国津さんの言う通り、篠ノ之博士が仕組んだというのが可能性としては一番高い。でも、ここで堂々と、それも言い切るというのは、底なしの怖いもの知らずだ。
一夏「国津、勝手なことを言うな。」
「そうよ、勝手に犯人を決めつけるのは冤罪の元よ。」
玲美「だって、篠ノ之博士の行動がおかしすぎるから。むしろそれ以外の可能性があるなら言ってほしいよ。坂上さん以外、何にも考えずに只撃墜することだけを見ていたから、相手の考えとか、目的とか、全く議題に上がっていない。まずそこからだよ。」
誰も反論できないのか、黙ってしまう。
玲美「整理して考えよう。まず、篠ノ之博士がこの臨海学校にやってきたのは、篠ノ之さんに赤椿を渡すため。これは分かる。でも、デモンストレーションに坂上さんを選ぶのはおかしい。だって、訓練機相手に第四世代機が勝つなんて、世間一般からすれば当たり前だから。」
あゆみ「そうだね。でも、専用機持ちじゃ負けるのは目に見えているよ。」
玲美「そう。だからって、専用機持ちは基本訓練機に乗らない。だから、誰かを生贄にする必要があるけど、ここで博士がポカをして、坂上さんを選んでしまった。結果、とんでもない機動力で篠ノ之さんを振り回し、降参させてしまった。凄さを見せつけるはずが、最新鋭機(笑)になってしまった。」
あゆみ「うん。でも、国津さんならどうする?私にはちょっと思いつかないよ。」
玲美「玲美なら、仮想敵を出させて、それの撃破速度の差を見せるね。単純な機動力と破壊力は高いんだから、操縦者の未熟さを隠せるよ♪」
あゆみ「成程。」
玲美「で、模擬戦で負けた後、姿を消したと思ったら、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が暴走。幾ら何でもタイミングが良すぎる。しかも、何で在日米軍も自衛隊も動かないのかな。」
千冬「それはだな、これだ。」
織斑先生がとある映像を見せる。
千冬「アメリカの軍用機が対処している様子だ。だが、振り切られてしまい、幾ら軍用機でも第二世代機だと対応不可だということで、第三世代機が多数所属するこの学園に要請した。」
玲美「プッ、世代差なんて関係ないってこと、坂上さんのお陰でこの学園では常識なのにね。」
あゆみ「うん。それだけじゃないけどね。」
玲美「どうしたの。」
あゆみ「軍隊だから連携の訓練はしているはずなのに、全然連携が取れていない。いや、取ろうとしていない。これじゃあ勝てるものも勝てないよ。」
まるでお互いが信じられないという感じだ。そんなので暴走機を止められる訳がない。
玲美「本当にISが世界最強の兵器なのか疑いたくなってくるよ。」
千冬「話が脱線しているぞ。」
玲美「次、散々作戦会議に割り込んできたくせに、坂上さんの提案した上手い作戦を聞いた途端逃げ出した。自作自演の作戦を自分で潰すことになるんだから、当然だよね♪」
シャルロット「なんのために?」
玲美「どうせ赤椿の性能を示したくてやったんだと思う。」
箒「姉さん、そんなことしなくても私は私のペースでやっていくのに...。」
玲美「そうだよね。どれだけ機体性能が良くても操縦者が扱いこなせなければ意味ないのに。」
千冬「で、結局何が言いたいのだ。」
玲美「こんな作戦、やる意味なしだよ。暴走機は放置して問題なし。織斑先生、篠ノ之博士の自作自演と判明したため対処の必要なしって報告してください♪」」
まさかやる意味がないと言うとは思わなかった。
千冬「はあ、坂上も大概予想のつかない事をするが、お前はそれ以上だな。」
一夏「国津、それだと学園が対処しなかったってことで非難されるだろうが。」
玲美「全然その可能性はあり得ないよ。」
一夏「どうしてだよ。」
玲美「まず、篠ノ之博士が何もしない場合だけど、本来こういう事態に対処するのは在日米軍。それなのに動きがない。普通身内の不始末は自分達でやるよね。在日米軍が動かないなら彼らの責任で、私達が非難されることはない。それに、篠ノ之博士が勝手にやったから、篠ノ之博士も責任がある。」
ラウラ「篠ノ之博士が否定したらどうするんだ。」
玲美「状況的にこちらが有利だから裁判を起こせば有罪確実。」
千冬「やれやれ、コアを作れるのは束だけだぞ。」
玲美「コアを作れるのが自分だけって言っても、もう何年も作ってないから無いに等しい、ってコケにすれば大丈夫。」
鈴「おちょくるのが前提なのね。」
玲美「うん。こういうのは真面目にやるより、相手を挑発しまくる方が良いんだよ。」
千冬「国津、束相手に出過ぎたことをすると刈り取られるぞ。口を慎め。」
玲美「何言っているの。寧ろドンドン言うべき。」
千冬「どういうことだ。」
玲美「力で敵わない相手に対しての精神攻撃は基本。天才は馬鹿にされることや失敗することに慣れていないから、カッカして冷静さを失うか、打たれ弱くて自信喪失するかのどっちか。」
鈴「えげつないわね。」
ラウラ「あゆみが以前言っていた精神攻撃って、こんな感じなのか…。」
あゆみ「うん、そうだよ。これくらい苛烈だよ。」
夢の世界で心地よい夢を見させて目覚めさせないとか、自分の過去の過ちを晒されるとか、心の中にある闇を抉り出されるとか、一般人なら耐え切れない内容ばかり。
玲美「ま、万が一にも篠ノ之博士が対処したら、自分の不始末を自分で片付けたことになるから、それはそれでこちらには問題ない。いずれにしても、平常心を失った相手の攻略は容易いよ。」
そこに、
ガラッ
篠ノ之博士が飛び込んできた。