立花書店の店主、誠からガンバライダーについての話を聞き、改めて自分の戦いについて考え始めた圭吾は記者を名乗る女性のの来客に遭遇しながらも出現したバグの対処にあたっていた。
コンボチェンジという今までのバグが使ってこなかった戦法により苦戦を強いられバグは逃走、変身解除したところを写真に撮られた後どこかへ連れていかれてしまう。
彼を連れ去ったのは、ガンバライジング社の正面玄関で見た記者、伊澤瞳その人だった……
「ちょっと、離してください!」
状況が全く掴めない中で手を引かれ続けていることに痺れを切らした圭吾は強引に手を振りほどいた。
「なんなんですかあなた!アポも取らずに会社に来たと思ったらこんなことして」
「いいからついてきて、あとアポは取ってましたから」
「さっきからそればっかりじゃないですか!せめてどこに連れてくのかくらい言ったらどうなんです!?」
「あーもう、うるさいなぁ!すぐそこのファミレスですよ!」
「だったら手引かないで最初から言えばいいじゃないですか」
「普通に考えたら逃げるでしょ!?」
「当たり前ですよ!?」
往来のど真ん中で圭吾と瞳は言い争いを始め、そばを通る通行人から訝し気な視線が向けられた。
「あんまり見られるのは厄介ね……ほら行きますよ!」
「だァーッ!わかりましたよ行けばいいんでしょ行けば!」
これ以上の押し問答は意味を成さないと感じたのか、圭吾はしぶしぶファミレスへと向かうことにしたのだった。
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ファミレスに着いた瞳は店員に声をかけた。
どうやら先客がいるらしく、事情を説明したのちすぐに席に通される。
店員に案内されるまま奥のテーブル席まで歩いていくと、1人の青年が座っていた。
その人物は圭吾にとっても関係のある人物だった。
「ごめんね、この人なかなか話聞いてくれなくてさ」
「遅かったな」
「は?なんでお前がここにいるんだよ」
「わからないか?瞳をここに呼んだのは俺だ」
「はァッ!?」
そこにいたのはブリザードの適格者、宮原裕樹だった。
まさかの繋がりに圭吾は思わず素っ頓狂な声を上げながら机を叩いてしまい、周囲の目線が一気に突き刺さる。
(こんなことさっきもあったな……)
そんなことを考えながら圭吾は周囲に対して頭を下げながら席に座った。
「え?裕樹君この人と知り合いなの?」
「知らないな」
「しらばっくれんな、お前こそこの人と知り合いなのかよ」
「ところで怪物の写真は?」
「無視かよ!」
「バッチリ撮れたよ!」
瞳は手元のカメラを操作して先ほどの戦闘の際に撮ったであろうバグの写真のデータを裕樹に見せる。
横からそのデータを覗き込むとかなり鮮明に写ったバグの写真とバグと戦っているファイヤーの写真が何枚も残っていた。
「ちょっ!?消して下さいそれ!」
「じゃあ俺はこれで。情報料はまた後で」
「あっ、おい!」
カメラを瞳に返した裕樹は席を立ち、千円札を置いてファミレスを出た。
それと入れ替わりになるように店員がやってくる。
おそらく圭吾と裕樹が一悶着している間に瞳が呼び出しボタンを押したのだろう。
「ご注文お伺いします!」
「えーっと、私はナポリタン。君は?」
「飲み物だけで大丈夫です、長居する気ないんで」
「じゃああとドリンクバー2つで」
「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ〜」
「飲み物取ってくるけど、何がいい?」
「……ホットコーヒーで」
「オッケー、ちょっと待ってて」
オーダーを聞き店員がキッチンへと下がったのを確認すると瞳はおもむろに立ち上がりドリンクバーのコーナーに向かった。
こうしている間に自分が逃げたらどうするのだろうと、ぼんやりと圭吾は考えていた。
だが、写真の一件もある。
下手に刺激すれば、さっきの写真をばらまかれてバグの対処どころの話ではない。
「はい、お待たせ」
どちらにせよ見極める必要がある、そんなことを考えていると戻ってきた瞳がテーブルにカップを二つ置き、向かい合う形で座り直した。
「飲み物取りに行ってる間に俺が逃げるとか考えなかったんですか?」
「君、そういうこと苦手そうでしょ?」
(もう行動読まれてるし……)
ふと思い立った疑問を投げかけてみるが、まるでこちらの出方をわかっているような口調に思わず苦虫を噛み潰したような顔になってしまう。
「……あなたは何がしたいんですか?」
「私は彼に頼まれてるだけだよ、そのために協力者を増やしたいだけ」
「協力者?アイツが頼んだんですか?」
「そう、少なくとも私は彼の目的に協力してる」
「お待たせしました!ナポリタンになります!」
「あ、私のです!」
「ごゆっくりどうぞ~」
店員がキッチンに下がったのを確認し、運ばれてきたナポリタンに瞳が手をつける前に、圭吾は話を切り出した。
「教えてください、あなたの知ってるアイツのこと」
「……裕樹君は、恋人を探してるの」
「恋人?」
「彼とは昔からの知り合いで高校の後輩だったんだけど、その時にお付き合いしてた子がいたの。名前は牧野鈴穂」
そう言いながら瞳はスマホを操作して画面をこちらに差し出してきた。
画面の中には制服を着た快活そうな女の子がピースサインをこちら側に向けている。
どうやらこれが裕樹の彼女の牧野鈴穂という女性らしい。
「鈴穂ちゃんとは高校卒業してからもちょくちょく連絡を取り合ってたんだけど最近は忙しいのか連絡も途絶えちゃってね。そんな時だったの、裕樹君から連絡が入ったのは」
「アイツから?」
「うん、鈴穂ちゃんが突然行方不明になったって」
「行方不明?」
予想外なワードの登場により圭吾は声のボリュームを落として聞き返してしまう。
「久しぶりに裕樹君から連絡あったと思ったら鈴穂と連絡取れなくなったって。あんなに焦った裕樹君初めて見たなぁ……」
「喧嘩別れとかじゃ?」
「あの2人に限ってそれはない、ものすごく仲が良かったから」
「それで、情報収集を?」
「そのころには就職してたから、そのついでにね」
「でも、危険じゃないですか。万が一襲われでもしたら……」
「そういう時のために君がいるんでしょ?」
圭吾は思わず黙ってしまう。
記者という立場上仕方ないのかもしれないが、こちら頼みというのはあまりにも危険かつ無責任な発言であった。
「……とにかく、これ以上はもう関わらないでください。万が一のことがあったら困りますから」
「それは仮面の戦士の正体がバレること?」
「貴方が怪我することです」
「……そう」
「コーヒーごちそうさまでした」
もう話すことはない、そんなニュアンスを込めながら毅然な態度でそう言い放つと圭吾はドリンクバー代をテーブルの上に置いてファミレスを出て行った。
「正体よりも私の心配か……」
利用されていたはずなのに、「関わるな」と言ってきた圭吾の目はどこまでも真っ直ぐだった。
少しだけ罪悪感を覚えながらも瞳はテーブルに置かれた紅茶を飲み干す。
すっかり冷めてしまった紅茶が喉を通る感覚が、なんとも嫌に思えた。
「さて、これどうしようかな……」
ファミレスから少し離れた路地で、瞳はカメラに残った写真データを見返していた。
思わぬところから転がってきたガンバライダーの正体、しかしこれをいたずらに世に出してしまうのは圭吾の信頼を地の底まで落とす行為だった。
最も、彼にとっても現状の瞳の好感度が高いとはいえないわけだが。
喉から手が出るほど欲しかった情報のはずなのに彼女の心は逡巡していた。
「あの、落としましたよ?」
「あぁ、ありがとうございま……?キャッ!?」
なにか落としただろうか、突如かけられた声の方向に振り向くがそこには誰もいなかった。
不気味に思いながらも前を向こうとしたとき、瞳の視界は一瞬にして横に揺れ、口を手で覆われていた。
「んー!んーっ!」
「おっと、下手に動くなよ。どうなるかわかんないぜ?」
「んっ……」
「へえ、意外とお利巧だな」
恐る恐る振り返るとそこにはフードを被った青年が首元にガシャコンバグヴァイザーの銃口を突き立てている。
裏路地へと誘い込んだのはシャドーだった。
「あなた、だれ……?」
「そうだな、アイツらにはシャドーで通ってるからそれでいいか」
「シャドー……?」
「あぁ、神出鬼没のシャドーさんだ」
「何が、目的?この写真?」
「その写真なら意味ないぜ、だって俺アイツらの正体知ってるし」
「じゃあなんで」
「記者が嗅ぎまわってるのは面倒だから、口封じさせてもらいに来たってわけ」
首元に突き付けられた銃口と口封じというワードとから察するに、それが示しているのはおそらく暗殺、明確な死への恐怖で瞳の身体は小刻みに震えだす。
その光景を見たシャドーは高らかに笑いだし、その後何かを思いついたような悪い顔をした。
「ッククク、ハハハハハッ!いいねぇ!その恐怖に歪んだ顔!ちょうどいい!頼まれごとがあって、実験台が欲しかったんだ。アンタに協力してもらおう」
直後、路地裏から一筋の光が漏れたがそれに気づいた者は誰もいなかった。
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数日後
「寒……」
12月に入ったこともあり、先週までとは打って変わって気温がぐんと下がっていた。
瞳との待ち合わせのため日出出版に訪れていた圭吾は手に息を吹きかけながらバイクにもたれていた。
もう会うことはない、と断っていたのだがメッセージで写真の一件をチラつかされ来ざるを得なくなったわけである。
しかし待ち合わせの時間になっても事前に約束していた正面玄関には一向に現れない。
玄関先で見慣れないバイクに寄りかかり近くの自販機で買った缶コーヒーを手の中で遊ばせながら周囲を見回している圭吾は傍から見るとどう見ても不審者のそれであり、そばを通った男性にやや怪訝そうに声をかけられる。
「あの、うちに何か?」
「えっと……もしかして日出出版の方ですか?」
「そうですけど」
「えっと、社会部デスクの伊澤さんと会う約束をしてたんですけど」
「伊澤さん?一週間くらい会社来てないですけど」
「え?」
「連絡しても誰も通じないみたいで」
「わかり、ました……」
突然告げられた瞳の不在、連絡も一切通じていないという部分が圭吾の中で不安を大きくさせ、気づいたときにはガンバライダールームに連絡を入れていた。
「田沼さん、調べてもらいたいことが」
そこまで言った瞬間に通信先が騒がしくなる。
その音の正体はここ数ヶ月ですっかり聞き慣れてしまったバグ出現のアラートだった。
『第6地区C-33地点にバグ出現!周辺に交通量の多い交差点あり、即時避難誘導入れろ!』
『赤谷くん、何か言いかけてたけどとりあえずそのことは一旦後回しね』
「わかってます、ひとまず現場に向かいます!」
通信を切り、圭吾は寄りかかっていたガンバストライカーに跨ると現場へと急行した。
現場に着くと爆発の中心にオーズのバグとフードを目深に被った青年が立っていた。
一瞬逃げ遅れた人という可能性が脳裏をよぎったが、それにしてはバグが攻撃を加えるような素振りはなく、ただ隣に立っているだけだ。
警戒の色を強めながら圭吾は青年に対して声をかける。
「貴方は、一体……?」
「よう、意外と早かったな」
「その声、まさかシャドーか!?」
「ビンゴ!この姿で会うのは初めましてだな」
「今回もお前の仕業か!」
「毎回そう思われてんのは気に食わないが、まぁそっちも正解ってことにしとくか」
「ウゥァ……」
「またバグを……お前の目的は一体何なんだ!」
「俺はただ戦いを楽しんでるだけさ。これまでも、これからもな」
そう言ってフードの青年は懐からガンバドライバーを取り出し腰に装着する。
両手を回し、ICカードを持った右手を左肩に、左腕を前に持ってくると何かを握りつぶすようにゆっくりと左手を閉じ、静かに呟く。
「変身」
お決まりのフレーズと共に右手に持っていたICカードをベルトに装填すると、ベルト中心から黒い煙が放出される。
《Into the darkness…… SHADOW!》
ガンバドライバーの物よりも少しくぐもった声でベルトが鳴ると、煙は彼の体を覆うようにして広がり、それを払うように握った左手の拳を体の外側に広げると青年の姿はシャドーへと変化していた。
「さぁ、遊ぼうか!」
「ッ……変身!」
シャドーはゲートからスチームブレードを取り出すと地面を蹴り圭吾へと肉薄する。
咄嗟にベルトにICカードを差し込みファイヤーへと変身するがゲートからハンドル剣を取り出したタイミングでスチームブレードとかち合い、勢いを相殺しきれず足の裏から火花を上げながら地面を削っていく。
なんとか足の踏ん張りを利かせにらみ合いの状態へと持っていくが、それを破ったのはバグだった。
「なッ……!」
バッタレッグの跳躍力によって一瞬にして間に割って入りファイヤーに絡みつくと、床をゴロゴロと転がるようにしてシャドーから距離を離していく。
その隙にシャドーはゲートからブレイクガンナーを取り出しバグもろとも発砲して来る。
「くッ、やりにくい……ッ!」
圭吾は仮面の下で唇を噛む。
まずはこの状況をどうにかしなければならない、そう思いファイヤーは組み付いたバグを引きはがすと巴投げの要領で壁のある方向へと弾き飛ばした。
だが、壁に打ち付けられたバグはなぜか壁に向かってトラクローで傷をつけていた。
明らかに普段とは違うありえない行動に思わず首を傾げる。
「なんか、バグの様子が変……?」
「お、やっぱわかるもんだな」
「どういう意味だ!」
「実験の一環だよ、あのバグの中には人が入ってる」
「はァ!?」
予想外の返答にファイヤーは思わず素頓狂な声を上げる。
しかし、シャドーとの初戦闘の際も似たような手口でこちらの攻撃の手を緩めてきた、今回も同じ類なのではないかと内心訝しんでいた。
「また適当な嘘言ってるんじゃないだろうな、この前みたいに」
「今回は本当さ、その証拠に」
シャドーがバグに向かって手をかざすと、バグの動きが止まりオーラングサークルの中心が裂け目のように開く。
その中にいたのは行方の分からなくなっていた瞳だった。
「瞳さん!?」
「なんだ知り合いか、それならそれで好都合!」
シャドーは掲げていた手を下ろすと裂け目がまた繋がり、瞳はバグの中へと戻って行ってしまった。
しかし瞳がバグの中に閉じ込められているという事実を知ってしまったファイヤーは、迂闊に攻撃できずにいた。
なんとかシャドーとバグの両者から距離を取りながらハンドル剣をに持ち替えて思考を巡らせる。
今この場で重要なのは被害を最小限に抑えながら瞳を救出すること、そのためには解決策を見定めるだけの時間が必要だった。
「オイオイ、もう終わりか?相変わらず甘ちゃんだな」
「るっせぇ、言わせておけば……」
見え見えの遅延行為にシャドーは残念そうな声を上げながらファイヤーを見る。
これ以上相手をする意味はないとでも言うかのようにスチームブレードのバルブへと手を伸ばすが、その瞬間
「ハァッ!」
「ッ!?」
機会を伺っていたのだろう、突如として背後から現れたブリザードがガシャコンソードを振り下ろす。
しかし気配を感じ取り振り返ったシャドーは即座に振り向くとスチームブレードでガードを取る。
「クッハハ!まさか奇襲をかけてくるとはな!」
「チィッ……!外したか」
「ブリザード!」
「まぁいい、バグの中に人がいるんだってな。その話詳しく聞かせてもらうぞ」
刀身から火花を飛び散らせながらのにらみ合いが続いていたが、膠着していた状況を一変させたのはオーズのバグだった。
「ア、ア、アァァァァァァッ!!!!!」
「「ッ!?」」
それまでのふらふらしていた状態から突如としてバグは大きな咆哮をし、外装がさらに爛れ落ちたような姿へと変貌する。
もはや見境などないのだろう、バグは2人の間に割って入ると展開していたトラクローをさらに一回り大きな物へと変質させ、ブリザードとシャドーの双方に襲い掛かる。
「ッ、瞳さん!聞こえてますか!?」
「暴走の危険性あり、と。これはいい資料になるな」
刃を交えていた両者は一度距離を取り、この不可解な状況にファイヤーは中にいる瞳へと声をかけ、シャドーはなにやら不穏なことを呟きながらバグの攻撃を避ける。
「データは揃った、後はお前らが相手しろ」
「はァ!?」
「ふざけるな、お前が伊澤を」
「ま、どうにかして助ける方法を探すんだな」
そう言うやいなや、シャドーはトランスチームガンから煙幕を放出し二人の目をくらませる。
二人はシャドーを追おうとするがその間にオーズのバグが乱入しそちら側に視線が移った間にまんまと逃げおおせてしまった。
「クソッ!」
「よせブリザード!」
「分離方法が分からないと言いたいんだろ!そんなこと俺も分かってる!」
バグに攻撃を加え続けるブリザードに対してファイヤーは声を荒らげるが、シャドーを取り逃がした腹いせも入っているのかやや乱暴に言葉が返ってくる。
「でもだからっていたずらに攻撃を仕掛ける必要はないだろ!」
「うるさい!邪魔をするなと言っただろう!」
『ファイヤー!ブリザード!』
「藤崎さん!?」
どうすれば助けられるのか、バグと対峙しながら思考を巡らせていると薫から通信が入る。
「教えろ藤崎、どうすれば伊澤を助けられる?」
『目の前にいるバグは普段のものよりも不安定な状態になっています。おそらく外側から覆い被さっているだけで完全に定着しきっているわけではないと考えられます』
「小難しい理屈はいい、どうすれば助けられる?」
『では簡潔に。バグと中の人を切り離すには強制的に裂け目を作ってその隙間から引っ張り出す必要があります!』
「じゃあ、伊澤さんを救える手立てはあるってことですね!」
『ただし、チャンスは一瞬。こちらで出力の調整は行いますが、正直五分五分の賭けです。失敗すれば中にいる人の命はないものと考えてもいいでしょう』
「……わかった。裂け目は俺が作る、その後はお前がやれ」
「お前なぁ、そうやっていつもいつも……」
いつも通りの横暴な態度につい声を荒らげるが、ブリザードの拳は固く握りしめられていた。
それを見たファイヤーは一度溜息を吐くと、思考を切り替えて立ち上がる。
「わかった、タイミングはお前に合わせる」
その言葉を聞きブリザードはゲートからカイザブレイガンを取り出しミッションメモリーを指し込む。
《Ready》
無骨な電子音とともに、黄色の刀身が生成され鈍い音と振動が走る。
《EXCEED CHARGE》
ブレードモードにしたブレイガンのコッキングレバーを引いて撃ち込まれたエネルギー弾はバグの動きを止め、目の前に出現した黄色のX印に向けて走り出したブリザードは残影を残しながらバグを横一文字に斬り抜く。
『今です!!!』
《ボルテックアタック!》
斬り裂いた隙間から瞳の姿が見えた瞬間、薫からの通信が入る。
あらかじめ左足を後ろに引いて前傾姿勢を取っていたファイヤーはラビットハーフボディの力を引き出し、バグへと肉薄する。
一瞬にしてバグの眼前へと迫ったファイヤーはその隙間に向かって手を伸ばした。
「届けェッッッ!!!!!」
隙間が閉じる寸前に瞳の手を掴んだファイヤーはその勢いのままバグの中から引っ張り上げ即座に距離を取る。
少々乱暴に引き抜いたためすぐに瞳の状態を確認するが、幸いにも気を失っているだけで呼吸は正常だった。
中にいた瞳がいなくなったせいか、バグの動きは沈静化しまるでゾンビのように不規則に揺れていた。
「瞳さんは無事だ、決めろブリザード!」
「知り合いが随分世話になったな、これはその礼だ」
仮面の下に隠した静かな怒りを滲ませながらブリザードは顔パーツを裏返す。
《Limiter release! Burst Change!》
バーストパーツのマフラーが装着されるとともに余剰エネルギーが冷気となって周囲に放出される。
その冷気は地面を伝ってバグの足元を凍らせ絶対に逃がさないというブリザードの強固な意思を感じさせた。
一歩一歩バグへと近づきながらブリザードは必殺技を選択する。
《飛翔斬!》
「この力、使わせてもらうッ……!」
《FINAL VENT》
ウイングランサーを携えたブリザードは氷によって拘束されて動けないバグの眼前までゆっくりと近づくと、地面を蹴って飛び上がると同時にダークウイングを背中に合体させる。
「セヤァァァァッッッ!!!」
ダークウイングの翼を体に纏い、バグの直上から回転しながら鋭い円錐状のキックを喰らわせる。
やがてブリザードの足先はバグの胴体に風穴を開け、振り返ることなく爆発四散した。
「瞳さんは黒服の人たちに任せたよ、一回会社で保護してから病院で精密検査してもらうって」
「そうか」
「お前前に言ってたよな、ハズレって。あれってどういうことなんだ?」
「……」
「何とか言ったらどうなんだよ」
「アイツから聞いたんだろ、俺はただ鈴穂がいなくなった理由が知りたいだけだ。もしお前が邪魔をするつもりならその時は容赦なく排除する。それが答えだ」
「……さいで」
ファイヤーとブリザード、お互いに譲れないものを知った二人は遠くからサイレン音が聞こえる中で炎を挟んでお互いを見つめていた。
その溝は、今はまだ埋まらない……。
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数日後、裕樹は日出総合病院に赴いていた。
一度ガンバライジング社にて検査した後、ここに搬送されたと薫から伝えられていたからだ。
病室を確認し扉を開けると、瞳は窓の外に映る景色を見ていた。
「あ、裕樹君」
「もう起きてていいのか?」
「うん、一応精密検査はしたんだけどどこも異常はないみたい」
「そうか」
裕樹の来訪に気付き2人は顔を合わせるが、交わっていた視線はすぐにほどけお互いの間に沈黙が走る。
先に口を開いたのは裕樹の方だった。
「悪かった、危ない目に合わせて」
「いいよいいよ!裕樹君が謝ることじゃないし」
「でも」
「私もさ、鈴穂ちゃんのこと心配なんだから。できることはやらせてよ」
「……ありがとう。でももうバグには関わらなくていい。そっちは俺が探すから」
「……?わかった」
約束に対して首を縦に振った瞳に対して裕樹は安堵しつつ笑みをこぼした。
花束とお見舞いの品をテーブルの上に置き、二、三事話すと裕樹は病室を後にした。
病室から裕樹が去った後、瞳は先ほどから気になっていたことを口にする。
「……バグって、なんのこと?」
病室に一人残された瞳のその呟きは、誰の耳にも届くことはなかった。
ご無沙汰しております。
更新が1年以上滞ってしまいすみません。
次話以降の構想も練り練りしているので気長にお待ちいただけると幸いです。
ご意見ご感想等お待ちしております。