妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

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タイトルは某ゲゲゲアニメから拝借しました


妖怪大裁判

 「はあ…はあ…き、緊張してきた。何だかドキドキする」

 

 「ドキ土器が憑いてるからニャンね」

 

 「あっ、コラ。しっしっ、今は構ってる暇はないんだよ」

 

 ドキ土器を適当に払い除け、カズマは深呼吸する。今日は運命の裁判の日。人生初の裁判、それも被告人としてだ。ドキ土器がいなくても緊張する。

 

 「カズマくん。こういう時は、手にウィスパーと3回書いて飲み込むんでウィス。緊張がほぐれますよ」

 

 「…う、ウィスパー。ウィスパー、ウィスパー」

 

 ゴクン

 

 「オオォォォエエエェェェェ!!」

 

 「何がオエエエですか!失礼な!!」

 

 「そんなもん飲み込むからニャン」

 

 吐くのも無理はない。めぐみんとダクネスが弁護人で付いてくれるが、アクアもいるからイマイチ頼りない。頼むから余計なこと言ってボロ出すのはやめてくれ。

 

 「大丈夫よカズマ。この女神アクア様に任せなさい」

 

 「なんなんだよその自信は」

 

 「ふふん。なんたって私には、もしもの時の秘策があるからね」

 

 「秘策?」

 

 このカズマ側に不利な裁判で、どんな秘策があると言うのか。しかしこの自信満々な表情。カズマは期待して耳を傾けた。

 

 「最悪死刑になっても私が再生してあげるから、カズマは安心して裁判に挑みなさい」

 

 「おまっ…ふっざけんなあ!!」

 

 アクアの頭をスパアンッ!と強めに叩く。

 

 「痛あっ!?ちょっ、ちょっと待って!もちろんそれはあくまで最終手段だから!私は心配しないでいいのよって言いたかっただけで」

 

 「余計心配になったわ!何があくまでだ、この悪魔!」

 

 「女神に向かって悪魔ですってえ!!」

 

 裁判が始まる前に、早くも仲間割れを起こしている。めぐみん達が間に入り、なんとか二人を落ち着かせる。たとえ後で生き返るにしても、カズマは死ぬのはもう御免だった。

 

 「あの偉そうに座ってるおっさんだれニャン?」

 

 「あれが領主のアルダープだ。カズマを告訴した張本人。だが、以前から悪い噂の絶えない人物でな。この裁判も、やつ次第でどう転ぶか…」

 

 いわゆる悪徳領主というやつ。権力を手に暴走する輩がいるのは、異世界も同じである。

 

 「静粛に、これより裁判を始める」

 

 まずは起訴した検察官のセナが前に出てくる。手には色々と書類を持ち、カズマを有罪にしてやるという気合が感じられる。

 

 「コロナタイトを領主の屋敷に転送し、破壊するという悪質極まりないテロ行為。よって、国家転覆罪を要求します」

 

 だからあれはわざとじゃないって! カズマは心の中でそう訴える。故意かそうでないかは、もはや些細な問題なのだろう。実際領主の屋敷を吹き飛ばしてるわけだし。

 助けを求めるように、こちらの弁護人席をチラッと見る。すると、アクアがバンッ!と机を叩いて立ち上がった。

 

 「異議なし!!」

 

 「ないなら言うな!!」

 

 「被告人、弁護人、静粛に!!」

 

 アクアてめコラッ!こいつ、マジで最悪死刑になっても構わないって思ってないだろうな…?

 一番厄介なのは強い敵ではなく、足を引っ張る無能な味方。どこかで聞いたことがあるセリフだが、カズマは嫌というほど理解した。

 裁判はここで、証人尋問に移る。第一の証人は、なんとクリスだ。

 

 「クリス…!」

 

 「あはは、なんか呼ばれちゃって」

 

 クリスには以前、カズマから下着を強奪されたことへの真偽が問われている。

 

 「カズマくんが調子こいて、クリスさんのパンツを剥ぎ取った時のことでウィスね」

 

 「あれは最低だったニャン」

 

 「うぅ…」

 

 確かにあの時はちょっと調子に乗ってしまったとカズマは反省するが、今となってはもう遅い。

 

 「ま、まあでも、私はもう気にしてないよ。そもそも、先に勝負を挑んだのは私の方だし」

 

 「事実が確認出来ましたのでもう結構です」

 

 「あ、あれ?久しぶりの出番なのにもう終わり?」

 

 証人尋問はさくさく進む。続いて登場したのは、カズマと同じ転生者のミツルギだった。

 

 「あいつ、まだじんめん犬の妖気が残ってるニャン」

 

 「取り巻きの女の子もまだ帰って来てないようでウィスね。めぐみんさんのせいで」

 

 「ギクッ!?さ、さあ。何のことやら…」

 

 めぐみんがミツルギにじんめん犬を取り憑かせたせいで、彼はまだ一人のままだった。さすがにめぐみんも罪悪感があるのか、気まずそうに視線を外している。

 

 「被告人に大事な魔剣を奪われて、おまけに勝手に売り払われたと」

 

 「…ええ、でもあれは僕が」

 

 「ありがとうございました!」

 

 「ちょっ!?もう出番終わ」

 

 続いての証人、ダストが出てくる。

 

 「ありがとうございました!」

 

 「ええ?!まだ何も言っ」

 

 ギャーギャー文句を言ってるダストが衛兵に無理矢理連行される。結局、証人尋問ではカズマの悪い印象ばかりが目立つ結果になってしまった。

 ますます立場が悪くなるカズマを、めぐみんが立ち上がって必死に弁護する。

 

 「そんな証言がなんだって言うんですか!確かにカズマはズルくて性格もねじ曲がっていますし、クズマやカスマなどと呼ばれ、公衆の面前でスティールをして女性の下着を剥ぎ取ることもします。ですが、そんなカズマにも一つくらい良いところだってあるんですよ!」

 

 「ほう、例えばどのような?」

 

 「え?た、例えば?」

 

 予想外の質問をされ、弁護席のめぐみんは達は腕を組んで考える。

 

 「カズマのいいところ、何かあったっけ?」

 

 「急に言われると難しいニャンね」

 

 「私はあるぞ。洗濯物が風で飛ばされて木の枝に引っかかって取れなくなったとき、カズマが私を台にして取ってくれたんだ。あの時の感触、今思い出してもイイものだ…」

 

 「普通の人はそれを良いところとは言いません」

 

 「も〜、あーた達は薄情でウィスね〜。カズマくんの良いところと言えばあれですよ。ほら、あれ…あれ?」

 

 「お前ら〜!!一つくらいあるだろお!?なんでこんな悲しいこと自分で言わなくちゃならないんだよ!!」

 

 何でこんなに惨めな気持ちにならないといけないんだ。俺がいったい何したって言うんだ。いや、色々やったかもしれないけど。

 

 「そ、そうです!カズマはいつも、私の日課の爆裂魔法に付き合ってくれています!カズマのおかげで、私はストレスを溜めずに健康的に過ごせていると言っても過言ではありません!」

 

 「…なるほど。やはりあなたが、連日爆裂魔法を放って地形や生態系を著しく乱し、騒音騒ぎを起こしていたのですね」

 

 「…あーあー、聞こえませーん。私は何も聞こえませーん」

 

 うっかり墓穴を掘ってしまっためぐみん。白々しくプイッと視線をそらして耳を塞いでいる。

 

 (駄目だ、この弁護人ども…)

 

 これ以上任せると、他にどんなボロを出すか分からない。もう誰も当てに出来ないと思ったカズマは、自分で容疑を否認した。

 

 「もう面倒くさいからハッキリ言うけど、俺は魔王軍の手先でも、ましてやテロリストなんかでもない。領主の屋敷にコロナタイトが転送されたのは、本当にただの偶然なんだ」

 

 最初からこうすれば良かったんだ。カズマの言い分に、高性能な嘘発見器は何の反応もない。

 

 「確かに。これでは検察側の証拠は認められませんな」

 

 「は、はい…」

 

 裁判長がそう言うなら仕方ない。検察官のセナは大人しく退いた。

 

 「おお!カズマくんやりましたね!」

 

 「逆転大勝利ニャン!」

 

 少なくとも死刑は免れ、カズマはホッとする。あとは裁判長が無罪を判決するのを待つだけだ。

 

 「被告人、サトウカズマ…死刑!!」

 

 「…は?」

 

 「ウィス?」

 

 「ニャン?」

 

 暫しの沈黙の後、カズマの驚く声が上がった。

 

 「はあああ!?どういうことだーー!!」

 

 「さ、裁判長…?」

 

 納得いかない。明らかに死刑は回避出来た空気だったのに。セナでさえ、裁判長を不審な目で見ている。

 

 「はい決めたー!今決めましたー!サトウカズマは〜、ん〜死刑!」

 

 「な、何だよいきなり…ハッ!?もしかして、妖怪のしわざか?めぐみん!妖怪ウォッチで調べてくれ!」

 

 「は、はい!」

 

 妖怪ウォッチは今はめぐみんが預かっている。さっきまでと様子が違う裁判長の周囲を、ウォッチの光で照らす。

 

 「何かいました!」

 

 裁判長の近くに、体が青くて黒いマントを羽織った妖怪がいる。

 

 「はいはい〜!ちょっと待ってね〜!今調べますからね〜!いや当然知ってるんですけど念のために調べるのであって、知らないとかそんなことは決して…」

 

 「あいつは決めて魔王ニャン!」

 

 「てめジバ野郎!!」

 

 ブキミー族の決めて魔王。その名の通り、何でもかんでも一人で決めてしまう妖怪。裁判長はこいつに取り憑かれ、正常な判断が出来ないでいるのだろう。

 

 「何でよりによってこんな時に、しかも裁判長に取り憑くんだよ!」

 

 「カズマ死刑になっちゃうニャン!?」

 

 「これはシャレにならないでウィスよ〜!」

 

 とにかく、決めて魔王を早く追い払わないと。今ならまだこの場は混乱している。ただ一人、想定外なこの状況を楽しんでる男はいたが。

 

 「こうなったら、一足早い魔王退治です!ジバニャン、あいつに対抗出来る妖怪はいますか?」

 

 「それならやめたい師を呼ぶニャン!とにかくやめさせる妖怪で、このふざけた裁判を終わらせるニャン!」

 

 めぐみんはウィスパーからメダルを受け取り、やめたい師を召喚する。

 

 「やめたい師、決めて魔王を倒して裁判を終わらせてください!」

 

 めぐみんがそう言うと、やめたい師は決めて魔王のところまで飛んでいく。

 

 「裁判とかやめたいし〜!」

 

 「決めて魔王!い〜ま決めて魔王!」

 

 「頑張れ!やめたい師!!」

 

 自分の運命はもはや、やめたい師が握っている。カズマは必死に応援して、二人の激しい妖気がぶつかり合う。一進一退の激しい攻防が続き、やっとの思いでやめたい師が勝利した。

 

 「やめたい師が勝ったニャン!」

 

 「これで裁判も終わりでウィス〜!」

 

 決めて魔王を見事に追い払い、裁判長に取り憑くやめたい師。ここで改めて、カズマの判決を告げる。

 

 「…裁判とかもうやめたいし〜。さっさと終わらせたいから、サトウカズマは…ん〜、死刑でいいや」

 

 「結局死刑じゃねえか!!」

 

 決めて魔王を追い払ったのに、まさかの同じ死刑判決。俺の健気な応援を返せ。裁判を無事に終わらせる為に呼んだのに、とんでもない形でやめさせる気だ。

  

 「どうすればいいニャンー!?」

 

 「もう駄目よ!カズマさん犯罪者になっちゃうよ〜!」

 

 「えらいこっちゃえらいこっちゃ~!何かいい方法はないんでウィス〜!?」

 

 「あわわわ!?こ、この場合はどんな妖怪を呼び出せば…!?」

 

 ジバニャンやアクア、ウィスパーがこの世の終わりみたいな感じで騒ぎ立てる。めぐみんもどの妖怪を召喚すればいいか考えてるが、カズマほど妖怪に詳しくないから思い付かない。

 

 「裁判長がこう仰ってるんだ。検察官、もう終わりでいいんじゃないか?」

 

 「アルダープ殿…。はい、私は裁判長の判断に従うのみですから」

 

 裁判長の様子がおかしいことはセナにも分かっているが、立場的に何も言えない。カズマの判決は死刑。悔しいが、これにて閉廷かと皆が思ったその時。ダクネスが前に出て発言した。

 

 「裁判長、私の意見も是非聞いて欲しい」

 

 そう言ってダクネスは、首から下げているペンダントを見せる。やめたい師に取り憑かれてる裁判長は、気怠そうにしながらもそれを見た。

 

 「ん〜?あ〜、それはダスティネス家の紋章じゃないか〜」

 

 ダスティネス家。その名を聞いた傍聴席にいる冒険者達がにわかにざわめき出す。

 

 「ダスティネス家だと!?」

 

 「王の懐刀の名家!」

 

 ダクネスが実はお嬢様だとは知っていたが、それほどのお偉いさんの家だとはカズマも思わなかった。領主のアルダープは、面白くなさそうに舌打ちをしている。 

 

 「あら〜、ダクネスさんど偉いお方だったんでウィスね〜」

 

 「知らなかったニャン」

 

 「裁判長。此度の裁判、どうか私に預けて貰いたい。時間さえあれば、この男の無実を証明すると約束する。それに、そろそろ裁判をやめたいのでしょう?」

 

 「あ〜、そうだねえ。うん、ダスティネス家の君がそう言うならそれで」

 

 「なっ!?お待ちを裁判長!!」

 

 アルダープが慌てて物申す。ダスティネス家が指折りの名家と言えど、このままでは裁判を起こした領主の面目丸潰れだ。

 

 「いくらダスティネス家でも、これはちょっと納得いかんのだが?」

 

 「全てをチャラにしろと言ってるのではない。この提案を受けてくれるなら、私に出来ることは何でもする」

  

 「な、なに?!何でもだと!」

 

 「ああ、何でもだ」

 

 アルダープのダクネスを見る目が、途端にやらしいものに変わる。胸や腰つきを舐めるように凝視する。

 

 「ま、まあ。あなたがそこまで言うなら」

 

 「ダクネス…」

 

 心配そうにダクネスを見つめるカズマに、ダクネスは小さく微笑みを返した。

 

 「んじゃあ、サトウカズマはとりあえず保留ということで。これにて閉廷、解散〜」

 

 締まりの無い裁判長の無気力な声。ともかく、カズマは無事に死刑を免れることが出来た。裁判も終わり、やめたい師が離れた裁判長は、何が起きたのか分からない様子だった。

 夕日が照らす屋敷の前。ダクネスがアルダープの命令でしばらく留守にするため、カズマ達が見送りをする。

 

 「ダクネス、ほんとに大丈夫か?」

  

 「ああ。なに、私の方は心配ない。ちょっと行って、また帰ってくるだけだ」

 

 「今回ばかりはお礼を言うよ、ありがとうな。あのおっさん、お前のこと変な目で見てたから気を付けろよ」

 

 「…ふ、それはむしろ望むところだ」

 

 息が上がるダクネスを見て、何だか心配して損した気分になる。

 

 「…では、行ってくる」

 

 「…ああ。お前の帰りを、いつまでも待ってるからな」

 

 背を向けて歩いて行くダクネス。いつも行動を共にしていただけに、いざ別れるとなるとやっぱり寂しい。カズマ達は顔を見合わせ、手を振ってダクネスを見送った。

 

 「せーの」

 

 「「ララティーナ〜!!」」

 

 「その名で呼ぶのはやめろお!!」

  

 ダクネスは恥ずかしくて早足で去っていく。その背中が見えなくなるまで見送り、カズマ達は屋敷に入っていく。

 

 「カズマくん、これからどうするんでウィス?」

 

 「とりあえずは魔王軍の関係者じゃないことを証明すること、そして領主の屋敷の弁償だな」

 

 「え〜、あのおっさんの家弁償するニャン?」

 

 「仕方ないだろ。ふっ飛ばしたことは事実だし、なにより庇ってくれたダクネスの為にも頑張らないとな」

 

 色々あったが、ここからが冒険者人生の第二幕が始まる。新たな決意を胸に、カズマはドアノブに手をかけた。

 

 ドドドドドドドド!!!

 

 「な、なん…どぅああ!!??」

 

 突如騎士達がカズマの屋敷に押し入り、あらゆる家具を持ち去っていく。裁判所の命令で、私財の差し押さえに来たというのだ。

 

 「いやああああ!私のお酒えええ!それだけは許してええええ!!」

 

 「オレっちの隠しチョコボー持ってかないでくれニャアアアン!!」

 

 「やめてください!私のお気に入りの下着を乱暴に扱わないでください!!」

 

 「御慈悲を〜〜!!それは俺の思い出のジャージなんですううう!どうか御慈悲を〜〜〜!!」

 

 「ああああ!!私の、私の〜〜…って特に何も無かったでウィス」

 

 情け容赦なく私財を持ってかれて、泣き叫ぶその様子はまさに地獄絵図。気が付けばものの数分で屋敷はほぼ空になり、まるで嵐が過ぎ去ったような殺風景になった。

 

 (俺の、冒険者人生の第二幕…始まりだ)

 

 ジャージだけは死にものぐるいで死守したカズマの瞳に、キラリと雫が流れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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