夢×   作:ハークライムツ

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閲覧ありがとうございます。

熱い戦いを描けたらいいなぁって。


第6話 東京優駿 後半

 

皐月賞

一着 パールアラディーン

二着 シシシンオー

三着 レッドオフェンダー

四着 ブラックホープ

五着 ロンリーロンリー

 

青葉賞

一着 ロタリオグランデ

二着 ダイバーダンス

 

プリンシパルステークス

一着 パンデッド(回避)

 

NHKマイルカップ

一着 ヤマトノヌシ

二着 ムーンレーザー

 

 

今日の東京レース場は晴れ渡る青空に包まれています。

本日のメインレース日本ダービー

芝2400で行われるこのレース、

全てのホースマンの夢、掴むのはどのウマ娘か……私の夢はムーンレーザーです

選び抜かれた18人いよいよ入場です

 

青葉賞二着、1枠1番ダイバーダンス

NHKマイルカップ二着、1枠2番ムーンレーザーと続きます

 

「今日はどうみる?」

「そーだな、皐月賞の結果をみるにパラディンとシンオーの一騎打ちになるんじゃないか?って……聞いてるのか?」

「おい…あそこにいるのって……」

「え?マジか…?ちょっと近くに…」

 

『レッドヒーロー!!頑張れ!!』

『信じてるぜ!俺たちのヒーロー!!』

『がんばれぇー!!レッド!!』

5番人気、レッドヒーロー、紅撃主

2枠4番レッドオフェンダー

今日は落ち着いてますね

いまいち勝ち切れていないですが、ここ大一番で才能を開花させて欲しいですね

ただ、距離の課題が残っています、スタミナを維持したレース運びをしたいところ

 

『わぁぁぁああ!!!』

そして本日の主役、一際大きい歓声

唯一三冠への挑戦が許されているウマ娘、

全戦無敗、

誰もが認めるレジェンドホース

1番人気3枠5番パールアラディーンです

前回の勝利を収めた皐月賞も記憶に新しいですね、二冠目期待します

純白の衣装が輝いていますね、彼女の伝説を讃えているようです

 

「すみません人…じゃなくてウマ違いだったら申し訳ないんですけど……ロマンさん…ですよね?」

「あらまぁ気付かれちゃったみたいね……けど、今日はお忍びできてるから、しぃ〜よ?」

「はい!」

「可愛い可愛い私の妹分が走るからぁ、見にきたのよぉ、それと、この子ともね」

「その写真のウマ娘って……」

「ほらきたわぁ」

 

このウマが並びます、皐月は譲ったが、ダービーはどうだ?姉からの冠を引き継ぐ準備はできている、金色の弾丸、獅子の立髪

2番人気3枠6番シシシンオー

金色の髪をたなびかせ、堂々たる出立ちです

今回こそ勝って、姉妹連覇を期待します

 

有力バが続きます、地方の意地を見せつけることができるのでしょうか?

地方の星、黒い吉星

4番人気5枠9番ブラックホープ

このウマも人気が高いのも、期待の裏返しですから、頑張って欲しいですね

 

そして、このウマ娘を忘れてはいけません、

毎日杯での完封勝ち、

NHKマイルカップでは鮮やかな勝利

天才奇術師、レースを操るウマ娘

この国の主、皇、6枠12番ヤマトノヌシ

3番人気です

人気は他のウマに譲りましたが、実力は十二分にあります、優勝を狙っていきたいところ

 

皐月賞五着、今日もこのウマがレースを引っ張るのでしょう、私たちのウマ娘

6番人気7枠13番快速急行ロンリーロンリー

 

「だとまぁこんなところか、有力バは

あと青葉賞一着のロタリオとかもいるが、このメンツ相手だと分が悪いだろうよ」

「シンオーよりヤマトの方が人気低いのか、意外だな」

「NHKマイルカップから日が浅いし、何よりムーン相手にあの勝ち方…マイラーなんじゃないか?って言われてっから」

「うーん、そんなことよりぃ、普通にシンオーちゃんを応援したいって人が多いんでしょ、あの子の姉も人気が高いウマ娘だったしぃ、その妹に夢を託すのは無理のないことだと思うわぁ」

「確かに、そうですね」

「ま、レースはわからないけどねぇ」

「意外とシビアですね……」

「そうね、パラディンちゃんもそうだけど、その影に隠れてるヤマトちゃんも強いウマ娘だからぁ、逆にあなたはどうお考え?」

「そーですね……

まず皐月賞と同じようにロンリーと…あとムーンもか……逃げウマ2人がペースを作り、

ヤマト、レッド、ホープが先行で前を陣取り、ロタリオが差しとして後ろ集団を…

最後方からパラディンの横綱レースって感じですかね……シンオーはちょっと読めないけど、前回の先行がはまっていたから、先行に混ざる気がします」

「なるほどなるほど〜」

「あなたは?」

「シンオーちゃんはもっと自由な子よぉ?そんな普通に行くかしらぁ??」

「あ…あんたが言うか……」

「何か言ったかしらぁ??」

「いえなんでも……」

 

日本ダービー、スタート時間が迫っています

 

ーーー

 

 地響きのような歓声、誰も彼もが気合を入れずにはいられない。

「これが…日本ダービー」

恒例となった、パラディンちゃんのファンサとホープちゃんの地元からの応援の声。最近では地元以外からも沢山応援されるようになったと照れ臭そうに話していた。

それに加えて、レッドちゃんのヒーローショーに付き合わされるロンリーちゃん、それで彼女たちを応援するちびっ子たちもたくさん増えたと何かの記事で読んだ気がする。

ちなみに私を応援する人はまっすぐとこちらを見据えている。大声で応援されることは嫌いだ!と姉が言っていたから、そのことを知ってるファンは、その妹である私をあまり大声で応援することはしない。私的にはどっちでもいいんだが、チヤホヤされるのも得意ではないし、これくらいが丁度いいのかもしれない。

「初めまして、とか言ってみたりして」

「??初めてじゃないでしょ?ロタリオちゃん」

「おや、覚えていたかい?」

「そりゃね、デビュー戦一緒だってでしょ?」

「ほー、敗者の名前も覚えているとはできたお方だなぁっと」

「あはは!ロタリオちゃん強かったし、忘れるわけないでしょ」

「今回、胸を借りるつもりで頑張りますので、そこのところよろしくお願いします」

「胸を借りるなんて…ロタリオちゃんだって強いんだから、頑張って行こーよ!」

「いや、青葉賞を勝っただけでは…ダービーは勝てない、それが鉄則だからなぁ…」

「そんなことないでしょ」

「いや、青葉賞からダービーに進み制したウマ娘はいないから、知ってるだろ?」

「じゃあ、ロタリオちゃんが最初のウマ娘になればいいじゃん」

「え?あ、その考え方も…いや……ないな

ま、気楽に頑張るわ」

そう言い残しどこかに向かう。

「うーん、相変わらずフラフラしてるなぁ」

太陽帝ロタリオグランデ、重バ場だとやる気を全く見せず、惨敗するが、晴れていれば晴れているほど調子が上がる天気に左右されるウマ娘である。ただし本人は雨娘で、よくレースを荒らしてしまうことが多い。

「おや?もう行ってしまうのかい?」

「そっちこそ、応援の声は止んでないよ?ヤマトちゃん」

「ははは、わしの人気など、何もしなくても集まってくるからの♪」

「それもそうだね!!」

「ははは、そこは私の次の3番人気なのに何言ってんだ!っていうべきじゃろう?」

「うーん、でも私の人気は姉さんと重ねてるファンが多いだけで、純粋のファンの数だったらヤマトちゃんじゃない?」

「……どうだかの」

(もっと、驕り高ぶっていたら御しやすいものなんだが……そう簡単ではないのがこの娘の恐ろしいところだな……)

「それでも負ける気はないよ!!頑張っていこうね!!」

「そうじゃの、どっちが勝っても恨みっこなしじゃ」

 

 

日本ダービーが始まる……

 

ーーーー

 

最も運が良いウマが勝つと言われているこのレース、優勝を掴むのはどのウマ娘か

18人、ゲートイン完了し、今スタートしました

 

まずまず揃ったスタート、パラディン一旦下がります

「ギィィィィーーー!!!」

やはりレースを率いるのはこのウマ娘、ロンリーロンリーです、今日も軽快に飛ばしています

「もう負けるのは懲り懲りよ!!」

続きますはムーンレーザー

大外からヤマトノヌシ、ブラックホープ、レッドオフェンダーと続きます

真ん中からダイバーダンス、ロタリオグランデ、後方集団に注目の的、後ろから2番目パールアラディーン、その少し後ろからシシシンオーが走ります

 

「シンオーが今度は追い込みか……しかも…もしかしてパラディンをマークしているのか?」

「全く、そんなポンポン脚質を変えていいものではないのだが……」

「シンオーちゃん楽しそうだしぃ、それでいいんじゃない??」

 

先頭集団は第一コーナーを回って行きました。先陣を切るのはロンリーロンリー、2番手にムーンレーザー、リードは一バ身、

その後ろヤマトノヌシ、ブラックホープ、レッドオフェンダーと続きます

 

(こいつ…ヤマト……さっきから俺の前をチョロチョロと喧嘩売ってんのか?)

 

ここで、ぐいぐいっとヤマトノヌシ、ブラックホープが上がってきます

「ギィィィィーー!?」

「また…あんたに……!!」

ロンリーロンリー、ムーンレーザーと並び…かわしました

ここで先頭はヤマトノヌシ、ブラックホープに変わります

 

(あの皐月賞…お主に逃げの適性があるとは知らなかったぞ?

多くの人間はかかっていたと判断したが、あれは相手が悪かっただけ……本来持久力と根性、闘争心が売りの黒ならば、最初の方に仕掛けることは間違いではない……)

(全く…面倒な作戦を取っちゃってさ、どーしたものか)

(うーん……先行集団のペースが上がってるな……けど、私の今回の作戦はパラディンちゃんマークだしな……)

(……)

 

向正面は先頭ヤマトノヌシ、ブラックホープ、内からロンリーロンリー、ムーンレーザー

少し下がり、レッドオフェンダー、モンスターロケット、一バ身離して内からロタリオグランデ、シシシンオー、一番後ろまで下がりましたパールアラディーン

縦長の展開を呈しております

少しレースは動きましたが、各ウマ安定した走りを見せております

 

「またブラックホープがかかってるな……」

「ヤマトノヌシも前に行きたがってるな……マイルカップの疲れが残ってる今…正攻法では勝てないと思って奇策にでたか?」

「ふーん、あなたたちにはそー見えるのねぇ」

「え?違うんですか??」

「奇策…といえば奇策…かなぁ?

あなたたち、逃げウマ娘2人…逃げを競り合ってるレースを見たことあるかしらぁ?」

「何回もあります」

「そのレースはどうなってた?」

「大体殺人的なペース配分になって…前についていこうとしたウマ娘は軒並みバテバテでしたね」

「そう、だから、そういった場合には…そのウマ娘の実力にもよるけど……無視して自分の走りをするのがセオリーね…

けれどたまに、この逃げ切りを許してしまう場合があるのよ、それは何かしらぁ?」

「その逃げウマ娘がめちゃくちゃ強い時?」

「ふふふっそうね、丁度この写真のウマ娘はそういうレースが得意だったわよ、けれどもう一つあるわ、セオリーを逆手に取られる時よぉ」

「セオリーを逆手に?」

「大きく前を行くウマ娘は無視する……とはいえ、目に見えているウマ娘を無視することは不可能よ、だから多くのウマ娘は距離を置くことで自分のペースを守ろうとするわ…それを逆手に取り、大逃げ…と見せかけて平均的なペースで逃げ、後続を大きく引き離し、

最後のコーナーまでスタミナを残し粘り切って勝つ…そんな場合よぉ、恐らく、こっちを狙ってるんじゃない??」

『なるほどー』

(けれど…これくらい、わたしにでも思いつく作戦だもの…あのパラディンに通用するとは思えないわ……多分あの子の狙いはもっと別の……)

 

さて、先頭集団は第3コーナーカーブに差し掛かります

先頭はいまだヤマトノヌシです

その後ろをつけますブラックホープ

4バ身ほど離してレッドオフェンダー、ロタリオグランデ

 

(チッ、お前の踏み台になるつもりはねぇ、このまま俺の走りをキープして、最後の直線でぶっ潰してやる)

(ヤマトノヌシ、ブラックホープと差を開けすぎるのはまずい……少しペースを上げておこう)

 

シシシンオーも後ろから前を伺うぞ

だが純白の体躯はまだ動かない、というか…少しずつ下がっている?下がっていますパールアラディーン、どうしたのでしょうか?

 

(どどどどうしよう…パラディンちゃんが下がってっちゃった……わたしも下がるべき?でもこれ以上前と開けるのも……)

(やはりな…そういうことか)

 

(パラディンちゃんが下がってる?いや、あれはどう見ても……)

「うーん」

「どうした?」

「いや、さっきロマンさんが言ってた展開にしちゃあ、やたらハイペースだなと思って……」

「ハイペースぅ?」

「タイム見てくださいよ」

「…!!なるほど…そういうことね」

「何かわかったんですか?」

 

さて、第3コーナーから第4コーナーへブラックホープが上がっていくぞ

黒の吉兆に注目です

「おい!ヤマト!率いてくれんのはもう終わりか?」

「バカを言うな……まだまだ先頭は譲らん……」

(んなこと言ってるが、脚にいつものキレがねぇ…まさか、マイルカップの疲れがまだ?)

(それもそのはず…このローテでも勝てるのは大王様くらいのものだろうよ、どれ、そろそろ私も上げていくか)

 

「ヤマトちゃんの狙いはハイペースにすることだったわけね…これは、有力バほど騙されるわぁ」

「どういうことですか?」

「さっきわたしが言ったようなことは…有力バであるほど考慮に入れるわ、だから前となるべく差を開かないようにするわけね、逃げられないようにぃそれがヤマトちゃんの狙いだったのよ」

「なるほど(わからん)」

「パラディンちゃんは、今回、追い込みの作戦を取ったけど、毎回そうなのかしらぁ?」

「はい、いっつも最後方に控えて、最後の直線で全てのウマ娘を抜き去って勝ちます」

「横綱相撲ってやつね、聞こえはいいけど、その作戦だとハイペースになればなるほど不利になってしまうのよ、脚を使う前にレースが終わってしまう可能性が高くなるからねぇ、ヤマトちゃんは逃げで勝つつもりじゃなくて、自分と…あとホープちゃんもかしら?を餌にしてハイペースに持ち込み、パラディンちゃんを打ち負かす…そんな作戦だったわけねぇ」

「でも本人後退してますよ」

「へ?」

 

「こりゃ敵わん…」

おおっとここでヤマトノヌシがズルズルと後退、流石の皇もこの展開は厳しいか?先頭が変わりました、レッドオフェンダーも前を狙っている、ムーンレーザーも内に控えているぞ、ロンリーロンリーはどこにいってしまったのか

 

さぁ、第4コーナーを抜け各ウマ、最後の直線に入ります、残り500m!!

栄光の座はもうすぐです…!

 

各ウマ、坂を駆け上がります!

ムーンレーザーいい位置につけているぞ!

先頭は変わらずブラックホープ、上がってきているレッドオフェンダー

内からロタリオグランデ

 

おっと!ここで大外から上がってくる2人!!見知った金銀の旋風!!聖騎士パラディンと獅子の立髪シシシンオーだ!!

 

(いいぜ…こいよ!まだスタミナは残ってる!皐月と同じようにはいかねぇ!!)

(早いな…このタイミングで仕掛けるか…

ならば私も!脚を使うとしよう!)

「負けるかぁぁぁああ!!」

「私が!!1番だ!!」

「え!?なんで??」

「バカな…そんなはずは……」

『脚が動かない!!』

「あなた方真面目すぎるぜ、ハイペースになってたの気づかなかったのかい?」

「ロタリオ!テメェ!!」

「青葉の冠だけじゃ、力不足とおもってましたが、こんな展開なら夢見ちまうなぁ!!」

 

ここでなんと!?ロタリオだ!?太陽帝ロタリオがあがってきたぁ!!

 

「まずい…!このまま競り合ったら、とてもゴールまでもたん……3位までに入らないと…!!大人しく好位をキープして……」

「好位をキープ?ふざけんな!!俺は2位でも3位でもねぇ!1位を取るために走ってんだ!!負けてたまるかぁぁぁあああ!!」

ロタリオがレッドをかわし、ホープもかわ…せない!!ホープ先頭を譲りません!!

シンオー、パラディンも並んできているぞ!!

 

さぁ各ウマ坂を登りきり、残り300といったところ!!優勝はこの4人に絞られたぞ!!

ブラックホープ!ロタリオグランデ!!

シシシンオー!!そして、パールアラディーンです!!

 

(ダービーを取って…母さんの…俺の強さを証明するんだ!!)

(レースの神様なんてのがいるなら、どうか…今だけはどうか、私に…このロタリオに微笑んでくれ…!一生に一度の、私の…夢なんだ…!!)

「俺の脚よ!!動け!!壊れたって構わない!!一生に一度の栄光を!!」

「どうか…こんな私にも微笑んでおくれ……!!勝利の女神よ!!」

 

しかし、とどかない!!

黒い吉星も太陽帝もとどかない!!

 

やはり優勝はこの二人に絞られました!

聖騎士パールアラディーンか!?

獅子の立髪シシシンオーか!!?

 

いや…2人ではない!!なんだ…!?あの大きな影は!?大外回ってムーンをレッドを飲み込んでいった!!

 

「バカな!!お前は、さっき…!!」

「スタミナ切れでバ郡に沈んだはず!!」

「嘘だったか……」

「やっぱ無理か…」

 

その影が今、ホープを、ロタリオをも喰らう!!見知らぬ漆黒の影…いや!あの桜をあしらった流麗な勝負服!見覚えがあるぞ…

 

「控えおろ!この私を誰だと心得る!?

この国の主、ヤマトノヌシぞ?

さぁ道を譲れ!!主役の登場じゃぞ!!」

 

皇だ!!ヤマトノヌシ!!後ろに沈んだはずのこの国の主が頂きを取りにやってきた!!

 

「これが貴公の作戦だったってわけか……」

「はぁ、はぁ…もう限界だって言うのに…パラディンちゃんだけじゃなく、ヤマトちゃんもくるなんて…!」

「すまんなぁ、心王…じゃがもう疲れたじゃろ?道を譲ってくれんか??」

「ふふふっ!冗談!!こんなに楽しいのに、この位置を譲るなんて絶対にできないよ!!」

「ならば、押し通すまでよ!ついて来れるか?お二人さん」

「勿論」

「上等!!」

 

残り100をきった!!3人もつれての直線!!

栄光の座はもうすぐです!!

1人も譲りません!!

 

しかし、ヤマトだ!ヤマトが頭一つ抜けている!!ダービーを制するのは!?皇ヤマトノヌシか!!?

「えぇ!!?ここから伸びるの!?」

「クッ…!!」

 

(……第一の武器はこの展開

わし一人で飛ばしたところで、かかっていると判断され誰もついてこなかっただろうが、黒がいてくれたお陰で全体が引っ張られ思ったよりも結果が得られた……

第二の武器は…心王お主じゃ

聖騎士殿は稀代の天才ウマ娘…恐らく強烈な競り合いなどほとんど経験したことないじゃろう?皐月賞を見る限り競り合い自体が苦手と心得る、ましてや相手は心王じゃ、並大抵の精神力じゃ太刀打ちできんて

そうして体力も精神力も削った状態を奇襲するわけじゃ)

「お主最大の弱点は…強すぎる…故の経験の薄さじゃ

悪く思うなよ?こうでもしなきゃ、お主には勝てんから」

 

残り50!!これは決まったか!?ヤマトだ!!ヤマトノヌシが一歩一歩差をつけている!!

 

「まずいよぉ!!」

(経験の少なさ…か、確かに強烈な競り合いなど、この前の皐月で2回目…今日で3回目だな……)

 

ーーー

 

 あるレースの帰り。相手も負けたことのないウマ娘で、自分が負けることなど微塵も考えてはいなかった。しかし、私の敵ではなかった。何バ身離れたかもわからない。ぶっちぎりの優勝だった。

「あなたさえいなければ…!!」

泣きじゃくりながらそんなことを言う。何度聞いたかもわからない、あなたと違う時代に産まれていたら、あなたには弱者の気持ちがわからない。そんな言葉を投げつけられたこともある。そんな言葉を受けた日の帰りはひどく落ち込んで、帰路がやけに長く感じる。

 

……なんてことはなく。

「貴様!ならば私が手を抜けば満足か?私がこのレースに出ていなければ満足か??ふざけるな!!」

「え?えぇ??」

「そんな腑抜けたことを抜かしている暇があったら練習しろ!!愚か者め!!その根性叩き斬ってくれる!!」

「ひ、ひーん、ママぁ!!」

当時の私は自分より弱い奴は全員努力が、根性が足りないと思っていた。しかし、年を重ねレースをこなせばこなすほど、そうではない…そんなことはないということがわかった。

クラブチームで私と同じ努力をしているウマ娘も誰一人敵わない。根性が私よりあるウマ娘も私には敵わない。ゲートを出るのが上手い娘もコーナーを曲がるのが上手い娘も私には敵わなかった。

そしてその頃には、あなたがいなければ…なんてことを言う者はいなくなり、今度は

「パラディンは天才だな」

と言われることが多くなった。

あれだけ簡単に出てきた「努力をしろ」と言う言葉が喉につっかかって出ないようになってきた。皆一様に努力をしていることを知っているから。「ありがとう」とぎこちない笑顔で言う。そう言われた相手は翌日クラブチームを辞めていた。

数々の強敵をねじ伏せ、数々の夢を踏み躙り、ここに立っている。そこまでして私が走る意味は?わからない。ずっとずっと一人で当てもなく走っている気がした。

その頃の私は、実に大人気なかったが…どうしようもないくらいに荒れていた。具体的には先輩に喧嘩を売るくらいに。

「先輩、最強って本当ですか?ちょっと私と戦ってみましょうよ」

そのウマ娘は当時最強と呼ばれていた。

逃げの作戦を得意とし、レースの序盤で先頭に躍り出ると、そのまま一度たりとも譲らずに勝つ。

「ひぃぃ!!…ってあなたは……」

体躯は貧相。ビクビクと見るからに臆病で覇気も感じない。こんなウマ娘が最強?笑わせる。

「ドリーム…なに後輩に絡んでんのぉ?ってこの子、パラディンちゃんじゃない?」

このウマ娘はライオンドリームと言う。皐月と日本ダービーと無敗の二冠を制覇したウマ娘。

「最強ってのがどんなものか、直接味わってみたくなって」

「あのね、キミ……そんなポンポン走れる立場じゃないのよ、調節だってあるし」

「いいよ、走ろ、芝2000ね」

「ちょっとドリーム!」

「ロマン合図をお願い」

「はぁ……どーせダメって言っても聞かないんでしょ?わかったわよ」

「ありがとうございます」

簡単に勝てる…とはさすがに思っていなかったが、負ける気は全くなかった。しかし…

 

「はぁ…はぁ…私の勝ち」

 

全てが初めての経験だった。あそこまでハイペースのレース展開も、強烈な叩き合いも

そして相手の背中を見ながらのゴールも。

悔しくて悔しくてたまらなかったが、しかし口では言い表せないような確かな高揚感があった。

「そうだ…何で忘れていたんだ…私は夢を与えるウマ娘になりたかったんだ」

かの皇帝の様に、かの英雄の様に、時代を牽引するウマ娘になりたかったんだ。

「答えは得た?」

「え?」

「パラディン…君のことは何度か見たことがある、どんなレースでも勝ってる姿しか見たことないけど…勝った後に酷く悲しい顔をしていたのが印象に残っていたよ」

「それは……」

「勝者がそれではいけない、勝負相手に、見てくれているファンたちにも失礼だ

しかし、同時に何で勝者に不釣り合いな悲しい顔をしているのかも気になった

君…勝つ理由…走る理由がわからないのだろう?」

「どうしてそれを…?」

「なぁに、妹が同じような理由で悩んでいただけだよ」

「妹…」

「その時もこうやって一緒に走ってみたよ

言葉では表せない…ターフでしか語れないことがある……って、偉そうに語ってしまったな」

「いえ、ありがとうございます」

「そうだ…!君の世代なら、私の妹もいるはずなんだけど…知らないかい?今はまだ注目されてないが…きっと素晴らしいウマ娘になる……」

「なんて名前ですか?」

「名前はーーー

 

ーーー

 

生涯一度の晴れ舞台!!主役の座は誰の手に!??

残り30m!今年の優勝は決まったか!?

皇ヤマトノヌシです!!

 

「負けないんだからぁ!!!」

(こんな、危機的場面でも君は笑顔で走るんだな……貴方の妹だよ、この娘は)

 

あの日からでも、一人で走っている感覚は変わらなかった…けれど、目的の地が定まった気がしたんだ……その地に降り立つまでは誰にも負けられない……負けられないから…!

 

いや、差し返すは純白の体躯!!向かい風を切り裂き!内らち沿いで、光速の末脚が炸裂する!!聖騎士だ!!パールアラディーンです!!

ここにきてまだ上がるか!??

 

(そんなバカな!!確かに体力、精神力共に削りきったはず……なのに何故…何故……!

涼しい顔で走っている!!?)

(お、パラディンちゃん、いい顔で走るねぇ…!!負けないよー!ここで負けたら姉さんに笑われちゃうもの!!)

 

シシシンオーも負けていない!!シシシンオー伸びる伸びる!!

ゴール版をきるか!?しかし、パールアラディーンだ!!パールアラディーンだ!!

 

(そんな…ここまでしても勝てないなんて……そんなの…そんなの……)

「化け物…じゃないか……」

 

各ウマ必死に追い縋る、しかし並べない!並ばない!!

 

ーーー

 

緑鮮やかなる府中

気の昂りか、はたまた余裕か

出遅れた騎士は終始最後方でレースを進める

しかし、彼女の末脚は最後の直線で全てを切り伏せる

君の前では、皇も王も帝も、

誰も彼もが挑戦者

勝者 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パールアラディーン

 

ーーー

 

パァァァァーーーールアラディィィィィィィーーーーン!!

パラディンです!!パラディンだ!!

このメンツで!役者が違いました聖騎士!!

パラディン、二冠達成!!!

二着は接戦、ヤマトノヌシか!?シシシンオーか?

四着レッドオフェンダー、五着ロタリオグランデです!!

 

ーーー

 

 

「また負けた……」

 大空を見上げてみる。無慈悲なまでに綺麗な青空。縁を涙が伝うが、誰にも見えてはないだろう。

 

それをぬぐい、聖騎士をみる。

同じ光に照らされているのに、勝負服は光を反射し、まるで彼女だけを祝福しているみたいだった。

 

「悔しいなぁ……」

ダービーは生涯に一度しかない。レース前から思っていたことだが、それがいかに残酷なことか……身に染みてようやくわかった気がする。

 

ふと、他の人を見てみる。他の人も私と似たような反応であるが、ヤマトちゃんが特に目についた。

「負けた…私が……?これから、どう……最強を…最強が……」

ぶつぶつと呟きながら、おぼつかない足取りでどこかに行ってしまった。

「大丈夫かな……」

彼女も稀代のウマ娘、負けたことは人生で初めてだろう。

「そう言う君は大丈夫そうだな」

今日の主役の座を勝ち取ったウマ娘がそんなことを言う。

「大丈夫なわけないでしょ……」

彼女の大きな体に掴みながら気持ちを打ち明ける。

「気分は最悪、足はフラフラ、胸は痛いし、なんとなく気持ち悪いし……でも……悔いはない、かな」

「実にいいレースだった」

「うん、そうだ、そうだよ!!

でもやっぱり、すっごく悔しい!!!」

掴みかかってわんわん泣いてみたものの、レース場に轟く歓声は、行ったり来たりを繰り返し、いつまでも止むことはなかった。

 

ーーー

 

 その日のライブも大成功。ヤマトちゃんが若干心配だったが、流石皇、完璧にこなして魅せた。

 

「じゃあ、行ってくる」

「頑張ってね!!!」

そして、パラディンちゃんは世界に

 

「次は…神戸新聞杯かな?」

私たちは次のレースの為に歩をすすめる。

 

そして…次のレースが始まる!!




レッドオフェンダー

我が名は!レッドヒーロー!!

赤褐色のポニーテール。猫を連想させる紅色の鋭い目つき。
女、子供からの人気が高い。

勝負服は赤と青の戦隊ヒーローの服装を可愛くアレンジしたものを使用
彼女のトレーナーは真っ黄色のスーツを使用している。
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