救命室では、引き籠り兎が悲しみに暮れている。
束「何だよ。笑いに来たの。」
玲美「当然♪」
束「人の不幸を何だと思って…。」
玲美「アンタにだけは言われたくないね♪」
あの時受けた屈辱、死んでも忘れない。
束「束さんのいっくんハーレム作戦は完璧。それなのに、アイツのせいで…。」
玲美「最初から破綻しているよね、その『いっくんハーレム作戦』♪」
束「凡人が言うんじゃないよ。ISを動かせる男はいっくんだけにして、IS学園入りを決定事項にする。そして、女の子しかいない学園で男が一人いれば、いっくんが望もうが望むまいがハーレムは確定路線。隙は無い。」
玲美「成程、玲美が見ても完璧な計画だよ。普通に見ればね。」
そう、普通に見れば。
束「そうだよ。それなのに、あんなイレギュラーな存在のせいで、いっくんはハーレムを築けず、挙句の果てにこんな重傷を負った。しかも箒ちゃんまで誑かした。」
玲美「馬鹿馬鹿しい。単純に彼の実力不足だよ。」
束「何でだよ。」
玲美「だって、彼はこの後玲美達に敗北するんだから。皆を守るとか言っているけど、自分の身も守れない奴に出来るわけがないよね♪」
束「いっくんと白式が訓練機如きに負けるはずがないよ。」
玲美「プッ、こっちは彼の能力を完全に解析済み。どう動くか100%分かるよ。」
束「いっくんはこの世界の救世主たりうるんだよ。それくらい乗り越える!」
玲美「随分とご都合主義だね。自分は理論でガチガチに固めているくせに、彼にはそういうデータを否定するようなことを言うんだ。データを超えるのは、成長速度がこっちの予想を超えるか、意外性がありすぎて予測不能なタイプ。彼はテンプレ過ぎて5分で解析終わったし。」
束「じゃあ、アイツはどうなのさ」
玲美「彼女は懐が深すぎて、次に何をしてくるのか全く予想が付かない。例え分かっても、データでは覆せない力の差がある。」
あの日、玲美はそれに絶望した。
束「フ、フン、例え弱くても、ISを動かせる男ってだけで、女は放っておかないよ。」
玲美「そうだね、殺しにかかるね。」
束「な、なんで殺しにかかるのさ。」
玲美「女性権利団体は男なら誰であろうと見下している。男がISを使えるとなれば、自分達の立場が危うくなるから、どんな手を使ってでも抹殺しにかかるよ♪」
束「そんな奴、片っ端からこの束さんが排除する。」
玲美「無理無理。組織と繋がっている奴は通信履歴を見ればいいかもしれないけど、隠れシンパは見つけようがない。こういうのはある日突然ドカンと火を噴くから防ぎようがないよ♪」
言ってみれば自爆テロを全部防げと言っているようなものだ。出来るわけがない。
束「フン、そうじゃない一般の女どもはいっくんに惚れるよ。」
玲美「それも無理。だって彼は超が付くほどの唐変木だから。」
束「何だよ、それ。」
玲美「女の子の恋心が分からないってこと。ハーレムを築く上では致命的欠点。よくこんな性格でハーレムを築かせようと思うね♪」
束「フン、いっくんだってそのうち気付くよ。そうなったら、箒ちゃんだってあっという間に元の鞘に収まる。」
玲美「無理無理。だって、篠ノ之さんが坂上さんの元に走った理由を知らないんだから。それに、1組は全員彼の敵だよ♪」
束「何でだよ。」
玲美「だって、ことあるごとに突っかかるのに、全部一方的に間違っているから。坂上さんが気が長いからあれこれ言わないだけで、普通なら大喧嘩になっているよ♪」
というか、何で放置するのかが分からない。言い返したところで誰も非難することはないのに。
束「じゃあそいつはどうなのさ。」
玲美「誰にでも優しくて、凡そ読めないことはないんじゃないかってくらい人の心を読むよ♪しかも自分からは決して出しゃばらないけど、やるときはやる。贔屓目に見て、恋人がいないのがおかしいくらいの優良物件。玲美が男だったら玉砕覚悟で、速攻で告白する。」
この女尊男卑がはびこる世界であんなに他人のことを気遣える人がどれだけいるだろうか。しかも、自分の意見を押し通せるだけの実力も兼ね備えているとなると…。
束「箒ちゃんはどうして落ちたのさ。いっくんの事しか考えていなかったから、IS学園に入学できるように束さんが色々手を回したのに。」
玲美「坂上さんは普通に篠ノ之さんと彼との恋を応援しただけ。なのに、彼が醜態をさらし続けたから、愛想をつかした。で、彼女の優しさに惚れて陥落。」
束「だったら、何としても箒ちゃんを元の鞘に納める!」
玲美「無理無理。篠ノ之さんは坂上さんが失態を晒さない限り見限らないけど、彼女は失敗することはあり得ても、醜態を晒すことはまずしないね。」
束「チッ…。こうなったら…。」
一夏「た、ばねさん…。」
束「いっくん?」
いっくんが目を覚ました。
一夏「た、束さん!」
束「いっくん、どうしたの!?」
いっくんが物凄く震えている。
一夏「束さん、俺はどうすれば…。」