妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら? 作:カジ
「お久しぶりでウィス〜。カズマくん、次はどんなクエストに行くんでウィス?」
「…」
「…」
「おや?どうしたんでウィス?カズマくん、ジバニャン」
「…え〜と、どちら様?」
「お前だれニャン?」
「はあ!?何を言ってるんでウィスか!皆のアイドルウィスパーじゃ、あ〜りませんか!」
「…あ〜、いたな〜。そんなやつも」
「久しぶり過ぎてすっかり忘れてたニャン」
「最後の登場から2話しかたってないでしょうが!」
妖怪インフルエンザの休養を経て、久しぶりに登場したウィスパー。カズマとジバニャンは、その存在を完全に忘れていたようだ。
「よし、そろそろ出かけるぞ。ウィスパー、アクア呼んできて」
「カズマくん、どこに行くんでウィス?」
「久しぶりに、会うやつのとこ」
カズマはアクアを連れて、目的の場所に向かう。ダクネスはギルドに残り、めぐみんは私用で今はいない。
「ねえ、まだなの〜?」
「もうすぐ着く。だがその前に、絶対暴れたり喧嘩したりするなよ?」
「はあ?するわけないじゃない。私をチンピラか何かと勘違いしてるんじゃないの? 私、これでも女神なんだからね」
今さらどの口が言うのか。カズマはとある店の前に辿り着き、その扉を開ける。
「いらっしゃいま……あ」
「おらあああああ!!よくも会ったわねリッチー!!」
さっきカズマから言われたことを無視して、アクアは猛烈な勢いで店主に迫る。
「リッチーが白昼堂々と店を出すなんていい度胸してるわね!たとえ保健所が許しても、この私が許さないわ!神の聖裁をくらいなさ」
「じゃかましい」
カズマが剣の鞘でアクアの頭を軽くどつく。小さいたんこぶが出来て涙目のアクアを尻目に、怯えて腰を抜かしてる店主を起こしてやる。
「久しぶりだな、ウィズ」
「え〜、というわけで、次の妖怪漫才コンクールには、ウィズ&ウィスで出場するということでよろしいでウィスかな?」
「いや、それはちょっと…」
「よろしいわけねえだろ」
ウィスパーはまだウィズとコンビを組むことを諦めてないらしい。カズマはウィスパーの頭のほにょほにょを掴み、後ろにポイッとどかした。
「…はあ〜(くそデカため息)。この店は客にお茶も出さないのね」
「す、すいません!今すぐにっ!」
「あーあー、いいって。そんな気を使わなくても」
アクアのしょうもないイビリにも、ウィズは素直に従おうとする。立場的にも、やっぱり女神には逆らえないのだろう。
カズマやジバニャンは、初めて来た魔道具店を物珍しそうに見て回る。
「へー、色々あるんだなあ」
「これはなんニャン?」
「あっ、気をつけてください。下手に衝撃を与えると爆発しますので」
ジバニャンは手に取った瓶を、そ〜っと慎重に棚に戻した。
「この綺麗な色のやつは?」
「それも、衝撃を与えると爆発を」
そしてその隣の瓶、またその隣も。爆発する魔道具ばかりが並べられていた。
「その辺は爆発物シリーズなんですよ」
「どんなシリーズだよ…」
それならもうちょっと厳重に保管して欲しいものだ。もし地震が起こったらどうするつもりだろう。
「ところでウィズ、俺にリッチーのスキル教えてくれるか?」
「ええっ!!??」
店内の魔道具を見ていたアクアだが、カズマのセリフに驚いた拍子に、持っていた瓶をつい放り投げてしまった。その瓶はカズマ達の頭上を舞う。
「あ、あれはこの店で一番の威力を持つ爆発ポーションです!もし落ちたら、この店どころか辺り一帯が吹き飛んでしまいます!」
「そんな危なかっしいもん店に置いとくなああ!!」
「もう間に合わないニャンー!!」
小瓶は重力に従い、真っ直ぐ落ちていく。このままでは大惨事になる、カズマはウィスパーに全てを託した。
「行けウィスパー!君に決めた!!」
「ウィス!?」
ウィスパーをポーションの落下地点に滑り込ませる。間一髪のところで、ポーションは大きく空いた口の中に吸い込まれるように入っていった。
ボーーーンッッ!!!
「ウィシュ〜…ゴホッゴホッ」
ポーションはどうやら、ウィスパーの体の中で爆発したみたいだ。口から煙を吐いて苦しそうだが、店が無事だったので良しとしよう。
「…あたくし、こんなんばっか」
「大丈夫ですか?ウィスパーさん」
ウィズがウィスパーを心配して駆け寄る。
「店を守ってくれて、ありがとうございます。でも、その代わりにウィスパーさんが犠牲に…」
「…ふ、いいんでウィスよ。あなたと、あなたの店が無事なら」
「ウィスパーさん…!」
ウィスパーの手を涙ながらに握りしめる。せめて最後の言葉を聞き逃さないように、ウィズは耳を傾けた。
「出来るなら、ウィズ&ウィスのコンビを…組みたかっ…た…」ガクリ
「ウ、ウィスパーさーーーーん!!」
「なんだこの茶番」
こいつら、何気にコンビ結成してないか? カズマ達は呆れた目で、ウィズ&ウィスを見つめていた。
「ウィスパー、ウィズを変なコントに付き合わせるな」
「変とは何ですか!せっかく体はったんでウィスから、少しは褒めて欲しいでウィス!」
「ウィズも、なんで一緒になってギャグやってんだよ。妙に迫真の演技だったし」
「あはは〜…、ついノッてしまって」
冗談はさておき、ウィズにスキルを教えて欲しいとお願いするカズマ。しかし、アクアがそれは猛烈に反発した。
「リッチーのスキル覚えたいなんて、カズマ正気なの?!そんなナメクジの親戚みたいなやつのスキルを!?」
「そんな言い方しなくても…」
あまりな言い草に、悲しくてウィズが半泣きになっている。
「ちょっとアクアさーん。あたくしの相方に酷い言葉づかいはやめてもらいます?」
「うるさいわね、頭にう○○を乗せてるやつは引っ込んでなさい」
「う○○じゃないですー!これは正真正銘ご立派なほにょほにょですー!!」
流石はアクア、女神が言ってはいけない下品なセリフを普通に言ってる。
「とにかく、女神としては従者がリッチーのスキルを覚えるなんて見過ごせないわ」
「誰が誰の従者だって?」
「でもカズマ、どうしてリッチーのスキルなんて覚えたいニャン?」
「リッチーのスキルは、普通じゃ絶対覚えられない貴重なものだろう? 戦力も上がって、今後のクエストも少しは楽になると思うんだ」
カズマの真っ当な言い分に、アクアもしぶしぶ引き下がった。
「…あの〜、もしかして、アクアさんって本物の女神様…なのですか?」
ウィズがアクアの正体に勘づいている。キールの時もそうだったが、やはりリッチーは女神の存在に敏感なのだろう。
「ええ、そうよ。何を隠そうこの私は、かの崇高なアクシズ教団で崇められている…女神アクア様よ!ええい
「は、ははっー!」
「なに時代劇みたいなことやってんだ」
どこぞの副将軍の登場みたいに、ここぞとばかりに威光を発揮するアクア。アクシズ教のマークが書かれている印籠を取り出し、ウィズも思わず頭を下げている。
「お、おいウィズ。そこまで怯えなくてもいいんだぞ」
「だ、だって…アクシズ教の人は皆おかしくて、関わらない方がいいというのが世間の常識なので、それの元締めと聞いてつい…」
「ぬわあんですってええええ!!」
「ひいい!?
(…駄目だこりゃ)
「そ、そういえば、ベルディアさんをよく倒せましたねえ。剣の腕前は、幹部の中でも随一だったのに」
「ベルディア? そんな妖怪聞いたことも見たことも…」
「いや、前に戦っただろ」
「もう忘れてるニャン」
ウィスパーはともかく、カズマとジバニャンはしっかり覚えている。確かに強敵だった。弱点が分からなかったら、恐らくこっちが負けていただろう。
まあ、弱点を突いたせいで借金があるのも事実だが。
「それにしても、ベルディアさんって結構親しげだけど、もしかしてウィズの知り合いだった?」
「親しい…とまでは行きませんが、ベルディアさんとは旧知の仲ですよ」
「へえ、どこで知り合ったの?」
「魔王軍の幹部会で何度かお会いしたことがあります」
「ふーん、魔王軍の幹部会ねえ。……ん?」
魔王軍? と、いうことは…
ガチャン
「えー、○時○分容疑者確保。これより連行する」
警察官のコスプレしたアクアが、ウィズに手錠をかけて頭に布を被せた。
「待って!待ってください!話だけでも聞いてください!」
「申し開きは法廷でしなさい」
「おい待てよアクア。事情くらい聞いてやろうぜ」
本当に魔王軍の幹部なら、冒険者たるもの見逃すわけにもいかない。しかし、ウィズがベルディアみたいな凶悪なやつとは到底思えないのも事実だ。
「…わ、私はそもそも、魔王城の結界を維持するように頼まれただけなんです。人に危害を加えたこともありませんし、何よりなんちゃって幹部ですから、賞金自体かかっていません」
つまりゲームとかでよくある、魔王軍の幹部を倒していけば、自ずと魔王城を守っている結界を破れる。ということか。
「仮に今すぐに私を倒しても、まだ幹部は6人いますから、いくらアクア様でも結界を破るのは厳しいかと…」
「でも、いずれはあんたの番が来るわよ」
「…構いません。今はやるべきことがあるので、まだ倒されるわけにはいきません。ですが、それまではどうか生かしておいてください。私の浄化は、その後でお願いします」
ウィズの真剣な訴えに、アクアも神妙な面持ちで聞いていた。アクアなら幹部の2、3人で維持している結界ぐらい破ることは出来るだろうし、今のままじゃ魔王軍とやり合ったところで負けるだけだ。
「ウィズ以外の幹部退治は他の強いやつに任せて、俺達は気長に待つとしようぜ。第一、俺達の手で魔王を倒さないと俺が帰れないからな。逆に今結界を破られても困る」
「さすがカズマくん、こすいことを考えるのはお手の物でウィスね」
「ふ、まあな」
「褒めてないニャンよ」
今すぐに浄化されることがなくなり、ウィズはホッと一安心した。
「でも、ベルディアを倒した俺達に、よくそんな重要なことを教えてくれたよな。恨みとかは無いの?」
「…いえ、別に。あの人、私が城内を歩いていると足下に首を転がして、スカートの中を覗いたりしてましたから。むしろ、倒してくれてありがとうございます」
「あいつそんなことしてたのか」
「結構しょうもないやつニャンね」
ボウリングよろしく、弱点である首を転がしてまで覗こうとするベルディア。想像したカズマとジバニャンは、そんな変態に苦戦したのかと悲しくなった。
「幹部で仲が良かったのは一人だけですし…それに、心はまだ人間のつもりですから」
「…そうか」
少し寂しそうにウィズは笑う。人間の身からアンデッドになるのは余程の事情があったのだろう。余計な詮索はせず、カズマも一言だけ返した。
「…えーと、じゃあスキルを教えていきますね。気に入ったのを是非覚えていってください」
そう言うと、ウィズはカズマ達を少しオロオロしながら見渡した。
「ん? どうした?」
「…えと、私のスキルは相手がいることが前提のものが多いので、誰かに手伝ってほしいのですが」
「よしウィスパー、お前行け」
隣りにいたウィスパーの背中を押して前に出させる。
「ええいいでウィスよ。相方のお手伝いをするのは当然でウィス」
「ありがとうございます。では、ドレインタッチというスキルをやってみますね」
ウィズがウィスパーの手を取って、ドレインタッチを発動する。
「ドレインタッチは、相手から魔力や体力を吸い取るスキルです」
「へー、結構便利そうなスキルだな。ウィスパー、どんな感じだ?」
「…か、カハアァァァァァァァッッ…!!」
まるでミイラのように枯れているウィスパー。驚いたウィズが慌てて手を離す。
「ご、ごめんなさい!!大丈夫ですかウィスパーさん!?」
「な、なんとかあぁぁぁ…」
「死にかけてるニャン」
「ウィズ、どんだけ吸い取ったんだ?」
「ほ、ほんのちょっぴりしか吸い取ってないはずなんですが…」
つまり、ほんのちょっとでも枯れるほどウィスパーが脆弱だっただけの話だ。望み通り相方の手伝いが出来たから本望だろう。
カズマは冒険者カードを見て、ドレインタッチの項目が増えていることを確認する。吸い取るだけじゃなく、相手に分け与えることも出来る応用の効くスキルだ。これは覚えない手はない。
「ありがとうウィズ、良いスキルが手に入ったよ」
「お役に立てて嬉しいです。また何かあれば、いつでも来てください」
「ええ、次に会うときがあなたの最後よ」
「ひいいい!?」
「どさくさに紛れて脅すな」
ウィズを脅えさせてニヤニヤしているアクア。その頭をスパアンッ!と叩いたその時、ドアが開いて中年の男が入って来た。
「すいません、ウィズさんにちょっと相談が…」
ウィズ&ウィス、何気に良いコンビでは?