夢×   作:ハークライムツ

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閲覧ありがとうございます。

またレース書きたい病が出てしまいました。
文字数多めです、すみません!!


第4話 皐月賞

若葉ステークスから

一着 シシシンオー

二着 ロンリーロンリー

弥生賞から

一着 パールアラディーン

二着 ブラックホープ

三着 サウザントヒル

スプリングS

一着 レッドオフェンダー

二着 モンスターロケット

三着 フリーサクセス(回避)

 

さぁ、会場の熱気は最高潮!本日の中山レース場メインレース!G1皐月賞!!

2000mのこのレースで最も速いウマは誰なのか?最初の冠は一体誰の手に!?選び抜かれた18人!本レース場に入場です!!

 

まずは一枠1番!快速急行、ロンリーロンリー!5番人気です、今日も気持ちのいい逃げを魅せてくれるのでしょうか??

「きゃー!!ロンリーちゃん!!」

「ロンリーロンリー!!」

相変わらずビクビクしてますね

彼女も強いウマ娘ですから、期待は十分です

 

続きまして、一枠2番はーー

 

「ロンリーが一枠1番か、脚質を考えるともしかして、もしかするかもしれないな」

「そんなわけねぇだろ!このレースにはあいつが出るんだぜ?」

「もし……」

「おっ?どうしたんだお嬢ちゃん?」

「儂は初めてきたもので、よくわかりんせん、もしよろしければ、教えてくりゃせんか?」

「いーぜいーぜ!教える教える!!」

「おい阿呆!この娘……」

「なんでありんすか?」

「……まぁ、そんなわけないか、口調も似てる別人だよな……?だよな?」

「何言ってんだよ!ほらきたぞ!!」

 

おっと!ここで一際大きな歓声!!七枠14番!デビュー以来無敗のウマ娘、純白の聖騎士!パールアラディーンだ!!

もちろん、1番人気です!

「パラディーン!!こっち向いて!!」

「聖騎士!今日も魅せてくれよ!!」

今日も落ち着いてますね

彼女の純白の鎧に泥をつけるウマは現れるのでしょうか?

 

『困った時は私の名を叫べーー!!!我が名は!!』

「レッドオフェンダー!レッドオフェンダー!!」

派手な登場を飾ったのは、レッドヒーロー!紅撃手レッドオフェンダー!八枠15番3番人気です!!

嫌でも目を引く登場です

十分勝ちを狙いにいけるウマ娘ですね、派手ですし、見応えのあるレースを期待します

 

逆に悠然と入ってきたのは、地方の黒い吉星!ブラックホープ!中央レース界の新たな風となるのか!?八枠16番、 4番人気です!!

 

「なんで俺が 4番人気で、テメェが3番なんだよ」

「フッフッフッ、私はヒーローだからな、人気が高いのも当たり前だ!!」

「1番になってから言えタコ」

「フッフッフッ、タコではない!レッドヒーローだ、ブラックピークよ」

「誰だそれ!!」

 

さて来たぞ来たぞ!姉は取った!妹はどうだ!?八枠18番!三冠相続人!獅子の立て髪!シシシンオーだ!!

期待十二分!2番人気です!!

 

さて、主役は出揃いました…栄光の座は誰の手に?皐月賞…いよいよスタートです!!

 

「主さんたちはどうみてるでありんすか?」

「ロンリー、レッド、ホープ、シンオー、そしてパラディンの5強模様だな……」

「そちらのお方は?」

「パラディンが勝つ、それで終わりだろう」

「何とも横暴な……」

「ただし、事実だ」

「もう少し詳しくお願いできます?」

「そーだな……大方の予測通り、逃げ馬のロンリーロンリーがペースを作るだろう、それに続くのが先行馬のレッドとホープ、シンオーは差しでくるか追い込みで来るか分からないが、周りの出方次第だな……最も速いウマが勝つと謳われる皐月賞…この中で速さで部があるのはレッドオフェンダーだろうな」

「どうした急に…」

「ただそれもパラディンがいなかったらの話だ、彼女の思う通りのレースをされたらただただ彼女が優勝して終わりだ……それはライバルたちもわかっているだろうから、どうするのだろうな?荒れそうだぜ、このレース」

「なるほどなるほど…」

「お嬢ちゃんはどう考えてるんだ?」

「儂も同意見でありんす、聖騎士殿が勝つでしょう、二着は赤、三着は黒、その並びのどこかに心王が入るって感じでありんす」

「ん?つーことは……」

(良くも悪くもこんでぃしょんに影響される子だから、あの中で聖騎士に勝てるとしたら……)

「心王、頑張れ……」

 

ーーー

 

 会場は異常な熱気に包まれている。

「うわー、私中山レース場初めてだよ!熱いね!!」

G Iということでいつも通り注目度が高いことは間違いないが、今回は彼女の走りを見にきたというファンの人も多いだろう。

「チッ、いつも通りパラディンを見に来ただけのミーハーが多いな……」

視線の先には純白の甲冑…を模した勝負服を見にまとった聖騎士がただずんでいた。

いつものレースと変わらずファンたちに笑顔を振りまいている。

「G Iだろうと変わりはなしか…自分が勝つと信じて疑ってねぇ、ムカつくなぁ!!」

この前のレースで負けていることも影響しているのだろう、いつも以上に苛立ちを見せている。

「そんなこと言わないで!ほら、ホープちゃんのファンも来てるよ!!」

なんとなく異彩を放っている集団の真前、弾幕にデカデカと地方の吉星ブラックホープと描かれている。前も見たことがある、あれは……

「そんなのいら……ってじっちゃんばっちゃん!?」

ホープちゃんの育て主だろう。前に紹介したてもらったことがある。

「じっちゃんばっちゃん!?わざわざこっちまで来て……何してんの!?今の時期畑大変でしょ!?牧場は??」

不満を言っているように聞こえるが、顔は嬉しそうだ。それもそのはず、ホープちゃんは彼らのために走っていると言っても過言ではない。

「お前がG 1で走るに、見にこねぇわけいかねぇべ?仕事なら心配いらん!全部茂吉に任せてきたよ!」

「お姉ちゃん!」

「がんばれー」

「チビたちまで……」

「俺が呼んだんですよ!」

その集団の合間を抜けて、黒スーツに身を包んだ誠実そうな男が静かに応えた。

「トレーナー?あんた……どういうつもり?これは明らかにトレーナー業務を超えているわ……」

「いえ!トレーナー業務の一環です!あなたが勝っても何もいらないと言うので、一足先にプレゼントを用意したわけです!!」

「バカ!勝利も決まってないのに先に用意する奴があるか!!」

「え?負けるんですか??」

「そんな……ことは……」

「おねーちゃん……私たちきたのめーわく?」

「うぅうん、そんなわけないよ、頑張って走るから、みててね!!」

「うん!!」

「……そ、その、母さんは?」

「…来れなかった……」

「そう……」

「あれま!?後ろに見えるのはシンオーちゃんでねぇか?」

「お久しぶりです、おじさま、おばさま」

「相変わらず、めんこいのー、あんたもホープの次に応援してるべ!」

「あはは、ありがとうございます!ホープちゃん、そろそろ……」

各自ゲートに集まって来ている。そうダラダラしてる余裕はない。

「頑張ってくるね!!みんな!」

「頑張って!!」

「頑張れ!!ホープ!」

 

「相変わらず賑やかで面白い人たちだねー」

「フッ、まぁな」

「トレーナーさんもあれはすっごくいい人だ!私にはわかる」

「フッ、まだまだケツの青いガキだがな、根性だけは据わってる」

「ケツのあおいって……絶対トレーナーさんの方が年上でしょ……」

「なぁ、シンオー、悪いが……」

足を止めて、こちらに向き直る。瞳を覗くと黒い夜空に星が灯っているように見えた。

「なぁに?」

「今日の勝負……私が頂く」

「私も、頑張るよ!!」

少し微笑み、もう何も語ることはないと言いたげにゆっくりと自分のゲートに歩いて行った。

 

「私も行かないと…ってうわ!」

「おっと、すまないってシンオー、君か」

「パラディンちゃん!ファンサはもういいの?」

「ファンサ?ファンサービスのことか?あぁ、終わった、あとは勝つだけだ」

「私も負けないよ!!楽しんでこー!」

「楽し……前も言っていたが楽しいのか?レースって」

「えぇ!?楽しいでしょ!楽しくなかったらなんのために走ってるのかわかんないよ!!」

「何のためにか…そんなの勝つためだろう??」

「それだけじゃないよ……レースって楽しいものでしょ……」

「君たちはそれでいいかもしれないが、私は勝つことを義務付けられているからな、楽しんでなどいられないよ」

それはそうなのかもしれない、パラディンちゃんは近代レースの結晶と言われるほどの才覚を認められている逸材だ。誰よりも勝利を望まれ、そして誰よりも勝ち続けている。

「でも……でも、それじゃ悲しいよ……」

勝ち負けだけじゃない、レースは。きっと。ローラちゃんだって……

「君の言いたいことはわかる……だが、私は君の姉に……」

「お姉ちゃん?お姉ちゃんがどうかしたの??」

「いや、レース前にする話じゃない……すまないがここまでだ」

指し示した方に目を向けると、ゲート前から皆がこちらを見ている。

「いいレースにしよう」

そう言い残し雄大にゲートに向かう。

「ごめんホープちゃん……私もちっと、負けたくなくなっちゃった…!!」

 

「レッド、あの二人何を話してたんだろうね?」

「フッフッフッ、ヒーローイヤーで聞こえたぞ、シシシシンオーとパールアラディールの話していたことがなぁ」

「誰それ……シンオーとパラディンさんでしょ」

「あの二人の標的はお主だ、ロンリー」

「え!?なんでぇ!?」

「フッフッフッ、獅子心王と聖闘士と言ったら……共通点はトップ……そしてお前もトップの逃げウマ……あとはわかるな?」

「意味わかんないよぉ!!」

 

皐月賞が……始まるーーー!!!

 

ーーー

 

最も速いウマ娘が勝つと言われる皐月賞

最初の栄冠を手にするのはどのウマ娘か!?

各自ゲートに入り、出走準備整いました

 

スタートしました!

 

各自揃った綺麗なスタートです!!

 

好スタートを切ったのは18番シシシンオー

 

まずは先頭争いです!ロンリーロンリーか?

レッドオフェンダーか?ブラックホープか?

 

「ぎにゃぁぁぁーーー!!!!」

 

やはりこの世代の逃げ馬といえばこの馬!

快速急行ロンリーロンリー!今日も軽快に飛ばしていきます!!

 

その後ろに黒い吉星!ブラックホープ

紅撃主!レッドオフェンダー、

おっと?この位置では見慣れぬ金色の立髪!

シシシンオー!これは正解なのでしょうか?

 

「これもテメェの思惑か?クリスティーナ」

「Oh!シンオーさんは先行策を取るんですね!?」

「なんでテメェが驚いてんだよ」

「自由に走るように指示してますから!」

「全くそんなんで……」

「Paladinに勝ちます、そのための指示です」

「……言うじゃねぇか、俺のウマはちっとばかし強いぞ」

 

その後ろ二馬身程離して、タイムロック

スペースリバース、サウザンドヒルが続きます!!

 

「シンオーが先団!?かかってんのか?」

「いんや、器用な娘でありんすから、思い切った結果でありんしょう、かかっているのはむしろ……」

 

そしてなんとこの位置!最後方から聖騎士!パールアラディーン!

出遅れています!!

 

いや、出遅れたと言うより遅らせているのでしょう、前回馬群に埋もれ思うように力が出せていないシーンがありましたから

それでも勝つのがこのウマなんですが……

 

一番後ろから全てのウマ娘を追い込んで勝つ

横綱レースです

 

なるほど!!さて、先頭に目を移しまして、ロンリーロンリーが…これは?大逃げの形を取るようです!今日も奇声を上げて快速急行一人旅!

 

ぐんぐん突き放して……

いない!ブラックホープが続いています!

 

「ぎにゃゃゃぁぁぁーー!!??」

(やっぱり狙われてるんだ私!!急いで逃げなきゃ!!)

(じっちゃん、ばっちゃんにチビたちまで来てるんだ!無様な走りは見せられない!!)

(ロンリーロンリーめ…何を焦っているのか、ブラックピークもかかり気味だな……そして、シシシシンオーは……)

(調子良かったから前に出てきたけど、これは正解なんでしょうか??パラディンちゃんは…一番後ろ!?私も追い込みにすれば良かったかな??)

(………必ず勝つ……)

 

もう既に向正面に入りました!先頭ロンリーロンリーの大逃げが続いております!その少し後ろにブラックホープ!

その差七馬身程離しまして、レッドオフェンダー、シシシンオーと続きます!!

 

「何やってるんだ……黒よ……そんなんでは脚がもたないぞ……」

「そうだな……戦術を逃げに変えたホープと先行に変えたシンオー、そして1番後ろにパラディン……いつも通りの走りをしているのはレッドくらいか?後ろを気にしすぎると前に逃げられる、だからといって前に食ってかかると後ろから押し切られる……他のウマ娘も気が気じゃないだろうな……」

 

さぁ!今最後方の聖騎士がが向正面に入りました!最前からとの差は二十馬身といったところか!?とにかく大きく大きく差が開かれています!!

 

各馬思い思いのポジションについています!

誰から仕掛けるのでしょうか!?

シシシンオーか?レッドオフェンダーか?パールアラディーンか?

 

「ふむ、どうやらパールアラディールを倒しに行くのは、私かお前のようだな?シシシシンオーさてさて、そろそろ行かないと追いつかれるぞ?」

「いや、まだまだ!我慢我慢!どんなレース運びがあってもパラディンちゃんは戦術を変えはしないよ、追い込んでくるタイミングは大体わかる…まだ脚をためとくべき!」

(自力は敵わない…けど、叩き上げなら負けない!!いつもいつもお姉ちゃんと争ってたんだから!!)

「ほぅ……」

「そして、戦術を変えないのは変えないのはレッドちゃんも同じでしょ?」

「ふむ…思ったより頭を使ってるようだな……」

「あははは!ひどい!でもでも、そろそろ行くかな……あんましダラダラしてると置いてかれちゃうし」

「置いてかれる?追い抜かれるの間違いだろ??」

「違う違う!レッドちゃんも気をつけて!!

気持ちが乗ってる時のホープちゃんは楽に勝てる相手じゃないよ!」

「何っ……!?」

 

おっとここで先頭が入れ替わります!ロンリーロンリーはここで終わり!ブラックホープが先頭に立ちます!

「わしらのウマが…見てるかばあさん…!」

「えぇ、見てますとも見てますとも……感無量ですね……じいさん……」

 

「ぎっ…!?」

(必ず勝つ…!!約束したんだ……有名になって地元のレース場に人を呼び込むって……!!)

(そして……)

「母さん…!!」

 

ーーー

 

 その映像のことはいまだに忘れない。

そのウマ娘が期待されていないことは誰の目にも明らかだった。

10人立てで9番人気というほぼ最低の評価。

しかし、他のウマを寄せ付けずぶっちぎりの勝利。地方からの殴り込みで中央制覇。

それほど大きな大会ではないにしても、大いに会場を沸かせていた。

「母さん!!見たよ!!デビューレース!すごいや!!」

「ふふふっありがとう」

「私も中央で走る!!お母さんみたいなウマ娘になるよ!!」

「……私の真似をすることないわ…」

「なんで??」

「……ホープ、大切なことよ……

大きすぎる夢っていうのは関わる人も…そして何より自分をも不幸にしてしまうのよ」

「…??」

「あなたは自分のできる範囲で頑張りなさい」

その時、悲しそうな笑顔で言葉を紡ぐ母の言葉の意味がわからなかった。今ではなんとなく言いたいことがわかった気がする。

 

「なんでそんなことしたの??」

「だってあいつら…お母さんのことをバカにしたんだもん……」

優しい言葉をかけてもらえると思った。それとも暴れたことを怒られるかもしれないとも思った。けれど、どちらでも構いはしなかった、間違ったことをしているとは微塵も思わなかったから。しかし返ってきた答えはどちらでもない…そして最も聞きたくなかった言葉だった。

「…!!……ごめんね、私が弱かったから…」

「そんなことない!!母さんは強いもん!

私が……中央に行って証明するんだ……お母さんの血は弱くなんかないって…!!」

「………そう……ね、中央に……

ほ、ほら!そんなことより今日のご飯はうどんよ!涙を拭いて!おじいちゃんに笑われちゃうわ!!」

「う…うん!私うどん大好き!!」

 

だから、中央に入学を諦めた時は本気で悔しかったし、特別待遇で転校が決まった時は本気で嬉しかった。じっちゃんも喜んだし、ばっちゃんも喜んでいたはずだ。

「私は…反対です」

しかし、母はそうではなかったらしい。

「なんで!?母さんだって中央に行ったじゃない!!」

「中央に行って?得たものは何?2着では……勝てなきゃ、意味がないのよ……」

たしかに母が勝ったのはデビュー戦のみ、重賞レースでもいい成績は残すのだが、いまいち勝ちきれなかった。彼女は強い、地方出身にしては、という評価が現役時代に言われていたことである。

「私が勝てないと言うの!?」

「えぇ、断言するわ……あなたでは一着にはなれない」

「そんなの……」

「わかるわ、あなたの同期には聖騎士パラディン、ヤマトノヌシ、他にも有力なウマ娘がたくさんいるわ、勝てっこない」

「中央で勝つために今の今まで、努力し続けてきた!!これからもよ!諦めるなんてできない!!」

「それでも勝てないのが中央よ、血統も環境も、努力すらも惜しみない怪物達がゴロゴロいるわ……血統はおろか、環境すらもままならない……努力だけのあなたでは……私たちではダメなのよ……頑張っても頑張っても負けるあなたの姿は……見たくない」

「ふざけないで!!負けるのは大っ嫌い!!けど、挑まずに諦めるのはもっと嫌い!!

私は誰がなんと言おうと、中央に行くわ!」

 

そのまま母親とろくに話もできず、転校の前日になってしまった。明日に備え、早めに練習を切り上げようと思っていたが、母が現役時代の勝負服に身を包みレース場にやってきた。

「昔…聞き分けのないあなたによくやっていたわよね……私に勝ったら好きにしなさい、

けれど私に負けたら大人しくここのレース場に残ってもらうわ…そもそも、私なんかに負けるようじゃ、中央に行っても活躍なんてできっこない」

「……わかった」

じっちゃんとばっちゃんが合図をし、スタートを切る。力の差は歴然だった。最強の地方バの一角といえど、現役を退いた身、対してこちらは現役のウマ娘。何馬身離れているかもわからない。圧勝だった。

「速く……なったわね……」

息も絶え絶えに芝に倒れ込む姿に、彼女の本気が伺えた。

「私、中央に行くよ……母さんみたいに……いや、母さんを超えるウマ娘になるんだ…!」

「そう……勝手にしなさい、本当に頑固なんだから」

「母さんに似たのね、きっと」

「ひとつだけ約束して…辛くなったらいつでも帰ってきなさい……」

「じゃあ私も約束するわ、勝つまで帰ってこないから、期待しててね、母さん」

「ふふふっ、精々期待して待っているわ」

母は空を見上げて朗らかに笑った。空が黒ずみ始めたばかりだったが、空には一番星が煌々と輝いていた。

 

ーーー

 

 現在皐月賞は3コーナー手前!ここで先頭はロンリーロンリーに変わってブラックホープ!!

徐々に差を詰めてきているシシシンオー、そしてレッドオフェンダー!!

(勝って勝って…証明するんだ……私の強さを…母さんの強さを!!)

「勝つんだぁぁぁああ!!!!」

ここで更にブラックホープが速度を上げる!!負けじと追い縋るシシシンオー!!私を忘れるなとレッドオフェンダー!!

ロンリーロンリーはズルズルと後退!

なんと!?聖騎士パラディンは未だ後方です!!バ群に阻まれ、前に出ることができない!!

 

先頭争いはホープ、シンオー、レッドの3強もようとなっています!!

 

「認めざるを得ないな……シシシシンオーそしてブラックピークよ……貴様らを我がライバルと認めよう!!」

ここで、レッドが追い上げてきている!シンオーに並ぶ!!まだ二馬身以上の差があるぞ諦めるなホープ!!

(レッドちゃんもホープちゃんも気合い入ってる……負けたくないのはわかる、わかるけど…私も譲れないものがある!!)

チラリと後ろを確認する。視線の奥底に白銀の体躯が弾んでいるのが見えた。

「負けるものですかぁぁーー!!!」

ここで各馬第4コーナーを回り!直線へと入ります!!中山はこれから坂があります!!聖騎士はまだ来ない!!聖騎士はまだ来ない!中山の直線は短いぞ!!

(……)

 

さぁ直線だ!レッド、いい位置につけています!!シンオーが内からきているぞ!

しかし先頭はホープ!!地方の意地を見せて…魅せてくれるのでしょうか!?

(あとたったの300m、300mでいいんだ……このまま先頭に…いさせてくれ…!!)

しかしホープ、伸びない!伸びない!!

レッドがきているぞ!紅撃手の攻め手から逃げることはできるのでしょうか!?

「お前はよくやったよ……本当に、

だが相手が悪かった」

レッドの猛攻に耐えることはできない!!ホープ先頭を譲ります!!ゴールは目前!先頭はレッドオフェンダー…いや違う!!内らち沿いをひた走る!!シシシンオーだ!シシシンオー!!金色の弾丸も負けてはいない!!

「いいぞ!次はお前か!!受けて立つ!!かかってこい!シシシシンオー!!」

「……」

(いや……こちらを見ていない、後ろ?

まさか……そんなはずはない!!さっきまでバ群に埋もれていたのを確かに見たんだ!!それなのに……)

 

(なぜ貴様がここに!?)

 

 

遂に来た!!遂に来た!!大外回り、遂に来た!!知らない者はいません!!白銀の旋風!汚れを知らぬ純白の甲冑!聖騎士!!パールアラディーンだ!!

 

一気に先頭に並び、並び!!かわした!かわしたぞ!!やはりこのウマ!パールアラディーンです!!

「こいつ……化け物か!?あんな大外を回って私たちを置き去りになんて……」

「いや違う!あんな苦悶の表情、見たことない!パラディンちゃんだってギリギリなんだよ!!」

まだまだ勝負は決まりません!!各ウマ必死に追い縋る!!

残り200m!最初の栄冠を手にするのは

やはりパールアラディーンか!?

シシシンオーか!?

レッドオフェンダーか!?

まだまだ必死に食らいついているブラックホープ!!

(先頭を譲った覚えはねぇ!!

負けるものか……

負けるものかぁぁぁあああ!!)

(ここで勝てなきゃどこで勝つんだ!2000mは私の独壇場のはずだ!!しっかりしろ!!私だって…私だって誰かのヒーローに!!

……そうだろ…カーマイン!!)

 

 

「頑張れー!!頑張れホープ!!」

「レッドヒーローー!!レッドオフェンダー!!負けるなぁ!!!」

 

「クッソ……」

「ガハッ……」

 

しかし、ホープ、レッド、共にズルズルと後退!!

優勝はこの2頭に絞られた!!

 

(息が苦しい…辛い

足痛い…辛い

けど…けど!!

楽しいぃぃぃい!!)

(笑った…?この娘…今笑ったのか!?)

なんと!?更に速度が上がっている!シシシンオーだ!シシシンオーが坂を登り、先頭に並んだ!!これはどちらかわからない!!

残り50m!!

外を跳ぶ純白の体躯と内を這う金色の弾丸!!熾烈なデットヒート!!

遂に純白のその身に!黒星がつくのかパールアラディーン!!

残り20!

(信じられん…!シンオー…この小さな体にどこにこんな力が……)

(流石パラディンちゃん!衰え知らずの末脚だね!!だけど、根性勝負なら…負けないんだから!!)

「はぁぁぁああああああ!!!!」

これは前に出るぞシシシンオー!シシシンオーか!!??

「勝った!!」

(負ける…?この私が?

そんなこと…あってはならない……)

「あっては……ならん……!!」

ゴール版を切るぞ!!内か!?外か!?僅かに内か!!?

これは際どい!写真判定です!!

 

ーーー

 

ひりつく様なデットヒート、

4頭がもつれた最後の直線。

終わってみればあっけなく、

また大衆の予想通りだった。

ただし確かに、

ドラマがあった。

勝ったのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖騎士 パールアラディーン

 

ーーー

 

一着はパールアラディーン!!

二着にシシシンオー!!

三着は僅かにレッドオフェンダー!!

四着ブラックホープ、五着ロンリーロンリーと続きます!!

やはり!やはり!強かったパールアラディーン!!

 

ーーー

 

「負けたぁーー!!」

レース場の芝の上で大の字で横たわる。

何か嫌なことがあるとよくやることだが、気分はあまり晴れなかった。

「大丈夫か?」

私をこんな気分にさせた張本人が心配そうにこちらを覗き込みそんなことを言う。

「大丈夫じゃない……」

「何?どこか怪我したのか?みしてみろ」

「心…心が痛い……」

「何!?心臓か??待ってろ…すぐ救護車を……!!」

「そうではないだろうっと、ふっふっふっこのヒーローをツッコミ役にするとは流石だな、パールアラディールにシシシシンオーよ」

「何言ってんの…レッド、結局ボケてるし……」

「レッド!ロンリー!!大変だ、シンオーが……」

「パラディンさんって意外と天然…?」

「パラディンちゃんは素直なだけだよねー」

「シンオー!なんだなんともないのか……」

「いや…心が……」

「何!?救護車を!!」

「もういいでしょ!!」

乾いた笑いが広がったが、それでもやっぱり気分は晴れない。

「パールアラディーンにシシシンオーよ」

「ん?」

「なぁに??」

「完敗だ、このヒーローの完全なる敗北だ、今回は勝ちを譲ったが、次はこうはいかない、また戦おう」

「あぁ、待っている」

「私も負けないよ!!」

「ふっふっふっ、では、また会おう!!」

「いや、また会おうじゃなくて、ライブがあるからって…どこ行くの!?レッド!!待ってよ!」

どこかに駆けていく二人を目で追うと、視線の片隅で縮こまっている漆黒の体躯を捉えた。

「じっちゃん…ばっちゃん……ごめんなさい…負け……」

「すっごかったなぁ〜おめぇ見てたろ?」

「見てましたよ、じいさん、ホープ本当に速くなったわね〜」

「でも私…負け」

「負けてなんかない!!」

「チビ……!?」

「負けてなんかないもん!!お姉ちゃん強いもん!!負けてなんか…うわーん!!」

「チビ……お前たちが泣いてどうするのよ

全く……ほらおいで」

「うん…ズビッ……!お姉ちゃん、強いもん…!!」

家族の前だけで見せるホープちゃんの優しさ。ヤマトちゃんに動画でも送ってみようか。

「シン……」

「うえぇ!何?」

動画用に取り出したスマホを慌ててしまう。

「パラディンにも言っておけ、次は勝つってな」

「うん!私も次のダービーは譲れないから!!」

「テメェはさっさとライブの準備をしてこい」

「はーい」

それはホープちゃんもだが、家族団欒の時間を邪魔するつもりはない。最後に写真だけ撮って控室に戻る。

 

ーーー

 

「はっはっはっ俺の担当の方が強かったな、クリス」

「ki……」

「キッ?」

「Kyyyyy!!」

「鼻を引っ張るな鼻を……!」

 

「っぱパラディンだったな!」

「今日はありがとうございました…ていねぇ!」

「あぁ、あの娘か?試合が終わるのと同時にどっか行っちゃったぜ」

「はぁ…サイン貰おうと思ってたのに……」

「サイン?何で??」

 

ーーー

 

 その日のライブは大成功。そもそも、歌も踊りも上手いパラディンちゃんがセンターなんだから、盛り上がらないわけがない。

レッドちゃんが勝手に観客席に座っていた小さなウマ娘を舞台に招き、そのあとこっ酷く怒られたが、それもファンたちは演出だと思っていて盛り上がったので、結果オーライだ。

 

「次は…私も参戦するぞ、……聖騎士殿にも、心にも黒にも踏み台になってもらおうかの」

 

次のレースが始まるーーー

 




ウマ娘紹介文

ヤマトノヌシ

全てを利用し、勝利を掴む……
全ては最強を証明する為に……

黒っぽい茶褐色の長いストレートの髪。流れる様な流麗な瞳。いつも微笑みを湛えているため何か企んでるのでは、と思われがちだが、全くもってその通りである。

勝負時には長い髪を後ろでまとめ、桜を散りばめた黒色の着物を着る。
最近ハワイへの憧れがあるが、キャラ崩壊に繋がらないかと考えて人には言わない。
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