妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら? 作:カジ
「おらおらどうした坊主ー!そんなんじゃ日が暮れちまうぞ!」
「はあ…はあ…は、はい!」
カズマは今、日銭を稼ぐ為に土木工事のアルバイトをしていた。冒険者になりたてほやほやの初心者。クエストに出られる程のレベルもないので、こうして肉体労働の毎日だ。
「はあ!はあ!き、キッツ!おぅええぇぇ…」
「ちょっとー、大丈夫ですかカズマくん」
「かなりしんどそうニャン」
今まで運動をサボってきたツケが祟ったか、肉体労働はキツイ。
「そ、そうだ。こういう時こそ、友達妖怪の出番…」
このままではアルバイト料が貰えない。カズマはウォッチにメダルを嵌めて、友達妖怪を召喚した。
「ちからモチ!」
カズマはちからモチを召喚し、自分に取り憑かせる。すると、カズマの二の腕の力こぶが肥大化し、体全体がまるでボディビルダーみたいにムキムキになった。
「はっーはっはっー!軽い軽いー!」
「な、なんだ!?急に元気になりやがった!」
思い石を軽々運び、親方を驚かせるカズマ。仕事で汗を流して、風呂でさっぱりして、ギルドの食堂でアクアや仕事仲間達と宴会の日々。
「いや、なんか違くね?」
「どうしたんでウィス?カズマくん」
「俺は魔王を倒したり、冒険するためにここに来たのに、ここ最近は日雇い労働の毎日だぞ」
生活は良くも悪くも安定している。仕事終わりに皆で宴会は楽しいし、ここの暮らしにも馴れてきた。
だが、そうじゃない。せっかく異世界に来たのに、日本でも出来るようなことをやっていては意味がない。
「確かに、あなたに魔王を倒して貰わなきゃ、私も帰れないのよね」
「そこでだ、そろそろクエストというものをやってみようかと思うんだが」
クエスト、これぞ冒険者の醍醐味。ここの近くのモンスターはあらかた駆逐されてるらしいから、ちょっと遠出する手間はあるが仕方ない。
さっそくカズマ一行は、ギルドに行ってクエストを受注する。
「でもカズマくん。あーた達レベル1の初心者じゃないでウィスか。受けれるクエストありますう?」
「初心者向けのやつなら何とか行けるだろ。いざとなれば、友達妖怪の出番だしな」
カズマは受付に行って、お姉さんにオススメのクエストを探してもらう。
「初心者向けでしたら、こちらのジャイアントトードの討伐クエストがありますよ」
「ジャイアンと、東堂…だと」
カズマの頭に乱暴なガキ大将と、女の好みを聞いてくる屈強な男が思い浮かんでくる。
やべえ、全然倒せる気がしねえ。ギッタギタのボッコボコにやられる未来しか見えねえよ。
「あの、何か勘違いされてるみたいですけど、ジャイアントトードは大きい蛙ですよ」
蛙と聞いてカズマは安心した。ちょっとくらい大きい蛙の駆除なら、大した問題はないだろう。カズマは喜んで、3日以内にジャイアントトード5匹討伐のクエストに挑んだ。
そして、ジャイアントトードが頻出する草原に着き、カズマは目を疑った。
「…デカくね?」
「デカああああい!説明不要でウィス!」
「いや、説明しろ」
ジャイアントトード。人間を軽く丸呑み出来る程の大きさ。農家の家畜がよく被害にあっており、その肉は中々の美味である。
「マジかよ、せいぜい大型のウシガエルくらいだと思っていたのに」
ピョンピョン跳ねる度に、ズシンと重々しい音が鳴り響く。なんであれが初心者向けのクエストなんだ?
「あ、こっち見たニャン」
カズマをロックオンし、獲物を捕食せんと向かってくるジャイアントトード。
「さあ、来ましたよカズマくん!記念すべき、最初の獲物でウィス!」
「中古で買った剣の錆にしてやれニャン!」
「がんばえー」
ジバニャン達の応援を背に、カズマは勇敢にも立ち向かう。と思いきや、一目散に走り出した!
「やっぱ無理!怖ええええ!!」
「カズマの危険が危ないニャン!」
「カズマくん!今行くでウィスー!」
蛙に追われ、全力で逃げるカズマ。ジバニャンとウィスパーも、カズマを助けに向かう。
「ジバニャン!ウィスパー!」
「カズマ!助けに来たニャン!」
「おらあ!ガマ野郎!かかってこいや…」
バクン!
「ウィスパー!」
ウィスパーが蛙の長い舌に巻き取られ、そのまま蛙の口にINしてしまった。
「カズマくん!ジバニャン!あたしのことは構わず、逃げてくださ」
「分かった!」
「お前のことは忘れるまで忘れないニャン!」
「っておおい!ちょっとは躊躇ええええ!!」
ウィスパーが犠牲になったが、蛙はまだ食い足りないとばかりに二人を追う。そんな二人を小高い丘の上から、アクアが笑いながら高みの見物していた。
「プークスクス!必死こいて逃げてるの超ウケるー!」
「あんの駄女神!」
「ムカつくニャン!」
相変わらず女神らしからぬ言動が目立つアクア。しかし、蛙も空気を読んだのか、高笑いしているアクアに標的を変えた。
「あら、へぇー。この私を狙うなんて、いい度胸してるじゃない」
自分の何倍もの大きさの蛙に迫られても、アクアは自信満々だ。腐っても女神、実は頼りになるやつなのかと、カズマとジバニャンはアクアを見守る。
「神の一撃、受けてみよ!喰らいなさい!ゴッドブロー!!!」
説明しよう!ゴッドブローとは、女神の怒りと悲しみの力を拳に乗せ、相手を粉砕するアクアの奥義である!
ポヨンッ
「…え?」
「…え?」
「あれ…?」
蛙のお腹から柔らかい音が聞こえる。ゴッドブローが不発に終わり、場に気不味い空気が流れる。
「…ふー、オーケーオーケー。なるほどね、そういうパターンね。言っとくけど、私の必殺技はまだまだこんなものじゃないわよ。次こそ、私の最大奥義をかましてあげるわ」
「アクア。蛙さん待ってくれてるんだから、早くやれ」
「う、うるさいわね!」
気を取り直し、アクアが拳に力を溜める。アクアの右手が強烈な光を放ち、勢い良く踏み込んだ。
「神の一撃を喰らいなさい!ゴッドハンドクラッシャー!!」
ポヨヨ〜ン
またしても蛙のお腹から柔らかい音が鳴り、先程とまったく同じの再放送に終わった。
「か、蛙さんって…よく見ると可愛いと思」
バクン!
「アクアー!」
往生際の悪いよいしょも虚しく、アクアの足が蛙の口からハミ出ている。
「いやー!ぬるぬるして気持ち悪いし臭いー!早く助けてー!…ん?」
「ああ、アクアさんん…ようこそ、蛙の口の中へええぇぇぇ…」
「ぎゃあああああああ!!白くて気持ち悪いのがいるううううう!!」
先に食われて溶かされているウィスパーと目が合って、アクアは叫びまくっている。
「おお…なんだか中は凄いことになってるようだ」
「カズマ!今がチャンスニャン!」
アクアを食べて身動きが出来ない隙きを狙い、何とか一匹の討伐に成功した。
「うぐうっ…!うっ、ぐすっ!うえぇぇぇえええ…」
「いや〜、助けてくれてありがとうございますう」
体液塗れるでべそをかいているアクア。その横には、体が半分溶かされている謎の物体(ウィスパー)。
「あー…よし、今日はもう帰ろう。一度ギルドに戻って、作戦を立て直そうぜ」
カズマの提案に、アクアもこくんと頷く。体液に塗れたアクアをそのままにするのは流石に気の毒だし、何より臭うから早く風呂に入って欲しかった。
ギルドに戻り、一匹分の報酬を貰う。命懸けのわりに、普段のアルバイトと変わらない値段だった。
「ねえ、あなたの友達妖怪に、ジャイアントトードを倒せるのっていないの?」
「結構いると思うぞ。ブシニャンとかオロチとかキュウビとか」
「じゃあ何で呼ばなかったのよ」
「メダルを持ってるウィスパーが食われちまったんだよ」
「ギクッ!」
ジト〜と睨むカズマとアクアの視線から目を逸らすウィスパー。メダルの管理は基本的にウィスパーに任せている。そのウィスパーが真っ先に食べられたせいで、友達妖怪を呼ぶことが出来なかった。
「役立たずニャンね」
「うぅ…すまみせん」
「そうだわ、仲間を募集しましょう。そもそも、たった二人でクエストに挑んだのが間違いだったのよ」
確かに。ジャイアントトードを嘗めてたのもあるが、パーティーメンバーが二人では少な過ぎる。今日みたいに、友達妖怪をいつでも呼び出せるとは限らない。妖怪に頼らず、自分達で戦えるようにならなきゃ。
「パーティーメンバーは、最低でも4人は欲しいよな。攻撃役のアタッカー、防御役のタンク、回復のヒーラーに、後は状況を見て攻撃も防御も出来るレンジャー」
アクアがヒーラーとして、アタッカーやタンクの人が入ってくれると好ましい。アクアに募集作成を任せ、後は待つことになった。
そして翌日。
「ふぁ〜。あ、おはようございまウィス〜」
「おう、おはよう」
パーティー入りを希望してくれる人を待つため、朝早くからギルドに来るカズマとウィスパー。アクアとジバニャンはまだ馬小屋で寝ている。
「誰か来てくれますかねえ?」
「どうだろうなあ。アクアのやつが無茶な応募したから」
アクアがメンバー募集に、上級職限定なんて付けたもんだから、カズマはあまり期待してなかった。ここは初心者の街であるゆえに、上級職の冒険者自体そこまで多くない。そんな貴重な上級職が、わざわざ初心者がいるパーティーに入ってくれようか。
「それに、俺だけ初心者だったら肩身が狭いだろ。やっぱりアクアに、ハードルを下げるよう頼むしかないか」
「そう簡単に聞き入れてくれます?あの人が」
ウィスパーの言うとおり、絶対駄々をこねられるだろう。アクアの説得は後で考えるとして、朝飯を食べることにした。
「ふあ〜あ〜…おはようニャン〜」
「おはようジバニャン。あれ?アクアは?」
「まだグーグー寝てるニャン」
ジバニャンよりも起きるのが遅いとは。まあいい、どうせお腹が空いたらやってくるだろう。
「あの〜…」
「ん?なに…へ?」
誰かに声をかけられて振り向くと、一人の女の子が地面に突っ伏していた。魔法使いみたいな帽子やマントを羽織り、左目に眼帯をつけている。
「だ、大丈夫…?」
「募集の張り紙を見ました…私をメンバーに…その前に、食べ物を恵んでくれませんか?お腹が空いて死にそうなんです…」
グギュルルル〜と、この子のお腹からヤバい音が聞こえる。
「それは構わないけど、いつから食べてないんだ?」
「今日は、まだ何も…」
「ん?今日は?」
「昨日はしっかり食べたんですが、今朝起きると急に空腹感が…」
カズマは不思議に思った。まだ朝飯を食べてないだけで、ここまで飢餓状態になるものかと。
「ウィスパー、これって妖怪の仕業じゃないか?」
「またまた〜、朝起きたらお腹空いてるなんて当然のことですよ。そんなことまで妖怪のせいにされちゃ、たまったもんじゃ焼き…」
「いたぞ!」
「ウィス!?」
カズマが妖怪ウォッチをかざすと、女の子の近くに妖怪がいた。どう見てもこの子に取り憑いてる。
「お前はひもじ」
「はいストーーップ!!妖怪の解説シーンはあたしの見せ場でウィス!」
ウィスパーが妖怪パッドで必死に妖怪の名前を探す。
「え〜と、あれは…頭とんがりじいさん!じゃなくて、歯抜けじじい!でもなくて…」
「ただの悪口ニャン」
「ありました!あれは妖怪ひも爺!取り憑いた相手を空腹にしちゃう妖怪でウィス!」
「うん、知ってる」
とりあえず、カズマはひも爺をこの子から離れるように説得する。ひも爺も気が済んだのか、あっさり引き下がってくれた。
「う〜ん…あれ?さっきまで凄くお腹空いていたのに」
ひも爺が離れて、この子も元の調子に戻ったようだ。
「でも変だな。ひも爺を召喚した覚えはないのに、なんでこの世界にいるんだ?」
「そりゃ、うんがい鏡を通ってこちらにやって来たんでしょう。ここは異世界、妖怪達も興味津々の筈でウィスから」
ウィスパーの言うとおり、今やひも爺だけでなく他の妖怪達もこっちの世界に遊びに来ている。ウォッチをかざせば、そこら中に妖怪達が潜んでいることだろう。
「あの…」
「おっと、募集を見てくれたんだったよな。俺はカズマ、君は?」
名前を尋ねると、その少女は待ってましたとばかりに口上を述べた。
「ふっふっふ…この邂逅は世界が望みし
「は、はあ…」
ちょっと何言ってるか分かんなかったが、とりあえず最後まで聞いてあげる。
「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法…爆裂魔法を操る者!!」
マントを翻し、高らかに名前を宣言するめぐみんという少女。
(…決まった!)
呆然としているカズマを見て、名乗りが上手く行ったと喜んでいる。
魔法使いの最上位、アークウィザードが来てくれた。人材的にも申し分ないのだが、かなりの変わり者が来てしまったと、カズマは頭が痛くなった。
めぐみんを書くの楽しい