妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

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新しい屋敷は妖怪がいっぱい

 「ここか」

 

 カズマ達は、とある大きな屋敷に来ていた。ウィズの店にやって来た中年男性が、この屋敷に住み着いてしまった悪霊をなんとかして欲しいとの相談に来たのだ。しかし、ウィズは同じように他からも相談事を持ちかけられていて忙しい。

 そこで、カズマ達が代わりに解決することになった。悪霊を見事に追い払えば、この屋敷に住んでよいという報酬付きだ。

 

 「そう上手くいくのか?祓っても悪霊が次から次へと出てくるんだろう?」

 

 「大丈夫だよダクネス。こういう時のために、うちにはアイツがいるんだぜ」

 

 カズマの視線の先に、屋敷から悪霊の類を感じ取ってギラギラしているアクアがいた。

 

 「任せなさい、夜の帳が下りたら合図よ。この私が闇を祓ってあげる」

 

 おお、今日のアクアはいつもとひと味違うようだ。やはり、ことアンデッド系が相手となると頼りになる。長々とこの屋敷にまつわることを喋りだしたが、カズマ達はほっといてさっさと屋敷の中に入っていった。

 

 「うおーっ!やっぱり自分の部屋があるっていいよなー!」

  

 「よかったですねカズマくん」

 

 柔そうなベッドにダイブするカズマ。馬小屋からやっと開放され、久しぶりの個室にテンションが上がっている。部屋割りも決め、今は各自で自由行動の時間だ。

 

 「これで冬を馬小屋で越すなんて、自殺行為をしなくて済むな」

 

 「あたしも、起きたら馬糞が頭に乗ってるなんて目に合わないで済むでウィス」

 

 「ははっ、汚」

 

 部屋の広さも申し分なし。ようやくまともな異世界生活を送れると安心していると、部屋の隅っこに置いてあるクローゼットが目に入った。

 

 「なあウィスパー、この部屋にあんなクローゼットあったか?」

 

 「…うーん、最初に入ったときには無かったような気がしまウィス」

 

 「それに、なんか見覚えがある気が…」

 

 どことなく既視感のあるクローゼット。妙に懐かしいような、親しみがあるような。カズマとウィスパーはクローゼットに近付き、そ〜っと開いてみた。

 

 「あ、カズマさん。お久しぶりです」

 

 「ひ、ヒキコウモリ!?」

 

 「なんでここにいるんでウィス!?」

 

 ヒキコウモリはカズマが死んだ後、しばらくはあの部屋で過ごしていた。そして、カズマが異世界に行ったとの情報を聞き、遂に新居を手に入れたと知って、ヒキコウモリもこっちに引っ越して来たのだ。

 

 「クローゼットごと来たのかよ…」

 

 「カズマさん、またよろしくお願いしますね」

 

 「あ、ああ。よろしくな」

 

 何はともあれ、ヒキコウモリと再開出来て嬉しい。クローゼットの中は、こっちでも存分に引き込もれるよう色々な設備が充実している。この中だけは向こうの世界とWi-Fiを繋いであるらしく、ネットが普通に使えるんだとか。

 

 「ああああああ!!??」

 

 「うおっ!?」

 

 急にアクアの絶叫を聞いてカズマは驚く。急いでウィスパーと共に、アクアの部屋に走り出した。

 

 「おい!大丈夫か!?」

 

 「か、カズマぁぁぁ…」

 

 部屋の中に入ると、アクアが涙目で酒瓶を抱きしめていた。

 

 「聞いてよ!私がお風呂上がりに飲もうと楽しみにしていたお酒が空っぽになってるの!これはきっとこの屋敷に取り憑いてる悪霊に違いないわ!もう許さないんだから!私にケンカを売ったことを後悔させてやるー!」

 

 アクアは空になった酒瓶を振り回しながら、部屋から猛烈な勢いで飛び出して行った。あちこちからターンアンデッドが聞こえてくる。どさくさに紛れて花鳥風月もやってるが、どうやら悪霊退治は順調のようだ。

 

 「…戻るか」

 

 「そうですね」

 

 「ったく、酒がなくなったくらいで人騒がせな」

 

 カズマとウィスパーも部屋に戻り、ベッドに入って就寝につく。

 時間が過ぎていき、深夜の領域に入る。久しぶりのベッドは寝心地良く、スヤスヤと気持ち良さそうに寝ているカズマ。

 

 パラリラパラリラーー!!

 

 「な、なんだ!?」

 

 「ウィス!?」

 

 突如鳴り響く爆音に目が覚め、カズマとウィスパーは慌てて部屋を飛び出した。

 

 「パラリラパラリラー!!ヒャッハー!!」

 

 そこにいたのは、バイクに跨り騒音をまき散らすはた迷惑な妖怪。

 

 「お前は爆音な」

 

 「言わせねーよー!!久々のあたしの見せ場でウィッスー!」

 

 妖怪パッドを取り出し、妖怪の名前を急いで検索する。

 

 「え〜と、うるさい音を出して走りまわるので…暴走男パラリラン!じゃなくて、モヒカングラサン喚く君!!でもなく…あ、ありました!!あれは妖怪爆音ならし!!」

 

 ブキミー族の爆音ならし。その名の通り、爆音を鳴り散らさないと生きていけない妖怪。

 

 「つまり!妖怪不祥事案件で言うところのいわゆる、やけにバカでかい音を出して走り回る車やバイクっているよね、布団叩いて引っ越〜しって言ったり、空き地でリサイタルする人っているよね〜。を、引き起こしちゃうやつでウィス!!」

 

 「爆音ならし、人の屋敷で騒ぎまくるのやめてくれよ。もう深夜だし、眠れないだろ」

 

 「やだねー!やっとカズマが住むとこを手に入れたって聞いたんだ!今夜はとことん騒ぎまくるぜー!」

 

 「あっ待て!!」

 

 カズマの制止も聞かず、爆音ならしはそのまま廊下の端へ走り去って行った。

 

 「追うぞウィスパー!あんなやつを野放しに出来るか!」

 

 カズマとウィスパーは爆音ならしを追って、屋敷の中を散策する。

 

 「くそっ、どこ行った?」

 

 「見当たりませんねえ」

  

 「しょうがない、次はあっちを探す…うわあっ!?」

 

 カズマが廊下の角を曲がると、向こうから来た者とぶつかってしまった。

 

 「いっててて…す、すまん。大丈」

 

 「おうおう、兄ちゃん。いったいどこに目ぇつけてんですかあ?」

 

 「…へ?」

 

 ぶつかった相手はめぐみんだったのだが、様子が明らかにおかしい。前髪が何故かリーゼントに変化してるし、鋭いグラサンをかけて、パジャマの上に爆裂上等と書かれた特攻服を羽織ってまるで不良みたいだ。

 

 「め、めぐみん?いったいどうしたんだよ、そんな格好で」

 

 「あぁ?何か文句あるんですかあ?」

 

 「い、いや別に…」

 

 めぐみんにメンチを切られ、思わず怯んでしまうカズマ。

  

 「まあまあ、それくらいにしてやるニャン」

 

 「じ、ジバニャン!?」

 

 「オレっちはジバニャンじゃないニャン!泣く子も泣き喚く、ワルニャンニャン!!」

 

 めぐみんの後ろからトコトコ現れたワルニャンという名のジバニャン。リーゼントにグラサン、いかにもガラの悪い不良感たっぷりだ。

 

 「カタギに手ぇ出すもんじゃないニャン。オレっち達は孤高のアウトロー、そんなシャバ僧は放っとけばいいニャン」

 

 「さすがワルニャンの兄貴です!尊敬します!」

   

 「こらこら、あまり撫でるニャン」

  

 「何なんだいったい…」

 

 これは絶対に妖怪の仕業だ。カズマは妖怪ウォッチを使い、めぐみんとワルニャンの周囲を照らす。

 

 「おっと、見つかっちまったぜ」

 

 「え〜と、あの妖怪は」

 

 「お前はグレるりん!」

 

 「言われたー!?」

 

 人をグレさせる妖怪グレるりん。取り憑かれると、どんなに真面目な人でも、不良みたいに悪いことが大好きになってしまうのだ。

 

 「私たちは夜更かしして、しかもお菓子まで食べちゃうなんて極悪なことも平気で出来るんですよ!」

 

 「ふはは!参ったかー!」

 

 「小学生かお前ら」

 

 なんだかこのまま放っておいても問題ない気がしてきた。根がいい子だから、取り憑かれても大した悪事は出来ないのだろう。ヤンキー座りでチョコボーを食べてる二人を後回しにして、カズマとウィスパーは逃げた爆音ならしを探す。

 

 「おや?あそこにいるのはダクネスさんじゃないですか?」

 

 「ほんとだ、あんなとこで何やってんだ?」

 

 カズマ達の前方に、トイレのドアの前で立ち往生しているダクネスを発見した。

 

 「何してんだダクネス」

 

 「トイレ行きたいなら早く入ったらどうでウィス?」

 

 トイレの前でジッと佇むダクネス。よく見るとぷるぷる震えており、我慢しているのが分かる。

 

 「…カズマとウィスパーか。私は今、限界に挑戦しているところだ」

 

 「げ、限界?」

 

 「そうだ!この迫りくる尿意を前に、どこまで我慢出来るか自分を試しているんだ!」 

 

 ダクネスがおかしいのはいつものことだが、今回は別の意味で様子がおかしい。まさかと思いウォッチをかざして見ると、やっぱりダクネスに妖怪が取り憑いていた。

 

 「あ、ああの妖怪は〜…!」

 

 「モレゾウ!」

 

 「先越されたー!?」

 

 カズマに妖怪の名前を先に言われてウィスパーは悔しがる。そして、モレゾウの他にもう一体妖怪がいた。

 

 「お前はガマンモ」

 

 「させるかああああ!!あの妖怪はえ〜とえ〜と…鼻栓パオーン!違う。ゾ〜ウさんゾ〜ウさん、お〜鼻が長いのね。でもなくて…発見!あれは妖怪ガマンモス!!」

 

 ゴーケツ族のガマンモス。我慢を美学とし、取り憑いた相手を何でもかんでも我慢させてしまう妖怪。

 

 「妖怪不祥事案件で言うところの〜、トイレとかついつい我慢しちゃうことってあるよね。ギリギリまで我慢して、それが癖になっちゃうことってあるよね〜。を引き起こす妖怪でウィッス!」

 

 「よりによって、モレゾウとガマンモスに取り憑かれたか」

 

 「はぁ…はぁ…くううッッ!!騎士として、ここで漏らすわけにはいかない…!」

 

 トントンと足下を踏み鳴らし、苦悶の表情を浮かべるダクネス。息も乱れ、顔は赤く火照っている。普通の人が見たら凄く苦しそうだと思うだろうが、カズマとウィスパーにはこの状況を楽しんでるようにしか見えなかった。

 

 「屈しない!こんな、尿意なんか…私は屈しないぞおッ!!」

 

 「ガマン!ガマンこそ美徳!もしここで漏らせば、お前は凄く恥ずかしい目に合うぞ!」

 

 「はうううぅぅんんッッ…!!」

 

 俺達は今、何を見せられているんだ…? カズマとウィスパーがなんとも言えない表情をしていた。

 

  「…も、もう限界だーーー!!!」

 

 我慢の限界が来てダクネスがトイレに駆け込む。ガマンモスは我慢させる妖怪だが、何も永遠に我慢させられるわけがない。

 

 「…か、カズマ、ウィスパー。すまないが、ちょっと歌でも歌ってくれないか?このままだと、音とか…その」 

 

 「何で夜中にトイレの前で歌わなきゃいけないんだ」

 

 「まぁまぁカズマくん。ここは一つ、あたくしの美声を聞かせてあげようじゃありませんか」

 

 まるでビジュアル系バンドのボーカルみたいに派手な格好のウィスパー。ギターを派手に鳴らし、ノリノリで歌い出す。

 

 「君と見たせ」

 

 カーン

 

 「ガーン!鐘一つ!?」

 

 カズマに鐘を一回だけ鳴らされ、ウィスパーの一人のど自慢大会は強制終了した。

 

 「カズマ、こんなとこで何やってるの?」

 

 ちょうど除霊をひとしきり終えたばかりのアクア。手には薄気味悪い西洋人形が何体か握られていて、よく見ると後ろの方にもいくつか転がっているのが分かる。

 

 「ちょっとカズマ。この屋敷、悪霊だけじゃなく妖怪もゴロゴロいたわよ。まったく、女神の屋敷を何だと思ってるのかしら」

 

 「そうだ、爆音ならしって妖怪見なかったか?うるさい音を出しながらバイクに乗ってるやつ。俺達、そいつを追っていたんだ」

 

 「ああ、あいつね。ちょこまかと鬱陶しかったから、ゴッドブローで屋敷から追い出してやったわ」

 

 シュッシュッとパンチを繰り出し、得意気になるアクア。女神の力を使えば妖怪も浄化することが出来る。爆音ならしは手加減されたから助かったものの、その現場を見ていた他の妖怪達はアクアを心底怖がった。

 後に、一部の妖怪の間で暴君アクアと恐れられることになるのだった。

 

 「アクアさんも妖怪の天敵でウィスね」

 

 「ほらほらガマンモス、モレゾウ。お前らもこれ以上調子に乗ると、この狂犬女神に浄化されるぞ」

 

 「ヒィィィ!」

 

 「これはガマン出来ん〜!!」

 

 モレゾウとガマンモスが逃げ出し、ダクネスも尿意がすっかり消えてトイレから出てくる。

 

 「はっ!?私は何を…?」

 

 「オレっちたち、何でこんな夜中にチョコボー食べてるニャン?」

 

 グレるりんに取り憑かれて、一時グレていためぐみんとジバニャン。アクアの噂を聞いたグレるりんが恐れて逃げ出したことで、二人もようやく正気に戻った。

 

 「ふわぁ〜…眠いニャン〜」

 

 「ジバニャン、寝る前に歯磨きしなきゃ駄目ですよ。お菓子を食べた後は歯磨きしないと、虫歯になっちゃいますからね」

 

 めぐみんは眠そうに目を擦るジバニャンを抱き上げ、洗い場に歩いていく。これで、一夜の除霊及び妖怪騒動は静かに幕を下ろしたのであった。

 翌日にカズマとアクアはギルドに向かった。この屋敷に潜んでいた悪霊には懸賞がかけられていて、それを受け取りに行ったのだが、そもそもの原因が共同墓地に結界を張ったアクアにあったらしく、結局報酬は辞退したのだった。

 

 「聞いてくださいよアンナさ〜ん。あたしったら、いっつもめぐみんさんの爆裂魔法の実験台にされるんでウィスよ〜。酷いと思いません?」

 

 ウィスパーがお墓に向かって愚痴をこぼしてる。カズマには見えないが、アンナという少女の霊がここにいるらしい。この子のお墓を毎日綺麗に掃除することと、夕食後に冒険の話を聞かせるのがここに住み続ける条件だ。

 

 「カズマくん、お供え物のお酒は次からもうちょっと甘めのものにして欲しいそうでウィス」

 

 「了解、その子のおかげでここに住んでるようなものだからな。出来るかぎりのことはするよ」

 

 丁寧にお墓を掃除し、額の汗を拭うカズマ。最後に両手を合わせ、今日のノルマは終了した。

 

 「カズマー、ウィスパー。ご飯が出来たわよー」

 

 「よし、戻るか」

 

 「でウィスね」

 

 屋敷からアクアの声が聞こえ、掃除道具を片付ける二人。

 

 「アクア、暖炉の薪がそろそろ足りないんだが」

 

 「それならそこにあるカズマのジャージでも代わりに放り込んどいて」

 

 「ついでにウィスパーの妖怪パッドも入れとくニャン」

 

 「待てええええ!人のジャージを勝手に燃やすなああああ!!」

 

 「命より大事なあたしの妖怪パッドちゃんに何するんですかああああああ!!」

 

 大急ぎで屋敷に走っていく二人を見て、少女の幽霊はクスッと笑ってお供え物のお酒をちびちび舐めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




アホみたいに時間かかってしまった
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