妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

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めぐみんと妖怪ウォッチ

 めぐみんはいつものように、ばっくれつ♪しようとカズマを誘おうとしたが、どうやら外出中のようで屋敷にいなかった。

 アクアもバイトで昼間はいないし、今日はダクネスと一緒に行こう。そう思ったところ、玄関に光る物を発見した。

 

 「これは、カズマがいつも付けている妖怪ウォッチじゃないですか」

 

 「めぐみんさん、玄関で何してるんでウィス?」

 

 「ウィスパー、カズマったら妖怪ウォッチを玄関に置きっぱなしにしていますよ」

 

 「あら〜、カズマくんもおっちょこちょいでウィスね〜。ここは、妖怪執事のあたくしが届けてあげ」

 

 「いえ、ちょっと待ってください」

 

 めぐみんはウォッチをまじまじと見つめ、そして左手首に巻いて装着した。

 

 「めぐみんさん、カズマくんのウォッチで何してるんでウィスか」

 

 「前から私も付けてみたかったんです。これがあれば、妖怪を召喚出来るんですよね?」

 

 「ええ、あとメダルが必要でウィスけど」

 

 実は以前から、妖怪ウォッチを付けてるカズマを羨ましいと思っていためぐみん。自分もウォッチを使って、かっこよく妖怪を召喚したかったのだ。

 

 「ということでウィスパー、メダル貸してください」

 

 「はいどうぞ」

 

 ウィスパーからメダルを受け取り、それを指でピーンッ!と弾いて上に飛ばす。紅魔族特有の赤い瞳が輝き、マントをはためかせて召喚の詠唱を唱える。 

 

 「…(あか)より(あか)く、(ほむら)より()づる我が眷属。移ろいゆく現し世に、巡り会えた奇跡の邂逅。言の葉に応え、世界の深淵を共に歩もう。約束の地は…今ここに。顕現せよ、ジバニャン!!」

 

 「ジバニャーーン!!」

 

 ウォッチから発する眩い光柱の中から、ジバニャンが勢い良く飛び出してくる。並び立つ二人の姿は、まるで御伽話に出てくる伝説の魔法使いと、その使い魔みたいに勇ましいものだった。

 

 「ってあれ?めぐみん?」

 

 いつも通りカズマに呼び出されたと思ったら、めぐみんが隣にいるので不思議に思うジバニャン。

 

 「カズマくんが妖怪ウォッチを忘れたので、めぐみんさんが試しに召喚したんでウィスよ。ね、めぐみんさん」

 

 「……ッッ!!」

 

 「めぐみんさん?」

 

 「どうしたニャン?」

 

 ウィスパーとジバニャンがめぐみんを見ると、初めての召喚が大成功した喜びで感極まって小さく震えていた。調子が良い日に爆裂魔法を放った時のように、満足そうな顔をしている。

 

 「よっぽど嬉しかったようでウィスね」

 

 「いや〜、面白いですね妖怪ウォッチ!離れたところにいる妖怪を呼び出せるなんて、まるで使い魔召喚みたいで最高じゃないですか!今はカズマもいませんし、今日は私が妖怪ウォッチの所有者です!!」

 

 すっかり妖怪ウォッチを気に入った様子のめぐみん。新しいおもちゃを与えられた子供みたいにはしゃいでいる。

 

 「ジバニャン、ウィスパー、街へ行きましょう!この妖怪マスターである私が、隠れている妖怪達を暴き出してみせます!」

 

 「いつ妖怪マスターになったんですかあーたは」

  

 「オレっち、めぐみんに付いて行くニャン!」

 

 玄関の扉を開けて出かけようとする三人。それを見ていたダクネスが、後ろから声をかけた。

 

 「三人とも、どこか行くのか?」

 

 「ええ、これからちょっと街まで…って、その箱は何ですか?」

 

 ダクネスが何やら大きな箱を抱えている。ダクネスは箱を一度下ろして、中のものをめぐみん達に見せた。

 

 「こ、これは…!!??」

 

 三人は箱の中身を上から覗いて見る。めぐみんが一際驚いた声を上げ、目をキラキラ輝かせていた。

 

 「ちょ、超高級の霜降り赤蟹じゃないですか!しかもこんなにたくさん…」

 

 「凄いだろ?私の実家から送られてきたんだ。日頃お世話になってる皆さんにお礼だそうだ」

 

 箱の中には、蟹が所狭しとびっしり詰め込まれていた。超高級の蟹らしく、どれも大きくて立派なものだった。

 

 「今夜は皆で蟹を食べよう。あまり遅くならずに帰ってくるんだぞ」

 

 「もちろんです!蟹のためなら、今日だけ爆裂魔法を我慢して食べた後に爆裂します!」

 

 「結局爆裂するんかい」

 

 それはそれ、これはこれなのだろう。ウィスパーが呆れたようにツッコむ。

 ウィスパーとジバニャンを連れ、めぐみんはウキウキ気分で歩いていく。今まで霜降り赤蟹なんてお目にかかったことがなく、都市伝説の食べ物だと思っていた。それを今夜はお腹いっぱい食べれることもあり、嬉しそうに鼻歌を歌っている。

 

 「めぐみんさんご機嫌でウィスね」

 

 「オレっちは蟹よりチョコボー派ニャン」

 

 「はぁ〜、楽しみですね〜。霜降り赤蟹…」

 

 そんなこんなで、三人は街の中心部に到着。いつも通りギルドには冒険者達が酒を飲んでいて、近所のお店は特売してたりで賑やかなところだ。

 

 「改めて見ると、妖怪っていっぱいいるんですね」

 

 ひも爺とバクロ婆が静かにお茶していたり、お金ナイダーが落ちてる小銭を拾っていたり、コマ兄弟が仲良くソフトクリームを食べていたりで、今ではアクセルの街にも妖怪が溢れている。

 

 「妖怪は至るところに潜んでいますからね〜。彼らもこの世界を気に入り、楽しくやってるようでウィス」

 

 三人はとりあえずギルドの中に入る。誰か妖怪に取り憑かれた人はいないかな〜、とめぐみんは周りをキョロキョロ探している。

 

 「ん?あれは…」

 

 めぐみんの前方に、足を組んで椅子に座っている金髪の青年がいる。手鏡を手に、それに映る自分の顔を眺めていた。

  

 「…う〜ん、美しい〜」

 

 「うわ…」

  

 「なんニャあれ…」

 

 手鏡で自分の顔を見てうっとりする青年。そのナルシスト全開な様子に、めぐみんとジバニャンはちょっと引いていた。

 

 「ちょっとダスト、何やってるのよ」

 

 髪を後ろに束ねた女性が心配そうに話しかける。

 

 「見て分からないか?ミーのご尊顔に見惚れているところさ」

 

 「…は、はあ?なに意味の分からないこと言ってるのよ気持ち悪い。あんたそういうことするキャラじゃなかったでしょ」

 

 「ふっ、素直じゃないなあ。でも、君のそういうところが実に…ワンダホー」キラーン

  

 「う、ウザい〜!」

 

 彼の仲間らしき女性と話しているが、いつもの様子と違う青年を心底気味悪がっている。

 

 「多分あれ妖怪の仕業ニャンよ」

 

 「そ、そうですね。ちょっと見てみましょうか」

 

 ウォッチをかざし、ダストと呼ばれた青年の周りを調べるめぐみん。すると、彼の隣に人の顔をした犬が立っていた。

 

 「あ〜、イケメン犬がいたニャンね」

 

 「イケメン犬?」

 

 「取り憑いた人をかっこ良くする妖怪ニャけど、そのせいでちょっとキザな感じになっちゃうニャン」

 

 「ふ〜、イケメンは辛いよ」

 

 「辛いのはこっちよ…」

 

 ダストのナルシストっぷりに呆れて、女性はどこかに行ってしまった。

 

 「あっはっはっ。まったく、最近の女の子は難しいなあ。ん?そこのお嬢さん。ミーと一緒にワンダホーしない?」

 

 「行きましょうか」

 

 「そうニャンね」

 

 めぐみん達はダストを無視して、ギルドを後にした。

 

 「ウィスパー。さっきは何も喋らなかったニャンけど、もしかしてイケメン犬って分からなかったニャン?」

 

 「ギックウッ!?」

 

 図星である。ウィスパーは妖怪パッドで検索するのに夢中で、何も言うことが出来なかった。

 

 「前から思ってましたけど、ウィスパーってほんと偽執事ですよね」

 

 「そうニャン、知ってる知ってる言いながらいっつも検索してるニャン」

  

 「ち〜が〜い〜ま〜す〜!!当然知ってましたよ〜!知っててあえて言わなかっただけです〜!!」

 

 チラチラと自分を見て、わざと聞こえるように話すめぐみんとジバニャン。ウィスパーは必死に否定するが、二人の視線は冷たいものだ。

 

 (ま、まずい…!このままでは、お二人のあたしに対する評価が地の果てまで真っ逆さまに落ちてしまうでウィス!これは何としても、次で汚名挽回しなくては!!)

 

 言葉使いは間違ってるが、ウィスパーの決意は固い。

 

 「…はあ〜、僕は一体どうしてしまったんだ」

 

 三人がしばらく歩いていると、道の隅っこで落ち込んでる男がいた。よく見ると、以前カズマに絡んできたミツルギという青年だった。

 

 「あの二人が、急に僕を置いてどこかに行ってしまうなんて…」

 

 あの二人とは、いつもミツルギと一緒にいた女の子達のこと。二人ともミツルギに好意を持っていたのだが、何故か突然「さよなら」と言って離れてしまったのだ。

 

 「むむ、これはもしや妖怪の仕業では」

 

 「そうですか〜?彼がただ単に飽きられただけでしょうよ」

 

 めぐみんがウォッチを照らすと、ミツルギに取り憑いている妖怪を発見した。

 

 「ウィスパー、あの妖怪は何ですか?」

   

 「え?あ〜はいはい、当然知ってますよ〜。俺の両手はバズーカ砲とか、髪の先っちょにイカリング結びつけてるマンとかそういう…え〜と」

 

 妖怪の名前を調べるが、中々出てこなくてパッドを必死にスクロールするウィスパー。

 

 「あーもう、じれったいですね。貸してください!私が調べます!」

 

 ウィスパーから妖怪パッドを強引に取り、めぐみんが自分で調べだした。

  

 「あちょっとぉ!素人が簡単に使えるもんじゃないんでウィスよ!!」

 

 「ありました!あれは妖怪モテヌスです!」

  

 「めっちゃ使えてるーー!?」 

 

 ウィスパーより早く、いとも簡単に妖怪の名前を発見しためぐみん。そのままモテヌスの特徴をスラスラと読み上げる。

 

 「取り憑いた人をモテなくする妖怪で、妖怪不祥事案件のいわゆる、どんなイケメンでも何故かモテない人っているよね〜。を引き起こす妖怪です!!」

 

 「いやああああああ!!それあたしの見せ場ああああああ!!」

 

 「ウィスパーより使いこなせてるニャン」

 

 数少ない活躍の機会を奪われ、汚名を返上出来なかったウィスパー。

 

 「めぐみん、あいつどうするニャン?」

 

 「う〜ん。私としては放っといてもいいんですけど、さすがにちょっと可哀想なのでなんとかしてあげましょう」

 

 見てしまったからには素通りするのも気の毒だ。一応同じ街の冒険者だし、ここは妖怪ウォッチを持ってる自分が解決しなくては。

 

 「ウィスパー、モテヌスをあの人から引き離せる妖怪はいますか?」

 

 「そうでウィスね〜…あ、それならモテマクールはどうでしょ。モテヌスの反対に、人からモテる妖怪でウィス」

 

 めぐみんはウィスパーからモテマクールのメダルを受け取り、妖怪ウォッチで召喚する。

 

 「出でよ!私の、仲間の友達!!」

 

 ピンポンパンポーン

 

 「…ん?」

  

 ただいま、留守にしております。ご用の方は、ピーという音の後に、メッセージをどうぞ。

 ピーーーーー…

 

 「ええ!?」

 

 「くううっ!召喚拒否とは!」

 

 「召喚拒否!?そんなことがあるんですか!?」

  

 妖怪も普通に生活してるところを急に呼び出されるわけだから、こういうことも当然起こる。しかし困った、これではミツルギからモテヌスを追い払えない。

 

 「そうニャ、あいつはモテる人をモテなくする妖怪だから、逆にモテなさそうな妖怪を呼ぶニャン」

 

 「モテなさそうな妖怪…はっ!」

  

 モテない妖怪、めぐみんはある妖怪が思い浮かんだ。そして、めぐみんが呼び出したその妖怪とは…

  

 「…私に何か?」

 

 そう、モテない妖怪代表のじんめん犬である。

  

 「あの、なんで牢屋の中にいるんですか?」

 

 召喚されたじんめん犬は、縞々の囚人服を着て鉄格子の中にいた。前にベルディアを倒した宴会の時、外に出て立ちションしてるところをお巡りさんに連れて行かれ、今日(こんにち)までずっと牢屋に入れられていたのだ。

 

 「…まあ、普通に出れますけどね」

  

 鉄格子は前面部分だけで、横からあっさり出てきた。

 

 「人面おっさん、あの人からモテヌスを引き離してください」

 

 「めぐみんさん、人面おっさんは普通のおっさんでウィス」

 

 「私がですか?まあ、やれるだけやってみましょう」

 

 じんめん犬がミツルギに向かって手をかざし、妖力を発揮させる。

 

 「はああああ…!!」

 

 じんめん犬の手から茶色のオーラが出てきて、ぐねぐね曲がりながらミツルギへ飛んでいく。

 

 「…なんか、気持ち悪いですね」

 

 「…あの色、完全にうん」

 

 「しっ!ジバニャンしっ!でウィス!」

 

 じんめん犬のブキミーなオーラがミツルギを包む。ミツルギの周りに、モワ〜ンとした嫌な空気が漂っている。

 

 「おや?これなら僕の力は必要ないみたいだね」

 

 じんめん犬のオーラに包まれたミツルギに、これ以上取り憑いても効果がないと判断したモテヌス。静かにミツルギから離れ、また次のターゲットを探しに行った。

 

 「モテヌスが離れたニャン!」

 

 「ふふ〜ん、妖怪マスターである私にかかればこんなもんです」

 

 「でもめぐみんさん。モテヌスが離れたってことは、彼が結局モテないままという事実は変わらないのでは?」

 

 「あ」

 

 ミツルギからモテヌスを引き離すことだけ考えていたが、これでは何の解決にもなってないことに気付く。

 

 「ふー、久しぶりに妖怪の力を使いましたよ。それじゃあ、私はこれで」

 

 「ちょっと君」

 

 「はい?」

 

 じんめん犬の目の前に、いつぞやの警官2名の姿が。

 

 「勝手に牢屋を抜け出すなんて、何を考えてるんだ」

 

 「え!?いやいやいや!これは私ではなく、あの子が呼び出したから…」

 

 「うんうん、署で聞くからね」

 

 「ちっくしょおおおおおおお!!!」

 

 「ああ!僕は…僕はどうしたらいいんだああああ!!」 

 

 めぐみんが召喚したせいで、意図せず脱獄して罪を重ねてしまったじんめん犬と、少なくともじんめん犬の妖力が切れるまで女の子達が戻ってこないことが確定したミツルギ。

 二人の悲しき男の声が、アクセルの街にこだました。

 

 「…めぐみんさん、どうするんでウィ」

 

 「あー!もう帰らなきゃいけない時間じゃないですかー!霜降り赤蟹が待ってるんですから、早く帰りましょー!」

 

 わざとらしく大きな声で誤魔化して、めぐみんは早足で歩いていく。夕日が地平線に沈んでいき、徐々に街が暗くなり始めた。きっと今頃ダクネスが蟹を調理しているに違いない。ゴクッと喉を鳴らし、めぐみん達は家路へと急ぐ。

 しかし、一番前にいためぐみんが急に立ち止まった。

 

 「どうしましためぐみんさん?」

 

 「…なんか、変な感じしませんか?」

 

 さっきまで色んな人々の声で賑わっていたアクセルの街が、今は不気味なくらいに静まり返っている。まるで、この三人だけが別の場所に閉じ込められたみたいに。

 

 

 ズシィィィン……!!!

 

 

 突如大きな音が鳴り響き、まるで地震のように地面がグラつく。

 

 「な、なんですか今の!?」

  

 「う、ウィスパー…これってまさか」

 

 「い、嫌な予感が…」

 

 ジバニャンとウィスパーは、過去にこれと同じことを経験したことがある。世界がくすんだ色に変わり、巨大な足音が芯まで響く。

 そして、世にも恐ろしい咆哮が轟くだろう。

 

 

 アーーカーーン!!!

 

 

 全身を血に染めたような赤い体。丸太のように隆起した太い腕、握りしめられた金棒。頭に生えた一本の鋭い角を尖らせ、赤鬼がめぐみん達の前に現れた。

 

 「鬼時間でウィスー!!」

 

 「逃げるニャーーン!!」

 

 三人は慌ててその場から走り出し、全速力で家に向かう。

 

 「な、なんなのですかあのモンスターは!あれも妖怪なんですか!?」

 

 「あれは赤鬼!鬼時間に出てくる凶暴な妖怪でウィスー!」

 

 「鬼時間?」

 

 「何の前触れもなく訪れる、いわば天災!巻き込まれた者は、異次元に迷い込んで鬼に追いかけられるのでウィス!」

 

 鬼時間の空間は、現実世界そっくりに作られている。この世界では、めぐみん達と鬼以外誰もいない。

 

 「鬼時間から脱出する方法はないんですか!?」

  

 「鬼に捕まる前に、家に帰れたら鬼時間から開放されるニャン!」

  

 迫りくる赤鬼の金棒から、必死に逃げる三人。赤鬼はその筋骨隆々な腕を豪快に振るい、荒れ狂う暴力を発揮した。

 

 ドカアアアァァァン!!!

  

 ウィズのお店が粉々に砕かれ、その残骸を赤鬼が踏みしめる。鬼時間は異次元空間だから、たとえ建物が破壊されても外の世界には影響しない。

 ちなみにこの日の夜、ウィズは自分の店が倒産する夢にうなされたらしい。

 

 「こうなったら戦います!ジバニャン、ウィスパー、援護を!」

 

 「無茶です!鬼時間中の鬼はバフがかかっていてほぼ無敵!逃げるのが一番でウィス!」

 

 「私を誰だと思ってるんですか!」

 

 めぐみんは赤鬼に正々堂々と相対し、杖に魔力を込める。

 

 「紅魔族随一の使い手にして、爆裂魔法を操る者!その私の行く手を阻む者は、たとえ冥府の鬼だろうと許しません!」

 

 臆することなく、力強く杖を突きつける。小柄なめぐみんの前に赤鬼が立つと、実際の身長差より大きく見える。それでも、決して退かなかった。

 

 「ウィスパー、ここはオレっちたちの出番ニャン」

 

 「…はあ、仕方ありませんねえ」

 

 羽織を靡かせ刀を携える、ニャン獄ジバ寿郎。顔に無数の傷が浮かび鋭い眼光を放つ、ウィス川パねみ。

 二人の剣士が、めぐみんの前に並び立った。

 

 「オレっちは、めぐみんを守るニャンー!!」

 

 「上等上等!!やってやらあああああ!!」

 

 ドカッ

 

 「ニャアアアアアア!?」

 

 「ウィスーーーーー!?」

 

 果敢に挑んだ二人だったが、あっさり赤鬼の金棒にふっ飛ばされた。

 

 「…よくやりました、二人とも」

 

 ジバニャンとウィスパーのおかげで、詠唱が間に合った。渾身の力を込め、赤鬼に爆裂魔法を放つ。

 

 「アッカーーーーン!!!」

 

 激しい爆風と爆音と共に、黒煙が舞い上がる。めぐみんはその場に倒れ込み、そして赤鬼も重い音を立てて崩れ落ちた。

 

 「めぐみんーー!!」

 

 「やりましたねめぐみんさん!」

  

 「…二人が、時間を稼いでくれたおかげです。私達の勝利ですよ」

 

 鬼時間の赤鬼を倒し、喜びに浸る3人。後はゆっくり帰るだけ、そう安心したのも束の間…

 

 

 

 アアアァァァオオオオオオ!!

 

 

 「え!?」

 

 「こ、この声は…」

 

 「まさか…」

 

 

 そして、別のところからも。

 

 

 クウウゥゥゥロオオオオオオ!!!

 

 

 赤鬼より強い青鬼、その青鬼よりも強い黒鬼の声。ズシンズシンと地響きを起こし、こっちに近付いてくる。

 

 「逃げるでウィスー!」

 

 赤鬼との戦闘で、すでにめぐみんは満身創痍。これはさすがに勝ち目がない。ジバニャンとウィスパーは動けないめぐみんを連れて走り出す。

 

 「うわああ!?明らかにやばいのが追って来てます!」

 

 「急ぐニャンーー!!」

 

 後ろから追ってくる青鬼と黒鬼。赤鬼がやられた仇を討とうというのか、文字通り鬼の形相で追跡してくる。

 

 「おお!あれは懐かしの我が家でウィス!!」

  

 ようやく眼前に屋敷を捉え、ラストスパートを上げる。あわや、2つの金棒が無慈悲に3人に襲いかかるその刹那。ギリギリのところで屋敷に辿り着き、鬼時間から開放された。

 

 「ハア…ハア…た、助かったニャン…!」

 

 「生きた心地がしなかったでウィス〜…」

 

 「…二人とも、ありがとうございました」

 

 疲労と安心でその場に突っ伏す3人。玄関の扉が開かれ、ダクネスとアクアが顔を出す。

 

 「お、帰ってたのか。なんだ、そんなに遊び疲れて。よっぽど蟹が楽しみだったんだな」

  

 「3人とも、早く手を洗ってきなさい。今日は蟹よ蟹!!」

 

 めぐみん達がどれほど大変な目に合ったか、二人は当然知らない。鬼時間に巻き込まれ、鬼と激闘を繰り広げたとは夢にも思わなかった。

 

 「お、オレっち…しばらく動けないニャン」

  

 「わ、わたくしもでウィス〜。めぐみんさんもそうでウィ」

 

 「か、蟹が…蟹が私を待ってるんです。こんなところで、倒れてるわけには…!」

 

 「どんだけ蟹食いたいんでウィスか」

 

 爆裂魔法の直後は動けない筈だが、この時ばかりは蟹への執着心がめぐみんを突き動かしていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




めぐみん主役の回は前々から書きたかったお話しで、ようやく完成できて良かったです。
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