タコピー鬼こええ!   作:タコピーは食材

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2話

思い、出した。

 

あの子の名前はしずかちゃん。

隣の犬はチャッピー。

 

この世界は、漫画の、世界だ。

 

『タコピーの原罪』

 

「タコピー・・・」

 

声が出ず、口だけが動いた。

 

その口の動きを見たしずかちゃんが、笑った気がした。

 

ーーーーー

 

チャッピーと散歩に行く時間。

 

どんなに痛くても、つらくても、チャッピーがいれば、私は大丈夫。

 

学校がどんなに辛くても、パパが帰ってこなくても、おうちに誰もいなくても、

なにがあってもチャッピーとなら、

 

チャッピーがいれば、大丈夫。

 

チャッピーと遊んでいるときは、とっても楽しい。

 

遊びに行こうとチャッピーに言って首輪をかける。

 

月がよく見える夜だ。

キレイなのかはよくわからない。

 

ふと昔のことを思い出した。

 

パパがいなくなって、好きな時に会えなくなったとき。

チャッピーはいたけど、とっても悲しくて、一人で泣いていたとき。

 

『大丈夫?』

 

手を差し伸べてくれた、誰かがいた。

 

お隣の、お兄さん。

この前挨拶にきた人だ。

 

ママが確か、すごい有名なお医者さんだって言っていた。

若いうちから世界中回って、とかなんとか。

 

東くんと同じで、頭がいいんだろうな。

 

ママが仕事に行っちゃって、家にはチャッピーと2人だけで、チャッピーがいれば大丈夫だけどそれでもとっても悲しくて。

一人で玄関で泣いていた。

 

誰も私を見てくれなくて、寂しくて、怖くて

 

そんな私を見てくれたのが、お隣さんだった。

私と視線を合わせるために膝をついて、手を差し伸べた。

 

その時の私は、自分のことを全部話した。

私を見てくれる誰かに、全部聞いて欲しかった。全部教えて欲しかった。

 

お隣さんは、全部聞いてくれていた。

泣きながら話す私の頭を撫でながら。

 

全部、話した。

パパがいなくなって、ママがいなくなって、寂しいって。

お隣さんは私の手を握ってくれた。

 

その手がとっても暖かくて、うれしくて、やさしくて、涙が止まらなくなって。

気づけばお隣さんに抱きついて泣いていた。

 

涙と鼻水で汚れる服を気にせずに、お隣さんは抱きしめ返してくれた。

それがまたうれしくて、また涙が止まらなくなる。

 

それでもずっと、抱きしめてくれていた。

 

それで泣いて泣いて、夜遅くになって、ママが帰ってきた。

ママは驚いて走ってきたけれど、お隣さんと少し話して、私の頭を撫でてくれた。

 

涙は出なかった。もう出尽くしたから。でも代わりに声が出た。

すすり泣き、っていうらしい。

 

その日から、ママは少し帰るのが早くなった。寂しい時間が減った

それでもママがお仕事でいないことがある。

そんな時にはお隣さんがよく遊びにきてくれた。ママに許可をもらったらしい。

 

毎日とっても楽しかった。

でも、そんな時間は長くは続かなかった。

お隣さんが、いなくなる日が来た。

 

とっても寂しかったけど、また会えるって約束したから、耐えられた。

 

そのあと、学校が始まって、

 

ママとまりなちゃんのパパが仲良くなって、

物がなくなったり、痛いことされたり、

 

それでもお隣さんは約束してくれたから、

 

きっとまたチャッピーとしずかちゃんと3人で遊べるって、言ってたから。

 

3人で遊びたかった。

 

でも今日は、お隣さんはいないから、チャッピーと二人で遊んだ。楽しかったけど、少し寂しかった。

 

次の日も、二人で遊んだ。

すこし寂しかった。

 

その次の日は、下敷きがなくなった。

でもチャッピーと遊んで、楽しかった。

 

そのまた次の日は、ノートがなくなった。

チャッピーと遊んだ。楽しかった。

 

その次も似たようなことをして、された。

 

二人で遊ぶのは、楽しかった。

今日もきっと楽しいはずだ。

 

でも、何かを、忘れてる気がした。

誰かを、忘れている。

 

ふと、懐かしい感じがして、顔を上げると、目があった。

 

お隣さんと、目があった。

 

やっと思い出した。

やっと、3人で遊べる。

 

お隣さんが驚いた顔で口を動かした。

声は聞こえなかったけど、見えた。

 

『チャッピー』

 

 

チャッピーの名前、覚えててくれたんだ。

 

 

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