妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら? 作:カジ
「ちょっとカズマ、いったいどういうこと!?他の皆が一目散に逃げて行ってるわよ!」
「自爆装置が機動したんだ!このままだと俺達全員、街もろとも消し飛ばされるぞ!」
「さて、私たちも逃げる準備しないとねー」
「こら待て駄女神!!」
さっさと荷物を風呂敷にまとめて退散するアクア。逃がすかとばかりにカズマはその首根っこを捕まえた。
「お前も余計なこと言った責任があるんだから、しっかり最後まで働いて貰うぞ!」
「いやー!働きたくなーい!!」
事態は一刻を争う。こっちの戦力は力尽きためぐみんと、めぐみん程ではないが魔力を大幅に消費したウィズ。アクアは早くこの場から逃げたそうにソワソワしてるし、ダクネスは相変わらず動かな…
「ってあれ?ダクネスは?」
さっきまでここにいたのに、いつの間にかダクネスがいなくなってる。ウィスパーが少し高く飛んで、その姿を確認した。
「あ、いました。ダクネスさんお一人でデストロイヤーに突撃してるでウィス」
「なに!?どういうことだ、なんで一人で…」
まさか、自分一人だけでも最後まで戦うため…?
「そんなカッコいい感じじゃなさそうでウィスよ。ニヤニヤ笑いながら突っ込んで行きますから」
「…あ、そ」
「ブレないニャンねえ」
毎度カズマを引かせるダクネスだが、今回はその行動が功を奏した。
「おい見ろ!ダクネスさんが一人で突撃してる!」
逃げていた他の冒険者が立ち止まり、先陣を切るダクネスを見つめる。普段の様子を知るカズマ達には、いつもの病気が発生しただけだと分かっているが、他の者達はその勇気ある背中に見惚れていた。
正面の顔がニヤついてることも知らずに。
「おっしゃあ!こうなったら俺はヤるぜ!」
「俺も、レベルも年齢も30を越えているのに、未だにこの街にこだわる理由を思い出した」
「冒険者なのに日和ってるやついる? いねえよなあ!!」
今度はメラメライオンの力も借りずに、自力でやる気に満ち溢れる男の冒険者達。女性冒険者は少々戸惑い気味だが、カズマには彼らの気持ちが痛いほど分かる。
皆それぞれに譲れないもの(サキュバス店のお姉さん)を、守るために戦うのだ。
「よし、俺達も続くぞ!ジバニャン、めぐみんを頼む!」
「任せるニャン!」
爆裂魔法の反動で動けないめぐみんを、少し離れた場所で待機させる。カズマ達も他の冒険者が使っているロープを伝って、デストロイヤーに乗り込んだ。
「ぐわあっ!」
「ぎゃあ!?」
デストロイヤーに乗り込むと、そこには侵入者を迎え撃つための戦闘用ゴーレムが数多くいた。先に登った他の冒険者達が戦っているが、ことごとくゴーレムに蹴散らされている。
「ひい〜!うじゃうじゃいる〜!!」
「ゴーレムを倒さないと、制御装置のある部屋まで辿り着けません!」
「ダクネス、悪いがこいつらを引き付けてくれ!囮になるのは得意だろ!」
カズマがダクネスを呼ぶが、どこにも姿が見えない。おかしい、真っ先にダクネスがデストロイヤーに乗り込んだ筈なのに。
「おいダクネスー!くそっ、こんな時にどこにいるんだ!」
「あ、ダクネスさんいました」
ウィスパーが下の方を指差して、カズマが覗き込む。デストロイヤーの足元付近で、まだロープを登れずにあたふたしているダクネスがそこにいた。
「何やってんだあいつは…」
「おそらく、着ている鎧が重くて登れないのでは?」
「も〜しょうがねえなあ。ウィスパー、下に降りてダクネスを引き上げてやってくれ」
「了解でウィッスー!」
ウィスパーは飛べるからロープを使う必要がない。ロープを掴んで必死に登ろうとしてるダクネスのところまで、スイ〜と一気に降りていく。
「ダクネスさ〜ん、お待たせしましたでウィス〜」
「おおウィスパー!頼む、すまないが私を上まで連れてってくれないか?鎧が思ったよりも重くて登れないんだ」
「じゃあそれ脱いだらどうでウィス?」
「な、何を言ってるんだ!こ、この場で脱げだなんて…私を辱めてどうするつもりだあ!!」
「どうもしないでウィス!別に全部脱げなんて言ってねえよ!!」
ダクネスの癖にはついて行けず、ウィスパーはダクネスの両手を掴んでさっさと引き上げる。
「ふんんんんぎぎぎぎっ…!お、重〜!!」
「重いとか言わないでくれ〜!」
「だ、ダクネスさん…!もうちょっと、ダイエットくらいしてほしい…でウィス」
「し、失礼なこと言うなあ!確かに私は筋肉質だが…鎧だ!鎧が重いんだあ〜!!」
重いと言われたことがショックなのか、ダクネスは足をバタバタして暴れている。普段は変態ぶりを見せつけてカズマを引かせていても、こういうところは年相応に乙女なのだ。
「ちょ、ちょっと!あまり暴れないで…あ」
「え?」
暴れられたせいで手に力が入らず、そこそこ飛んでる途中でパッと手を離してしまった。
「ああああああああ!!」
「ダクネスさーん!?」
絶叫しながらダクネスは真っ逆さまに落ちていく。ドーン!という落下音が聞こえ、地面にダクネス型の穴が陥没した。
「だ、ダクネスさん。大丈夫でウィス…?」
「…ふ、ふふふ。あんな高いところから落ちたのは初めてだ。おまけに冷たい地面にめり込むこの感触、ハァハァ…最高だぞウィスパー!!」
「あ、もう放っとこう」
とりあえず無事だったので、ダクネスを引き上げるのは諦めてウィスパーは上に戻る。「この状態で放置か!それもまたヨシッ!!」などと下から聞こえてくるが、気にせず聞こえないふりをした。
ウィスパーがダクネスを引き上げようと頑張っていた頃、カズマ達はゴーレムとの戦いに苦戦していた。
「ふぶき姫、ウィズ!あまり無理するなよ!」
「二人ともー!私のために頑張んなさーい!」
「お前はちょっとくらい無理しろ駄女神!」
ふぶき姫はデストロイヤーの足を凍らせるのに力を殆ど使ってしまったし、ウィズも爆裂魔法の使用で魔力は残り少ない。
カズマも剣で応戦するが、防戦一方だ。さっきは部品を奪ってやろうとスティールを試したが、超重量の頭を取ってしまい危うく骨を折りかけた。
(他の皆はいつの間にか全員落とされてるし、残ってるの俺達だけじゃねえか!)
アクセルの命運をカズマ達に託された形だが、多勢に無勢でジワジワと追い詰められていく。
「ひ〜!落ちる落ちる〜!!」
「あ、アクア様。あまり引っ張らないでください〜!」
「カズマ…」
「なーに心配すんな。俺の後ろに隠れてろ」
不安そうにしてるふぶき姫を安心させるため、カズマは先頭に立って剣を構える。とは言ったものの、今度ばかりは打開策はない。一か八か飛び降りることも考えたが、それでは結局自爆を阻止できない。
ゴーレムが鉄塊の拳を振り上げ、もはやこれまでかと諦めかけたその時。
「カズマくーん、ただいまでウィ…おわっ!?めっちゃピンチやん!!」
「ちょうどいいところに!ウィスパー、メダル!!」
タイミングよく戻って来たウィスパー。メダルを複数枚受け取り、素早くウォッチに取り込ませる。
「みんな!力を貸してくれーーー!!」
ウォッチから眩しい程の光の線が、幾重にも弧を描いて飛び出してくる。カズマの呼びかけに応え、友達妖怪が参上した。
オロチ!
「ここは私に任せろ」
キュウビ!
「ようやく僕の出番が来たようだね。皆のアイドル、キュウビさ」
ブシニャン!
「ブシニャンでござる」
そして、ハナホ人!
「ハナホジーン」
他にもアニ鬼、なまはげ、万尾獅子、おにぎり侍、まさむね、じんめん犬達が召喚に応じた!!
「おお!頼りになる妖怪達が来てくれましたねカズマくん!」
「なんか変なのも混じってた気がするけど…」
カズマ達を取り囲んでいたゴーレムの群れを、オロチとキュウビが粉砕する。その勢いのまま、友達妖怪対ゴーレムの戦闘が始まった。
「ヤマタノオロチ!!」
「燃え尽きな、紅蓮地獄!!」
オロチが首に巻いた蛇でゴーレムを破壊し、キュウビが巨大な火炎を繰り出し燃やし尽くす。
「全身金属兵士真っ二つ斬り〜!!」
鉄鋼のボディを誇るゴーレムも、ブシニャンにかかればまな板の魚同然。瞬く間に両断されていく。
「まだその時ではない? 否、今がその時だ!!」
「閃光斬り!」
「だから私は服役中なんですって!こんなところに呼び出さないでぎゃあああああああ!!」
万尾獅子やまさむね達も、ゴーレムを次々と斬り倒す。獄中から召喚されたじんめん犬は、縞々の囚人服を着て必死に逃げ回っていた。
「妖怪の皆さん凄いですねえ…」
「約一名、逃げてるだけのやつもいるけど」
「いいわよ皆ー!その調子でやっちゃいなさーい!!」
オロチ達の活躍により、たくさんいたゴーレムは殆ど壊滅した。しかしここで、奥から一際大きなゴーレムが姿を現す。恐らく、この個体が最後の砦なのだろう。
「こいつは私に任せろ。2秒で塵にしてやる」
「いいや、僕の火炎で灰にしてあげるよ」
「
誰がボスの相手をするか、オロチ達が言い合いをしている。S級妖怪ともなれば腕に自信があり、妖怪としての力を見せつけたいのだ。
「あーもう、何やってんだよあいつら」
「どうでもいいから早くやっつけなさいよね」
「あ、誰か前に出てきました」
オロチ達が争っている隙に、巨大なゴーレムに相対する妖怪がいる。
「ハナホジーン」
「げっ!あいつはマズい!」
S級妖怪のオロチ達を差し置き、ゴーレムに挑んだのはまさかのハナホ人。ハナホ人の恐ろしさを知ってるカズマは、味方ながらも戦慄した。
ハナホ人が妖力を発揮すると、ゴーレムが両手の人差し指を立てる。
「はっ!?」
「な、なんで僕達まで!?」
「何するでござる!?」
オロチ達もゴーレムと同じように指を立て、ゆっくりと鼻の穴目掛けて上昇させる。たかが鼻をほじらせる妖怪と侮ってはいけない。一つの道を極めた達人技は、時としてS級妖怪にも通用するのだ。
ギギッ、ギギギギッ…ドーーーン!!!
ゴーレムに鼻は無かったが、自分の指を無理矢理顔にグリグリとめり込ませる。やがてその指は顔を貫通し、大きな爆発音を立てて崩れ落ちた。
「…す、凄いですね。色んな意味で。カズマさん、大丈夫ですか?」
「ああ、これくらい何ともないよ。あと、出来れば今はあまり見ないでくれ」鼻声
ハナホ人の妖力の余波をくらい、周りにいたカズマやウィスパーも鼻に指を突っ込んでいる。ふぶき姫とウィズが余波に巻き込まれなかったのは、ハナホ人のせめてもの温情だろう。
「ちょっと!私女神!女神なのに〜!!」
なぜかアクアは見逃して貰えなかったが、女神の体裁を守るためギリギリのところで何とか踏ん張っていた。
「敵もいなくなったことだし、中に突撃だー!!」
鼻から指を引っこ抜いて、カズマ達はデストロイヤーの内部へ侵入する。なんとしても制御装置を見つけて、自爆を阻止しなくてはならない。
「おーい!それっぽいのを見つけたぜー!」
アニ鬼が何か見つけたらしく、カズマ達も急いでそちらに向かう。
「な、何だこれは…?」
薄暗い部屋、その奥の椅子に腰がけている謎の人物。この者がデストロイヤーを動かした責任者であり、カズマは恐る恐る歩み寄る。
「あ、あの〜。もしもし〜?」
声をかけても返事がなかったので、そ〜っとフードを捲ってみる。
「うわっ!し、死体…」
責任者かと思われた人物は、既に亡き者になっていた。長い間ここに住んでいたらしく、見事に白骨化している。
「これは私でも蘇らせるのは無理ね。未練も感じられないし、とっくに成仏してるもの」
生き返らせて自爆を止めさせようと思ったが、どうやらそれは無理なようだ。
「ん?何だこれ?」
白骨死体の近くに本が一冊落ちていて、カズマがそれを拾い上げる。どうやらこの者が書いた日記であり、このデストロイヤーの制作秘話が綴られている。アクアがカズマから本を預かり、皆に聞こえるように読み上げた。
ここからは、この白骨死体の代役をウィスパーとして見てみよう。
「あ〜、ダッル〜。マジダルいわ〜。国の偉いおっさん滅茶苦茶言いやがって、こんな低予算で機動兵器作れるわけないでしょうが。伝説のコロナタイトでも持って来いっつーの!」
持ってきました。
「ほんとに持ってくるやつがあるか!ちょ、え…うそ。どうしよ、実は適当こきました〜、なんて言えませんし…」
「お前が持って来いって言ったから、わざわざ用意してやったニャン。これで出来なかったから死刑ニャンよ」
「ひえ〜!やばいでウィス〜!」
それから、あたしは半分ヤケになりながら兵器を作った。酒を飲みながらの作業だったので、ところどころ記憶がない。
そしたら、なんやかんやあって暴走した。
「やっべ、なんか国滅んじゃったよオイ!あっはははははは!もう笑うしかねー!」
あたしは、ここで余生を過ごすと決めた。一国を滅ぼすなんて魔王みたいなことやっちゃったし、もしバレたら死刑だし。こんなもん作ったやつ、本当の馬鹿でウィスね。
「ま、あたしなんでウィスけど〜。てへっ」
ここで、日記は途切れていた。
パアンッ!
「あ痛ッ!?ちょっと、いきなり何するんでウィス!」
「なんか、凄えムカついた」
とりあえずウィスパーに八つ当たりの平手をかますカズマ。何なんだこの日記は、読者を舐め腐ってるとしか思えない。
「で、結局コロナタイトどうするんだ?」
オロチ達を避難させ、残ったカズマ達はコロナタイトと向き合う。
「アクア、お前の女神パワーで何とかできない?」
「できたらとっくにやってるわよ。女神と言っても、万能じゃないんだからね」
あまり考えてる余裕はない。こうしてる間にも、タイムリミットは近づいている。
「ねえウィズ、あんたは何かできないの?」
「私ももう魔力が…」
ウィズが何か思いついたようにハッとする。
「か、カズマさん。お願いがあります」
「え?」
ウィズが頬を染めて、カズマの顔にそっと手を触れる。
「…吸わせて、ください」
「ぃ喜んで」
俺もとうとう、大人の階段を上る時が来た。こんな美少女が迫ってるんだ、野暮なことは言わない。後は目をつむって、身を任せるだけ…
「ドレインタッチ!!」
「だああああああああ!!??」
「カズマくんも期待は裏切りませんね」
お約束通りと言えばお約束通り。大人の階段を上るには、カズマにはまだ早かったようだ。
「ありがとうございますカズマさん。これでテレポートが使えます」
「ど、どういたしましてえぇぇぇ…」
危うく干物になりかけたカズマ。しかし、ウィズがテレポート出来る場所は王都など人の多いところが殆ど。そんなとこには送れないから、場所を指定しないランダムテレポートしかないという。
「大丈夫、世界は広いんだ。なんかあったら俺が責任を取る。だから安心して、遠慮なくやってくれ」
「…カズマさん。はい、お願いします」
カズマに背中を押され、ウィズはテレポートを使ってコロナタイトを転送した。
危機を脱したカズマ達はデストロイヤーから下りて、待機していためぐみん達と合流する。
「カズマ、もう大丈夫ニャン?」
「ああ、全部終わったよ。さすがに今日は疲れたな、さっさと帰って宴会でも…」
「いや、まだだ」
ダクネスが不穏な気配を感じ取る。カズマは何のことか分からなかったが、さっきまで大人しかったデストロイヤーから湯気が立ち始めた。
「な、なんかやばそうな感じでウィス!」
「今度はいったいなんだよ!?」
ようやく終わったと思ったら、また別の問題が生じる。ウィズの推測によると、内部に溜まった熱を放出しているらしい。放っておくと大爆発を起こして、街が火の海になるとのこと。
「コロナタイト飛ばした意味っ!!」
「ウィズ!あんたもう一回エクスプロージョンで破壊しなさい!」
「もう魔力がありませんよ〜!」
カズマも先程ウィズに魔力を与えたから、今はもうガス欠に近い。ドレインで誰かから魔力を吸うにしても、この状況で魔力が残ってるやつなんて…
「ねえねえウィスパー。私達の借金は街のギルドが管理してるのよね? ならもういっそのことアクセルは諦めて、また最初からやり直したらいいと思わない?」
「…アクアさん、あーたまたそんなことを」
自分のことしか考えてないこの自称女神に、カズマはそ〜っと接近する。首筋に手を当て、ドレインタッチを発動した。
「ほわああああああ!?ちょっ、何すんのよ引きニート!!」
いきなり魔力を吸い取られ、涙目で訴えるアクア。
「俺達の中で、一番魔力が残ってるのはお前だ。そのお前から魔力を吸い取って、それをウィズに与えるんだよ」
「そんなことしたら、私の神聖な魔力でこの子消滅しちゃうわよ!?」
「なぬっ!?それはいけませんよカズマくん!あたしの大事な相方を!」
ウィズが駄目となると、本当にもうどうしようもない。だが、カズマは忘れている。もう一人だけ、強力な魔法を撃てるやつがいることを。
「…こ、この私を忘れてもらっては困ります」
「めぐみん!」
まだ疲労が残っていながらも、杖を支えにして立ち上がる。
「さっきは遅れをとりましたが、紅魔族こそ魔法使いの元祖であり本家です。その一族の真打ちである私の力を、今度こそ証明してみせます」
紅魔族一の爆裂魔法使いを名乗るからには、ウィズに負けたままではいられない。カズマは後ろから二人の首筋に手をやり、アクアからめぐみんへ魔力を流す。
「むむっ!来てます来てます…!魔力来まくりです!!」
黒いグラサンをかけて、身体中に途轍もない魔力が溢れていることを感じるめぐみん。アクアも元々の魔力量は多い筈だが、結構な量を持ってかれてちょっと焦っている。
めぐみんの魔力が満タンになり、カズマ達は素早く離れた。
「ジバニャン、見ていてください!これが私の、爆裂魔法です!!」
他の誰にも譲れないもの、めぐみんにとってのそれは爆裂魔法だ。渾身の一撃で放ったエクスプロージョンは、見ている者全てを圧倒させるほど見事なものだった。
デストロイヤーの戦いから数日後、アクセルの街にはいつもと変わらぬ平穏が訪れていた。
「カズマくん、今日は王都から騎士団が来ているそうでウィスよ」
「もしかしてご褒美貰えるニャン!?」
「ふっ、長く苦しいチュートリアルだった。さてさて、どんなサプライズプレゼントが待っているのやら」
期待を胸に、カズマ達はギルドに向かう。既に騎士団が中で待機していて、他の皆は何やら不穏そうな表情を浮かべている。
「サトウカズマとやら、前に」
「はい」
騎士団を率いている眼鏡のお姉さんに呼ばれ、カズマはキメ顔で前に出る。何を貰えるのかワクワクしていると、告げられたのはとんでもない事実だった。
「冒険者サトウカズマ、国家転覆罪の容疑で貴様を連行する」
「へ!?」
「貴様の指示で飛ばしたとされるコロナタイト、それが領主の屋敷を吹き飛ばしたのだ」
よりによって、とんでもない所へ転送された。幸い死人は出なかったそうだが、これにはダクネス達も何も言えない。
「…か、カズマくん」
「まさかの逮捕オチニャン…?」
「…わーお、サプラーイズ」
カズマの目から、光が完全に消えていた。