて行ってしまった。話をしたかったのに…。
田嶋「ただいま。」
簪「さっきの子は?」
田嶋「更識さんのことを話したら、この場は引き下がるって。」
簪「どうして。」
田嶋「だって、更識さん、誰の助けもいらないって…。」
簪「あの子は別。私はあの子と話をしたかったのに…。」
田嶋「え!?」
しまった、私の取った行動が裏目に…。
簪「どこに行ったの?」
田嶋「何か、作戦に加わるみたい。だからどこか行っちゃったよ。」
簪「そんな…。」
うう、なんでこうなるの。折角のチャンスだったのに…。
田嶋「だ、大丈夫だって。またチャンスはあるよ。その子簪さんの事興味あるみたいだし。」
簪「今度連れてきて。」
田嶋「それくらいは自分でやらないと。」
簪「意地悪…。」