感想の方はもう少し待ってください。一応チェックはしていますので、いずれまとめて返事させていただこうと考えています。
ネギの弟子入りテスト翌日。あの一件からシロウはまだネギ達と会っていない。
こちらで一日たったと言うことは、向こうではもうかなりの日数がたっているはず。今日は日曜日で学校も休みだから、おそらく満足いくまでエヴァのもとで修業を受けているのだろう。
一応テストの時の事を謝罪しに行こうとは思っているが、寮長としての仕事を忘れるわけにもいかず、現在は寮の掃除をしている。最近、別荘での修行でよく寮を空けていたからだいぶ汚れてきてしまった。
「ああっ、どうすれば~~~~~」
「何やってるんだ、あやか?」
箒で廊下を掃いていると、なにやら頭を抱え奇怪な動きをする人物、見雪広あやかを見つけ話しかける。
「え、衛宮先生!? ……み、見ておられましたの」
「ああ、何か困り事か? 私でよければ力になるが」
奇怪な行動を見られたのが恥ずかしいのか、顔を赤くして小さくなるあやか。
多少おてんばな所があるとはいえ、普段品行方正な彼女があそこまでおかしな行動をしているのだ、何かしらトラブルがあったと考えるのが妥当だろう。
「いえ、なんでもないんです」
手をパタパタと顔の前で振り遠慮するあやか。そんなにあわてる事もないだろうに、やはりシロウはまだクラスに馴染めてはいないらしい。
これはまずいと思い、シロウは更に会話を進めた。
「遠慮する事はない。せめて話だけでも聞かせてくれないか? 力になれるかもしれん」
「そ、そうですか? ……あの」
真摯なシロウの目に、あやかはおずおずと口を開き語り始めた。
どうやら、あやかの外国の友人の父親が主催するパーティーに招待されたらしい。だが、今日に限ってあやかの家の執事が体調を崩し困っていたそうだ。
「ほかに執事はいないのか?」
「いるにはいるのですが、パーティーに連れて行くとなると……」
「まだ執事としては未熟」とのことだ。友人の父親主催のパーティーに未熟者を連れて行くわけにもいかないのだろう。
生徒が困っているのだ、たまには教師らしく生徒を助けるか。と、シロウは自信に満ちた声で言った。
「では、私があやかの執事役をやろう」
「え、衛宮先生が? それはありがたいんですけど……あの、失礼ですけど先生は執事の体験がおありで?」
あやかはいぶかしむようにこちらを見る。仕方ないだろう。何せシロウの外見は18歳、執事の経験などあるとは思えない。
「前に知り合いの家で執事として働いていてね、それなりには役に立つと思うが?」
シロウ自身それが自分の記憶であるかどうかあいまいだが、英霊エミヤは確かに生前執事のバイトをした事があった。
「……では、申し訳ありませんが、一応家の方でテストをさせていただいても?」
あやかはしばし悩んだ挙句、他に案がなかったのかシロウの腕を見てからと了承する。
その後、一度あやかの実家に行き1時間ほど使ってあやかの身の回りの世話をした結果、問題なく合格。着替えてから車でパーティー会場へと向かう。
「それにしても、衛宮先生執事としての技量もさることながら燕尾服が似合いすぎですわね」
執事服姿のシロウをまじまじと見てあやかが言う。
「とりあえず、褒め言葉として受け取っておくよ、あやかお嬢様」
そうこうしているうちにパーティー会場であるホテルに到着する。
あやかをエスコートし会場内へ入ると時間ギリギリだったらしく、直ぐにパーティー主催者の挨拶が始まった。
「あの方が私の友人ですわ」
あやかに言われてステージを見る。
「今日は宝石店エーデルフェルト主催のパーティーに来ていただき、真にありがとうございます」
ステージの上で話す男の後ろに1人の少女がいる。ステージ上にいると言うことは、宝石を取り扱っている会社の令嬢なのだろう。
「……ん? エーデルフェルト? どこかで聞いたような……」
磨耗した記憶の中から微かに残る記憶を探る。
思い出すのは、あかいあくまにも匹敵するきんのあくま。その名は───。
「あら? あやか、来てくれたのですね」
「ルヴィアさん! お久しぶり」
考え事をしているうちにステージから降りた少女が、あやかの下へやってきていた。
「衛宮先生、ご紹介します。私の友人ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトさんですわ。ルヴィアさん、こちら衛宮士郎さん。私の学校の先生で、今日は私の執事の代わりをして下さってるんですの」
「はじめまして、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトと申します」
「はじめまして、エミヤシロウという」
青いドレスを着た金髪縦髪ロールの少女ルヴィアゼリッタが優雅にお辞儀をする。
それに倣い、あやかに恥をかかせぬよう完璧な礼で返す。
「あやか、ミスタエミヤ、私は他の方へ挨拶に回りますので失礼しますが、楽しんでいって下さい」
そう言ってルヴィアゼリッタは去っていく。
あの容姿、立ち振る舞い。間違いなく彼女はシロウの知るルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトだった。
おそらくは並行世界の彼女なのだろう。
「さあ、衛宮先生。せっかくですからお食事でも楽しみましょう」
「そうだな」
あやかをエスコートしつつ共に食事をしていると、しばらくして疲れた様子のルヴィアが戻ってきた。
「やっとあいさつ回りが終わりましたわ」
「お疲れ様、ルヴィアさん」
シロウはすかさず近くにいたうウェイターから飲み物を貰いルヴィアへと渡す。
「あら? 気が利きますわね、ミスタエミヤ」
「なに、執事として当然の事だよ」
ルヴィアはシロウから受け取った飲み物を飲みながらあやかと話を始める。
その姿は先ほどまでの社交的な彼女とは異なり、年相応な女の子の姿だった。
それから3人で談笑をしていたのだが、この場にそぐわない雰囲気を出した黒服の男達が数人会場へ入ってきた。
「む?」
「衛宮先生?」
「どうかしまして、ミスタエミヤ?」
シロウの様子が変わった事に気づき、あやかとルヴィアがどうしたのかと聞いてくるが、何事もなかったかのように笑顔で応え、その場を離れる。
「何が狙いかはわからんが、この場にそぐわない者たちは早々に退場願うとしよう」
シロウは男達が会場に入った時、懐の不自然な膨らみが気になり解析したのだが、男達は皆懐に銃を忍ばせていたのだ。
これだけ人がいる会場で銃を出されては確実に怪我人が出る。
黒服の男まであと5mという所で。
「しまった!」
電気が消され会場がパニックになる。
「ちっ! まずいな、あやかとルヴィアの所に戻らねば」
シロウは引き返し、人を掻き分け戻ろうとした瞬間。
「きゃっ! ……何をなさむぐっ!」
「ちょっ! ……むぐっ!」
小さな悲鳴が聞こえた。
(今のは、あやかとルヴィアの声?……そうか! 狙いはルヴィアか!!)
大手の宝石店の令嬢であるルヴィアが狙われたのだとすれば合点がいく。
大方騒ぎに乗じて誘拐し、身代金でも要求するつもりなのだろう。そして、あやかはそれに巻き込まれた。
「だとすると、先程の黒服達は逃走経路の確保といった所か……」
急いであたりを見渡すが、黒服達は見当たらない。
逃げるとすればおそらくは車。シロウはビルの屋上へと上がり視力を強化して街を見下ろす。
「……あれか」
その中に、前の車を次々と抜いていくナンバープレートのない車を見つける。車を見つけるとすぐに足を強化しビルからビルへ、屋根から屋根へと跳び、車は港近くの倉庫で停車しあやかとルヴィアは倉庫内へ運ばれていった。
「なんともベタな展開だな」
何故ああいう輩はこういう時倉庫を使うのだろう? 倉庫が好きなのか?
そんな事を考えながらも、シロウは近くの公衆電話から警察に連絡を入れ、倉庫の屋根に空いている穴から中へ進入し鉄骨の上に身を潜める。
倉庫内
(……迂闊でしたわ。まさか、パーティー会場で襲ってくるなんて)
ルヴィアは焦っていた。
自分が狙われている事は知っていたが、まさか人の多いパーティー会場で襲ってくるとは思いもしなかった。
しかも無関係のあやかまで巻き込んでしまった。
(私1人ならば逃げる事は容易いのですけれど……)
横で気絶しているあやかを見て、ルヴィアじゃ小さく微笑む。
「友人を置いて自分だけ逃げるわけにはいきませんわね」
そう、縛られてはいるが縄を解いて逃げる方法ならある。
だが、気絶しているあやかを連れてとなると話は別だ。最悪の場合怪我をさせてしまう。
「エーデルフェルトのお嬢さん、悪いがアンタを利用させてもらうぜ」
黒服の男達のリーダーらしき男が話しかけてくる。
「あらあら、この私を利用するだなんて、なんと贅沢な方達なんでしょう。……それよりも、彼女を帰してあげてくれませんこと? 彼女は私の友人というだけで貴方達には必要ないでしょう?」
「そいつはできねぇな。そんな事して計画が狂っちゃ洒落にもなんねぇ」
だめもとであやかを帰すよう言うが、やはりダメだった。
「なあ高田さん、ちょとくらいこいつらに悪戯してもいいよな?」
黒服の男が先程のリーダーと思わしき男(高田というらしい)に話しかける。
「交渉材料の御嬢さんにはまだ手ぇ出すな。お友達の方は好きにしろ」
「へへっ、そうこなくっちゃ」
男は下品な笑いをしながらあやかに向かって手を伸ばす。
「おやめなさいこの下郎! 貴方如きが私の友人に指一本触れることは許しません!!」
縛られたルヴィアが何を言っても男は一向にやめる気配がない。
(仕方ありませんわね)
ルヴィアが仕方なく
「そこまでだ」
天井から声が聞こえ、目の前に白髪で燕尾服を着た執事が舞い降りた。
鉄骨の上からルヴィア達の様子を観察する。
(あやかは気絶しているようだが、見た感じ怪我はなさそうだな)
あやかに怪我がないことに安心しながらもルヴィアとリーダーらしき男の会話を聞く。
やはり目当てはルヴィアだったようだ。2人の会話が終わると、1人の黒服が男に話しかける。
「なあ高田さん、ちょとくらいこいつらに悪戯してもいいよな?」
「交渉材料の御嬢さんにはまだ手ぇ出すな。お友達の方は好きにしろ」
「へへっ、そうこなくっちゃ」
(ふん、とことん腐ったやつらだな)
ただの誘拐だけならば警察が来るまで様子を見ようかとも考えたが、あやかとルヴィアに手を出すというのならば黙ってはいない。
「そこまでだ」
その言葉と同時に私シロウは黒服とルヴィア達の間に飛び降りる。
「な!?」
「ミ、ミスタエミヤ!? どうして貴方が!?」
「どうしても何も、君達を助けにきたに決まっているだろう」
シロウが突然現れたことにより、その場にいた全員が驚く。
しかし、当のシロウは普段と何一つ変わらない様子で言って、服の中に手を入れナイフを投影。ルヴィア達の縄を切る。
「何者だ、てめえは!!」
「ふむ、本当ならば貴様らに様なクズに名乗ることはないが、この場ではあえてこう名乗ろうか───
「執事だぁ? ふざけんな!!」
「ふっ!」
シロウは殴りかかってきた男を蹴り飛ばす。強化された蹴りは容赦なく男を壁まで吹っ飛ばし、男はその場で気絶した。
「てめぇ、やりやがったな! やっちまえ!!」
その掛け声と同時に、数十人の黒服達が突っ込んでくる。だが、チンピラ如きがシロウの相手になるはずもなく、全てを迎撃され気絶するはめに。
「やるねぇ、兄さん」
すると、今まで座って見ていた高田と呼ばれていた男が立ち上がる。
その雰囲気、どうやら今までの黒服達とは違うらしい。
「おとなしく捕まるのであれば、こちらもこれ以上危害は加えないが?」
言っても無駄だろうが一応警告はしておく。
「はっ、ここまできてやめられるかよ」
そう言って高田は右手を突き出す。その指には杖の代わりとなる指輪。
「
高田は火属性の魔法の射手を放つ。ルヴィアに見られてしまうが、この場合は仕方ないだろう。
「
「なんだと!?」
何の魔力も篭っていない普通の剣を51本投影し、魔法の矢を相殺させる。
さすがにこれは予想外だったのか、高田は驚きの声を上げる。
「さて、おとなしくしてもらおうか」
「アル……げふっ!?」
高田が更に呪文を唱えようと始動キーを口にした瞬間、シロウのの背後から放たれた一本の
「まさか、ミスタエミヤが魔法使いだとは思いませんでしたわ」
「私も君が魔法使いだとは思わなかったよ。ミスエーデルフェルト」
声に反応して振り向くと、そこには人差し指を突き出したルヴィアがいた。
「ちくしょう、なめやがって!
ルヴィアの魔法の射手で気絶していなかったのか、高田は再び魔法の射手を放つ。
だが、ルヴィアの攻撃が効いていたのか先程よりも矢の本数が少ない。
「往生際の悪い……ルヴィア?」
また剣を投影して防ごうとしたところをルヴィアに手で止められる。
「私の友人を危険な目にあわせた事、後悔させて差し上げますわ。くらいなさい!!」
そう言った瞬間、ルヴィアの指先から連続で打ち出される
それはまさに、シロウのの世界の彼女がガンドを撃っているようであった。
「なるほど、面白い使い方をする」
一度に複数放つことのできる魔法の矢。それをな何故単発で放ったのか。
それは詠唱をして何本も矢を出すよりも、ノータイムで出す事のできる無詠唱の魔法の射手を連続で放つ方が魔力運用の効率がよく、隙も少ないからだ。
言ってみれば簡単だが矢一本ずつとはいえ、無詠唱の魔法の射手を連続で放つ事は難しいだろう。
これだけでも、彼女が凄腕の魔法使いだと言うことが見て取れる。
「隙ありですわ!淑女のフォークリフトと呼ばれた私の実力、思い知りなさい!! 」
魔法の射手の衝突で視界が遮られた瞬間、ルヴィアは男へ向かっていく。
そして男の後ろに回りこみ、男にジャーマン・スープレックスを喰らわせた。
「さて、これで終わりですわね。帰りましょうか、ミスタエミヤ」
「クックックッ、了解した」
何事も無かったかのように優雅に言うルヴィアに思わず笑いが漏れてしまう。やはり平行世界でも彼女は彼女のようだ。シロウは懐かしさと同時に、とても嬉しく思った。
警察には連絡してあるし、後は任せても平気だろう。あやかを背負いルヴィアと共にホテルへと向かう。
「ミスエーデルフェルト、君は忘却の魔法を使えるか?」
「ええ、当然ですわ。ですが、それがどうかしまして?」
突然の質問に対し、ルヴィアは首をかしげる。
「あやかの記憶を消してやってくれ。今日のようなことは忘れた方がいい」
「あら? ですがそれでは、あなたが何の為に助けに来たか分からないのではなくて?」
驚いたような、不思議そうな表情で言うルヴィアに対し、シロウは当然のように言う。
「構わんさ、別に感謝が欲しかったわけでもない。あやかと君が無事だという結果だけで、私は十分満足さ」
心底嬉しそうに言うシロウの言葉にしばし唖然とするルヴィア。
だが一変して表情を笑顔に変え、背負われたあやかの髪を撫でる。
「そうですわね。貴方の言う通り、誘拐された記憶なんて忘れた方がいいですわ。記憶の方は私にお任せください」
「ああ。では頼むよ、ミスエーデルフェルト」
「ルヴィア」
「?」
いきなりの発言に?が浮かぶシロウ。
「ルヴィアと呼んで頂いて構いませんわ」
───ああ、そういうことか。
久方ぶりに呼べるその名にできる限りの親愛を込め、シロウは口を開いた。
「了解したよ、ルヴィア。私の事も好きに呼んでくれて構わん」
「ではシェロと、そう呼ばせてもらいますわ」
名前を呼んで赤くした顔をそらすルヴィア。
シェロ……どうやらこちらの世界のルヴィアもシロウがうまく発音できないようだ。
でも、それがなんだか懐かしくて無性に嬉しかった。
「ククッ」
「な、なんですの? シェロ」
「いや、なんでもないさ」
「?」
こうして、2人並んでホテルを目指し歩く。
ホテルに着くとルヴィアが車を出してくれたので、あやかを家まで送り寮へと戻るのであった。
日常パートそのⅡです。偶にちょこちょこ挟んでいきます。
次回はネギの過去、その次がエミヤの過去編になると思います。
それでは、また次回!!