正義の味方にやさしい世界   作:アンリマユ

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お久しぶりです。久々の投稿です。
更新が遅くてホント申し訳ありません。社会人になったら忙しくて全然書く暇がなくて……(泣)
とりあえず昨日から10日ほどお盆休みをもらえたのでまた少し更新していきたいと思います。


天賦の剣VS凡賦の剣

 

 

 

「……さて、そろそろ出るか」

 

このか達が出て、気づけば1日が経っていた。それでも外に出れば1時間しか経っていないのだから便利なものだ。

別荘を出てエヴァと茶々丸に一言声をかけ外に出る。外は雨が降っていたので、足早に寮へと向かった。

寮へ着き人気のない廊下にふと寂しさを感じる。すると、正面から真名がやってきた。

 

「どうしたんだい士郎さん? ぼーとして」

 

「この寮はこんなにも静かだったかなと。少し寂しさを感じていた」

 

シロウの声はどこか疲れているような、それでいて自嘲気味な感じがした。

 

「士郎さんらしくないね」

 

そんなシロウに、真名も苦笑いを返す事しかできなかった。

そこへ、刹那がやってくる。

 

「あの、士郎先生」

 

「刹那か。どうした」

 

刹那は気まずそうに視線を落とすが、意を決して顔を上げる。そして、頭を下げた。

 

「すいませんでした」

 

「君に謝られる理由が思いつかないのだが?」

 

「その……最近、先生を避けてしまって」

 

「気にするな。私は避けられて当然の行動をしてしまったのだ。……覚悟はしていたさ」

 

普段以上に、否、普段多少なり表情に変化のあるシロウから表情が消える。覚悟はしていた。だが、辛いものは辛いのだ。

刹那も裏の世界にかかわっていくつか仕事をしているから、多少ではあるがシロウの気持ちが理解できてる。

救いたいものが救えなかった気持ちも。他人から蔑まれる気持ちも。

 

「ですが、先生はネギ先生を心配してあんなことをしたのでしょう!? それなのに、先生を避けるようなまね……!」

 

それは、記憶で見た生前シロウが受けた仕打ちと似た状況だ。それを自分がしてしまっていたことに刹那は悔やむ。

そんな刹那の頭に、暖かな手がのせられた。

 

「ありがとう」

 

その笑顔がやさしくて。のせられた手のひらが暖かくて。シロウが本当に感謝をしているのがわかってしまったから、刹那はそれ以上何も言えなかった。

 

「せっちゃん」

 

と、そんな時このかの声がして顔を向けると、そこには裸のこのかがいた。

 

「わぁぁぁああああ!!! 何でハダカなん!? このちゃん」

 

複雑な思いもどこへやら、口調が京都弁に戻るほど刹那はテンパる。

 

「む?」

 

だが、このかの格好がおかしい事もさることながら、このこのかからは人の気配がしない。

それに何か真水……淡水の様なにおいがする。

 

「刹那!」

 

「ふぇ!?」

 

テンパる刹那の襟首をつかみこちらに引き、このか(偽)を蹴り飛ばす。

その刹那、ホルスターから銃を抜いた真名がこのか(偽)の額をを撃ち抜いた。

 

「し、士郎先生、龍宮! 何を……!?」

 

驚く刹那だが蹴飛ばされたこのか(偽)の方を見て表情をすぐ剣士へと変え、蹴り飛ばされたこのか(偽)は、ぐにぐにと変形して水のような体に変化する。

 

「チッ、失敗カ。やはりエミヤシロウは邪魔だナ。サムライに任せるべきだったゼ」

 

「士郎さん、そいつはスライムというやつだ。通常の打撃や斬撃は効果がない」

 

真名は銃の弾丸を対魔物用の特殊弾に変えつつ言う。

 

「ヘッ、ここは退散するゼ」

 

そう言うとスライムは溶けるように消えてしまった。

このかの姿で刹那を捕らえようとしたという事は、このかは既に捕らえられている可能性が高い。

そして、気になるのはスライムの言っていた「(サムライ)」という言葉。

 

「私はエヴァに侵入者の事を聞きに行く。刹那はこのか達の安否の確認を。真名は寮の警護を頼む」

 

「わかりました」

 

「了解」

 

刹那と別れ、急いでエヴァの別荘を目指す。

幸い雨ということもあり人通りがほぼなかった。街中を全力で駆け、数十分ほどでログハウスは見えてきた。

 

「エヴァ!」

 

「いきなり何だ? ノックぐらいしたらどうだ」

 

いきなりの来訪に不機嫌そうに言うが、そんなことを気にしている余裕はなかった。

 

「侵入者が現れた」

 

「なに? ……ちっ、気のせいではなかったか」

 

実はエヴァは何者かが侵入した可能性に気づいていた。

シロウがログハウスを出た直後、僅かだが学園内への魔力干渉を感じたが、あまりにも僅かだった為確認を怠ったのだ。

 

「このか達が襲われた可能性がある。侵入者の居場所を知りたい」

 

「そいつらが魔力(チカラ)を使えばわかるが、今は気配がないな」

 

「そうか……」

 

「士郎先生ー!」

 

その時、物凄い勢いでちびせつながやってきた。

 

「お嬢様達はすでに捕らえられていました」

 

「っ、やはりか」

 

「何故かはかりませんが那波さんも連れ去られ、現在その場に居合わせたネギ先生と犬上小太郎と共に後を追っています」

 

犬上小太郎……京都の時の狗族の少年か。確か今は詠春が身柄を預かっているはずだが?

まぁ、事情はいい。直ぐに向かわねば。

 

「敵は何者かわかるか?」

 

「犬上小太郎の話によると、相手は悪魔だそうです」

 

「悪魔か……ネギ君の村を襲ったやつの生き残りか」

 

悪魔にスライム。ネギの過去に出てきた奴らと同じ。なら目的はネギということになる。

 

「エヴァ」

 

「ああ。お前の予想通り、ぼーやの村の事件の生き残りかなんかだろう」

 

エヴァも同じ意見らしい。その恰好は既に出かける準備を終えている。

 

「ちびせつな、案内を頼む」

 

「はい!」

 

森の中を進む途中エヴァは言った。

 

「貴様は手を出すなよ。これは、ぼーやにはいい経験だ。それに、周りの連中もこちらの世界に足を踏み入れる事がどういうことか理解するだろう」

 

確かにエヴァの言う通り、これは必要な経験だと思う。自分達の踏み入れる世界がどれほど危険かと言うことを知ることができるいい機会だろう。

だが、それを素直に容認できるシロウではなかった。

 

「約束はできんな。命に危険があるようなら介入する。それに……」

 

「なんだ?」

 

「いや。なんでもない」

 

スライムの言っていた侍の存在が気になる。杞憂で終わればいいのだがな。

 

 

 

 

 

 

「皆さん無事でしょうか?」

 

「ネギ先生を来させる為の人質でしょうから無事だと思います。士郎先生にも式紙で連絡しましたのですぐ来てくれるかと」

 

刹那、ネギ、小太郎は、現在ヘルマンに指定された世界樹の下にあるステージへと向かっている。

 

「見えたぜ兄貴!」

 

カモの声に反応してステージを見ると魔法を知っているメンバー+千鶴が捕らえられていた。

 

「先制攻撃やネギ!」

 

「う、うん! ラス・テル・マ・スキル・マギステル 魔法の射手(サギタ・マギカ) 戒めの風矢(アエール・カプトウーラエ)!!」

 

小太郎の声を合図に、ネギは捕縛魔法である風の矢を放つ。

しかし、ネギが放った戒めの風矢はへルマンの手前でかき消されてしまった。

 

「あなたは誰ですか! こんな事をする目的は?」

 

「人質をとってすまなかったね。私はただ君達の実力が知りたいのだよ。私を倒す事ができたら彼女達は返す。話は以上だ」

 

どうしてネギの実力を知りたいのかはわからないが、今の所人質に怪我はない様なので刹那は安堵する。

そしてすぐに気を引き締め夕凪を抜いて構える。それに続きネギも構えるのだが。

 

「よしっ! 僕が行く。小太郎君は下がってて!」

 

「何!?」

 

ネギの一言が癇に障ったのか、ネギと小太郎は口喧嘩を始めてしまった。そんな一瞬の隙を突き、3対のスライムが襲い掛かってくる。

が、冷静だった刹那は瞬時に3体のスライムを切り捨て一喝。

 

「今は喧嘩を場合ではないでしょう!」

 

「す、すいません」

 

「すまん」

 

「いいですか。今は協力しなければこのかお嬢様たちを助けることはできません。2人とも冷静になってください」

 

やっと本来の目的を思い出した2人は協力して戦いだす。戦闘力があまり高くないスライムをネギと小太郎に任せ、刹那はヘルマンへと接近する。

 

「はぁ!」

 

「む?」

 

刹那は連続で夕凪を走らせるが、ヘルマンは刀の腹の部分に拳を当てすべて逸らされてしまう。

 

「やれやれ。私はネギ君の実力を測りに来たんだがね」

 

刹那が本気で打ち込んでいるにもかかわらず、ヘルマンの態度は変わらない。むしろ余裕が見える。

 

「小次郎君。すまないが彼女も任せていいかな?」

 

「!?」

 

ヘルマンがそういった瞬間、夕凪が割って入った長刀に止められる。

 

「ふむ。目的は違うがまあよかろう。ヤツと死合う前に、小鳥と戯れるのもまた一興か」

 

「……お、お前は!」

 

現れたのは陣羽織を着た侍。それは紛れもなく、先ほどシロウの記憶で見たサーヴァント アサシンだった。

 

「何故アサシンがこんな所に……」

 

「ほう? 私をアサシンと呼ぶという事は、アーチャーに話を聞いたか? 一度しか剣を交えた事はなかったが、自分語りなどする男とは思わなんだ」

 

クックックッ、と笑う侍。シロウをアーチャーといったという事は、間違いなくあのアサシンという事だ。

刹那は素の研ぎ澄まされた殺気に冷や汗が滲み出る。

 

「まあよい……では、一時戯れようぞ!」

 

アサシンから放たれる一閃を何とか交わし、夕凪で反撃する。

シロウの記憶を見た限り、刹那では敵わないだろう。

そう思った刹那は反撃の隙を与えない為、自身の出せる最速の速さで剣を振るう。

だが、すべての剣はいなされ手ごたえが感じられない、まるで水を斬ろうとしている様な感覚に陥る。

 

「くっ……神鳴流奥義 百烈桜華斬!!!」

 

刹那は焦りと恐怖から強引に奥義を繰り出す。だが、それがいけなかった。

技を発動させた瞬間隙を作ってしまい、刹那の視界からアサシンが消えた。

それと同時に背中に走る痛み。アサシンは刹那の技の発動よりも一瞬早く動いて背後を取り、斬りつけたのだ。

 

「ぐっ!?」

 

痛みをこらえ、すぐに振り向いて夕凪を構える。

 

「その若さにして野太刀をここまで使いこなすとは、すばらしい剣技だ。才もある。だがまだまだ伸び盛りにして、圧倒的に経験が足りぬな」

 

先ほどまで後の先を取っていたアサシンが攻撃に転ずる。

途端にアサシンの流れるような剣についていけず、刹那はどんどん傷を負ってしまう。

 

「うっ!」

 

一際重い一撃。たまらず刹那は膝を突く。その姿は白いブラウスを赤く染めボロボロである。

全身切り傷だらけで血を流し、最初に斬られた背中と左腕の傷は思った以上に深い。もはや満足に夕凪を構えることもできない。

 

「……娘よ、ここらで引いてはくれまいか? さすがに将来美しく咲くであろう花を摘み取るのは気が引ける」

 

アサシンは構えを解いて言ってくる。

ちらりとこのか達の方を見れば、自分の姿を見て涙を流し何か叫んでいる。

刹那は痛む体に喝を入れ立ち上がり、動く右腕だけで夕立を構える。

 

「それはできない。私はお嬢様を助ける」

 

「人質か? 心配せずとも人質に手を出すような無粋な真似はせんよ」

 

「その言葉が真実かどうかわからないし、もしもということがある。それに……」

 

私はもう一度お嬢様の姿を確認する。

 

「……(ありがとう、このちゃん)」

 

お嬢様は私なんかの為に涙を流してくれている。

それだけで、私はまだ戦える。

 

「私はお嬢様を護ると誓ったんだ」

 

刹那は唯一動く右腕で夕凪を構えアサシンを睨む

 

「……良い気迫だ。実に惜しいが、こちらも世界より(めい)を与えられているのでな。せめて、我が最高の秘剣によって葬ってやろう」

 

アサシンは、こちらに背を向けるような格好で剣を構える。

 

「秘剣───燕……!」

 

アサシンが秘剣を繰り出そうとした瞬間、飛来してきた一本の剣によりアサシンは後ろ飛び退き動きを止めた。とても楽しそうな表情で。

 

 

 

 

 

 

 

 

シロウは今ちびせつなの案内の下世界樹下のステージへと向かっている。

 

「おい! 早くしろシロウ」

 

「私も急ぎたいんだがね」

 

言いながらも地面を蹴り跳躍する。

シロウは浮遊魔法が使えないため空を飛ぶ事ができない。その為、足を強化して走っているのだが、エヴァの家の付近は木が多いので全力で走っても問題はないが、雨が降っていて人が少ないとはいえ、街中を人間離れした速度で走るわけにはいかない。

だから今は屋根伝いに跳んで行っているのだ。

 

「うっ!」

 

その時ちびせつなが苦しみだす。

 

「どうした」

 

「本体の身に何かあったようです。すいませんが私はここで……」

 

最後に小さく頭を下げてちびせつなは人形(ひとがた)に戻る。

ちびせつなを維持できなくなったという事は刹那が捕まったか、あるいは式紙を維持できないほどの重傷を負ったという事だ。

 

「先に行かせるべきではなかったか」

 

多少魔力を使い人に見られる可能性はあるが、止むを得ずシロウは連続で虚空瞬動を使い空を翔る。

世界樹下のステージが見える頃には、刹那がアサシンに追い詰められていた。

 

「あの構えはまずい!」

 

アサシンの構えを見たシロウはすぐさま弓と剣を投影し、アサシン目掛けて放った。

剣はアサシンに避けられたが、動きを止める事には成功する。

シロウはもう一度虚空瞬動を使い、刹那を庇うように二人の間に割って入った。

 

「人の死合いに水を指すとは相変わらず無粋よな、アーチャー……いや、エミヤシロウと言った方がよいか?」

 

アサシンの声には戦いに水を差されたことに対する怒りが感じられない。むしろ、嬉しそうな声で言う。

 

「何故、君がここにいる? そして、何故私の真名を知る?」

 

「ふむ。そのまま教えてもいいが、それでは少々面白味に欠ける。私に勝ったら教えるとしようか」

 

アサシンはこちらに刀を向ける。

 

「……いいだろう。だが、少し待て」

 

シロウはアサシンへの警戒をしたまま刹那の下へ駆け寄る。

ざっと見た感じ、背中と左腕の傷は深いが致命傷というほどでもない。だが、血を流しすぎているのでこのままではまずい。

シロウは投影した包帯で止血をし、応急処置を施す。

止血できたとはいえ所詮投影品での応急処置。なるべく早く適切な処置を施さなければならない。

その為には───

 

「もうよいのか?」

 

「ああ、後は貴様をさっさと片付ければこのかの魔法で何とかなる」

 

シロウは干将・莫耶を投影し構える。それを確認し、アサシンも下げていた物干し竿を構えた。

 

「いざ、尋常に───勝負!」

 

掛け声と共に放たれる頭、首、胴を狙う斬撃。その全てを干将・莫耶で受け流す。

 

「ふっ!」

 

切っ先が交差する。幾度にも振るわれる剣線、幾重もの太刀筋。

弾け、火花を散らしあう双剣と刀。天賦の剣と凡賦の剣。

才能に驕る事なく己の剣を極限まで極めた者と、才能がないからこそ己自身を極限まで鍛えた者。

その剣戟は、まるで舞っているかの如く見ているものを惹きつける。

 

だがシロウは攻め込む事ができない。

アサシンの長刀の間合いは干将・莫耶よりも広い

剣をいなしつつ間合いに入れば、即座に首を跳ねんとする一刀が振るわれる

アサシンの剣にはセイバーの暴風のような重い一撃はない

だが、それを補う速さと技量がある為、こちらも攻めに転ずることができない

 

「ほう? アーチャーよ。何があったかは知らぬが、お主変わったな」

 

剣を振るう手は止めずにアサシンは話しかけてくる。

 

「前に剣を交えた時は、何か憎しみにも似た負の感情を感じたが、今のお主にはそれが感じられん」

 

「変わった……か」

 

確かにそうかもしれない。聖杯戦争(あの)頃私は衛宮士郎を殺す事だけを考えていた。

だが、答えを得て。麻帆良で過ごしてオレ(・・)は変わった気がする。

全ての人を救うことを諦めた訳ではない。自分の過去を悔やんでいる訳でもない。

だが、今のオレは身近な大切な人から護っていこうと考え始めている。

 

「確かに。今の私はあの頃の私とは違う」

 

シロウはアサシンの剣を弾き返す。まるで過去の自分と決別するかのように。

 

「だからこそ。もう二度と、私に敗走はありえない」

 

「……ふっ。やはり今のそなたは生半可な技では倒せぬな」

 

雷の斧(デュオス・テュコス)!!!」

 

大きな音がしたのでネギ達の方を見ると、丁度ネギがヘルマンを倒した所だった。

自由になったこのかはアーティファクトで刹那を回復させる。

3分以上経ってしまったので完治とはいかないが、これで刹那は安心だろう。

 

「あちらも終わったか。では、そろそろ幕引きといこう」

 

そう言ってアサシンはこちらに背を向けるように肩口に剣を構える。

秘剣・燕返し

円を描く三つの太刀筋で牢獄を作り上げる秘剣。

多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)」と呼ばれる第二魔法を剣技のみで再現したもので、技術によって宝具の域に達した必殺技であり、彼が全存在をかけて練り上げた究極の一である。

 

I am the bone of my sword (体は剣で出来ている)

 

対するシロウは干将・莫耶に強化を重ねがけ、巨大な剣へと変形させる。

 

「秘剣─────燕返し!!」

 

放たれたのは同時に現れる三本の剣の牢獄。

一の太刀が頭上から股下までを断つ縦軸を狙い、二の太刀が一の太刀を回避する対象の逃げ道を塞ぐ円の軌跡を描く。そして三の太刀で左右への離脱を阻む正に回避不可能の必殺剣。

強度を増した干将・莫耶はそれぞれで一の太刀と二の太刀を受け止めるが、シロウには三の太刀を受け止めるすべがなく、アサシンの刃が容赦なくシロウの胴を襲った。

アサシンは勝利を確信した。だが───

 

「なんと……」

 

アサシンの刀は折れ、斬られたのはアサシンの体だった。

 

「よもや己が身まで剣と化し我が秘剣を防ぐとは……」

 

そう、シロウは強化した干将・莫耶で一の太刀と二の太刀を止め、止めきれない三の太刀を自身の内側、体内に剣を投影して受け止めたのだ。それは自身の体を傷つけ、一歩間違えれば死にかねない捨て身の作。

だが、その結果アサシンの刀はシロウの胴を半ばまで斬った所で折れ、反撃することに成功した。

 

「いや、よく考えれば私が敗れるのは当然か。自身の為だけに剣を振るった私に対し、そなたは常に誰かの為に剣を振るってきたのだから」

 

満足そうに微笑むと、アサシンはその場に崩れ落ちた。

同時にシロウもその場に膝をつく。

 

「シロウさん!!」

 

ヘルマンを倒したネギ達と戦いを見物していたエヴァ達がこちらにやってきた。

刹那も傷が良くなったようで、このかに肩をかりながらも私に笑顔を向ける。

 

「ありがとうございました。士郎先生」

 

「いや、無事でよかった」

 

刹那への返答もそこそこ、アサシンの方へ向き直る。

 

「アサシン。何故君がここにいるのか聞かせてもらおうか」

 

「……ふむ。私も上手くは説明できぬが、そなたを殺しに来た事は確かだ」

 

「私を殺しに? 何故?」

 

「私らの世界はお主、英霊エミヤという存在が答えを得る事を良く思っておらぬらしくてな。それ故に、そなたに縁のある私が使いとして召喚されたのだ……」

 

私らの世界という事は、私がいた世界という事だろう。だが、それならばなぜアサシンなんだ?

確かにアサシンは強い。しかし、彼はイレギュラーな召喚によって呼ばれた実在しない英霊だ。

私の存在を消すならばもっと破壊に特化したモノを召喚するべきだろう。それこそ、ギルガメッシュやヘラクレスの様な、より私を消す確率の高い存在を。

それに、世界に召喚されたというわりに、アサシンにははじめから自我があった。私が守護者として召喚された時は意識はあるが自我はなく、目的を果たし終えた時、座に戻るまでの僅かな時間のみ自我があった。

アサシンの言う事は真実だろうが、そこがいまいち腑に落ちない。

 

「……む? 世界のやつめ、無粋な真似を」

 

「どうした?」

 

アサシンの顔色が見る見るうちに悪くなる。

 

「その者達を連れて逃げよ、アーチャー。……私自身制御がきかん……ぐっ!!」

 

アサシンが急に苦しみだしながら立ち上がる。その表情はもはや正気ではない。

 

「皆下がれ!!」

 

私は急いでネギたちに下がるよう言うが間に合わず、先ほどまでのアサシンをはるかに凌駕する力で殴り飛ばされた。

 

「がぁっ!?」

 

「■■■■■ーーーーーーーー!!!!!」

 

痛む体を無理やり動かし立ち上がると、そこには言葉にならない叫びを上げるアサシンがいた。

その体は漆黒の魔力に包まれ、美しかった剣技を使っていた彼とはまるで別人のように暴れまわる。

 

「うわっ!」

 

咄嗟に盾を展開するネギ君だが一撃で破壊され、シロウ同様吹き飛ばされる。

それを見たエヴァや刹那、古、楓が動くも、拳の一撃で皆倒れてしまう。

狂ったアサシンは残された戦闘力の低いこのか達の方へゆっくりと歩いていく。

 

投影(トレース)開始(オン)

 

シロウは瞬動でこのか達とアサシンの間に入り込みヘラクレスの斧剣を投影し拳を受ける。

しかし、アサシンの拳は斧剣ごとシロウを数メートル後ろへと押した。

 

「ぐっ、なんという力だ。これではまるでバーサーカーではないか」

 

先ほどの刀傷がさらに広がり激痛が走る。

だがアサシンの方は世界からの魔力供給のおかげか、全ての傷が癒えている。

 

「■■■■~~~~~~!!!」

 

射殺す百頭(ナイン・ライブズ)!!』

 

再現するのはヘラクレスがヒュドラを倒す為に編み出した弓術を剣術にアレンジした九つの斬撃。

突進してくるアサシンは一撃で吹き飛ばされ、体中に穴を開ける。

 

「はぁ……はぁ……これでも、まだ止まらないか」

 

それでもアサシンは止まらない。体中ボロボロでもこちらへ進んでくる。

傷が深い過ぎてこれ以上の大技は体がもたない。だが、ここで倒れれば後ろにいるこのか達も命は無いだろう。

アサシン(アレ)は周りのモノを全て破壊しつくすまで止まらない。

 

「■■ーー!」

 

アサシンは再び拳を振り上げる。だが、そこで動きが止まった。

 

「アー……チャーよ。私をコロ……セ。これは……私の望ム…結末では……ナイ」

 

アサシンは己のに残された最後の力を振り絞って世界の意思に反発した。

 

「アサシン……」

 

その時、シロウのパクティオーカードが光出す。

頭に流れ込んでくる『全てを救う正義の味方(エミヤ)』の能力。

 

「は…や……く」

 

来たれ(アデアット)

 

現れる一振りの刀はシロウの想いに呼応するように薄い赤色に輝きだす。

 

「見事だ、アサシン。いや、佐々木小次郎」

 

世界の意思に抗ってなお、自身の武士道を貫くその姿に敬意を表し、アサシンではなく彼に真名として与えられた名である佐々木小次郎と呼んだ。

 

全てを救う正義の味方(エミヤ)!!!』

 

全てを救う正義の味方(エミヤ)でアサシンを斬ると、アサシンの体も眩く赤く輝きだし本来の状態へと戻る。そして、足元から光の粒子となって消えていった。

 

「……忝い、感謝する。エミヤシロウよ」

 

これこそ『全てを救う正義の味方』のもう一つの能力。

使用者の想いを力に変え、斬った対象を癒し浄化する事ができる力。

この能力により『全てを救う正義の味方(エミヤ)』で斬られたモノは救われるという伝説が伝わったのだ。

 

「うっ、いたたた」

 

その時、丁度倒れていたエヴァ達が起きだした。

 

「みんな大丈夫か?」

 

「はい」 

 

「ああ」 

 

「平気です」 

 

「大丈夫でござる」

 

「平気アル」

 

みんな軽傷という訳ではないが無事なようだ。

 

「というか一番の重傷者は貴様だろう」

 

「む」

 

言われてみれば確かに。アサシンに斬られた傷は肺まで達し、その状態で射殺す百頭(ナイン・ライブズ)を使った為傷は広がり、腕の筋肉もズタズタである。

それでもこうして立っていられるのは、この身が受肉した肉体であるという事と。体内の全て遠き理想郷(アヴァロン)のおかげだろう。

 

「ちょっと、アレなんだったのよ!」

 

そこにアスナがやってきてアサシンの事について追求してくる。

シロウはその場にいた皆に先ほどアサシンから聞いた内容を説明した。

 

「じゃあ、そのせいで関係のない刹那さん達が怪我をしたって事なの」

 

アスナはシロウを狙ってきたアサシンのせいで刹那やネギ達が怪我をした事に対し怒っているようだ。

 

「いえ、私は別に……」

 

「アスナ……」

 

刹那とこのかはアスナを止めようとするがアスナの怒りは収まらない。

そんなアスナに対し、エヴァは腹立たしげに口を開いた。

 

「勝手な事をほざくなよ。神楽坂アスナ」

 

「何よエヴァちゃん」

 

「確かにアサシンがこの世界に現れたのはシロウのせいだろう。だが、そもそもお前らがこちら側の世界に首を突っ込まなければ、ヘルマンとかいう悪魔に捕らわれてアサシンと出会うことも無かったはずだ」

 

「でも、私が関わったのはネギのせいだし。そんな危ない事になるとは……」

 

エヴァの気迫に押され、声が小さくなるアスナ。

 

「はっ、ぼーやの為? 笑わせるな切欠はぼーやでも選んだのはお前だ。それにシロウがわざわざ自分の過去を見せて言っただろう? もう一度良く考えろ、と。それなのに人のせいにするとはな」

 

「うっ」

 

エヴァの言葉でアスナはバツが悪そうな顔をする。

さらに追い打ち、もとい何か言いそうなエヴァを止めるため、士郎は前に出た。

 

「もういいさエヴァ。確かにアサシンの件に関しては私のせいだからな。だが。エヴァの言うとおり、君達が魔法に関わらなければこんな目に合う事は無かった。二度目になるが、今日の事を踏まえた上でもう一度良く考えてくれ。こちらの世界に足を踏み入れるのかどうかを」

 

皆無傷というわけではない。あまり望ましくはなかったとはいえ、今回の件で恐怖も味わっただろう。

その上もう一度答えを出してもらうべく、今日はこれで解散となった。

 

 

 

「……」

 

雨の中シロウは橋の上に傘も刺さず立っている。

 

「エヴァか」

 

気配を感じ振り返ると茶々丸に傘を持たせたエヴァがいた。

 

「こんな所で何をしている」

 

「なに、少々雨に打たれたい気分なだけさ」

 

「嘘だな。どうせ、新たな侵入者が来ないよう見張りでもしていたんだろう」

 

「……やれやれ。君に隠し事はできんな」

 

シロウはまたアサシンのように自分を狙って新たな刺客がくる可能性を考え、結界の境目である橋の上で見張っていたのだ。

 

「やはり、また来るのか?」

 

「来るだろう。次はもっと強力な刺客が。世界がそう簡単に諦めるとは思えん」

 

何故、第五次聖杯戦争のサーヴァントであるアサシンが来たのかはわからないが、アサシンが敗れた今、今度はもっと強力な相手がエミヤを消しに来るだろう。

 

「……じじいに学園の結界を強化するよう言っておく。だからさっさと貴様も戻れ」

 

「……わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のタイトルの天賦の剣VS凡賦の剣の「凡賦」ってなんだ? って方がいると思いますが、これは私の造語ですので実際には無い言葉ですね。意味は文字通りなんですが、天賦を神から与えられた才能というならば凡賦は誰もが平等にもっているモノを駆使したものが凡賦みたいな感じで意味づけしております。うまく説明できずすいません。

それではまた次回!
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