妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

2 / 34
驚愕のステータス

 カズマの視界に飛び込んできたのは、いかにも異世界らしい街並みと人々だった。獣みたいな耳が付いてる人や、鎧を着込んで剣を背負っている人など。まるでゲームの世界そのままで興奮する。

 

 「テーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるなあ」

 

 長い引きこもり生活で、あらゆるゲームをやり尽くしたゲーマーのカズマ。この世界なら喜んでやっていけると、心をワクワクさせた。

 

 「本当に異世界に来たニャンね」

 

 「ああ、これから俺達の大冒険が始まるんだ!と、その前に。おい、いつまで泣いてんの?」

 

 カズマとジバニャンの後ろでは、強制的に異世界に送られて号泣しているアクアの姿があった。

 

 「うわああああん!!なんで!?なんで私がこんな目に合わなきゃいけないのよおおお!私が何したって言うのよおおお!!」

 

 「まあ、主に俺を笑い飛ばしたことかな」

 

 アクアは人目も憚らず大泣きしている。周りの人の視線が痛いし、ここまで全力で嫌がられると、さすがにちょっと可哀想になってきた。

 

 「…ああ、悪かったよ。そんなに嫌なら帰っていいから」

 

 「帰れるならとっくに帰ってるわよ!いきなり地上に落とされて、これからどうしろって言うのよ!」

 

 ああうるさい。耳元でギャアギャア喚かれて余計うるさい。

 

 「でもカズマ、これから本当にどうするニャン?」

 

 「まあまあ慌てるなジバニャン。魔王を倒すことが俺達の最終目的だろ?とすると、ここには魔王と戦うための組織。ギルドがあるはずだ。とりあえずは、そこで情報収集だな」

 

 いきなり異世界に来た割に、その冷静さと考えの鋭さにジバニャンとアクアは感心した。カズマは生粋のゲーマーだと自負している。長い引きこもり生活のおかけで、ゲーム的な知識は頭に叩き込んでいる。

 夜ふかし妖怪、カンテツと夜通しゲームをやり込んだ実力は伊達ではない。

 

 「そういえば、ここの言葉とかちゃんと通じるの?」

 

 「それは問題ないと思うわよ。召喚される時に、自動的に頭に入り込ませるようになってるから。キャパオーバーしちゃうとパーになる可能性もあるけど」

 

 「サラッと恐ろしいこと言ったニャン!?」

 

 「そういうことは早めに言ってくれよ!」

 

 「だって〜、それどころじゃなかったんだも〜ん」

 

 ヒヤヒヤしたが、今の状況を見ると無事にここの言語を覚えられたことで大丈夫だろう。

 

 「あ、そうだ。ここでもちゃんと妖怪を召喚出来るか確かめないと」

 

 今ここにいる妖怪は、ジバニャンとウィスパーだけ。他の友達妖怪は、当然だが日本に残してきたままだ。妖怪ウォッチで召喚出来るとは思うが、もし召喚不能だったら魔王退治はかなり手こずるだろう。

 腕の立つ妖怪達に、なんとしても手伝って貰いたい。

 

 「ウィスパー、メダル貸して」

 

 妖怪メダルはウィスパーは預かっている。しかし、何故かウィスパーからの返事がない。

  

 「ちょっとウィスパー。メダル貸し…」

 

 「ここはウィスパー?あたしはどこ…?」

 

 「「パーになってるー!ニャン!」」

 

 どうやらウィスパーだけキャパオーバーしたみたいで、頭の中身がショートしてしまっていた。

 

 「どうりでさっきから何も喋らないと思ったニャン…」

 

 「お、おいウィスパー!しっかりしろ!」

 

 「はっ!な、なんですかあなたは!?さてはあたしを攫いに来た変態ね!うぎゃあああ!痴漢よー!」

 

 いつの間にか女装して、女口調で被害者面するウィスパー。凄くウザい。カズマとジバニャンはハリセンを手に、強い刺激を与えて正気に戻そうとした。

 

 「ウィスパー、しっかりするんだ!」

 

 「元に戻るニャン!」

 

 「痛い痛い痛い痛い!!ちょっ…ちょっ待っ、やめ…やめろおおおお!!」

 

 「あなた達、友達よね…?」

 

 ウィスパーに対する二人の容赦ない仕打ちに、アクアもちょっと引いている。何発か叩いた頃、ウィスパーの意識がようやく戻った。

 

 「いや〜、大変お騒がせし…」

 

 「もう一発ニャン!」

 

 「あべしっ!?てめジバ野郎!今の一発は余計だろうが!」

 

 顔がパンパンに腫れ上がったが、とりあえず無事に正気に戻って良かった。

 

 「いや全然無事じゃないんでウィスが…」

 

 「ウィスパー、メダル貸して。この世界でも召喚出来るか試したいんだ」

 

 「はいはい、どうぞ」

 

 ウィスパーからメダルを受け取り、左腕に装着している妖怪ウォッチにセットする。すると、ウォッチから眩い光が放たれ、その中にシルエットが見えた。

 

 「カズマ、何か用ずら?」

 

 「よしっ!召喚成功!」

 

 カズマが呼び出したのは、狛犬妖怪のコマさん。ソフトクリームが大好物で、岡山弁のもんげ〜をよく使う。よく勘違いされるが、コマという名前ではなく、コマさんが彼の名前だ。

 

 「もんげ〜!ここどこずら?見たこともないものがいっぱいずら〜!」

 

 ゲームや漫画に疎いコマさんは、異世界の風景に興味津々みたいだ。

 

 「まあ、特に用があるってわけではなかったんだけど。ちょっと色々あってさ、俺一回死んだんだ」

 

 「もんげ〜!?カズマ死んだずらか〜!?」

 

 コマさんにここまでの経緯を説明。カズマが死んで悲しんだり、ここが異世界だと知って驚いたりと忙しそうだったが、なんとか理解して貰うことが出来た。

 

 「魔王退治ずらか〜、大変ずらね〜」

 

 「そういうことだから、コマさんも俺に協力してくれるか?」

 

 「もちろんずら!オラ、魔王退治お手伝いするず…ら?」

 

 コマさんがビシィ!と了解した時、アクアがひょいっとコマさんを抱き上げた。

 

 「ねえねえ、この子すっごい可愛いじゃない!この子私に頂戴!我がアクシズ教のマスコットキャラにするわ!」

 

 「もんげ〜…」 

 

 先程から興味深そうにコマさんを見ていたアクア。コマさんをマスコットにして、色々とグッズを出して売り捌けば、アクシズ教の信者がもっと増えるに違いない。

 エリス教よりも信者を増やして、自分の顔が印刷された紙幣をばら撒いてやろうと考えていた。

 

 「駄目に決まってるだろ。だいたい何だよ、アクシズ教って」

 

 「私を崇拝している宗教よ!」

 

 この瞬間、カズマ、ウィスパー、ジバニャンの気持ちが一つになった。

 

 (やべー宗教だ…)×3

 

 「そうだ!あなた達もアクシズ教に入りなさいよ!そしてこの私を崇め奉りなさい!」

 

 「あ、うちは宗教の勧誘お断りしてるんで」

 

 「なんでよ!?」

 

 アクアのしつこい勧誘を拒否し、コマさんをアクアから引っ剥がす。

 

 「とにかく、コマさんをそんな怪しい宗教のマスコットにさせられるか」

 

 「えー、別にいいじゃない。減るもんじゃないし」

 

 「それならウィスパーとかどうだ?」

 

 「ちょっとカズマくんー。いくらあたくしがプリティだからって、簡単に売らないでくれますう?まあ、アクアさんがどうしてもって言うなら…」

  

 「嫌よ。こんな気持ち悪いのマスコットにしたら、アクシズ教のイメージが悪くなるじゃない」

 

 「ガーン!?うわっ、思わず口でガーンって言っちゃった!」

 

 アクシズ教は元々評判が悪いのだが、ウィスパーをマスコットにしたら、さらなるイメージダウンは避けられない。落ち込んでるウィスパーは放っておき、アクアは渋々コマさんを諦める。

 

 「カズマ。オラ、一度家に帰りたいずら。弟のコマジロウが心配してるずら」

 

 「分かったよ。またなコマさん」

 

 カズマはコマさんに手を振るが、何故かコマさんはジーッとカズマを見つめている。

 

 「ん? どうしたコマさん」

 

 「カズマ、どうやって帰ればいいずら?」

 

 「あ」

 

 そう、ここは異世界。召喚出来たは良いが、帰る方法を考えていなかった。いきなり召喚させられて、弟と離れ離れにするのは可哀想だ。カズマは必死にコマさんを帰らせる方法を考える。

 

 「アクア、コマさんを帰らせる方法とかないか?」

 

 「無理よ。今の私は癒す力くらいしか持ってないもの」

 

 (くそっ、使えね〜…)

 

 「オラ、もう帰れないずら…?コマジロウともう会えないずら…?」

 

 いかん。コマさんが今にも泣き出しそうな顔をしている。え〜と、何か良い方法はないか…そういえば、ワープ能力を持った妖怪がいたような…

 

 「カズマ、うんがい鏡を召喚したらどうニャン?」

 

 「それだ!」

 

 カズマはうんがい鏡を召喚する。うんがい鏡は別のうんがい鏡と繋がっており、一瞬で別の場所に移動することが出来る。

 

 「でもここ異世界でウィスよ。繋がりますかねえ?」

 

 ウィスパーの言うとおり不安はあるが、コマさんは恐る恐るうんがい鏡の中に足を入れる。すると、コマさんの短い足が鏡の中にズズッと入っていく。

 

 「もんげ〜!帰れるずら〜!」

 

 「良かったなコマさん」

 

 「カズマ、ありがとうずら〜!しばらくしたら、またコマジロウを連れてこっちに戻ってくるずら」

 

 無事にコマさんを帰すことが出来て、ホッと一安心する。

 

 「まてよ…向こうの世界と繋がってるということは、俺帰れるんじゃね?」

 

 「あ、確かに」

 

 「ちょっ、ちょっと待ってよ!魔王退治はどうするのよ!あなたが魔王を倒してくれないと困るんですけどー!」

 

 カズマにしがみついて帰らせないように必死のアクア。たとえカズマが帰れたとしても、魔王退治しないと自分は天界に帰れないのだ。

 

 「帰れるかどうか試してみるだけだって。もし帰れてもまた戻ってくるから」

 

 「ほ、本当よね!?女神に噓ついたら許さないわよ!本気で泣くからね!」

 

 アクアの泣き顔などとっくに見飽きたカズマ。いざ、懐かしの日本へ。勢いを付けて、うんがい鏡にダーイブ!

 

 「ぶへっ!?」

 

 だがしかし、うんがい鏡を通り抜けられず、思いっきり顔面を強打した。

 

 「いったああああい!鼻がああああああ!!」

 

 「ありゃー、残念でしたねカズマくん」

 

 「鼻血ブーニャン」

 

 「うわー、痛そー」

 

 何でかは分からないが、どうやら通れるのは妖怪だけみたいだ。やっぱり魔王を倒すまでは、この世界でやっていくしかないらしい。

 一方、日本に帰れることが出来るジバニャンは喜んでいる。これでチョコボーの補充が出来るし、ニャーケービーのライブがあればいつでも戻れるからだ。

 

 「カズマ、オレっちも一度カズマの家に帰って、チョコボーを補充するニャン」

 

 「あ、ではあたくしも。パッドの充電もしたいですし。カズマくん、必要なものがあれば持ってきますよ。替えのパンツとか」

 

 「あ、ああ。頼む」

 

 ジバニャンとウィスパーも、うんがい鏡を通ってカズマの家にワープする。

 二人が戻ってきたところで、ようやく最初の地点から移動を開始した。目指すはギルド、そこで冒険に出る準備を整うのだ。

 

 「冒険者ギルドへようこそ。お食事ならテーブルにおかけ下さい。冒険者登録やクエスト受注なら、あちらの受付へどうぞ」

 

 ギルドのお姉さんに案内され、カズマ達は受付に向かう。食堂も経営してるらしく、それっぽい人達が真っ昼間から酒をかっくらっていた。

  

 「すみません。冒険者になりたいんですけど」

 

 「はい、2名様ですね」

 

 受付のお姉さんはカズマとアクアを見る。普通の人には妖怪は見えないので、ジバニャンとウィスパーはお姉さんには見えていない。

 

 「では登録料として、2千エリスお願いします」

 

 「え?お金いるんですか?」

 

 「ええ、もちろん」

 

 カズマはポケットの中身を確認する。しかし当然何も入っていない。入ってたところで、ここの通貨なんて持っていないが。

 

 「なあ、金持ってる?」

 

 「持ってるわけないでしょ、いきなり連れてこられて」

 

 (ですよねー) 

 

 お金がない→冒険者登録出来ない→俺の異世界生活、終了。

 

 「いやいやいや!!まだ何も始まってねーわ!」

 

 しかしどうする?お金ナイダーが取り憑いてるわけでもないのに、今の俺達は無一文。このままじゃ冒険者登録もおろか、飯を食うことさえままならい。

 

 「大変ニャンね〜」

 

 俺達が無一文で困ってるというのに、この猫は呑気にチョコボーを貪ってやがる。

 

 「おいジバニャン。一本くらいくれ」

 

 「嫌ニャ〜ン。これはオレっちのチョコボーニャ〜ン」

 

 くそっ!このジバ野郎!

 

 「仕方ないわね。この私に任せなさい」 

 

 アクアが自信満々に、一人の老人に近付いていく。アクシズ教の女神だから、お金を恵んで欲しいと言ってるみたいだ。

 

 「いや、女神がお金をたかるってどうなんでウィス?」

 

 アクアの目論見も虚しく、その老人はエリス教だった。しかし、同情するなら金をくれ。老人は俺達にお金を恵んでくれた。

 後輩の信者にお金を貰ってアクアは半泣きになっていたが、結果オーライだ。

 

 「登録料、持ってきました」

 

 「はい、ではこの水晶に手をかざして下さい」

 

 はいはい、来ましたよこのパターン。ここで俺の秘めたる力が明らかになり、この場が騒然とする展開ですね。

  

 「カズマくん、フラグ立ててますよ」

 

 水晶がビカーッ!と輝き、カズマのステータスが冒険者カードに記録される。

 

 「えーと、サトウカズマさんですね。ステータスは…うわー、普通ー」

 

 「…え?」

 

 「大体平均値ですね。知力が少し高いのと、幸運が異常に高い以外は」

 

 俺、能力は平均値って言った覚えはないよ? 商人の方が向いてると言われたが、カズマは仕方なく最弱職の冒険者を選択した。

 その後アクアが異常な高ステータスを示し、ギルド内を騒然とさせた。初心者にも関わらず、プリースト(僧侶)の最上位であるアークプリーストに就いた。

 

 「ま、私女神ですし?これくらいのことは当然よね。あなたもそう思うでしょ?基本職の冒険者さん?」

 

 プークスクスと厭味ったらしく笑うアクア。なんでこいつが女神なんだと、天界の人事を恨んだ。

 

 「これに手をかざせば、ステータスが分かるニャン?」

 

 「あたし達もやってみるでウィス」

 

 ジバニャンとウィスパーも興味深そうに、水晶に手をかざした。

 

 「え?なんで水晶が勝手に?」

 

 誰も触っていないはずなのに、いきなり水晶が光って受付のお姉さんが驚いていた。空白の冒険者カードに、文字が刻まれていく。

 受付のお姉さんは困惑しながらも、冒険者カードを読み上げる。

 

 「…えーと、ジバニャンさん? 攻撃力と素早さの数値が高いですねえ。前衛職の職業なら、ソードマンや戦士がオススメです」

 

 「おー!中々カッコ良さそうな職業じゃないでウィスか!」

 

 「えへへ〜、そうニャン?」

 

 なんてこった、猫にも負けた。俺は最弱職の冒険者、かたやジバニャンはソードマンとか戦士。納得いかねえ。

 

 「さてさて、次はあたくしの番。どんな驚愕のステータスになるのやら」

 

 「えーと、ウィスパーさん?……な、なんですかこのステータスは!?」

 

 「ほ〜ら来た」

 

 お姉さんが今日一番の驚きの声を上げる。嘘だろ、ウィスパーにまで負けたら俺もう心折れるよ?

   

 「すみませんねカズマく〜ん、あたしばっかり目立っちゃって。さあさ、言っちゃってくださウィッス〜!」

 

 ギルド内の皆の視線が、お姉さんに集中する。果たして、どんなステータスなのか。

 

 「ウィスパーさん、ステータス……低っっっ!!」

 

 「…え?」

 

 「攻撃力、素早さ、防御力、知力、幸運。他の全ての数値が最低レベルに針を振り切っています!ここまで低い数値は見たことがありません!」

 

 他の冒険者の人達も、ウィスパーの冒険者カードを覗き込む。その数値の余りの低さに、皆驚きを隠せないでいた。

 

 「いやいやいや!そんな筈ごさーせんて!このあたくしのステータスが最低なんて、そりゃあーた…」

 

 「あ、一つだけ異常に高い数値が」

 

 「ほらほら、言っちゃってくださウィスー!」

 

 「再生力だけ異常に高いですね。これならどんな攻撃を受けても復活することが出来ます」

 

 それはつまり、再生するので倒されることもない。ということ。だが攻撃力も最低なので、勝つことも出来ないが。

 

 「カズマくん!こうなりゃ最弱同士、仲良くやって行こうではありませんか!」

 

 「おう!ステータスが何だ!そんなもんで、俺達の本当の力が分かってたまるか!」

  

 肩を組んで結束を強くするウィスパーとカズマ。だが心の中では…

 

 (あー、良かったー。ウィスパーのおかげで俺がまだマシに見えるもんな)

 

 (まあ最弱職のカズマくんよりは、あたくしの方がマシでウィスね)

 

 お互いに、相手を下に見ていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。