戦わない最強戦士   作:223系新快速

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第64話 簪さんの恨み節

~管制室~

千冬「更識、説明するぞ。」

 

簪さんが僅かに頷いたのを見て、織斑先生は改めて説明する。

 

千冬「という訳だ。さて、どうする?辞退しても構わんが。」

簪「…ないで、下さい。」

千冬「ん?」

簪「ふざけないで下さい!」

 

最強なら本来最前線に立たないといけないのに、この人は一方的に指示を出すだけだ。そんなのは力に自惚れているだけ。

 

一夏「てめえ、千冬姉になんて口利くんだ。」

簪「アンタにだけは言われたくない!」

 

 

簪さんが織斑君に殴りかかろうとする。

 

バシィ

 

私が受け止める。

 

簪「止めないで、坂上さん。」

あゆみ「簪さん、落ち着いて。どうしてそんなに怒っているの。」

簪「坂上さんには関係ない。」

あゆみ「じゃあ、さっきの約束は無しでいいかな。」

 

それは嫌だ。坂上さんは相手が誰であろうと、心優しきヒーローのように話を聞いてくる。折角友達になったのに、別れるのは嫌だ。私は手を引っ込める。

 

あゆみ「フウ。危なかった。」

一夏「別に助けろなんて言った覚えはないぞ。」

鈴「織斑、助けてもらっておいてその言い草はないでしょ。」

あゆみ「うーん、織斑君を助けるというよりは、簪さんを助ける意味合いの方が強いかな。」

簪「私を助ける?どういうこと?」

 

ヒーローものだと、悪堕ちした私から彼を助けるのが普通だ。でも、彼女は違う。これって…。

 

あゆみ「一言で説明するのは難しいよ。後でね。」

簪「分かった。」

あゆみ「それで、カッカした理由は?」

簪「さっき私は招集されなかった。それを専用機持ちじゃ対応できないからって今更招集するのは筋が通っていない。」

あゆみ「成程。じゃあ、私が最初からいればそうはならなかったね。」

簪「どういうこと?」

あゆみ「最初簪さん以外の専用機持ちが集められていた。一方、私は作戦に加わることは出来ないけど、自分に出来ることを探した結果、見回りをしていた。その時、私は簪さんを見つけた。どんよりしているから、声を掛けて落ち着かせようとしたけど、田嶋さんが間に入ったからどうも上手く行かなかった。」

簪「じゃあ、あの時…。」

あゆみ「うん、私は簪さんが良ければ話をしようとしていたよ。」

 

やっぱり凄い。坂上さんは私にとってのヒーローだ。

 

あゆみ「で、その後、いい作戦が思いつかなくて、私も招集。それで、私がこの作戦を提案したら、採用することになって、簪さんを追加で招集したって訳。」

簪「成程。つまり、ここにいる人は、全員坂上さんより弱いってことか。」

 

 

簪さんが眼鏡を光らせる。

 

一夏「てめえ、千冬姉を馬鹿にするな!」

 

織斑君が反論する。先生達も声こそ出さないが、簪さんを睨む。織斑先生と専用機持ちだけは何とも言えない顔で簪さんのことを見ているけど。

 

簪「じゃあ、一般生徒を招集しなければならない状況になっているのはどうして?普通教師が対処するよね。出来ないってことは、つまりそういう事。」

 

仲間割れや無能集団はヒーローものの敵組織でよくある話だ。

 

あゆみ「簪さん、そういう歯に衣着せぬ言動は敵を作るよ。」

簪「別にいい。誰も私の味方をしないから。」

 

正義は孤独だ。

 

 

あゆみ「でも、それだけじゃ織斑君に殴りかかる理由にはならないよね。どうしてかな。」

簪「私の専用機が完成していないのは彼のせいだから。」

 

汚物を見るような目で織斑君を見る。

 

一夏「何で俺のせいなんだよ。」

簪「彼の専用機を完成させるのが優先されて、私の専用機の開発は凍結された。」

一夏「それは俺のせいじゃないだろ。」

簪「だからって、日本代表候補生の私の専用機の開発が凍結されるのはおかしい。」

一夏「それはお門違いだ。」

千冬「やれやれ、取り敢えず、時間がないから喧嘩は後だ。更識、どうする?」

簪「私は辞退します。誰も私に命令する資格はありませんから。」

一夏「てめえ!」

千冬「織斑、やめろ。」

 

織斑先生が織斑君を止める。

 

千冬「更識、お前も煽るようなことを言うな。」

簪「フン。」

 

簪さんはワザと聞こえるように言って部屋を出ようとする。

 

あゆみ「簪さん、一言だけ。」

簪「何?」

あゆみ「この臨海学校が終わったら、私とゆっくりと話し合おう。」

簪「うん。私が信じられるのは坂上さんだけだから。」

 

坂上さんだけは私の味方をしてくれる。

 

 

簪さんは少しだけ表情を柔らかくすると部屋に戻っていった。

 

鈴「何よあれ。口の利き方を知らないようね。」

箒「礼儀を知らないな。同じ日本人として恥ずかしいぞ。」

あゆみ「うーん、心を閉ざしている人の典型例だね。まあ、私が何とかするよ。」

一夏「何するんだよ。」

あゆみ「私はカウンセリングの資格を持っているんだよ。だから、悩んでいることについて相談に乗る。」

千冬「ん、そうしろ。今のところ、更識が心を開いているのはお前だけのようだからな。」

あゆみ「相当辛い目に遭ったみたいですね。」

 

プリキュアになった者やその関係者の中にも、心を閉ざしている人はそれなりにいたけど、あそこまでの人はいなかった。

 

 

田嶋「あ、更識さんお帰り。なんか機嫌良いね。どうしたの。」

簪「坂上さんと話をする約束を取り付けた。今日はもう寝る。」

田嶋「え、まだ10時だよ。」

簪「今日はこれ以上何も起きてほしくない。寝ていれば回避できる。」

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