正義の味方にやさしい世界   作:アンリマユ

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お久しぶりです。前回の更新から大分間が空いてしまい申し訳ありません。学校が忙しかったり、学園祭がったりとバタバタしていました。
まぁ、また授業の方が忙しくなりそうなんですが……なるべく頑張ります。


白き翼の剣士

ホテル嵐山

 

「たっだいまー!」

 

このかの実家から帰る事1時間。ホテルのロビーで自由行動から帰ってくる生徒達のチェックをしていたシロウの耳に、元気な裕奈達4班の声が響く。

 

「おかえり。だが、他にも客がいるんだから、もう少し静にな。で、楽しかったか?」

 

「いやー、最高だったよUSJ!」

 

「そやね、楽しかった」

 

「うん、楽しかった」

 

裕奈の言葉に亜子とアキラが答える。その表情は、皆満足といった感じだ。

 

「そうか、それはよかった。では今日の夜は大人しくしているんだぞ」

 

「ええー」

 

シロウが忠告すると、口を尖らせて不満の声を上げる裕奈。

修学旅行の夜は、いつもと違う状況が楽しくてはしゃいでしまうのもわかる。

だが、3-Aの生徒達は、はしゃぐ程度ではすまない。シロウが副担任になってまだ日が浅いとはいえ、それくらいのことは予測できる。

 

「ええー、じゃない。もし騒いだら和美と同じ目にあってもらうからな」

 

「了解しました!」

 

しぶった裕奈だが、昨日の簀巻きになった和美を思い出し素直に返事をする。

心なしか、他の3人も動きが固くなったが、シロウはそれには気付かなかった。

 

パ~ララ パラ ララ パララ ララ~♪

 

そんな時、ゴットファーザーの曲がホテルのロビーに響く。

 

「長瀬でござる、おや?バカリーダー?」

 

どうやら楓の携帯の着信音だったようだ。

中学生の携帯の着信音がゴットファーザー……いや、深くは考えまい。

 

「どうした夕映殿? まずは落ち着くでござるよ……」

 

なにやら様子がおかしい。シロウがそう思った時、

 

(…け……て)

 

「ん?」

 

頭の中に直接声が響いた。

 

「これは……」

 

(たす……けて……)

 

「……念話?」

 

(……しろう)

 

「このかか!」

 

シロウは返事をしてみるが、それっきり念話は途絶える。

 

「本山で何かあったか!?」

 

その頃、本山は白髪の少年達に襲われ、このかが連れ去られてしまっていた。

その時のこのかの必死の叫びが、パクティオーカードの力によって奇跡的にシロウへ念話(テレパテイア)として届いたのだ。

 

「士郎殿」

 

私が急ぎ足でホテルを出ようとすると、楓が話しかけてきた。

 

「楓か、すまんが急用ができた。何かあれば新田先生か、しずな先生、瀬流彦先生に相談してくれ」

 

「いや……!」

 

悪いとは思ったが、話途中の楓を通り過ぎ、シロウは足早にホテルを後にする。

 

「交通機関では時間がかかりすぎるか───強化(トレース)開始(オン)

 

ホテルから少し離れて人気のない路地裏へ。

筋力を魔術で強化し赤い外套を投影すると、シロウは地面を蹴り民家の屋根の上へ登り、本山へと一直線に向かう。

京都の夜空を駆ける赤い影は、住宅街を通り過ぎ、木々の茂る森の中へと移動する。

本山まであと1㎞くらいの所で、シロウは舌打ちをした。

 

「ちっ、やはり嫌な予感ほどよく当たる」

 

感覚的なものと、視認したもの。二つの情報から結界が破られているのはすぐに分かった。

こんなことになるならば、詠春にもっと白髪の少年の異様さを忠告しておくべきだったと、シロウは自分の迂闊さを責めた。

しかし、今はそんな事を言っている場合ではない。

 

「士郎先生~!」

 

そこへ飛んできた小さな光にシロウは足を止めた。

 

「ちびせつな!!」

 

飛んで来たちびせつなに足を止める。

その体は昨日見た時よりも薄く、向こう側が透けて見えるくらいだ。

 

「本体の方もピンチで長時間私を維持できません。説明は移動しながらで……うっ!!」

 

「!!」

 

飛来した矢をシロウは干将・莫耶で叩き落とす。

しかし、数が多かった矢を全て落とすことはできず、一本がちびせつなへと命中してしまう。

シロウはすぐに武器を剣から弓へと変え、矢を放った犯人である鳥族を射抜いた。

 

「大丈夫か!?」

 

ちびせつなの体から光がどんどん失われていく。

そんな中、彼女の小さな口が動いた。

 

《───すいません》

 

その言葉を聞いた瞬間。シロウの拳は力強く握られる。式紙だから、死んだわけではないというのは分かっている。

しかし、それでも守れなかったことに変わりはない。

 

「……」

 

シロウの周りには森の遥か先から鬼と鳥族が集まりつつある。

だが、シロウは全く動じた様子もなく、鬼たちの方へと振り向いた。

 

「安心しろちびせつな。これだけ大きな道標があるのだ、刹那の所へたどり着くのはたやすい」

 

シロウは螺旋状に捻れた()を投影しながら弦を引く。

 

────I am the bone of my sword.(我が骨子は捻れ狂う)

 

強大な魔力に異形の者達は息を飲む。

主の命によりこの場へ訪れた鬼達は、一瞬の躊躇の後逃げる事を選択した。

しかし、時既に遅し。

 

『───偽・螺旋剣(カラドボルグ)

 

静かに告げられる真名と放たれし螺旋の矢。

鬼と鳥族の絶叫も意に介さず、無慈悲な一撃は空間を歪ませながら森を抜け、空の彼方へと消えていった。

 

「……待っていろ」

 

鬼達の消えた道をシロウは駆ける。護らねばならぬ人の為に。

 

 

 

 

 

 

「……ハア、ハア」

 

数えるのも嫌になるほどの鬼や烏族、狐面の異形の軍勢。

その中心に、肩で息をする2人の少女が立っている。

 

「大丈夫ですか? アスナさん」

 

「う、うん! まだまだ全然へーき」

 

強がってはいるがアスナも刹那も相当消耗していた。

アスナは始めての人外との戦闘に。刹那は敵の数と、アスナを気遣いながらの戦闘に。

 

(まずいな、アスナさんももう限界だ。ネギ先生早くお嬢様を・・・)

 

「ふんっ!」

 

「!!」

 

振り下ろされた棍を夕凪で受ける。

 

「戦闘中に考え事してると命を落とすで譲ちゃん」

 

「くっ……!!」

 

一瞬の油断。

しかし、消耗した刹那には、その一瞬だけで致命的だった。

夕凪を間に割り込ませ直撃は避けたものの、鬼の怪力によって吹き飛ばされる。

今までの疲労も相まってか、起き上がった刹那の眼前には、再び巨大な棍を振り上げる鬼の姿が。

 

「しまっ……!!」

 

刹那がもう駄目だと諦めかけた瞬間。

 

「刹那、伏せろ」

 

そんな声が聞こえた。

 

「え?」

 

一瞬呆けた刹那だが、すぐに言われた通り地面に伏せる。

それは、傍から見れば不恰好だったかもしれない。

しかし、そうでもして急いで伏せなければ、自分が危なかったのだ。

 

「ギャッ!?」

 

鬼の悲鳴と何かの刺さるような音を聞き上を見上げると、鬼の額に一本の矢が刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

 

森を駆けること数分。少し開けた場所に、異形の者達を視認。

そして、その中心で奮闘する少女2人。しかし、刀を持った方の少女が鬼に吹き飛ばされ、危機に陥っていた。

 

「───投影(トレース)開始(オン)。……刹那、伏せろ」

 

シロウは弓と矢を投影。一言刹那に告げると、矢を放った。

 

「ギャッ!?」

 

寸分違わず眉間を打ち抜かれた鬼は塵となり消滅した。

いや、アレは召喚されたものだから、還ったという方が正しいか。

 

「無事か?」

 

「士郎!!」

 

「士郎先生!!」

 

シロウの登場に、安堵と驚きの混ざった表情をする2人。

シロウは手早く2人の無事を確認すると、敵を牽制しつつ口を開いた。

 

「アスナ、刹那。このかとネギ君は?」

 

「お嬢様は呪符使いと白髪の少年にさらわれ、ネギ先生はそれを追っています」

 

「そうか……!!」

 

その時、光の柱が立ち、森の更に奥の方から四つ腕の巨大な鬼が現れた。

その姿は多少の差異はあれど、シロウの知識にある両面宿儺(りょうめんすくな)の特徴と一致する。

 

「ネギ君は間に合わなかったか」

 

ネギは年の割に実力があるし、カモもついているから無茶はしないとは思うが、急いだほうがよさそうだ。

 

「おう兄ちゃん、いきなり現れて何話しこんどるんや?」

 

「そうや、やられたヤツの分きっちり落とし前つけさせてもらうで」

 

鬼達が騒ぎ出す。

どうでもいい事だが、関西の鬼は関西弁で話すのか?

 

「生憎とそんな時間をかけるわけにはいかん。君達には悪いが、一瞬で終わらせてもらう」

 

シロウの手にはいつの間に投影したのか、深紅の槍が握られている。

それはアイルランドの光の神子が使っていた魔槍。

 

「そんなほ細っこい槍でなにができるんや?」

 

シロウは鬼の言葉には耳を貸さず、距離を取りつつ足に強化の魔術をかける。

 

「召喚されし異形の者達よ。存分に恨んでもらって構わない───この一撃手向けと受け取れ」

 

シロウは助走を取り跳躍し、

 

突き穿つ(ゲイ)─────

 

 大きく槍を振りかぶる。

 

 ─────死翔の槍(ボルク)ッ!!!」

 

放たれた槍は、流星の如き速さで鬼達の中心へと刺さり大爆発を起こす。

轟音と共に舞い上がる砂煙。

視界が晴れると、そこには隕石でも落ちたのではないかという程の巨大なクレーター。

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)によって、ほぼ全ての異形の者達が消滅した。

 

「す、すごい!」

 

刹那達は唖然とするしかなかった。

数百体はいたであろう鬼達が、一瞬で指で数えられるほどにまで減ってしまったからだ。

 

本物(オリジナル)ならば今の一撃で殲滅できたのだろうが……私ではこれが限界か」

 

シロウは意図してその台詞を言ったわけではない。

しかし、その台詞は鬼達の戦意を削ぐには十分すぎる言葉だった。

だが、鬼たち式神も召喚に応じた以上ここで戦いを止めるわけにはいかないのだ。

 

「ウ、ウォォオオオ……ガァ!?」

 

雄叫びを上げ襲い掛かってきた鬼達は、シロウ達の背後の森からの狙撃によって煙となって消えていった。

 

「はぁ……まったく君達は」

 

振り向いたシロウは思わず眉間を押さえる。

なんと、森の中にたのは3-Aの生徒。瀧宮真名と古菲だった。

 

「悪いね、衛宮先生。楓に協力を仰がれたし、高畑先生からも何かあったら協力してほしいと依頼されてたんでね」

 

なるほど。只者ではないと思っていたが、彼女はこちら側の人間だったという事か。

にしても楓、あの時私を呼び止めたのはこの事だったのか。急いでいたとはいえ、焦りすぎたか。

確か電話の相手は夕映。この場にいないという事は、楓はそちらに向かったか。

 

「真名の事は納得はしてないが、理解はできた。だが古、君は何故ここにいる」

 

「あはは、友達のピンチに駆けつけるのは当然アルヨ」

 

何ともバカな回答……いや。そこが彼女のいい所なのかもしれない。

大人になってもこのままなら問題だが、今の彼女の歳を考えれば、友達が危険だからという理由で動けるのはとても素晴らしい事だ。

 

「まぁまぁ、衛宮先生。あまり時間もないんだろう? ここは私たちに任せて、先生先に行くといいよ」

 

真名の目つきが変わる。視線の先を追えば、残っていた数対の式神と鬼、そして不敵に笑う月詠の姿。

今の真名を見て分かった。彼女はその年齢に見合わぬ経験があると。それは、おそらく同じ環境にいたシロウだからこそわかる、戦争に身を置いていた者独特の雰囲気。

真名の実力は分からないが、彼女なら月詠相手でも負けないだろうという事は確信できる。古も式神や鬼達程度なら、命の危険はないだろう。

 

「……すまない。ここは任せる」

 

激しい葛藤の末、シロウは真名と古にここを任せる事を判断した。

 

「了解」

 

「任せるアル」

 

真名と古が前へ出る。

 

「逃がしまへんえ~」

 

「行けっ、衛宮先生! あの可愛らしい先生と近衛を助けに!」

 

シロウを行かせまいと、刀を構える月詠の前に2丁のデザートイーグルを構えた真名が立ちはだかる。

 

「刹那、アスナ行くぞ!」

 

「はい! すまん、瀧宮、古!」

 

「う、うんっ」

 

巨大な鬼神目指して森を駆ける。

森を抜けると、先行していたネギ君は白髪の少年に追い詰められていた。

シロウは干将・莫耶を投影しつつ間に割って入り、白髪の少年を牽制する。

 

「大丈夫かネギ君」

 

「シ、シロウさん。すいません、間に合いませんでした」

 

そう言ったネギの体は右腕から石化し始めていた。おそらくは、詠春達を石化させたものと同じ呪い……いや、魔法。ネギの抗魔力がよほど高いのか、石化の進行速度は微々たるもの。これならば、まだ命に別状は無い。早々に決着を着ければ問題ないだろう。

 

「大丈夫だ。まだ何とかなる」

 

「また君か。やはり君は邪魔だね……千草さん」

 

白髪の少年が呪符使いの女に指示を出す。

 

「まかしとき。お兄さんこの間はよくもやってくれましたなぁ、くらいなはれっ!」

 

少年の指示もあるが、先日の事がよほど悔しかったのだろう。

千草と呼ばれた女が何か呟くと、スクナから高濃度の魔力が放射された。

 

I am the bone of my sword(体は剣で出来ている)

 

呪文とともに右手を突き出す。

引き出したるは、我が丘にある最高の盾。

 

「『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』!!」

 

現れた七枚の桃色の花弁がスクナの砲撃を止める。

 

「ぐっ!」

 

直撃と同時に花弁が一枚欠ける。

 

「む……!」

 

二枚。

 

三枚目の花弁にヒビが入ったところで、スクナの砲撃を受けきった。

 

「まさか、アイアスが二枚も散るとは。投擲武器ではないとはいえ、流石は大鬼神といったところか」

 

冷静に言いはいしたものの、このままではまずい。

このかからの膨大な魔力供給があるスクナは、まだまだ強力な魔力砲が放てるだろう。

しかし、私はそう何度もアイアスが投影できるわけではない。

 

「このかを早く助けなければ、我々の負けか」

 

その言葉を聞き刹那が口を開く。

 

「士郎先生、お嬢様は私がお救いします」

 

刹那の言葉は何か覚悟を決めたのか、とても重みがあった。

まるで、大切なモノを護る為に何かを犠牲にしようとしているかのような。

 

「出来るのか? いや、いいのか?」

 

シロウのまるで全て理解しているかのような言葉に、刹那は一度目を見開いた後、コクリと頷いた。

 

「……はい。士郎先生、ネギ先生、アスナさん。私はこのかお嬢様にも皆さんにも秘密にしていた事があります」

 

どこか寂しげに言う刹那。

 

「この姿を見られたら、もうお別れしなくてはなりません。でも今なら……あなた達になら」

 

舞い上がる無数の羽根が月明かりに照らされ、幻想的な白銀の世界が作り上げられる。

その中心で、まるで天使のように背中から美しい白い翼を生やした刹那が軽く羽をはばたかせた。

 

「これが私の正体……やつらと同じ化物です。でも誤解しないで下さい、お嬢様を守りたい気持ちは本物です! 今まで秘密にしていたのは、この醜い姿をお嬢様に知られて嫌われるのが怖かっただけ……!」

 

自分を卑下する刹那の頭ににシロウは ポンッ と手をのせる。

 

「?」

 

「刹那、自分の事を化け物なんて言うものではない。そもそも、化け物の定義を間違えている」

 

「化け物の……定義?」

 

刹那は、わからないといった感じで首をかしげている。

 

「いいか、化け物や怪物と呼ばれる者達は、皆理性を持って殺人を行う者達だ。だが、今の君は殺人はおろか、自分の大切なモノを護る為に自身が忌み嫌う力をも使おうとしている」

 

刹那は無言でシロウの言葉に耳を傾ける。

そんな刹那に、シロウはとても優しく、そして力強い声で言った。

 

「自信を持て。君は化け物なんかじゃない。それに、綺麗な羽じゃないか。その君の(チカラ)で、このかを助けてやってくれ」

 

「そうだよ刹那さん! 士郎の難しい話はよくわかんなかったけど、こんなの背中に生えてくるなんてカッコイイじゃん!」

 

「士郎先生、アスナさん……」

 

2人の言葉に、刹那は涙が出そうになるのを必死に堪える。

 

「行け刹那、援護は任せろ。アスナとネギ君は、白髪の少年を抑えてくれ」

 

「はい!」

 

「任せて!」

 

「わかりました!」

 

刹那は涙を拭い、大きな白い翼を広げて空へ。

ネギとアスナは今までの疲労はどこへやら。気合十分、白髪の少年絵と向き直った。

 

「て、言っても私たちだけでアイツを止めるのって厳しくない? ネギもボロボロだし」

 

返事をいしたはいいものの、自分の体力的な問題と、ネギの容態を見て不安そうな顔をするアスナ。

 

「フッ、なに、そろそろ助っ人が来るはずさ」

 

「助っ人?」

 

私の予想が正しければ、そろそろ……

 

(……ぼーや、聞こえるか?ぼーや)

 

その時、聞き覚えのある声が頭の中に響く。

 

「きたか」

 

「こっ、この声は!」

 

(フフフ、わずかだが貴様の戦い覗かせてもらったぞ。まだ限界ではないはずだ、ぼーや意地を見せてみろ! 後1分半持ち堪えられたなら、私が全てを終わらせてやる!)

 

「この声、これってまさか……」

 

「ああ、姐さん!!」

 

突然のエヴァの言葉に喜ぶアスナとカモ。

顔には出さないが、シロウも作戦がうまく言ってほっとしている。

 

(ぼーや、貴様は少し小利口にまとまり過ぎだ。今からそれじゃ、とても親父(あいつ)にゃ追いつかんぞ? たまには後先考えず突っ込んでみたらどうだ。ガキならガキらしく後の事は大人に任せてな)

 

「クッ、子供姿の君がよく言う」などと思いはしたが、口に出せば何を言われるかわからないので黙っておく。

 

「ふ~……アスナさん」

 

エヴァの言葉を聞き深呼吸をするネギ君。

 

「行きます!」

 

「OK!」

 

気合を入れ直し、白髪の少年に向かっていく。

さっきまでの空元気はどこへやら、その背中はとても頼もしく見えた。

 

「フッ、あれならば問題はないか」

 

後ろの心配をしなくて良くなったので、シロウは弓を引き刹那の援護に集中する。

 

(エミヤシロウッ! 貴様には後であの剣(・・・)の説明をしてもらうからなっ!)

 

……やれやれ、困ったものだな。

 

 

 

 

 

 

刹那はこのかの下へ飛ぶ。

シロウがスクナの攻撃を()で弾いるので、刹那は安心して飛べる。

 

「天ヶ崎千草、お嬢様を返してもらうぞ!」

 

刹那が現れた事により千草は2体の式紙召喚するが、縦横無尽に空を翔る刹那に式神達は一瞬で斬り伏せられる。

 

「な!?」

 

自身の式紙が一瞬で消され、驚愕した千草の隙を突いて、刹那はこのかを救出に成功した。

 

「お嬢様! ご無事ですか!」

 

「ああ、せっちゃん……また助けに来てくれたんや~」

 

刹那に抱かれ視線が合った瞬間、柔らかな笑みを見せるこのか。

 

「お嬢様」

 

このかに異常が無い事に刹那は安心する。

 

「せっ、せっちゃんその背中」

 

「あ、いや、これは、その」

 

穏やかな気持ちは一瞬で焦りへと変わる。仕方なかったとはいえ、知られてしまった。

お嬢様は、自分のことをどう思うだろうか? 驚かれるだろうか? いや、驚くだけならばまだいい。

だけどもし、怖がられたり嫌われたりしたら? そんな不安が頭の中を埋め尽くす。

しかし、このかからは、まったく違う台詞が紡がれた。

 

「キレーな羽、まるで天使みたいやな~」

 

「あ……」

 

ああ。その言葉だけで、先ほどまでの暗い気持ちが嘘のように晴れていく。

 

 

 

 

 

 

 

「キレーな羽、まるで天使みたいやな~」

 

その光景を見て、シロウは自然と頬が緩む。

 

「上手くいったみたいだな」

 

月の明かりに照らされて降り立つ、白き翼の剣士とやさしい少女。

その光景はとても幻想的で、既に摩耗したはずの遥か昔の記憶がよみがえる。

 

《問おう、貴方が私の────》

 

「……オレとセイバーの出会いも、確かこんな感じの月の綺麗な晩だったな」

 

背後では大きな轟音。我に返りネギ君の方を見ると、エヴァが白髪の少年を吹き飛ばしている所だった。

 

「あちらも終わったようだ」

 

「士郎先生」

 

「しろう~」

 

こちらに向かって歩く少女と、駆けて来る少女。

 

「刹那、このか 無事でよかった」

 

言いながら、このかに投影した外套をかける。

 

「しろうありがとな」

 

「なに、約束したからな。このかが困った時は助ける、と」

 

「えへへ~」

 

先ほどまで敵に捕らわれていたというのに、このかからは恐れや恐怖といったものが微塵も感じられない。本当に強い子だ。

 

「さて。エヴァに任せきりというのも悪いし、最後は私が決着(ケリ)を着けるか」

 

ヤツらには、多少……いや、かなりの怒りを感じている。

その穏やかな口調とは裏腹に、シロウの拳は強く握られ、その歩みは一歩一歩重みを感じる。

 

「しろう、大丈夫なん?」

 

このかが心配そうに声をかけてくる。

 

「ああ、このか。一ついいかな?」

 

そんなこのかを安心させる為、私は自信を持って答えよう。

 

「心配してくれるのは嬉しいが───別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」

 

「あはは、なんだかしろう正義の味方みたいや」

 

そんな事を言うシロウを見て、このかはきょとんとした後、ふわりと笑った。

シロウの方もこのかの言葉を聞き、苦笑いをしながらスクナへと向かっていく。

 

「正義の味方か……」

 

私にその名を語る資格は無いが、君が私を正義の味方と呼ぶのならば───

 

 

「────期待に応えるとしよう。我が主(マスター)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




このかの救出成功! そして、次回ついに修学旅行編クライマックスです。ついに、ついにあの剣が登場か!?
と、あまり書くこともないので、宝具の説明に行きたいと思います。


偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)
第五回聖杯戦争におけるアーチャー(エミヤ)が投影する剣。
本物(オリジナル)のカラドボルグは『硬き稲妻』を意味するアイルランドの英雄フェルグスが所有したとされる魔剣だが、これはアーチャーが矢として使えるように改良して投影した別物。
クーフーリンの天敵とされる魔剣で、この所有者がウルスターゆかりの者であった場合、クーフーリンは自らの誓約(ゲッシュ)により一度は敗北しなければならない宿命を負っている。


刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)or突き穿つ死翔の槍』
クー・フーリンが影の国で手に入れた魔槍。禍々しい形状をしており、呪いを内包している。
“刺し穿つ死棘の槍”と“突き穿つ死翔の槍”の二通りの使い方がある。
因果を逆転させる“原因の槍”。先に心臓を貫いたという結果を作り、その後に心臓を貫くというものだが、この効果は“刺し穿つ死棘の槍”でしか発揮されない。
これで刺された者はこの世にゲイボルクが存在する限り決して回復できず、死に至るまで傷を背負うことになる。それを回避することはよほど幸運でない限り不可能。
一説には威力を増すために足を使って投げていたといわれ、その投擲法こそが『ゲイ・ボルク』であるとされている。
その原型は北欧の主神オーディンの『大神宣言(グングニル)』。


熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)
ギリシャ神話における一大戦争、トロイア戦争で使用された英雄アイアスの盾。英霊エミヤが唯一得意とする防御用の兵装。
青銅の盾に牛皮を七枚重ねたもので、何人たりとも防げなかったというギリシャの大英雄ヘクトールの投槍を防いだ(この折、六枚の牛皮を貫かれたが七枚目で防ぎきった)。
以後、投擲兵器に対する絶対の防御力を誇る概念武装として広まり、存在を昇華した。
七枚の花弁の如き守りはその一枚一枚が古代の城壁に匹敵する。
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