大切な人…か…   作:狼黒

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日常と再来の予感

「…ん…むぅ…?」

 

そんな言葉かどうかわからない声を発しながら目を開けると、そこは何やら見覚えがない部屋…いやあるな

そういえば昨日はアジトを案内してもらった後に、僕が加入したお祝いみたいなもので飲み会が開かれて…

駄目だ、おねーさんが酔っ払った勢いでタツミとラバックにお酒を飲ませてたり、おねーさんが僕を抱き締めてきたり、それを見たおねーちゃんが一瞬で引きはがしてそれからずっと離さなかったり、ボス…ナジェンダさんが差し出してきたジュースを飲んだら急に眠くなったことぐらいしか記憶にない‥

あぁ、でも僕が助けたシェーレって人は無事に本部に後送されたって聞いたな…

それにしても頭が痛い…あのジュース何だったんだろ…

 

「起きたか、ロレメ」

 

「おねーちゃん…」

 

痛む頭を押さえつつ声がした方を見ると、水が入ったコップを持って心配そうな顔をしているおねーちゃんがいた

そういえばおねーちゃんと一緒の部屋だったな…

 

「大丈夫か?間違ってボスが酒を飲ませてしまったが…」

 

「頭痛い…」

 

「水を飲め、二日酔いにはこれが効くらしい」

 

「はーい…」

 

そう言っておねーちゃんが持ってきた水をちびちびと舐める

これが俗にいう二日酔いというものなのか…前世では飲む前に自殺したし、今世ではまだ飲んだことないから体験したことなかったんだよね…

…というかあれがお酒だったということは一杯でこうなったのか…

まぁ取り敢えず…

 

「後でナジェンダさんに文句言ってやる…」

 

「それはいいが取り敢えず髪整えてやるからこっちにこい」

 

「はーい…」

 

そんな決意を胸に秘めつつも、ぼさぼさの髪をおねーちゃんに手入れしてもらった

 

 

「だりゃああああああああああああ!!」

 

「すごい気合いだなぁ…あれで帝具なしなんだから怖い」

 

おねーちゃんとタツミが木刀で打ち合うのを見ながらそう呟く

取り敢えずおねーちゃんについていったらどうもタツミの特訓みたいだったから、僕はこうして観戦してる

それにしてもタツミは凄いねぇ…元々の素質もあるんだろうけどそれをさらなる努力で磨いてるんだから…最終的にどこにいきつくんだろ、分かんないね

というかシェーレが抜けてからさらに鍛練してるっていってたけど…体壊さないようにしなよ?

と、そんなことを考えている間にタツミがおねーちゃんに一本取られてた

まぁいくら素質があるとはいってもやっぱり経験がね…

まぁそれはこれから補っていけばいいだけだしね

というかまだやるつもりなのか…少し休憩するよう言おうかな

そう思いながら立ち上がってタツミのもとへ行こうとすると、再びおねーちゃんに挑もうと突っ込んだタツミが、ブラートが構えていた拳に頭からぶつかっていた

あぁ…たんこぶ出来てるじゃん…まぁあんな勢いでぶつかったらそりゃそうなるけど…

あ、タツミはブラートと一緒にどっか行くみたいだね

 

「そうだロレメ!お前も一緒にどうだ?」

 

そんなことを考えていたらブラートが一緒に来ないかと誘ってきた

まぁやることもないし行こうかな…いい鍛錬にもなりそうだし

 

「いいよ、おねーちゃん、じゃあちょっと出てくるね」

 

「あぁ…ブラート、ロレメに変なことをしたら許さないからな」

 

「お、おう…何もしないから安心しろよ」

 

因みにその後フェイクマウンテンに行って「木獣」とかを狩ったけど、まぁそれぐらいしかやることなかったから特筆することではないかな

そしてもし怪我をしたら手厚く看護してやるといった時になんか顔が赤い気がしたけど…なんでだろ

 

 

場所は移り、宮殿の一室

そこではオネストに逆らった、またはオネストの謀略により罪人に仕立て上げられた者たちが拷問を受けていた

あるものは目玉をくりぬかれ、あるものは足を斬り落とされていた

そうして最終的にはその者たちは、熱湯が煮えたぎる大釜に放り込まれていく

そんなことを繰り返しているオネストの私兵だったが

 

「おいおい、なにやってるんだ?」

 

拷問官にそんな気楽な感じで声をかける人物が

 

「あぁ~ん?…いっ!?」

 

声をかけられた拷問官がその方向に顔を向けるが、その人物を見ると途端に顔を青くする

何故ならばそこにいたのは

 

「げ、ゲゲゲ…ゲイリー将軍!!」

 

帝国の中でもトップクラスの実力を誇る将軍、ゲイリー・ビアッジが自身の部下と共にそこにいたからだ

 

「お、お戻りになられてたのですね!!」

 

「まぁな、それより面白いことしてるじゃねぇか、あとで混ぜてくれよ」

 

「は、はい!喜んで!」

 

「ははっ、じゃああのオチビ皇帝に呼ばれてるからまた後でな」

 

そう言ってビアッジはその場を後にした

 

(くくっ、この世界も悪くねぇなぁ)

 

内心でほくそ笑みながら宮殿内の廊下を歩くスォルツ

この人物の正体を言うと、見た目は某ガンダムシリーズの戦争大好き傭兵、中身はロレメと同じ転生者である

まぁひとつ言っておくと、ただの一般人ではない

ロレメが転生される前から、ひどいいじめや暴力を受けていたことは書いたが、その主犯格がこいつである

元々の性格が自分勝手なためかこの世界になじむのに時間はかからなかった

 

(まぁ原作知ってる身からすればこんなんイージーだけどな、それにあの悪魔とやらから貰った力も最高だ)

 

この男、実は能力を二つ持っている

一つは今名乗っている名前の人物が搭乗しているMS、もう一つはタイムジャッカーのリーダー格で、「意見は求めん」が口癖の冷酷な男の能力といったところである

 

(にしてもまさかエスデスが大臣と組んでないとはなぁ…まぁあいつの元にいた三獣士の二人はこっちに持ってこれたから良しとするか)

 

さらりと変なことを言っているが、それはのちに説明する

 

(ま、大臣と組んでりゃ大体は好きなことができるしな、それにあの奴隷もこっちの世界に来てるらしいし…まぁ好きなだけやらしてもらうさ)

 

宮殿で働いている女中などに笑顔で挨拶しながら、そんなことを考えていた

 

 

そうしてまたまた場所と時は移る

 

 

「集まったな皆」

 

あれから数日後、ブラートとの組手やタツミの鍛錬の相手をしていると、おねーちゃんが

 

「ボスが呼んでいる」

 

って言ってたから、広間みたいなところに『ナイトレイド』の全メンバーが集まってる

ブラートとの組手だけど、正直5分5分ってところ

多分この国じゃ実力はトップクラスじゃないかな

タツミのほうは、まだまだ粗い点が多いけど、それをなくせばいずれはブラート以上になるんじゃないかな

まぁあくまで僕の勘だけど

因みに今はおねーちゃんに後ろから抱き締められるようにして立ってる

なんかおねーさんが羨ましそうな顔をして、それを威嚇しているような気がするけど…まぁいっか

 

「悪いニュースが3つといいニュースが1つある…心して聞いてくれ」

 

そういうボス…ナジェンダさんは深刻そうな顔をしている

よほどやばい事態なのかな…

 

「まず悪いニュースから一つ、地方のチームと連絡が取れなくなった」

 

ボスがそう言うとおねーちゃんとブラートが驚愕したような顔になる

地方のチームって何だろうと思ったら、同じく疑問に思ったらしいタツミがおねーちゃんにそのことを聞いていた

何でも帝国は広いから、僕たちのような帝都周辺専門の殺し屋チームと地方専門のチームがあるらしい

理由は調査中だけど恐らく全滅したから、今後さらに用心して、ラバックが糸の結界をさらに広げることになった

ラバックの帝具って便利だよね…こういうこと以外にも幅広い場面で使えるし

 

「次に2つ…ゲイリー・ビアッジが北を制圧し帝都に帰還した」

 

その言葉に僕とタツミとおねーさん以外のメンバーに緊張が走る

 

「予想よりはるかに速かったな…」

 

「アイツはいつだって悩みの種だよ!」

 

おねーちゃんとラバックがそんなことを言ってるけど、どういう人なんだろ…

まぁおねーちゃんやラバックの言葉や、ほかのみんなの表情からろくでもないってことは分かるけど

 

「ビアッジ隊の兵士は北に残されて好き勝手しているらしい」

 

「胸糞悪い話だが、少なくともいきなり反乱軍討伐ってわけじゃないらしいな」

 

その後の話で、今は拷問官たちと一緒に拷問されている人たちの中から見た目がいい女性を選んでは乱暴しているらしい

で、まだ顔が割れていないおねーさんがそのゲイリー・ビアッジの偵察に行くことになった

隙あらば倒そうとしてるおねーさんをボスが戒めてたけど…過去に何かあったのかな

 

「そして悪いニュースは最後に一つ、帝都で文官の連続殺人事件が起きている」

 

その後の話によると、被害者は文官4名とその護衛61名

問題なのはその殺害現場に「ナイトレイド」と書かれた紙が残っていること

初めは偽物だろうと判断されていたけど、事件が起きるたびに警備が厳重になるにもかかわらず、その警備を破って殺されていて、こんなことをできるのは僕たちだけしかいないと判断されたらしい

 

「犯人はこちらと同等な力を持った者…つまり帝具持ちだな」

 

僕の頭に顔を擦りつけながらそういうおねーちゃん

まさか…いやそんなまさかね、おねーちゃんも同じこと考えてるみたいだけど

そんな僕たちを見ながらボスが煙草をつけて話を続ける

 

「殺されたのは全員大臣の派閥に属さない良識派の人間だ、大臣からしたら煙たいだけのな」

 

「なるほど、要するに大臣の協力者か手下かが殺して、それを僕たちに擦り付けようとしてたと」

 

「そうして更に誘って本物を狩る気だろうな」

 

僕の言葉にブラートがそう言う

まぁ本物狩れれば大臣からしたらメリットがありまくるからねぇ

その後の話の結果、今後狙われる可能性が高い文官たちを二手に分かれて護衛することになった

ラバックとおねーちゃん、ブラートとタツミと僕という組み合わせになった

それを聞いたおねーちゃんはどこか不満そうだったけど、ボスが何かを耳打ちしたらたちまち嬉しそうな顔になった…なんでだろ

 

「では決まりだ、最後にいいニュースがある、同じく北に派遣されていたエスデスが帝都に帰還したそうだ」

 

途端に僕とタツミとおねーさん以外のメンバーの表情が明るくなる

エスデスかぁ…あの人苦手というかなんて言うか…

 

「そりゃよかった、あのドS将軍がいる限りはゲイリーも帝都で変なことはしないでしょ」

 

「少なくともいる限りは奴は変なことはしないだろうな」

 

何が何だか分かっておらずに混乱しているタツミにブラートが説明する

エスデスは先に出てきたゲイリーと互角の実力を持ち、なおかつ帝国側では大臣についていない将軍で、若干ドSな点はあるものの、比較的まとも

そして彼女の実力はもちろん、彼女が率いる軍隊も高水準な実力を持つとか

 

「すげぇなその人、だったら革命軍に入ってくれればいいのに」

 

「本人曰く『探している人物が見つかったら入ってやる』と言ってるらしくてな」

 

「へぇー…ん?どうしたんだロレメ?」

 

若干顔をしかめている僕に気付いたタツミがそう声をかけてくる

…だってねぇ…

 

「『探している人物』って多分僕の事だからね…」

 

「「「「「「「はぁ!?/何!?」」」」」」」

 

僕のその言葉に全メンバーから驚きの声が上がった

 

 

なんでエスデスが僕を探しているのかというと、僕自身よくわかってない

まだ帝都の暗殺部隊にいたころに帝国軍に入ったばかりのエスデスと何回か手合わせをしててね…

その時にエスデスが

 

「これからも一緒にいてくれるか?」

 

って聞いてきたから、手合わせの事だと思って

 

「うん、付き合ってあげるよ?」

 

って言っただけなんだけどね

因みにその話をおねーちゃん達にしたら、ラバックとおねーさんが頭を抱えてた…なんでだろ

別に変なことを言ったつもりはないんだけどねぇ…

 

 

 

 




時系列とか設定とかおかしいかもしれませんが、どうかお許しください

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