妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

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このすば爆焔面白かった!
来年の新シリーズも楽しみです。


コマ兄弟とぼっち少女

 「この家も、すっかり広くなったでウィスねえ」

 

 私財を差し押さえられ、屋敷の中は殆ど何も残っていない。物だけじゃなく、ダクネスもアルダープのところに行ったから余計に広く感じる。

 

 「チョコボーまで取られたのは納得いかないニャン!」

 

 「ヒキ〜。クローゼット(マイハウス)も無くなってしまいましたヒキ…」

 

 住み家のクローゼットを差し押さえられ、ヒキコウモリもうなだれている。

 

 「…は〜。ソファーもねえ、机もねえ、ベッドも食料もなんもねえ。俺こんな異世界嫌だ〜」

 

 「歌ってる場合じゃないですよカズマくん」

 

 思わず口ずさんでしまった。あれからダクネスもまだ帰ってくる様子はないし、こっちは何もかも取られて空っぽだし。冬の寒い中、これからどうやって生きて行けばいいんだ。

 カズマが今後の生活に頭を抱えている頃、めぐみんも自室であることを悩んでいた。

 

 「う〜ん。そろそろカズマ達に紹介したいのですが、許してくれるでしょうか」

 

 何もないガランとした部屋で、黒い猫のような生き物と向かい合っている。実はこの猫、名前をちょむすけと言って、めぐみんが紅魔の里から連れてきた使い魔(ペット)だ。これまで何度もカズマ達に紹介しようとしたのだが、このお金に恵まれないパーティでエサ代がかかる使い魔を許して貰えるか不安で言いだせなかった。

 正直最近はジバニャンにうつつを抜かしていたのも事実だが、ちょむすけも可愛い相棒に違いはない。

 

 「ジバニャンにもちょむすけを紹介したいですし、きっと仲良くなれますよね」

 

 ちょむすけの頭を撫でると、嬉しそうに可愛い声で鳴いている。

 

 「めぐみん〜」

 

 「うわあ!?じ、ジバニャン!?ち、違いますよ!こ、こここれは浮気では…!」

 

 「なに言ってるニャン?」

 

 別にやましいことは何もしていないのだが、急に現れたジバニャンに浮気現場を見られた夫のごとく慌てている。

 

 「あ、あのですねジバニャン。この子は…」

 

 「おはようニャンちょむすけ」

 

 「ニャ〜ン」

 

 「え?」

 

 めぐみんの心配をよそに、普通に挨拶をするジバニャンとちょむすけ。

 

 「ジバニャン、ちょむすけを知ってるのですか?」

 

 「知り合ったのはついこの前ニャン。それまでもめぐみんがこっそりご飯をあげてたのは知ってたニャンけど、何か事情があると思ってオレっちも聞かなかったんだニャン」

 

 「そうだったのですか。どうやら、余計な心配だったようですね。ジバニャン、これからもちょむすけと仲良くしてくださいね」

 

 「もちろんニャン!」

 

 楽しそうにお喋りするジバニャンとちょむすけ。同じ猫同士、生まれた世界は違っても気が合うのだろう。めぐみんは猫二匹を連れて、カズマ達のところへ向かう。

 

 「「ああああああああ!!!」」

 

 「何ですか今のは」

 

 「カズマ達がまた何か騒いでるみたいニャン」

 

 「まったく、少しは静かに出来ないのですかね」

 

 辛い状況に叫びたくなる気持ちも分かるが、こういう時こそ落ち着きが肝心だ。自分だけは絶対に絶望なんかしない、ましてや叫び出すなどもってのほか。めぐみんは強く決心してドアを開けた。

 

 「カズマ、ちょっと話があるのですが」

 

 「あああああ!!ってめぐみん、何だその猫は。というか、猫だよな?」

 

 額に十字の模様、背中に小さな黒い羽。愛くるしい見た目ではあるが、どう見ても普通の猫ではない。

 

 「正真正銘立派な猫ですよ。それで、その…。私がちゃんとお世話しますので、面倒を見てもいいでしょうか?」

 

 「飼いたいのか?俺は別にいいぞ、ペットがもう一匹増えるくらい。な、ジバニャン」

 

 「オレっちはペットじゃないニャン!!」

 

 カズマがちょむすけの喉を撫でてやると、猫らしくゴロゴロと鳴いている。

 

 「ふ〜ん。中々可愛いじゃない、お手」

 

 「犬じゃないぞ」

 

 アクアも触ってみようと手を伸ばすが、何か気に入らなかったのかちょむすけは鋭く爪を立てた。

 

 「ニャー!」

 

 「ひっ!?ちょっと、いきなり何するのよ!」

 

 「はっはっはっ。アクアさんは猫への接し方が分かってないようでウィスねえ。その点あたくしは、ジバニャンとの付き合いも長いので、猫の扱いなんて赤子の手をひねるようなもの…」

 

 「フシャーー!!!」

 

 完全にちょむすけを舐めてかかったウィスパーは、容赦なく顔をガリッ!!と引っ掻かれた。

 

 「ぎゃああああ!?あたくしの色白ボディに傷がーー!!めぐみんさん、飼い主としてその猫野郎にビシッと言ってやってください!!」

 

 「駄目ですよちょむすけ。こんなので爪とぎをしたら、爪の間からバイキンが入って病気になってしまいます。次からは気を付けてくださいね」

  

 「ニャ〜ン」

 

 「腹立つ〜!この飼い主とペット腹立つでウィス〜!!」

 

 アクアとウィスパーには懐かない、というよりむしろ敵意を向けている。何がちょむすけをそこまでさせるのか分からないが、アクアは邪悪なオーラを感じると怪しんでいた。

 

 「飼うのはいいけど、責任持って面倒見るんだぞ」

 

 「もちろんです。よかったですね、ちょむすけ」

 

 「ニャ〜」

 

 「ちょむ、すけ…」

 

 「何か?私のネーミングセンスに文句でもあるんですか?」

 

 呆れたような顔をしているカズマ、ウィスパー、アクアにめぐみんはジト目で睨みをきかせる。文句言おうものなら爆裂魔法の餌食にされそうで、カズマ達はサッと視線をそらした。

 

 「そういえば、さっきは何を騒いでいたのですか?」

 

 「ああ、ダクネスのことでちょっとな」

 

 「心配なのは分かりますが、私たちが取り乱してもしょうがないじゃないですか。それに、ダクネスはダスティネス家なんですよ。あの領主がいくら悪い噂が多くても、そんな乱暴な扱いは…」

 

 「甘ーーい!これだからお子ちゃまは困るんだ!」

 

 「な、なんですか急に…」

 

 カズマのただならぬ剣幕に、めぐみんも段々不安になってくる。

 

 「まだ事の重大さが分かってないな。ウィスパー、俺達でめぐみんにも分かりやすく教えてやるぞ」

 

 「ウィッス!お任せください!」

 

 ここから、カズマとウィスパーの小芝居が披露される。カズマはアルダープの、そしてウィスパーはダクネスの格好をして実演する。

 

 「…くっ、殺せえ!!」

 

 「ゲヘヘへ〜。口ではそう言っても、体は正直だなええおい?」

 

 「おのれえ!たとえあたしの体はいいように出来ても、心までは…ああああああ!!」

  

 「って、なるに決まってる」

 

 妙に迫真の演技で、考えられるダクネスの惨状を演じたカズマとウィスパー。しかし、あまりにもリアルにやり過ぎてめぐみん達はちょっと引いていた。

 

 「…え、えーと。いまいち頭に入って来なかったのですが」

 

 「だから、簡単に言うとダクネスはあのおっさんにとんでもなく変態的な要求をされてる可能性もあるってことだ」

 

 「・・・」

 

 2、3秒。めぐみんは固まり、ようやく理解して目をハッと見開いた。

 

 「どどどうするんですか!!こ、このままでは私たちのダクネスが〜!!」

 

 絶望なんかしないと誓っためぐみんだが、仲間の安否を憂うと心配で仕方なかった。

 

 「…もう手遅れかもしれん。いいか皆、ダクネスが帰ってきても、いつもと変わらない感じで話しかけてやるんだぞ」

 

 ドンヨリとした重たい空気がカズマ達を包む。一応妖怪ウォッチで調べてみたが、近くにドンヨリーヌはいなかった。家具も没収されて、仲間のピンチにどうすることも出来ない。

 気不味いこの雰囲気を壊すように、誰かが乱暴に扉を開けて現れた。

 

 「サトウカズマはいるか!」

 

 「いません」

 

 「そうか。なら仕方ない…って嘘をつくなあ!」

 

 「この人も案外ノリやすいでウィスね」

 

 血相を変えて、部屋に飛び込んで来たのは検察官のセナ。まだカズマが魔王軍と無関係であることを証明する日までは時間があるはずだ。

 

 「冬眠していた筈のモンスターが、急に目を覚ましたのだ。確か貴様の仲間に、爆裂魔法を使える者がいただろう。それに驚いて起きたのではないかって、近隣住民は慌てて避難しているぞ」

 

 その話しを聞いて、カズマは首をゆっくり後ろに向ける。その視線の先は当然めぐみんであり、その隣のアクアも冷や汗を流して吹けてない口笛を吹いていた。

 

 「言い訳だけはさせてください!私は嫌だって言ったんですが、アクアに命令されて仕方なく、そう仕方なくやっただけなのです!」

 

 「ズルいわよめぐみん!私だけ悪者扱いして!」

 

 「ええいうるさい!さっさと後始末に行くぞ!」

 

 責任の擦り付け合いをする二人を引っ張り、カズマ達はモンスター駆除に出発する。これ以上余計なことで魔王軍の関係者だと疑われるのは御免だ。

 カズマ達が屋敷を出た頃、ギルドではコマさんとコマじろうのコマ兄弟がソフトクリームを食べていた。

 

 「もんげ〜、ソフトクリームはいつ食べても美味しいずら〜」

 

 「そうズラね」

 

 「ん?コマじろう、あれは何ずら?」

 

 コマさんの視線の先に、一人の女の子がいた。他の皆から離れた端っこのテーブルに、ぽつんと座っている。それだけなら特に気にすることもないのだが、その子はなんと一人でチェスをしていた。他の冒険者達がワイワイ騒いでる中、一人でチェスをしている光景は何とも言えない寂しさがある。

 

 「あの子、何してるんずら?」

 

 「一人チェス、ズラね…」

 

 「それって楽しいんずら?」

  

 「さあ…」

 

 チェスは本来、二人でやるボードゲーム。その女の子はハイライトが消えた暗い瞳で、一人で黙々と駒を動かす。哀愁漂う少女の姿を見ていると、どこかのアンドロイド妖怪のような、悲しいギターのBGMが聞こえてくる気がした。

 

 (ギルドで待ってたら、いつかめぐみんが来ると思ったけど全然来ないじゃない。一人チェスも3局めに入っちゃったし、どこで何をしてるのよ)

 

 一人チェスは慣れてるから、時間を潰すにはちょうどいい。仮想した相手の手番を考え、駒に手を伸ばす。すると、触れる直前にその駒が勝手に動き出した。

 

 「え!?」

 

 思わず驚いた声が出る。他の誰かがイタズラで動かしたのかと思ったが、周りを見回してもそれらしい人物はいない。

 不思議に思いながらも、少女は自分の駒を動かす。

 

 (また動いた!)

 

 少女が駒を置いたことを確認したかのように、またもや勝手に相手の駒が動く。普通ならばこの怪奇現象を怖がるものだが、少女は驚きはするものの怖がる様子はない。

 

 (何で駒が勝手に…はっ!もしかして、前に悪魔を友達にしようと召喚したのが原因?でもあれは結局途中でやめちゃったし)

 

 可能性のありそうなことを少女は色々と考える。しかし、真相は実に単純。少女には見えていないコマさんが駒を動かしていただけだ。

 一人でチェスをしている少女が、コマさんには何だかとても寂しそうに見えた。たとえ見えていなくても、一緒に遊びたくなったのだ。

 

 「兄ちゃん、チェス分かるんズラ?」

 

 「さっぱり分からないずら」

 

 分からないなりに一生懸命考えて、駒を動かすコマさん。だが偶然にも状況に適したところに駒を置いて、上手い具合に対局が進んでいた。

 

 (…もうこの際悪魔でも何でもいいわ。だって、凄く楽しいんだもん!)

 

 誰かと一緒にするチェスが、こんなにも楽しいものなんて思わなかった。少女は思わず目に涙まで浮かべて、嬉しそうに見えない相手と対局する。

 しばらく二人の白熱した勝負が続き、少女は嬉々として駒を動かしていた。だが、それは突然少女の耳に聞こえてきた会話によって遮られてしまう。

 

 「そう言えば、カズマ達がまたカエルの駆除に行ったらしい。なんでも、爆裂魔法のせいで冬眠から覚めたせいだとか」

 

 「爆裂魔法っていうと、またあの頭のおかしい子の仕業か」

 

 「ああ。十中八九、めぐみんだな」

 

 めぐみん。その名を聞いた少女は、駒を持っていた手を止める。

 

 「ずら?」

  

 「急に止まっちゃったズラ」

 

 少女は下を向いて、何か考え始める。コマ兄弟が様子を見守っていると、少女は再び動き出して駒を置いた。

 そして周りに聞こえないよう、目の前にいる見えない誰かに小声で話しかける。

 

 「…ごめんね。私、どうしても行かなきゃいけないの。とても楽しかったわ、ありがとう」

 

 少女は少し寂しそうな顔をしている。本当はもっと遊んでいたかったが、この街に来た理由を思い出した。

 あの時の約束を果たす為、めぐみんと決着をつける為に来たのだと。

 

 「…もし良かったら、また私と遊んでくれる?」

  

 コマ兄弟は顔を見合わせて、嬉しそうに笑った。

 

 「もちろんずら!」

 

 コマさんが少女の手にそっと触れる。温かい、そして優しい気持ちを少女は感じた。    

 

 「さあ、待ってなさい。めぐみん!」

 

 周りの視線も気にせず、少女はギルドを出て走っていく。その足取りは軽く、あっという間に見えなくなった。コマ兄弟は少女を見送った後、また二人でソフトクリームを食べたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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