タコピー鬼こええ! 作:タコピーは食材
「ひ、久しぶりだね、しずかちゃん」
目が合ってしまった手前、無視することも出来ず声をかけた。
声が震えているのは、多分気のせいだ。
「うん、久しぶり」
そう言ってこちらを見てくるしずかちゃん。
『タコピーの原罪』
それがどういった漫画か?
超簡単に言えば人が死ぬ漫画だ。
まぁ最後はハッピーエンドだったが。
しかし、そのハッピーエンドに至るには、タコピーという異星人の死が必要だったわけで。
結局は誰か死ぬ。
そしてその1連の事件に、目の前のしずかちゃんが絡んでいるのだ。
しずかちゃんの見た目は、おそらく小学生。
作中の時間と近い。
つまり、もしタコピーとしずかちゃんが出会ってしまったら?
まりなちゃんの手により、チャッピーは殺処分され、しずかちゃんは自殺の道を選ぶだろう。
いや、結局しずかちゃんは生き残るのだが、チャッピーは結局いなくなるし、代わりにまりなちゃんがタコピーに殺される。
結局は、誰かが死ぬ。
体が、震え始めた。
それをしずかちゃんに気取られないように、目を合わせる。
「お隣さんは、今までどこに行っていたの?」
静かにそう聞いてきた。
その言葉に含まれた感情は読むことが出来ない。
「あぁ、少し世界中をね。回っていたんだ」
声と体の震えを必死に抑える。
誰かが、死ぬ。
作中通りに進むなら、誰かが死ぬ。
「タコピーの原罪」には様々な時間軸が存在する。
タコピーが「ハッピーカメラ」で時を戻したり「大ハッピー時計」で時間を行き来するからだ。
なら、この時間軸は、どれだ。
しずかちゃんが自殺する世界線か?
まりなちゃんが自殺を選ぶ世界線か?
それとも、ハッピーエンドか?
誰が死ぬ?
いや、そもそも俺という存在がいるせいで、ルートが完全に変わることも有り得る。
そうだ。俺という例外が・・・
俺が、殺される、なんて、ルートも有り得る?
「そうなんだ。すごいんだね、お隣さん」
目の前のしずかちゃんが、とても恐ろしい存在に見えてきた。
目を合わせることができない。
それを誤魔化そうと、チャッピーに目を向けた。
「チャッピー、元気そうだね」
震える体を誤魔化すために、立ち上がる。
声は震えてないだろうか。
「うん、前よりすっごく大きくなったでしょ?」
チャッピーは俺のことを覚えていないのか、じっと俺を見ている。
あぁ、懐かしいな。
昔はあんなにちっちゃかったのに、もうしずかちゃんより大きい。
「お隣さん、こっち来てよ」
そう言って静かに微笑むしずかちゃん。
無邪気な子供の声にも、悪魔の囁きにも聞こえた。
恐怖で呼吸が荒くなる。
おそらく、この子達に関われば、間違いなく誰かの死に出会う。
それがチャッピーなのか、しずかちゃんなのか、まりなちゃんなのかはわからない。最悪俺かもしれない。
1歩、しずかちゃんに近づく。
目が合った。綺麗な目だった。
昔と変わらない綺麗な目だ。
もう一歩近づく。
チャッピーのしっぽが動いた。
匂いで俺のことを思い出したのか、大きくしっぽを振っている。
1歩近づく。
昔の記憶が蘇ってきた。
しずかちゃんと、チャッピーと遊んだ記憶。
あぁ、あれは楽しかった。
もう一歩近づく。
体の震えが止まった。
懐かしい記憶が蘇る。
柵を隔てて、しずかちゃんと向き合った。
昔と変わらないキレイな目をしている。
何かを期待しているかのようにこちらに頭を傾けてくる。
そうだ。
目の前にいるのはしずかちゃんだ。
漫画の設定に恐怖しすぎた。
目の前にいるのはあのしずかちゃん。
人を殺すなんてことをするわけがない。
「久しぶり、しずかちゃん」
そう言って頭を撫でる。
猫のように頭を動かしながら喜んでいるようだ。
服はボロボロで髪もキレイとは言い難い。
小学生だからおしゃれにも興味があるだろう。
まずはお風呂に入れて、それから服を買おう。
あぁそうだ、またお母様に許可を貰わないとな。
その次は遊ぼう。昔みたいに。
チャッピーも大きくなったな。抱き上げるのは難しそうだ。
「久しぶり、お隣さん」
自殺なんて絶対にさせない。保健所なんて行かせない。
この二人がずっと遊んでいる光景をずっと見ていたい。
俺は、全力で守る
この大切な人たちを。
主人公はロリコンじゃないよ
ホントだよ