癒子「私は元々はごく平凡な女の子だったの。会社勤めのお父さんとお母さんに兄が一人いて、平凡だけど幸せな毎日だったの。」
清香「フーン、じゃあこのままこの生活が続いてほしいと思っていたんだ。」
癒子「そうなの。でも、ある日突然それが壊れたの。」
清香「何故?」
癒子「ISの出現と、それに伴う女尊男卑なの。」
玲美「玲美の場合は男女が一緒に遊ぶことが減ったけど、癒子はどうなったの?」
癒子「お母さんは女性権利団体の支持者になったの。お父さんはそういう差別を嫌っているから夫婦喧嘩が増えたの。」
玲美「うわ、およそ考えうるうちで最悪なやつじゃん。」
玲美の言う通り、この手の差別は家族も簡単に引き裂く。でも、実際に体験するか、身近な人がそうならないと実感が湧かない。
清香「それで、どうなったの?」
癒子「お父さんとお母さんは離婚して、お父さんは兄を連れてどこかに行ってしまったの。それ以降、音信不通なの。」
静寐「まあ、そうなるわね。」
ナギ「兄はどうだったのだ?」
癒子「兄は私の気持ちをちゃんと理解していたけど、お父さんは私が女尊男卑予備軍だということで、連絡を許さなかったの。」
ナギ「うーん、仕方ないな。」
癒子「癒子もお父さんの気持ちは痛いほどわかったの。癒子も同じ立場だったらそうしていたに違いないの。」
玲美「だね。」
癒子「でもやっぱり癒子は嫌だったの。また、元の仲の良い家族になって、幸せに暮らしたいの。」
ナギ「それで、どうしたんだ。」
癒子「最初は復讐するつもりだったの。自分の家族を引き裂いたISを全部壊せば何とかなると思ったの。でも、それは辞めたの。」
ナギ「何故だ?」
癒子「私の下級生にISで宇宙に行くことを夢見ている人がいたの。その人の夢を聞いたら、壊すのは何だか違うような気がしてきたの。」
その通りだ。皆忘れているけど、ISの本来の用途は宇宙に行くためのパワードスーツなのだから。
癒子「そうなの。それで、次に考えたのが、ISを誰でも使えるようにすれば、女尊男卑も消えるということなの。」
静寐「進化すれば男性にも使えるようになるかもしれないものね。」
癒子「そうなの。でも、どうすれば男性が使えるように進化するか分からないし、まずISに確実に関われないといけないの。確実なのはIS学園だけど、倍率一万倍の超難関校なの。」
ナギ「全く、気違いじみてるよなあ。」
玲美「玲美もおかしいと思ったんだよ。だって日本人の年齢別の人数で2006年生まれの女性は約50万人。定員が120人だから理屈上は全員通るはずだから。」
静寐「玲美、海外からも来ることを忘れているわよ。」
玲美「そう。そこで、そっちも考えた。戸籍が正確な国は少ないから概算だけど、まあ一学年で女性は約5000万人。全人口の2%が志望すれば一万倍になる。」
癒子「そうなの。そこで、勉強を始めたの。絶対に通るために、遊びは止めて、朝から晩まで必死にやったの。」
静寐「良くお母さんが許可したわね。」
癒子「本心は隠して、只IS操縦者になりたいって言ったらあっさり認めてくれたの。きっと自分の権力を引き継いでくれると思っているの。」
静寐「違いないわね。」
癒子「そうなの。何が何でも合格させようと、参考書をどっさり買ってきたの。内心は複雑だったけど、今は文句を言ってる場合じゃないからとにかく頑張ったの。それに、もう一つ理由が出来たの。」
清香「なになに?」
癒子「私の頑張りを見て、さっき言った下級生の子も頑張り始めたの。それで、ますます落ちることは許されなくなったの。」
ナギ「そうか、後輩に無様な姿は見せられないってことか。」
癒子「そうなの。だから、合格通知が来た時は嬉しかったの。元に戻すための一歩が踏み出せたの。」
このシリーズはここまでとなります。