Infinity∞Potential   作:祈手志願者

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今回からRTA実況風に混じって主人公視点も書いていきます。(追記)
題名も変えました。
前回の例のアレは見なくても大丈夫なよう作ります。
でもこの小説の大まかなあらすじを短くまとめたようなものなので
本当は見てほしいぞ♡見ろ(豹変)
あと失踪します


あしたなんかいらない

「お父さん……!お母さん……!」

 

瓦礫の山。

黒煙たちのぼる、街だった場所。

誰かの家だった場所。

 

彼女はそこに居た。

 

「嫌だっ、嫌だよぉっ」

 

死なないで。そう願う。

でも、もう駄目なことは分かりきっている。

どうやっても助けられない。瓦礫の下敷きになっている二人を引っ張り出すことも出来ないし、何より――間違いなく致命傷だ。

目の前で、自分のせいで、死に往く大好きな二人になにも出来ない。

 

「ふぐっ、ひくっ……んっぐ……うわああぁ……んっ、あぁ……」

 

泣いたって、どうにもならない。でも止められない。

どうにか抑えようとしても、嗚咽が漏れ出る。

止めどなく溢れてくる。哀しみとやるせなさ、その発露たる涙も。

母と父も、哀しんでいた。私には分かる。分かってしまう。副作用(サイドエフェクト)。それが否応なしに二人の感情を伝えてくる。私を一人にしてしまうこと、自分たちのために泣く私を慮り、そんな顔をしないで欲しいと哀しむ。それらがない交ぜになって、砂の積もったフローリングを濡らす。

私があの時、恐怖で蹲っていなければ。

私が、崩れて降ってきた瓦礫に気づいていれば。

そもそも、私があの場所にいなければ。

タラレバばかりが浮かぶ。危険が押し迫っているという状況下で、ただただ自分を責め続ける。

 

私が、殺した。

そうだ、お前が、殺したんだ。

 

「も……えか……」

 

切れ切れの声で、お父さんは私を呼ぶ。

目を向けると、ニッコリと笑うお父さんとお母さんが居た。私を安心させるために。

でも、それ以上もう喋らない。もう喋る余裕すら無いのだろう。だけど――

 

『生き延びるのよ、萌香』

 

『生きてくれ、萌香』

 

「……ッ!」

 

頭のなかに響く声。幻聴などではない。

二人の、最期の言葉。願い。

 

「分かった……ごめんなさい、お母さん、お父さん――!」

 

()()を伝えると、二人の瞳から光が消えた。

亡くなったのだ。

その瞳を、彼女は一生忘れることはないだろう。

何故ならそれを見て、悲しむと同時に、薄暗い感情が沸いたのだ。

綺麗な瞳だと。この上なく、美しい芸術とさえ思ってしまったのだから。

それを自覚した彼女は、その場から逃げるようにして走った。

外――もはやそんな仕切りさえない家の状況だったが――に出る。そして否応なしに見える景色。

白い1つ目の化け物。小さい奴と大きい奴。それらが家や、ビルを薙ぐように、紙細工のようにぐしゃぐしゃにしていく。あちこちで火災も起きているようで、黒煙がもうもうとあちこちで上がる。

立ち止まってなんかいられない。ここに居たら危険だ。避難所に向かって走る──

 

「うっ――!?」

 

そうだ、そうだった。私の、副作用は。

他人の感情を――知ることが出来る――

 

『助けてくれー!――』

 

『なんでだよ……!なんでこんな目に会わなきゃ――』

 

『こわい……こわいよ……パパ、ママ――』

 

『弟が!まだ弟がいるんです!――』

 

『おい!金目のもんはあったか!……よし!ずらかるぞ――』

 

『嫌ァぁぁあ!瑠美ちゃんゥ――』

 

『どうせ死ぬなら、なぁ?へへ――』『ヒッ……!だだ誰か助けてッ……』

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……!」

 

誰に謝っているのか、なんなのか、分からなくなってきた。

怖い。こんなに色んなヒトの感情がナガれこんデクル。

気持ち悪い。キモちわルい。頭が割れるように痛い。

でも走らなきゃ。なんで?ナンデだっケ?わカンない。

でもはしる。はシル。そうしナキャ、イけナい。

シヌ。死んデしまウカらだ。シンデハイケナインダ。

 

『うわああん……!お母さん……!』

 

『死ぬ……死ぬんだな……俺は……あぁ……』

 

『嫌よ!こんなところで死ぬなんて!嫌ぁ!!』

 

『なんだよ……なんなんだよコレェ!?』

 

『なんで!なんで貴方が死ななきゃならなかったのォッ!?』

 

『助けて……助けてよ!姉さんを!』

 

『すまん、俺には――助けられない』

 

嫌。イヤダ。コンナトコロニいたくない。痛い。いたい。イタイ。怖い。コワイ。死にたくない。シニタクナイ。死ねない。死なせて。シンデ。なンで死ンデナイ。シネよ。死ネ。イヤ、イヤ。イヤいヤイヤいやいヤ――

 

「ごめんなさいご免なさいごめんなさいゴメんなさいごめんなさいごめんなサイごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめンナさイごメンなさいゴめんなさイごめ■なさいゴメン■■いご■んなさ■■■■――」

 

 

 

 

 

 

 

そこから先は、覚えていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

「――君!大丈夫かい?」

 

肩で息をしている女の子を見つけた。

見たところ、外傷はなく、走ってここまで来たとするなら、――もちろん、火事場のなんたら、というようにアドレナリンによる空元気、という可能性もある。油断はならないが――、少なくとも無事であることは間違いないだろう。近くに駆け寄って、声を掛ける。

 

「お父さん……?」

 

そういうものだから、うっかり、そうだ。大丈夫だったか?なんて言ってしまった。

 

「いやっ、違うっ」

 

彼女の肩に置いていた私の手を振り払う。

 

「お父さんはっ!瓦礫の下敷きになってて!もう死んだんだっ!私のせいで死んだんだ!殺したんだっ!私がぁっ!」

 

頭を抱え、下を見ながら、自分を責める。

その光景に、私は思わず絶句してしまった。

 

「お母さんも死んだんだよっ!なんで!なんでぇっ!?――なんで……私、生きてるんだよぉっ……」

 

「ああぁ……うわあああぁぁん!あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!」

 

決壊したかのように、大粒の涙を流し始めた。

膝から崩れ落ちる。私は彼女が地面に倒れないよう、しっかり抱きとめる。

 

「落ち着いて!大丈夫だ!大丈夫だから……っ!」

 

こんな、こんな若い子が、理不尽にも両親を奪われたんだ。そんな壮絶な体験をしたんだ。錯乱するのも無理はない。ただひたすらに、声を掛けて、抱きしめてやったり、背中をさすったりして、宥めるよう努めた。やがて泣き声が収まると、

 

「あ……お父、さん、お、母さ、ん……」

 

そう言って、糸の切れた人形のように、彼女から力が抜けた。

気絶したのだろう。

後ろから駆けてくる足音が近づく。部下のものだろう。

 

「その子、どうしました?」

 

「ああ、どうやら一種の錯乱状態に陥っていた。ひとまず落ち着いたようなんだが……」

 

「気絶してますね。万が一ってこともありますし」

 

「うん、それにここはまだ危険だ。すぐに病院へ連れて行ってくれ」

 

「分かりました……それにしても、なんで東三門がこんなことに……」

 

彼女を受け渡しながらも、この惨状の原因はなんなのか、という疑問の答えを、我々は知らない。

 

「白いデカブツの化け物を見た、なんて話を聞いたが……にわかには信じがたいな」

 

「ええ。……異星人の仕業、なんて、話もありますが……」

 

それが、一番近い答えだった、などと、この時は想像すらしなかった。

頭を振って、気持ちを切り替える。私はただ、目の前の命を、助けに行く。

今はそれだけを考えよう。

 


 

気がつけば、病院に居た。

一人だった。顔を知っている人を何人か見かけたけど、親しい間柄なんて、私には一人もいない。

副作用によって、私は怖がられた。

人の役にたつ使い方をしようとした。でも。

どうして欲しいのか分かる、ということは、自分の中を見られるということ。そんな能力は、皆に気持ち悪がられるだけだった。

何処へ行っても、爪弾き者にされるだけ。

だからずっと一人で居た。

それでも耐えられたのは、理解してくれる家族が居たからだ。でも。

でも、もう居ない。

ひとりぼっちだった。どこまでも一人。

寂しい。

 

一人は嫌だ。

 

一人でいるのは嫌だ。

会いたいよ、お母さん。お父さん。

嫌だよ、一人は。

寂しいよ。

一人にしないでよ。

顔が見たいよ。喋りかけて欲しいよ。

「大丈夫だ」って。「大変だったね」って。

「これからどうしようか」って。

「皆欠けずに居るんだから、きっとうまくいくよ」って。

笑いかけてよ。助けてよ。

お母さん。

お父さん。

 

一人は、嫌だよ――

 

(大丈夫)

 

「ッ……!?」

 

(大丈夫だ、萌香)

 

「誰……?」

 

()が、聞こえる。

多分、私にしか、聞こえない、()が。

 

(誰、と言われても困るなぁ、私は君だよ)

 

()はそう答える。

 

「私……?そっか、そうだよね」

 

その言葉を、私は感覚的に理解した。

 

(そうだ、萌香。私は君で、君は私だ)

 

(そして君は一人ではない)

 

()は、優しく、語りかける。

 

(君はこれから、私と二人で生きなければならない)

 

(それが、我々の父と母の願いだ)

 

「うん」

 

そうだ、生きなければ。生き延びろと言われた。

こんなところで、腐ってはいけない。

 

(そうだ、生きるんだ。そのためには、誰かに託された願いだけでは足りない。我々の望み、願望、夢。それらが必要だ。特に君には)

 

「うん」

 

(君は何を望む?残されたこの命、自分という存在を、どう使いたい?)

 

私の、望み。たった一つの望み。それだけでもいいの?

一つ、あれば充分だ。言ってごらん?

 

「……誰かを助けたい」

 

それが、――を助けることに繋がる。

ただ逃げるしかできなかった――の罪の清算を。

死にたいのに生きなければならない――の肯定。

そのための、望み。

 

「あ……もうひとつ」

 

生きるための望みは、それだけ。だけど。

 

「もうひとつ、ある」

 

それを最ゴに肯定するための願い。

誰もが生きているが故に、避けられない、死。

その時に、後悔したくない。だから。

 

「最ゴに、笑いたい」

 

 

 

「そう、私は、()()()()()()()()()()

 

 

 

心の底から。お母さんと、お父さんと、また――

 

 

 

 

(それが、君の望みか)

 

「そう」

 

(……でも、本当にいいのかい?)

 

「……どうして?」

 

どういうわけか()は、私に疑問を投げかける。

どうして?貴方は私なのに。

 

(生きるということに、許可は要らない)

 

(君が望めば、自分の幸せを望むこともできる)

 

(それでも、君は尚も、他者だけを救い続けて、自分を蔑ろにし続ける。ただただ、自分への罰を望むのかい?)

 

罰。罰なんだろうか。ただ誰かを漠然と助けることは。

自分を救わず、幸せも求めない。誰かを救うだけ救う。

自己犠牲だけの人生。辛いものだろう。本当にいいの?

それは、

本当に、

二人が望んだこと?

 

本当は、

誰かを救うことで、自分を――

自分の幸せの為に、誰かを――

 

――ここにいても、いいの?

 

 

 

「――そんなこと、許されないよ」

 

私だけが、生き残った。家族のなかで、私だけ。

ただ自分が生き延びるために、助けられる人も見捨てた。

誰かを傷つけた。助けられなかった。閉じ込められた。誰も助けてくれなかった。痛かった。イタイ。イタイイタイイタイイタイイタイ――

 

――今のは、何だったのだろう。とても怖い夢?を見たかのようで、寒々しくなって、小さく、震えた。

体を縮こまらせる。体温が、逃げないように。何も、見ないように。遠ざけようとするように。

そんな私に()は、優しく、宥めるように、肯定を込めた()を伝える。

 

(……そうだね、そうだったね)

 

ほんの少しだけ、暖かかった。だから前を向けた。

 

「そう」

 

二人の声が重なる。そう――

 

 

 

 

 

 

()()()には、救い(あした)なんかいらない』

 

 






あれから3年。
私たちは、界境防衛機関、通称ボーダーに入った。
義務教育を終え、施設でも浮いていた私たちには、
高校へ行くための推薦、後見人、仕事というものが必要だった。
案外とんとん拍子で入れたけれど、やっぱり私たちは、
人付き合いの経験が足りなさ過ぎた。
「ボーダーのわ」。未だに、私たちは溶け込めずにいた。
この小さな社会の、輪に。

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