夢×   作:ハークライムツ

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読んでくださってありがとうございます。

レース描写が好きすぎて、すぐにレースに移行しようとするので、日常パートみたい!という方はぜひ教えてください。
レース前の日常パートが増えるかもしれません。


P-SYB世代
第1話 ゆめかける


彼女の純白の体躯は、見るもの全てを魅了し、追うものの目を眩ませる。

彼女の目に映るは唯一にして絶対の勝利、その文字以外はない。

勝者が歴史を紡ぐと言うのなら、この時代の編者は間違いなく彼女であろう。

次の時代を切り拓け、

聖騎士 パールアラディーン

 

ーーー

 

 『名優』や『帝王』という、錚々たるメンバーが連なる掲示板の一番脇に新しいポスターが加わったらしいという噂を聞きつけ、ここまでやってきたわけだが、新たなウマ娘は予想通り彼女であった。

「はー凄いな、もうポスター作られてるんだ、いーなー、かっこいいなぁ」

パールアッラディーン。通称聖騎士。

血筋が優秀なのは言わずもがな、この学園では珍しいことではない。そのことに加え、著名な批評家が彼女を評価しているとのことで、デビュー前からかなり注目を浴びている。実際走りを見たことがあるが、たしかにあんな走りなら勝利以外考えられないのかもしれない。なんといっても数多くのウマ娘がいるこの学園でも、かなり珍しい純白、白銀の髪を待っていることから、人気が高く、ファンも多い。

「なんじゃ、心王、羨ましいのか?」

彼女はヤマトノヌシ。名は体をなす、とはよく言ったもので、その名の意味は大和の主。彼女もまた将来を期待された稀代のウマ娘だ。言葉遣いや好みがちょっと変…もとい個性的だが、一度走らせればどんなコースも彼女が一着をとる。もっとも、彼女が本気ならという条件がつくが。

今から、聖騎士との大舞台での直接対決が待ち望まれてる。私はどっちが勝ってもおかしくないと思う。

「そりゃね」

「かの聖騎士殿は、もう指導員が決まっているらしいぞ」

「それはヤマトちゃんもでしょ」

「まぁの♪」

「でも、こいつ自身まだ何も成してないだろ?ここにいる先輩方は数々の激闘を制したから載ってる訳であって…チッ、ムカつくなぁ」

そう悪態をつくのはブラックホープ。地方から転校してきた稀有な経歴の持ち主で、彼女の走りには、絶対に食らいついてやるという、なんというか…ハングリー精神?そんなものが備わっていると感じる。根性はピカイチで、一歩優る相手にも果敢に挑み勝利を掴む。地方から来たということで、いろいろ苦労もあったのだろう。

「それだけ期待されてるってことだよ!」

「それよりいいのか2人とも、そろそろ指導員が集まってくる時間帯じゃろ?」

「時間帯じゃろ?ってテメェも行くんだよ」

「儂は面倒臭いからぱす、では、おさらば!」

「あ、逃げた」

「チッ、あのインチキ野郎が……仕方ない2人で行くぞ」

「はい、でありんす」

「次あいつの真似したらぶっ飛ばす」

「ヒェ……ごめんなさい」

 

ーーー

 

 そして私がこの物語の主人公。シシシンオー。お姉ちゃんに憧れてこの世界に入って来た、走るのが大好きなウマ娘。あんまり勝負とか、よくわからないですけど一生懸命走ります!特技は弓技!好きな食べ物は……」

「君!それくらいで」

「えぇ!えっと……よろしくお願いします!」

トレーナー達はこちらを値踏みするような目線を向けたあと各々で話し合っている。

「彼女、どう思います?」

「体は少し頼りないな、背も低い、たが真面目そうじゃないか……っと次は彼女か」

「俺が目指すのはG 1での勝利だけだ、どんな奴が相手だろうと関係ない、根性がある奴だけ話しかけてこい」

一瞬だけ静まり返るが、彼女も同じように話し合いの的となった。

「あぁ、話題の転校生か、身体はしっかりしてるな、よく走りそうだ」

「なかなかに気性難という噂は本当のようだ」

「そして……最後は彼女か」

凛とした佇まい、強靭な肉体に、鍛え抜かれた体躯。歩き方から他のウマとは一線を画していた。

「申し訳ないが私はすでにトレーナーと契約を交わしている、ここに来たのは同世代の娘たちの走りを見るためだ、では、失礼する」

それだけをトレーナーたちに言い残しゲートの方へ悠然と歩を進めた。

「なるほど、パールアラディーン…通称パラディンか、俺たちこっぱトレーナーからしたら高嶺の花だな」

「噂通りの綺麗な髪ね」

「なんとか契約を私に変更してくれないかしら……」

「かっこいいねぇ、見た?ホープちゃん?」

「ケッ、気にくわねぇな、偉そうだ、しかも自分が1番強いと心の底から信じて疑ってねぇ」

「ま!楽しく走れりゃそれでいいじゃん!!」

「全くお前は……もっと根性見せろよ!勝利のために命をかけるくらいっ…すまねぇ、失言だったな」

「いやいや、心構えの話でしょ?わかってるってほら!眉間に皺寄ってる!楽しくいこーよ」

「あぁ……」

「それより、早く行かないと、長距離の人はあそこみたいだよ!!」

ゲートの前にやってきたが、何やら揉めているようだった。

そのゲートの前に立つのは聖騎士ただ1人。

長距離志望の子はもっといたはずだが、遠巻きに眺めているだけで、近寄ってこない。

「あれ?長距離の子ってもっといなかったっけ?」

「いただろ、全員、あの聖騎士とやらに気圧されてんだよ」

「なんで?」

「なんでって、そりゃあ……っておい!」

寂しそうに独りで佇んでいる聖騎士とやらに駆け寄る。

「私!シシシンオーっていうの!みんなからはシンオーって呼ばれてるわ、あなたみたいな強くて速いウマ娘と走れるなんて楽しみだわ!!よろしくね!」

一瞬目を見開き、驚いた様な顔を見せたが、すぐにいつも通りの小気味よく引き締まった表情を見せた。

「……そうか、ありがとう…私の名前は」

「知ってる知ってる!パラディンちゃんでしょ!聖騎士なんてかっこいいねぇ」

「周りからそう呼ばれているだけだ」

「ケッ、俺も一緒に走らせてもらうぜ」

「…?君は……」

「馴れ合うつもりは…「その娘はホープちゃん!」っておい!シン!!」

「ありがとう、ホープ、いいレースにしよう」

「ふん……」

「ちょっと待ちなんし」

「そのふざけた口調は…」

「ヤマトちゃん!どーしたの?」

先程別れたはずのヤマトちゃんがもうすでにゲートに収まってた。いつ来たんだろうか。

「儂も走りたくなってしまってのぉ…ちょいと付き合ってくりゃせんか?」

「もちろんだとも」

「何がくりゃせんか?だよ、走らねぇっていってたじゃねぇか」

「みんなで走った方が楽しいよ!」

「お前がそんなんだからこいつが……」

「ほれ、黒!早よげぇとに入らんか、げぇと難か?」

私を含め、ホープちゃん以外はすでに準備万端だ。

「テメェ、絶対潰す、絶対に潰す」

「望むところよなぁ」

係員が一斉に捌ける。ガコンッという音が合図だ。

(楽しみ!すっごく!)

(絶対負けねぇ、特に隣には)

(さて…聖騎士殿はいかほどなものか……)

(いいレースを……)

各馬一斉にスタートを切った。

 

ーーー

 

 今回のレースは2400m。ジャパンCやダービーと同じ距離。長距離適性の実力を測るには十分だろう。

「このポジションはゆずらねぇ!」

(全く……練習試合だというのに熱くなって

聖騎士殿は…やはり追い込みか)

(いい位置につけたな…そして少し後ろに……)

(うぅ……少し出遅れた)

前で熾烈なポジション争いを繰り広げるホープとヤマト。その後ろ、2人を眺める位置にパラディンとシンオーがついた。

「前で走ってるのは、ブラックホープと…ヤマトノヌシ!?なんで!?」

「ほー、こんなところで世代最強と呼ばれる2頭が揃うとは……」

「聖騎士は、いつも通りの走りだな、このままいくと聖騎士が勝ちか?」

「Well……どーでしょーねー……」

一団は最初のコーナーを抜け、向正面へと向かう。

ここで、ホープが頭一つ抜け出す形となり、後ろにピッタリとヤマトがついた。

「俺のケツでも眺めてな!!」

「品のないことじゃの、わっちの本命はお主ではないというのに」

「なんだと!?」

チラリと後ろを見る。眩い白髪は後ろで静寂を保っている。

「ケッ、きてもすり潰すだけだ…」

(速度を上げても下げても気味悪い程に距離を保っておる……この距離なら追い込めるとの算段か?舐められたものじゃのぅ)

(前2人は問題なく斬り伏せられる、後ろのシンオーは……)

(やっぱり速い子と走るのは楽しいねぇ)

そのままの順番で第3コーナーを抜ける。

(そろそろ仕掛けた方が良さそうじゃ)

後ろの追い込み勢はまだまだ足を溜めてる筈だ。あの2人の末脚に挑むには、この距離のアドバンテージでは心許ない。

「ほれ黒!そろそろ先頭はきつそうじゃのぉ

わっちに譲らんか?」

「欲しけりゃ自分で取りな!」

こちらが速度を上げればあちらも速度を上げる。ここでリードを取って仕舞えば、巻き返せるほどの脚は残っていないとの考えだったが、全くもって譲る気はないらしい。ホープは、あまり頭で考える方ではないが、ここぞという勝負の勘だけは冴えている。

「熱くなりおって……たかが練習試合じゃろ?」

「されど死合とも言うだろう?先頭は…」

 

「私がいただくとしよう」

 

「!?」

「なんで貴様が!!」

いつのまにか差を詰めていた聖騎士が大外を回って2人をねじ伏せにきた。

(馬鹿な…!まだ第4コーナーに差し掛かったばかりだぞ!!ここから脚を保たせるというのか!!?)

「先頭は譲らねぇ!!」

根性勝負を仕掛けようと、聖騎士に擦り寄ったその時…

「馬鹿!内を開けるな!!獅子が…!」

隙間を縫って猛烈な勢いで内ラチ沿いをひた走るのが1人。金色の髪を靡かせ瞬く間に突き抜けた。

「おっ先ー!」

「シン!テメェ!!」

(これは…ダメじゃの…)

3頭もつれて最後の直線に差し掛かる。

各自最高速だと思われたが、聖騎士だけは一歩、また一歩とどんどん突き放す。

(まだ速度が上がるのか!?)

「負っけないからねーー!!」

しかし、シンオーも負けじと回転数を上げる。

(クッソ、シンもか…!もう脚なんて残ってねぇよ!!残ってねぇけど!!!)

「ど根性ぉぉぉ!!」

それに呼応してホープの速度も上がる。

シンオーは末脚、ホープは根性を武器にして聖騎士の首に迫るが……

 

(絶対の勝利を……)

 

一歩届かない。その差は2歩3歩と広がるだけであった。

勝者は誰の目から見ても明らかであった。

 

一着 パールアラティーン

二着 ブラックホープ

三着 シシシンオー

四着 ヤマトノヌシ

 

涼しい顔をして圧勝した聖騎士を睨みつける。当の本人はギャラリーたちに笑顔を振りまいている。

「クッソ……!!クソ!!」

あと何歩足りなかった?5歩か?10歩か?壁が高すぎる!!こんなんじゃ夢なんて…とても……

「ほら!」

ホープの眉間にシンオーの指先がめり込んだ。

「イッテェ!何すんだよ!」

「私に勝ったのにそんな顔しないでくれる?私は眼中にないってこと?」

「そんなつもりは……いや、すまない、ありがとな」

「何がー?」

「皆さん速ぉござりんす、すっかり置き去りにされてしまいした」

ヨヨヨと袖で涙を拭くふりをしている。ホープははなから相手にしてないが、シンオーは心配そうに顔を覗き込んでいる。

「君は最初から本気で走ってないように見えたが……」

顔色一つ変えてない聖騎士がこちらに混ざってきた。

「……買い被りでありんすよ」

「そうかい?どちらにしてもいいレースだった、礼を言わせて貰う、ありがとう」

「ケッ……」

「どういたまして…?」

「敗者に送る言葉が、ありがとうでは、些かでりかしぃに欠けていると思いんすが?」

「む……そうか、すまない……」

「まぁまぁ!私も楽しかったよ!ありがとう、パラディンちゃん!」

「楽しい…?それは……」

パラディンの言葉尻は4人を取り囲む様にトレーナーたちの熱いプロポーズにかき消されることとなった。

「パールアラディーンさん!今からでも遅くはない!僕と契約してくれ!!君の脚なら日本一…いや、世界一も夢じゃない!!」

「ブラックホープ!君の根性は鍛え上げれば必ず武器になる!!俺に任せてくれ、お前を世代最強にしてやる!!」

「シンオーちゃん!私のところに来ればあなたの末脚をもっと強力にできるわ!!是非うちに来てよ!!」

「ヤマトノヌシ!今日は惜しかったが、やはり君の走りには光るものがある!我がチームに来てくれ!うちにはいいライバルもたくさんいるぞ!!」

流石に最も多くのトレーナーに囲まれているのはパラディンだが、やいのやいのと他のウマ娘にも多くのトレーナーが殺到している。

「うえぇ……どうしよう」

「悪い気はしやせんが、わたしはここいらでどろんさせてもらいんす」

多くのトレーナーの間をすり抜け、豪速でかけていった。

「速い、さっきより……」

「チッ…あの野郎、やっぱ本気じゃなかったんじゃねぇかよ」

しかし、立ち去った友人のことについて考えている場合ではない、周りを取り囲むトレーナー達からのラブコールが止まらない。

「うーん、誰が何いってるかさっぱりわかんないねぇ」

「あぁ、ちょっとすまない」

「あれ?パラディンちゃん、どーしたの?」

先程まで多くのトレーナーに囲まれ身動きが取れなくなっていたはずだが。

「あぁ、何度言ってもわかってくれなかったのでな、足を一度大きく踏み鳴らしたら蜘蛛の子を散らす様に逃げていったよ」

その手があったかとポンと手を打ち鳴らすホープ。後退りするトレーナーたち。

「いやいや、ダメだよホープちゃん」

「話があるんだが…あれ?ヤマト君は?」

「ヤマトちゃんはトレーナー決まってるから、どっかいっちゃった」

「そうか……それなら仕方ない

それで話なんだが…うちのチームに来ないか?チームとは言ってもまだ1人だが、シンオー、ホープ、歓迎するぞ」

「はぇ?」

「はぁ?」

 

「やれやれ、この学園の指導員には困ったものよのぉ」

1人ぶつぶつと不満をこぼす。

「ただいま戻りました、お師匠殿」

小さな小屋にノックの後入った。ここならば外に漏れたりしないだろう。

「おぉおかえり、で、どうだった?噂の聖騎士は」

「噂通りの強さでした、下手したらそれ以上かも、まともにかちあったら勝ち目は薄いでしょう」

「なるほどな……」

「ですが、弱点も見つけました、その面を付ければわたしが勝つかと」

「ほぉ…」

「まだ、他2人は私の範疇を超えていませんね、あの2人相手なら問題なく勝てます」

「そうか……その、無理にしなくてもいいぞ?本来それは儂らの仕事だし、お前ももっと……」

「いえ、最強を証明するためならなんでもします、たとえ……友人を裏切ることになろうとも」

「…そこまでの覚悟なら何も言うまい、また明日から練習だ、今日は帰ってゆっくり休め」

「はい、では、失礼します」

 

「俺はパスだ」

「そうか、残念だな、シンオー、君は??」

「私は……どーしよっ?」

「…すぐには決めなくていい、明日、答えを聞こう」

 

まだ4人の物語は始まったばかりである。

 

 




ウマ娘紹介文
シシシンオー

私、お姉ちゃんみたいなウマ娘になるよ!!
頑張るから!見ててね!!

ウェーブのかかった長い金髪に、ティアラの様な髪飾りをつけている。大きく丸い金色の瞳。身長が低くかつ、あどけなさの残る顔立ちのため、よく歳を間違えられるが特に気にしてはない。
勝負服は裾の大きく広がったドレスと、大きなマント。後ろにはダイヤ型の模様が大きく描かれている。
マント以外姉から譲り受けたため、若干大きめ。

ウマ娘には意外とモテる、ファンは実力に対して少なめ。
アホな子に見せかけて、勘は鋭く、ネガティブな面がある。
ライブでアイリッシュダンスを踊ることを密かに夢みているが叶いそうもない。
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