妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら? 作:カジ
それは、ある日突然やってきた。
「デストロイヤーだああああああ!機動要塞デストロイヤーが来るぞおおおおおおお!!」
アクセルの街に鳴り響く警報。その騒ぎはベルディア来襲の比ではなく、その名を聞いた市民達は我先に避難を開始する。
「おいおい、いったい何の騒ぎだ?」
例によって街の冒険者はお呼びがかかり、カズマ達を含めた皆がギルドに集められた。
「放送を聞いてご存知だとは思いますが、機動要塞デストロイヤーが現れました。真っすぐ、このアクセルに向かっています」
ザワつく冒険者達。「もうダメだ、おしまいだ…」「…天は我々を見放した」「是非も無し…」など、戸惑いの色を隠せないでいる。
「だから何だよ、機動要塞デストロイヤーって」
その正体を知らないカズマは、皆がなぜ不安がってるのか理解出来ない。その横で、額に大往生の文字を刻み、髭を生やしたウィスパーが震えていた。
「むう、まさか機動要塞デストロイヤーが実在したとは…!」
「知ってるのかウィスパー」
「…うむ、聞いたことがある」
カズマも頭にハチマキを巻いた劇画風タッチになり、神妙な顔でウィスパーを見る。
…機動要塞デストロイヤー。それは、古来からアクセルに伝わる移動式魔法兵器。その破壊力は、通った後に草しか残らないと言われるほど。過去に名だたる冒険者達が挑みに行ったが、結局誰一人として生還した者はいなかった。この恐るべき破壊者の生みの親であるデースト・ロイヤの名前が、後にデストロイヤーの語源になったのは言うまでもない。
アクセル書房刊『転生者もビックリ、古今東西魔導兵器大全』より。
「これ大嘘ニャン!!」
怪しすぎる豆知識はともかく、デストロイヤーはとある魔導技術大国が作ったクモ型の兵器。結界が張られていて魔法による攻撃が効かず、物理でしかけるにもその圧倒的な大きさと固さで寄せ付けない。
「マジかよ、打つ手なしじゃねえか」
あまりの戦力差に、カズマは軽く絶望する。
「なんたって機動要塞ですからね。これが通った後には、頭のネジが2、3本飛んでるアクシズ教徒以外は影も形も残らないと言われています」
「ちょ、ちょっとめぐみん!当然のようにうちの子達をディスらないでよ!あれでも結構いい子達なんだからあ!」
いったい何をすればこんなに嫌われるのだろう。崇めているのがアクアだから、やっぱり信者も変なやつが集まるのかな?
「すいません、店の片付けをしてたら遅くなりました」
「おお!我が相方!」
「よおウィズ」
ウィズが少し遅れてギルドに到着。すると、他の冒険者達がウィズを見て歓声を上げる。なんでも、かつては凄腕のアークウィザードとして名を上げたらしい。今は魔王軍幹部のリッチーだが、それは内緒だ。
しかし、いくら凄腕のアークウィザードでも、魔法が効かないなら意味がない。まずはあの結界をなんとかしなくては。
「あ、そうだアクア。お前なら結界を破れるんじゃないか?」
「う〜ん、やってみないと分かんないけど…」
もしアクアが結界を破れれば、高火力持ちのめぐみんとウィズが魔法をぶっ放せる。それにはまず、アクアが結界を破る時間を稼がなきゃならない。
めぐみんとウィズは大一番の為に力を温存する必要があるから、それ以外の遠距離攻撃出来る冒険者はデストロイヤーに向けて攻撃。他の者達は街の投石機で援護。気休めかもしれないが、何もしないよりはマシだ。
「大丈夫かな…」
「…不安だよ」
「今のうちに、遺書でも書いとくか…?」
作戦は決まったが、皆の士気が低い。やはり、デストロイヤーに立ち向かうのは無謀なのだろうか。
「カズマくん、これじゃあ戦えないでウィスよ」
「みんな怖がってるニャン」
「大丈夫。こんな時こそ、あの妖怪の出番だ」
カズマはポケットからメダルを取り出し、ウォッチに入れて召喚する。
「メラメライオン!!」
「メラメライオン、皆のやる気を燃えさせてくれ!」
「メラメーラ!!」
メラメライオンが能力を発揮すると、さっきまで沈んでいた冒険者達が立ち上がった。
「っおおおお!!なんか知らんが急にやる気が出てきたぞおおおお!!」
「デストロイヤーがなんぼのもんじゃボケーー!!」
「冒険者なめんじゃねーー!」
やる気スイッチが入り、炎が見えるくらい活気に溢れる冒険者達。実際ウィスパーは火が移って頭のほにょほにょが燃えていた。
「アッツ!いやアッツウウウ!!」
「よーし、やるぞみんなー!!」
「「おおおおおおお!!」」
カズマが拳を突き上げ、ギルドの全員が気合を入れて声を上げる。ここに、全員参加のデストロイヤー討伐クエストが開始された。
皆が大慌てで迎え撃つ準備をする中、ダクネスは街から離れたところで佇んでいた。
「ダクネス」
「…カズマか」
振り返らずに、ダクネスは静かに答える。
「流石に今回は無謀なんじゃないか?お前がいくら頑丈でも、相手は無敵の機動要塞だぞ」
「…カズマ、お前は私が趣味でここにいると思っているのか?」
「うん」
「そ、即答!?ま、まあいい」
咳払いをして、ダクネスは気を取り直す。
「カズマ。この際だから教えてやるが、私の名前はダクネスじゃない。本当の名は…ダスティネス・フォード・ララティーナ。これでも一応、貴族の娘だ」
ダクネスの突然の衝撃発言。それをカズマは冷静に聞いていた。
「どうした、驚かないのか?」
「ああ、知ってたからな」
「え?!」
思わず振り向いてカズマを見る。今まで話したことはないのに、何故その名を知っているのか。
「いや、さっきネタバレリーナから聞いたから」
「ね、ネタバレリーナ…?」
カズマがここに来る少し前。ネタバレリーナがカズマのところに現れた。
「ネタバレリーナ〜。ダクネスさんの本名は、ダスティネス・フォード・ララティーナ。貴族のお嬢様リーナ」
「マジで!!??」
「この後、ダクネスさんはいつもより真剣な感じでカズマにそれを告白するリーナ〜」
そう言って、ネタバレリーナは去っていった。
「わ、私の葛藤は何だったんだ…。これでも打ち明けるかどうか悩んだというのに」
「まあ、お前のその真面目な雰囲気は面白かったよ」
「はうっ…!」
いつの間にかカズマのペースに引っ張られるダクネス。本名を知った時は驚いたが、黙っていてもよかったのに教えてくれたことは嬉しかった。
「と、というわけで民を見捨てて逃げるわけにはいかない。…悪いな、わがままで」
「俺はそういうの、全然嫌いじゃないよ。アクアの自己中なわがままとは違うからな」
「…そうか。ところで、そろそろデストロイヤーが来るんだが、カズマこそ避難した方がいいんじゃないか?」
ここは言わば最前線。目を凝らせば、視線の先に砂煙が立っているのが見える。恐らくあれがデストロイヤーであり、ここに到達するまで時間はかからないだろう。
「俺もやることがあるんだよ。アクアが結界を解く時間を稼いでやらないといけないからな」
カズマはメダルを指で弾かせ、妖怪ウォッチで召喚する。
「ロボニャンF型!!」
「ロボニャンF型? 初めて見る妖怪だ」
ロボニャンF型とは、ジバニャンの未来の姿であるロボニャンが更に進化した形態。未来の最先端テクノロジーを駆使し、あらゆる難問を解決する。
「ロボニャンF型、デストロイヤーを足止めしたいんだが出来そうか?」
「安心しろカズマ。この私が来たからにはもう大丈夫だ。遥か未来では、あんな訳の分からない物体が暴れ回ることなど存在しない」
凄まじい轟音を立て、こちらに近付いてくるデストロイヤー。八本の足を蠢かせ、立ち塞がる木々や岩をものともせず簡単に突破していく。
「うわあ速っ!てかキモッ!ロボニャンF型、本当に大丈夫なんだろうな!?」
「……」
「ろ、ロボニャンF型?」
「アイルビーバアアアアック!」
「こらああっ!帰んなああああああっ!!」
親指を立て、地面に沈み込んでいくロボニャンF型。想像以上のデストロイヤーに打開策が浮かばなかったのか、結局何もせずに帰って行った。
「あいつううっ!後で説教だかんな!」
「カズマ!早く離れろっ!」
デストロイヤーがすぐそこまで迫る。後方から冒険者達の魔法や弓が飛んでくるが、やはり足止めにはならない。まずい、このままでは二人とも轢き潰されてしまう。そう思った次の瞬間!
「カズマ!私に任せて!」
「ふぶき姫!?」
「キラキラ雪化粧!!」
カズマのピンチに突如現れたふぶき姫。寒い系最強の彼女の妖術は、デストロイヤーの足を凍らせることに成功した。
「おおっ!やった!」
「…凄い、デストロイヤーの動きを止めた」
巨大な氷がデストロイヤーの八本の足を封じる。結界により魔法攻撃は効かないデストロイヤーだが、妖怪の力は魔法ではないため防げなかったようだ。
とりあえず助かったと、カズマは胸を撫で下ろす。
「ありがとうふぶき姫!助けられたのはこれで2回目だな。ほんと頼りになるよ」
冬将軍の時にも、ふぶき姫のおかげで一命をとりとめることが出来た。ふぶき姫の頭をぽんぽんと撫でてなると、嬉しそうに頬を染めている。
ピッ、ピシッ!ビシッッ!!
氷がひび割れる音が聞こえ、デストロイヤーが力づくで動き出す。流石のふぶき姫の氷でも、完全には止められない。
「ッ!カズマ、これ以上は…!」
「ああ、こんだけ稼げばもう充分だ。アクア!!」
城壁の上で、事の一部始終を見ていたアクア。カズマ達の頑張りを無駄にしまいと、力いっぱい魔力を込める。
「任せなさい!セイクリッドブレイクスペル!!」
アクアの魔法を受け、デストロイヤーの魔法結界が剥がれた。その隙を逃さず、ウィズとめぐみんが魔法を仕掛ける。
「今ですウィズさん!やっちゃってくださウィスー!」
「は、はい!めぐみんさん、準備はいいですか!めぐみん…さん?」
しかし、めぐみんはビビっているのか魔法を発動させようとしない。
「めぐみん、何してるニャン!?」
「あわわわっ…じ、自分でも何がなんだかかか」
珍しく、めぐみんからいつもの強気が感じられない。プレッシャーに押しつぶされて、ガクガク震えてへたり込んでしまっている。
「めぐみん!しっかりするニャン!」
「ど、どうしたんでしょう。わ、わ私ともあろう者が、こここの程度で臆するはずが、はずが…はず」
喋ってるうちに、段々と溢れていた自信が消えていく。自分はこんなに弱い人間だったのか? 打ちひしがれるめぐみんに、ジバニャンが喝を入れた。
「めぐみん!皆が頑張ってるのに、何もせずに震えてていいニャン!?オレっちの知るめぐみんは、そんな情けないやつじゃないニャン!」
「ジバニャン…」
「いつも通り、爆裂するかっこいいところを見せて欲しいニャン!!」
「!!」
ジバニャンの言葉に、めぐみんはあの時の気持ちを思い出した。幼い頃モンスターに襲われ、助けてくれたあの人が放った爆裂魔法。私はあの輝きに憧れて、ここまで来たんだと。
帽子を被り直し、スッと立ち上がった。
「ジバニャン、ありがとうございます。おかげで、大切なことを思い出せました」
「めぐみん…!」
「もう、大丈夫です」
めぐみんが立ち上がったことを確認して、ウィズは詠唱を唱える。二人で呼吸を合わせるように、空に魔力の渦を巻いていく。
「「エクスプロージョン!!」」
眩い光が重なり、螺旋状になって一直線に急降下する。それは足元の氷を砕き、再び行進を開始した直後のデストロイヤーに降り注いだ。
「うおおおっ!?」
「きゃあああっ!」
衝撃に巻き込まれないよう、カズマはふぶき姫を抱きかかえてその場から脱出。爆煙が辺りを包み、皆が固唾を飲んで見守る。果たして、デストロイヤーはどうなったのか。
「お、おいアレ!」
やがて煙が晴れ、現状が次第に明らかになっていく。城壁の上の冒険者が指差した方向を、皆が見つめている。そこには、巨体を誇るデストロイヤーが静止している姿があった。
「…ふう」
ダクネスが剣を鞘に仕舞う。己の目と鼻の先でデストロイヤーは止まっており、それでもダクネスは宣言通り一歩も退かなかった。
「さ、流石はリッチー。私より威力が高い爆裂魔法を放つとは。私も、まだまだということでしょうか…」
「めぐみんー!最高ニャン!かっこ良かったニャン!!」
「…ジバニャン。ええ、だって私は、紅魔族一の爆裂魔法使いですからね」
ウィズとのレベル差を痛感しつつ、駆け寄ってくるジバニャンをめぐみんは愛おしく抱き寄せた。
「どうなることかと思いましたけど、なんとか上手くいきましたね」
「いや〜、ウィズさんお疲れ様でウィス〜。相方のウィズさんにもしものことがあればどうしようかと。来年の妖怪漫才グランプリに支障をきたしますからねえ」
「そ、それはまたの機会に…」
デストロイヤーを止めることが出来て、しばらく平穏な時間が訪れる。
「俺、故郷に帰ったら結婚するよ」
ピクッ
「俺も、好きだったあの子に告白するんだ」
ピクピクッ
「カズマ、どうしたの?」
フラグ満載なセリフのオンパレードに、カズマは猛烈に嫌な予感がした。
「なーによ、デストロイヤーなんて大したことないじゃない!このアクア様にかかればこんなもんよ!なーはっはっはっ!」
「あんの馬鹿!わざと言ってんのか!?」
アクアの高笑いがここまで聞こえ、それ以上何も言うなとカズマは懇願する。
「か、カズマ…あれ」
ふぶき姫の指差す方を、カズマは恐る恐る確認する。デストロイヤーの複眼が不気味に紅く輝き、まだ完全に死んでないことを見せつけていた。
「ピッ、ガガッ…機動停止機動停止。これより、ザザッ…じ、自爆機能を作動…の、乗組員は、直ちに避難を…ザー」
ノイズ混じりで聞き取りにくかったが、明らかにヤバい単語が聞こえてきた。
「マジんがあああああああ!!」
一難去ってまた一難。アクセルの危機は、まだ去ってはいなかった。
今日の妖怪大辞典!
「カズマくん、今日の妖怪は?」
「今日はたしか、ネタバレリーナだ!」
「ネタバレリーナ〜、私はネタバレするのが大好きリーナ。ここで、このお話を読んでるそこのあなたに、次回のネタバレしちゃうリーナ。次のお話は、なんとカズマたちが…」
「うおおおおおおい!?」
「そのネタバレはやめろおおおおっ!!」
「次回もお楽しみリーナ〜!!」