妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

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 私の名はインディ・ジョーズ。冒険のエキスパート、大・大・大冒険家だ! 
妖怪たちの間で噂になってる異世界とやらを見に来ただけなのだが、まさか…あんな恐ろしいことが待っているとは、思っていなかったんだよおおおお!!
 


バスターズトレジャー!キールのダンジョン!

 「カズマ、次はどこのクエストに行くニャン?」

 

 「そうだなあ、明日はダンジョン攻略に行こうと思ってるんだ」

 

 「ダンジョン攻略でウィスか。これぞ、異世界の冒険らしくていいですね~」 

 

 「楽しみニャンね!」

 

 ダンジョン攻略。もはやRPGやファンタジー作品には欠かせない要素となっているメジャーなもの。中には秘密のお宝や未知のモンスターとの対決があり、いつの時代も冒険者たちをワクワクさせてきた。

 

 「着いてきてもいいけど、ジバニャンとウィスパーはめぐみん達と一緒に、入口付近で待機しててほしいんだ」

 

 「え?じゃあダンジョンにはカズマくん一人で行くんですか?」

 

 「ああ、ちょっと色々試したいことがあるからな」

 

 そして当日、カズマ達はダンジョンの前に到着した。めぐみんはダンジョン攻略だと出番がないから反対したが、中には入らなくてもいいとのことで渋々納得した。

 

 「カズマ、ジバニャンはどうしたのですか?」

 

 「ジバニャンは昔の友達に会ってくるって、朝から出かけて行ったぞ」

 

 ちなみにウィスパーは妖怪インフルエンザにかかったらしく、今日は妖魔界まで診察に行ってる。

 

 「カズマ、私の剣はこの前のクエストで冬将軍に折られている。すまないが、今の私は戦力になれそうにない」

 

 「安心しろダクネス。お前とウィスパーは最初から戦力外だ」 

 

 「ッ///!?」

 

 どっちにしろダクネスもめぐみんと同じくお留守番係だから、仮に戦力になったとしても置いていくと決めていた。

 めぐみん達には近くの避難所に待っててもらい、カズマは一人でダンジョン内に入っていく。めぐみんとダクネスは心配していたが、当然カズマも自信があるから一人で行くのだ。

 街の冒険者に千里眼というスキルを教えて貰った。これなら暗闇でも周りが見渡せるし、潜伏と敵感知を使えばモンスターとの遭遇を極力回避することが出来る。今回はそれのお試しと、あわよくばお宝ゲットを目指して一人で入った。

 

 (妖怪の力を借りればもっと楽だと思うけど、たまには自分の力でなんとかしなきゃな)

 

 一人でダンジョン探索、不安もあるが少しワクワクもする。そんなカズマの後ろから足音が聞こえてきて、振り向かなくても誰か分かった。

 

 「…一人で行くって言ったのに。何で来たんだよ、アクア」

 

 「そりゃもちろん、この女神様の力が必要だからに決まってるじゃない!」

 

 ふふ〜ん!と偉そうに腕を組む。これは何を言っても退かないだろう。カズマはため息を吐き、仕方なくアクアと一緒にダンジョン内を歩き進めた。

 白骨死体を見つけてマヌケな声を出してアクアに爆笑されたり、グレムリンという下級の悪魔に襲われたり。冒険者に散々調べ尽くされたダンジョンらしいが、中々一筋縄ではいかないようだ。 

 

 「ターンアンデッド!!」

 

 極めつけはアンデッドの予想外の多さだ。そこら中からアンデッド共が出るわ出るわ。しかしそれも、アクアが珍しく大活躍して次々と浄化していく。

 

 「やるじゃないかアクア!見直したぜ」

 

 「ようやくカズマも私の偉大さに気付いたようね。さあ、どんどん来なさい!この女神アクア様が、さ迷える魂たちを導いてあげるわ!」

 

 アクアの声がダンジョン内にドップラー効果で鳴り響く。少しの静寂の後、奥の暗闇から何か聞こえてきた。

 

 ゴゴゴゴ…!

 

 「さめー!?」

 

 「ニャーー!?」

 

 「もんげー!?」

 

 「ん?」

 

 「何この音?」

 

 暗闇でも目が効く二人は、声が聞こえてくる方をじ~っと凝視する。音も段々大きくなってきて、明らかにこっちに近付いてるのが分かる。

 

 「き、気を付けろアクア!何か来るぞ!」

 

 カズマは剣を抜いて身構える。松明の火が揺らめいているのが分かり、他の冒険者がモンスターに追われているのだとカズマは予想する。勝てるか分からないが、同じ冒険者なら見捨てるわけにはいかない。

 

 「頑張れ!後は俺たちに任せ…え?」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

 「さめーーー!!」

 

 「助けてくれニャーーン!!」

 

 「もんげーー!?」

 

 そこにいたのは、モンスターから逃げ回る冒険者ではなく、転がってくる大岩から逃げているジバニャン達の姿であった。

 

 「じ、ジバニャン!?コマさんまで、何やってんだお前らー!!」

 

 「ちょっと!こっち来ないでよーー!!」

 

 巻き込まれたカズマとアクアも、ジバニャン達と一緒に大岩から逃げる。

 

 「皆!こっちに避けろ!」

 

 咄嗟にカズマが右の通路に飛び込み、アクア達もギリギリで岩から逃げることが出来た。

 

 「あ、危なかったニャン…」

 

 「ああ、まさに危機一髪だったな」

 

 「助かったずら〜」

 

 「まったく、何でジバニャン達がここにいるんだよ。知らないサメっぽい妖怪もいるし」

 

 いかにも冒険家みたいな格好のサメ妖怪。カズマも初めて見る妖怪だった。妖怪ウォッチを持ってると言っても、まだまだ出会ったことのない妖怪はたくさんいる。

 

 「私か?私はインディジョーズ、大・大・大冒険家だ!」

 

 「大が多いな」

 

 「君がカズマか、ジバニャンから色々聞いてるよ。元ヒキニートなんだって?」

 

 「…ジバニャン〜?」

 

 「ギクッ!?ふ、ふすうぅぅ、ふすうぅぅ…」 

 

 吹けてない口笛を吹いてごまかすジバニャン。しばらくチョコボー没収してやる。

 ジバニャンとコマさんは、以前インディと一緒に冒険の旅をしたことがあるらしい。様々な遺跡を巡って、大冒険をした仲間の一人だそうだ。

 

 「カズマが今回は一人でダンジョン行くって言うから、オレっちも久しぶりにダンジョンに行きたくなって、それでコマさんとインディを誘ったんだニャン」

 

 「私も本来はエア冒険家なのだが、古き友の頼みを断れなくてな。たまにはリアルな冒険も良いと思ったのだ」

 

 「エア冒険家?」

 

 インディは大冒険家を名乗っているが、それはただの格好つけで、冒険映画好きな普通のオタクである。リアルな冒険は怖いから、空想で冒険して気分を楽しむ。

 それがエア冒険家なのだ。

 

 「何よそれ。大大大冒険家って言うからどんなに凄いのかと思ったら、全然大したことないじゃない」

  

 「でも、確かにリアル冒険は怖いよな」

 

 今なら分かる、呑気にテレビやゲームで見ていた冒険の怖さが。カズマだって何度もモンスターに襲われて、本当に死ぬかと思った事態も経験している。

 冒険は楽しいだけじゃなく、むしろ危険なことのほうが多いというのを肌で感じた。

 

 「近場で手頃なダンジョンや遺跡を探していると、たまたまここを見つけたというわけだ」

 

 「なるほど、一足先にインディ達がこのダンジョンに入ってたのか」

 

 「ねぇねぇ、何かお宝は見つかった?」

 

 「いや、まだ何も…」

 

 まあ、冒険映画みたいに大岩に追っかけられてる様子を見ると、このメンバーでお宝を発見出来るとは到底思えない。

 

 「それにしても、ジバニャン達も大変だったろ?俺達みたいに暗闇でも見通せるわけじゃないし、何よりアンデッドがそこら中から出てくるんだもんな」

 

 「アンデッドニャン?」

 

 「おばけみたいなやつずら?」

 

 「いや、私達は遭遇してないぞ。他のモンスターは見たことはあるがな」

 

 遭遇していない?カズマは首をかしげる。あれほど俺達に群がってきたアンデッドが、何故かジバニャン達は見ていないという。

 

 「アクア、これってどういう」

  

 「さ、さあ!こんなところで油売ってないで、さっさと先に進むわよー!」

 

 カズマの言葉を遮りズンズンと進んでいくアクア。確かにここで時間を費やしても仕方ない、カズマ達もアクアの後に続いた。

 

 「うお、気持ち悪いな…」

  

 先程の大岩が通った道を歩いていると、轢かれて潰されたグレムリンの死骸が何体か転がっている。結果的に遭遇を回避出来たのは良かったが、酷い光景にカズマやジバニャン達は口を覆った。

 

 「あ、皆、ちょっと待ってて」

 

 アクアが何かに気付いて小走りする。奥には人の屍があり、岩に轢かれた痕が付いていた。

 あの大岩の下敷きになったんだ、可哀想だが…

 

 「さ迷う魂よ、どうか安らかに」

 

 屍の側に行き、アクアは目を閉じて祈る。

 

 「カズマ、彼女は何をしてるんだ?」

 

 「アンデッドを浄化、つまり供養してるんだ。安心して天国に行けるように。たまには女神らしいとこもあるもんだよな」

 

 滅多に見ないアクアの女神らしい姿。この時ばかりはカズマも感心する。しかし、インディ達は冷や汗を流してその様子を見ていた。

 

 「お、おい。あれって…」

 

 「まさか、ニャン…」

 

 「まずいずら、まずいずら…」

 

 「ど、どうしたんだ皆。不安そうな顔して」

 

 カズマは知らなかったが、アクアが今浄化している屍はジバニャン達には見覚えがあった。

 赤い髪にツギハギの顔。あいつは…

 

 ピクッ

 

 「セイクリッドター…ん?」

 

 祈りを捧げている途中、既に息絶えたはずの屍が動いた気がする。アクアが不思議に思ってる次の瞬間、ガシッ!!と屍がアクアの腕を掴んできた。

 

 「お、おおぉぉぉぉぉ…!」

 

 「ちょ、ちょっと何するのよ!?焦らなくても今浄化してあげるから、大人しくしてなさい!」

 

 「ま、待てそいつは!」

 

 インディが止めに入るが、アクアは構わず浄化の詠唱を唱えた。

 

 「セイクリッドターンアンデッド!」

 

 「ぐわああああああ!!」

 

 「待てアクア!そいつ、ジバニャン達の知り合いだ!」

 

 「え?知り合い?」

 

 アクアの手がピタッと止まる。何とかやめさせることが出来て、ギリギリ浄化されてしまう前に間に合った。

 

 「お、おいあんた。大丈夫か?」

 

 「ああ、俺はもう死んでいる」

 

 大丈夫と言えるのかそれは。

 

 「俺はゾン・ビー・チョッパー。流石の俺も危ないところだった、礼を言う」

 

 「久しぶりだなあゾンビー!」

 

 「また会ったニャンね!」

 

 「懐かしいずら〜!」

 

 ジバニャン達が再開を祝してゾン・ビーと仲良さげに話している。どうやら彼も、大冒険を共にした仲間のようだ。

 

 「まさかお前までこの世界に来ているとはな」

 

 「ゾンビーは何でこのダンジョンにやって来たニャン?」

 

 「それはネコ2世様が…はっ!!」

 

 ゾン・ビーは何かを思い出したように、急にその場から駆け出した。

 

 「お、おい!どうしたんだゾンビー!」

 

 「待つずらー!」

 

 「カズマ!アクア!オレっち達も後を追うニャン!」

 

 「お、おう!」

 

 「何なのよもう!」

 

 走り出したゾン・ビーをカズマ達は追う。しばらくすると、矢で体中を撃たれて宙ぶらりんに吊られているゾン・ビーを発見した。

 

 「…ふ。また、つまらぬ罠にかかってしまった」

 

 「だ、大丈夫か?」

 

 「問題ない。俺はもう死んでいる」

 

 どんな罠にかかっても無事なせいか、ゾン・ビーは注意力が明らかに低下しているようだ。

 

 「いきなり走り出してどうしたんだよ」

 

 「…ネコ2世様が」

 

 「ネコ2世?」

 

 ゾン・ビーはネコ2世という王子様に仕えている。今回、お忍びで異世界に遊びに来たまでは良かったものの、ネコ2世がこのダンジョンに迷い込んでしまったそうだ。

 

 「俺は必死で探したのだが、ネコ2世様はどこにも…!」

 

 「ネコ2世もここに来ていたのか」

  

 ネコ2世もかつての冒険仲間。まだまだ小さい子供だから、インディ達も心配している。

 

 「カズマ、オレっち達でネコ2世を見つけるニャン!」

 

 「分かってるよ。ジバニャン達の友達だ、放っとけないもんな」

 

 ダンジョンの中はモンスターやアンデッドで溢れている。非力なネコ2世がそれらに襲われたらひとたまりもないだろう。はたして、カズマ達はネコ2世を無事に救出することが出来るのか…?

 

 

 

              to be continued

 

 

 

 




出てくる妖怪はトレジャーメンバーで固めたかったので、残念ながらウィスパーには犠牲になって貰いました。
 

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