妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

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お待たせしました。今回はタイトル通りクリスマス回です。今回が今まで一番文字数多いので、スペシャル版みたいなものだと思ってください。


ジバニャンサンタのクリスマスプレゼント

 「結構積もって来たでウィスね〜」   

  

 「そうだな〜、こんな日はコタツでゆっくりしてるに限る」

 

 季節はすっかり冬本番。借金が消え、死刑に怯える必要も無くなり、それどころか4000万という大金も得た。ようやく心に余裕ができて、今はバニルとの共同で開発したコタツに入り、身も心も温めているところだ。

 

 「カズマ、いくら冬でもこんなにダラダラしてていいのですか?」

 

 「いいんだよ、どうせ殆どのモンスターは冬眠してるんだ。俺達冒険者だって、冬の間くらいは休まなきゃな」

 

 「それはそうですが」

 

 「それに、昨日はふぶき姫主催の雪合戦大会をやったばかりだぞ。筋肉痛で動けないって」

 

 冬はふぶき姫の季節とも言える。突然屋敷にやって来て、皆で雪合戦をやろうと言い出した。正直カズマも寒いから雪合戦はしたくなかったが、断ると後が怖いから仕方なく参加した。ジバニャンやアクア、道連れに召喚したあつガルル等の熱い系妖怪達は嫌がったが、カズマが無理矢理に参加を強行。

 ふぶき姫の散弾銃ばりの雪玉の嵐を、興奮したダクネスがその身で受け止め、めぐみんが爆裂魔法を使って危うく屋敷ごと破壊しかける。 

 最初は乗り気じゃなかったカズマだが、何やかんやで盛り上がり、最終的に雪合戦大会は大盛況の内に幕を閉じたのだった。

 

 「つーわけで、今日はお休み。春になるまで冒険者家業は一旦お預けだ」

 

 「そうそう、カズマの言う通りよ。春に向けて英気を養わなきゃ。あ、そこのミカン取って」

 

 アクアもコタツに入り、カズマと同じようにだらけている。

 

 「ダクネス、いいのですか?」

 

 「まあ、冬の間は大目に見てやろう。雪が溶けて春になれば、この二人も動き出す筈だ」

 

 その考えは甘かったと、ダクネスは後で後悔することになるのである。

 

 「やっぱりコタツはいいニャンね〜。猫は(たま)食って丸くなるニャン」

  

 「ニャ〜♪」

 

 猫はコタツが大好き。ジバニャンとちょむすけも、コタツの上で一緒に丸くなっている。

  

 「そういえば、向こうではそろそろクリスマスじゃないか?」

 

 「そうでウィスねえ。またサンタさんが忙しくなる日がやって来たでウィス」

 

 「何ですか?その、サンタとかクリスマスというのは」

 

 「聞き慣れない言葉だな」

  

 「そっか、めぐみんとダクネスは知らないのか」 

 

 めぐみんとダクネスはこっちの世界の住人。別世界の異教徒の生誕祭など、当然聞いたこともない。カズマが二人に分かりやすく説明してやる。

 

 「俺がいた世界…ああいや、故郷のお祭りだ。美味しい料理を食べたり、プレゼントを交換したりするんだ」

 

 「ほほう…!そんな楽しそうなイベントがあるんですね!」

 

 「それだけじゃないわ。赤い服を着たサンタっておじさんが、真夜中に煙突からやって来るの」

 

 「泥棒か?」

 

 「いいえ、皆にプレゼントを配りに来るおじさんよ。良い子のところに現れるわ」

 

 一年間、良い子にしていた子供のところに現れるサンタさん。その不思議でメルヘンチックな存在に、めぐみんとダクネスは想像を膨らませている。

 

 「子供達にプレゼントを配って回るのか。とても夢のある素晴らしい仕事だな」

 

 「いいですねえ、カズマの故郷は。私はあまり裕福な家庭じゃなかったので、もしサンタさんがいたら、美味しい食べ物を妹に食べさせてあげたかったです」

 

 めぐみんは小さい妹の面倒をずっと見てきて、食料の調達も全部自分がやってきた。子供達にプレゼントを配る存在がいるなら、一年に一度くらい妹に豪華な食事を食べさせてやりたい。

 いつも近くの川で取ったザリガニや、こっそり強奪してきたパンの耳ばかりじゃ可哀想だから。

 

 「ふわぁ〜…眠いので私はそろそろ寝ますね。ジバニャン、ちょむすけ。行きますよ」

 

 「ニャ〜ン」

 

 「オレっちはもうちょっとコタツでゆっくりしてるニャン」

 

 めぐみんがちょむすけを連れて部屋に戻り、ダクネスも自室に移動する。

 

 「ほらほらカズマくん、アクアさんも。そろそろ部屋に戻る時間でウィスよ」

 

 「アクア、言われてるぞ」

  

 「カズマさんこそ、部屋に戻っていいわよ」

 

 カズマとアクアはコタツに入ったまま動こうとせず、首まですっぽりと中に入れている。

 

 「んもう、コタツで寝たら風邪引きますよ!」

 

 「へー」

 

 「ふーん」

 

 駄目だ、まったく聞く耳を持たない。意地でもコタツから出ない気だ。変なところで似た者同士な二人に、ウィスパーは呆れてため息を吐く。

 

 「あーた達はまったく……ウィス?」

 

 「なんだ?」

 

 「ニャ?」

 

 「なによこの音」

 

 突如鳴り響く鈴の音。何事かと不審に思うカズマ達だったが、よく聞くとクリスマスの時期にかかるジングルベルのメロディではないか。

 

 「何か落ちて来たニャン」

 

 ジバニャンの頭上に異次元の空間が開き、そこから手紙がひらひらと舞い降りてくる。

 

 「ジバニャン、それは?」

 

 「手紙ニャン。差出人は…さ、サンタさんニャン!?」

 

 サンタさんからの手紙。カズマとアクアもこの時はコタツから出て、ジバニャンが持ってる手紙を覗き込む。

 

 「サンタ委任状って書いてあるわよ」

 

 「どういうことニャン?」

 

 「カズマくん、とりあえず読んでみるでウィス」

  

 「あ、ああ」

 

 ジバニャンへ、サンタクロースより。君達が異世界に行ったことは、儂も当然聞き及んでいる。本来ならサンタとして、そちらの子供達にもプレゼントを配らなければならないのだが、流石に2つの世界にプレゼントを配って回るのは不可能じゃ。

 

 「サンタさんも死ぬほど忙しいですからね〜。なにせ世界中の子供達にプレゼントを配るんでウィスから」

 

 そこでじゃ、そっちの子供達へのプレゼント配りは…ジバニャン、君にやって貰いたい。

 

 「オレっちニャン!?」

 

 「また急なお話でウィスね」

 

 「でも、何でジバニャンが選ばれたんだ?」

 

 「厳正な抽選の結果、選ばれたって書いてあるわ」

 

 厳正な抽選は、運命のルーレットによって決められる。サンタさんが狙いを定め、その結果見事、ジバニャンが偶然にも選ばれたというわけだ。

 ちなみにそのルーレット、ジバニャンの的だけが異様にデカいルーレットだったりする。

 

 「全然厳正じゃねえ!」

 

 「オレっちだけ何でデカいニャン!?」

 

 ということでジバニャン、そっちのクリスマスは任せたぞ。子供達が喜ぶクリスマスになるのも、失敗して全てが台無しのクリスマスになるのも君次第じゃ。

 

 「凄えプレッシャーかけてきたな」

 

 「ええ〜、オレっちにサンタとか無理ニャン…」

 

 「もうなってるわよ」

 

 「ニャ? ええ〜!いつの間にニャン〜!?」

 

 いつの間にか赤いサンタコスチュームを着せられているジバニャン。これはもう腹をくくって、サンタの仕事をやるしかない。

 

 「こうなったらやってやるニャン!カズマ、アクアも力を貸して欲しいニャン」

 

 「しょうがねえなあ。子供達の為だ、手伝ってやるよ」

 

 「私だって、水の女神アクア様よ。神仲間の生誕祭くらい、無事に成功させてみせるんだから!」

 

 「カズマ、アクア…ありがとニャン!」

 

 二人が協力してくれるのを見計らったように、サンタの帽子をかぶったうんがい鏡が出現する。カズマ、アクア、ジバニャン、ウィスパーが吸い込まれ、別の場所に移動した。

  

 「もう、いきなりなんなのよ!」

 

 「ここは…?」

  

 「妖怪サンタアカデミーってとこみたいでウィス」

 

 「なんニャそれ」

 

 目の前に広がる巨大なお城、妖怪サンタアカデミー。新人サンタを教育する、いわばサンタ養成所。どんな素人も、たった数日で立派なサンタに仕立て上げるという。しかし、それには厳しい訓練を突破しなくてはならない。

 

 「よく来たなあ!ここでお前達をビシバシ鍛えて、立派なサンタにしてやるから覚悟するであーる!」

 

 鬼教官、ブリー元帥がカズマ達の前に現れた。これまで何人ものサンタを育てた、凄腕の教官だ。

 

 「ちょっと待って。カズマ、お前達ってまさか私達も入ってるの?」

 

 「そ、そうみたいだな」

 

 「なんでよ、サンタに選ばれたのはジバニャンでしょ。何で私達まで訓練を受けなきゃいけないのよ」

 

 予想外のことに、アクアがカズマに耳打ちして不満を言う。確かに手伝うことには納得したが、厳しい訓練を受けるなんて聞いてなかった。

 

 「ジバニャンの協力者であるお前達も、当然訓練に参加して貰うであーる!」

 

 「ええ〜!なんでよ〜!」

 

 「俺だってやるんだから諦めろ。ここまで来たらやるしかないだろ?」

 

 「うぅ〜、分かったわよぅ…」

 

 早くも帰りたそうにしているアクアを何とか落ち着かせ、カズマ達はブリー元帥の訓練を開始する。

 

 「サンタといえば、プレゼント配り。いかに寝てる子供に気付かれず、プレゼントをそっと枕元に置けるかが重要であーる!そこで、お前達にいくつかの家を用意した。見事、制限時間以内に忍び込み、プレゼントを配置してくるのであーる!」

 

 サンタの服装に着替えたカズマ達の前に、それぞれ訓練用の家が建てられている。大きさは普通の一軒家と同じくらいだが、サンタの訓練となればそう簡単には行かないだろう。

 

 「制限時間は10分。それでは、始めるのであーる!」

 

 ブリー元帥の笛の合図で、一斉に走り出すカズマ達。ちなみに今回用意した家は、妖怪でもすり抜けられないように出来ている。

 

 「オレっちは定番の煙突から行くニャン!」

 

 ジバニャンが素早く屋根に登り、煙突に手をかける。しかし、煙突に触れた瞬間けたたましい警報ブザーが鳴り響いた。

 

 「ニャニャア!?」

 

 「駄目であーる!最近の家は防犯対策はしっかりしている為、うっかり触ると赤外線センサーに反応してしまうであーる!」

 

 「厳しいニャン〜」

 

 「いや、そもそも向こうの世界に赤外線センサーなんかねーよ」

 

 早くも失敗したジバニャン。その隣の家では、アクアも侵入に苦戦していた。

 

 「ちょっとー!煙突が無いんですけどー!」

 

 「最近は煙突が無い家も珍しくないのであーる!そういう時は、諦めて別ルートから行くのであーる!」

 

 「仕方ないわねえ、こうなったら窓を割って…」

 

 「論外であーる!サンタは子供に夢を与える存在、器物破損して忍び込むなどもってのほかであーる!」

 

 「難しいわよ〜!」

 

 アクアも失敗。残ったのはウィスパーとカズマだけだが、タイムリミットが刻一刻と近付いている。

 

 「しめしめ、裏口の鍵をかけ忘れてるでウィス」

 

 裏口からそ〜っと侵入するウィスパー。その様子はサンタではなく完全に泥棒だ。

 

 「さ〜て、子供の寝室はどこに…」

 

 ヒュン! ドスッ!!

 

 「…ウィ?」

 

 ウィスパーの頬を何かが掠める。ぎこちない動きで振り向くと、鋭い矢が壁に突き刺さっていた。

 

 「たとえ中に入れても、侵入者を迎え撃つ仕掛けが用意されてるかもしれないから、死なないよう注意するであーる」

 

 「こんな家あるかーー!!!」

 

 体中を矢で撃たれまくって、ウィスパーは瀕死の状態で這い出てきた。3人が失格になり、これで残るはカズマ一人。

 

 「くっそ開かねえー!」

 

 ガチャガチャとピッキングで、ドアを何とか開けようと努力する。

 

 「急ぐであーる!家宅侵入は時間との勝負。変にもたつくと、家主に勘付かれて通報されてしまうであーる!」

 

 「あれ?これ泥棒の訓練だっけ?」

 

 やってることは普通に犯罪だが、あくまでサンタさんだから許されること。良い子の皆は、決して真似しないように。

 

 「そこまでー!時間切れであーる!」

 

 結局誰もクリア出来ず、侵入訓練はイマイチな結果で終わった。

  

 「まったく、揃いも揃ってだらしないであーる」

 

 「こんなのクリア出来るか!」

  

 「そー言うお前は突破出来るニャン!?」

 

 「そーよそーよ!偉そうにしてないで、あんたもやってみなさいよ!」

 

 「あたしなんて滅多刺しになったんでウィスよ!」

 

 「さて、次の訓練に移るであーる」

 

 「「「「おい!!」」」」

 

 納得が行かないカズマ達をよそに、ブリー元帥は話を進める。

 

 「ここまではほんの序の口。サンタにとって、ある意味一番大事な仕事が…これであーる!」

 

 カズマ達が連れてこられたのは、物凄く巨大な倉庫。奥は暗くて、一番先まで見通せない。

 

 「大きい倉庫だなあ。ここで何するんだ?」

 

 「ここはプレゼント保管及び、制作倉庫。お前達はここで、子供達に配るプレゼントを作るのであーる!」

 

 「え?!作る!?」

 

 「オレっち達がニャン!?」

 

 「もちろんであーる」

 

 サンタさんが配っているプレゼントは、実は全部サンタさんが一から手作りした物。一つ一つ、心を込めて作っていたのだ。

 

 「手作りって、店で売られてる物とかはどうしてるんだよ」

 

 「それはサンタさん熟練の職人技によるコピー商品。本物よりも本物らしい、パーフェクトコピーであーる」

 

 「コピー商品って言うのやめろ」

 

 「ということで、ジバニャンはそっちの世界の子供達のプレゼントを全員分作るのであーる!」

 

 子供だけとはいえ、全員分となると相当な量になる。サンタの仕事がここまでブラックじみたものとは知らず、ジバニャンは頭痛でクラクラしてきた。

 

 「配るだけでも大変ニャのに、全員分作るとか無理ニャン〜…」

 

 「諦めるなジバニャン。なーに、全員で力を合わせれば何とかなる」

 

 「カズマくん、何する気でウィス?」

 

 「もちろん、友達妖怪にも協力して貰うのさ」

 

 ありったけのメダルを妖怪ウォッチに読み込ませ、友達妖怪を召喚する。

 

 「みんな!この世界の子供達にもプレゼントを配らなくちゃいけないんだ!頼む!協力してくれ!!」

 

 「そういうことなら任せるでござる!」

 

 「オラ達ももちろん!」

 

 「協力するズラー!」

 

 大きな歓声を上げ、急いで作業に取りかかる妖怪達。メラメライオンが皆のやる気を高め、ぜっこう蝶が気分を盛り上げる。少しずつではあるが、着々とプレゼントの箱が山積みになっていく。

 

 「いいぞ!どんどんプレゼントが出来上がっていく!」

 

 「カズマ、私は何をすればいいの?」

 

 「アクアは手先が器用だから、子供用の帽子やセーターを編んでくれ」

 

 「了解!この私特製のプレゼントを貰える子は、きっと凄く素直でいい子に決まってるわ!アクシズ教のマークも入れて、こっそり布教しちゃいましょう」

 

 「それだけはやめろ!」

 

 カズマからゲンコツをくらい、涙目になりながらもアクアはせっせと作業を開始する。

 

 「カズマ、オレっち達もプレゼントを作るニャン!」

 

 「ああ、だけどその前に、もう一人手伝って欲しいやつがいるんだ」

 

 カズマはうんがい鏡のところへ行き、一旦屋敷に帰る。数分後、眠そうに目を擦ってるダクネスを引き連れて戻ってきた。

 

 「おや、ダクネスさんを連れて来たんでウィス?」

 

 「サンタの話をした時、プレゼント配りに興味を持っていたみたいだからな。きっと手伝ってくれると思ったんだ」

 

 「そ、そうだったのか。私はてっきり、とうとう夜這いしに来たのかと…」

 

 「そ、そそんなことするわけねーだろ!」

 

 ドキッと心臓が高鳴り、思わず声が上ずってしまう。ダクネスの部屋に入った時、静かに寝息を立てているのが聞こえた。カズマはそ〜っと近付いて、寝ているダクネスの顔をのぞき込む。普段は変な言動を取るくせに、寝ている時はなんて静かで美しいんだろう。震える手が勝手にダクネスの胸に伸びるが、グッと寸前のところで堪える。  

 危ない、もう少しで変な気を起こすところだった。カズマは(しっかりしろ、相手はあのダクネスだぞ!)と自分に強く言い聞かせる。プレゼント作りの使命を優先して、なんとかダクネスを普通に起こすことが出来た。

 

 「よし、そうとなれば喜んで協力しよう。私に出来ることがあれば何でも言ってくれ」

 

 「ありがとな、助かるぜ」

 

 「…な、何でもとは言ったが、それはもちろんプレゼント作りのことだからな!へ、変な命令は今は駄目だぞ!!」

 

 「今じゃなかったらいいのか?」

 

 「はうっ///!?」

 

 「はいは〜い、そこのお二人さーん。さっさと手伝ってくださウィス〜」

  

 ダクネスも加わり、プレゼント作りは急ピッチで行われていく。

 

 「もう駄目〜、眠い〜」

 

 「寝るなアクア!ほら、ヨキシマムゴッドでも飲んで気合入れろ!」

 

 「な、何よこれ。ちょっと!?無理やり飲ませないでっ…! ゴクッ…ゴクッ…ぷはっ、まずい!もう一杯!!」

 

 てなことがありながらも、プレゼント作りは確実に進んでいく。初めは気が遠くなるような終わりの見えない作業だったが、皆の協力もあって無事に全部のプレゼントを作ることが出来た。

 

 「さ、最後の一個。完成したニャン…」

  

 「やっと終わったでウィス〜」

 

 「もう、ゴールしてもいいわよね…」

 

 「おいおいお前ら!まだプレゼント配りが残ってるぞ!」

 

 プレゼント作りが終わり、既に満身創痍のジバニャン達。プレゼントが出来たらそこで終わりではない。これからそれを子供達に配りに行かなくてはならないのだ。

 

 「カズマ、完成したプレゼントはどうやって運ぶんだ?」

 

 「サンタが空飛ぶソリに乗せて配るんだけど、肝心のソリが見当たらないんだよな」

 

 「え〜!せっかく作ったのに配らなきゃ意味ないじゃない!」

 

 本物の空飛ぶソリは、サンタさんが現在使用中だ。こんな膨大なプレゼントの山を、一つ一つ手で配達してたらその間に春になってしまう。

 思わぬところで途方に暮れるカズマ達。すると、一匹の猫妖怪が飛んできた。

 

 「待たせたなカズマ!」

 

 「その声は…」

 

 頭上から声が聞こえ、カズマはハッとして顔を上げる。そこには赤いマントを羽織り、ヒーローが着けるようなベルトを装着している猫妖怪がいた。

 

 「お前の友達、出てきたぜ」

 

 「フユニャン!?」

 

 浮遊霊の猫妖怪、フユニャン参上。浮遊霊らしくいつもふわふわ浮いているが、性格は地に足がしっかり着いている。イサマシ族のとっても頼りになる友達妖怪。

 

 「久しぶりだな、フユニャン」

 

 「ああ、カズマも元気そうで何よりだ」

 

 「てか、相変わらず冬にしか現れないよな」

 

 「そこは飲み込んでくれ」

 

 何故かフユニャンは冬にしか姿を現さない。別に寒い系妖怪じゃないし、フユニャンのフユは冬ではなく浮遊霊の浮遊だ。色々と事情があるのだろうが、そこは飲み込んでくれということだろう。

 

 「それでカズマ、今はどういう状況だ?」

 

 「プレゼント作りは終わったんだけど、ソリが無くて困ってるんだ。何かいい方法はないかな?」

 

 「う〜む………無いっ!!」

  

 「無いの!?」

 

 「あーた何しに来たんでウィスか!」

 

 「冬だから、とりあえず登場しただけだ。そこは飲み込んでくれ」

 

 普段は頼りになるいいやつなのだが、肝心なところでちょっと抜けてるところがあるフユニャン。

 

 「そうニャ、カズマ。ちょっと耳貸すニャン」

 

 「どうした?」

 

 ジバニャンがカズマの体をよじ登り、耳元で何かを囁く。

 

 「そうか、その手があったか」

 

 「これならプレゼントを配れるニャン!」

 

 「よーし、フユニャン。ちょっと協力してくれ。お前にしか頼めないことなんだ」

 

 「オレにしか? いいぞ、思う存分カズマの力になってやろう!」

 

 小さな手で胸をドンッと強く叩き、フユニャンは快く引き受けてくれた。

 

 「カズマ、それは何だ?」

 

 「空気入れだ。フユニャン、ちょっと口開けて」

 

 「口を?そんな物でいったい何をしようと…」

 

 「いいから!はい、あーん!」

 

 「むぐっ!?」

 

 まだ状況を理解していないフユニャンの口に、空気入れの管を無理矢理突っ込ませた。

 

 「今だジバニャン!」

 

 「ニャーン!」

 

 ジバニャンがポンプを何度も踏みつけ、フユニャンの体に空気を送り込む。送られた空気はフユニャンの体内を巡り、まるで風船のようにドンドン大きく膨らんでいく。

 やがてフユニャンはバカでっかい猫妖怪、デカニャンに変わった。

 

 「…でふ〜、いきなり何するでふ〜」

 

 「よし、これでソリの代わりが出来たぞ!」

 

 「なるほど〜、これに乗ってプレゼントを配るのね」

 

 「確かに、これなら徒歩で移動するより遥かに楽だな」

 

 プレゼントの山をデカニャンの背中に乗せ、いよいよプレゼント配りが開始される。カズマ達もサンタの服装に着替えて、気合十分でデカニャンに乗り込んだ。

 

 「さーて、お待ちかねの…クリスマスプレゼント作戦開始だ!!」

  

 「「「おーーーーーー!!!!」」」

 

 今宵、アクセルの上空には奇妙な物体が浮び上がった。決して誰の目にも映ることのないその巨体から、いくつもの影が街の空を飛び回っている。

 

 「ふぶき姫はあの家、ウィスパーはこの家に届けてくれ」

 

 「任せて!」

 

 「行ってきまウィス〜!」

 

 カズマが地図を片手に、リストに載ってる子供の家に妖怪達を送り込んでいく。

  

 「ダクネスー、次のプレゼントを持ってきてくれー!」

  

 「分かった!」

 

 「アクアー!それは割れ物だから取り扱いには注意しろよー!」

 

 「分かってるわよ!いちいち言われなくても、この私が滑って落とすなんてヘマをやらかすわけ…」

 

 つるっ

 

 「いやあああっ!?」

 

 「ッ! 大丈夫か!?」

 

 「え、ええ。なんとか…」

 

 「よし、プレゼントは無事だな。問題なし」

 

 「いや私はあ!?少しくらい私のことも気遣ってよー!!」

 

 アクアがカズマに文句を言ってる間も、プレゼントは順調に子供達の家に届けられる。

 

 「めぐみん、メリークリスマスニャン」

 

 静かに寝ているめぐみんの枕元に、ジバニャンサンタがそっとプレゼント箱を置いた。

 

 「ゆんゆん、メリークリスマスずら」

 

 コマさんとコマじろうも、寝ているゆんゆんの枕元にプレゼントを置いて静かに立ち去った。

 人知れずプレゼントを届けに行く妖怪達。その様子を、ウィズ魔道具店の窓からバニルが覗いていた。

 

 「何やら妙な気配がすると思ったら、あの小僧共の仕業か。中々面白そうなことをやっているようだ」

 

 「バニルさん、どうしたんですか?」

 

 「何でもない。それより、汝こそさっきから何をやっている?」

 

 「明日注文する商品の書類を作ってるんです。珍しい魔道具をたくさん仕入れますので、明日は忙しくなりますよ!」

 

 「…ちょっと、それを我輩に」

  

 「はい、どうぞ」

 

 「ふむふむ、なるほど」

 

 ビリイィィィッッ!!

 

 「あー!何するんですか〜!?」

 

 「たわけ!このポンコツ店主め、こうも見事にガラクタばかりを注文しよって!店主が店を潰そうとしてどうする!!」

 

 「ひ、酷いっ!?」

  

 ウィズがバニルの光線を食らって黒焦げになったが、それはひとまず置いといて。

 そぼ降る雪がゆらゆらと舞い降り、大きな飛行物体が月を横切る。幻想的な光景がアクセルの夜空を彩り、この世界に初めてのクリスマスを齎したのだった。

  

 「もう、残ってるプレゼントは無いな?」

 

 「ぜ〜んぶ、配り終わったわよ!」

 

 あれだけあったプレゼントの山が、今はもうどこにもない。カズマ達はアクセルの街に帰ってきて、デカニャンの背中から下りる。

 

 「やっと終わった〜。皆、手伝ってくれてありがとなー!デカニャンも、お疲れさん」

 

 「冬にまた会おうでふ〜」

 

 協力してくれた妖怪達も帰って、カズマ達は屋敷に戻る。

 

 「疲れたけど、結構楽しかったわね」

 

 「来年の冬も、是非やりたいな。寒空の下でこき使われるこの感じ…堪らん!」

 

 「ダクネスさんはブラック企業でも普通にやっていけそうですね」

 

 さっきまでの喧騒が収まった今、お祭りが終わった時のような寂しさをカズマは感じる。確かに疲労は溜まっているが、やりきったという達成感がある悪くない疲れだった。

 

 「カズマ、アクア、ダクネス。今日はありがとうニャン。おかげで助かったニャン」

    

 「いいよ、俺達も楽しかったし」

 

 「手伝ってくれた3人に、オレっちからクリスマスプレゼントをあげるニャン」

 

 「プレゼント?」

 

 実はカズマ達には内緒で、ジバニャンは3人のプレゼントも用意していた。

 

 「お酒好きのアクアには、これをあげるニャン」

 

 「こ、これ!冬限定の高級シュワシュワじゃない!やったー!ありがとうジバニャン!」

 

 前から飲みたかったシュワシュワを遂に手に入れて、アクアは大喜びではしゃいでいる。

 

 「ダクネスには、オレっちのひゃくれつ肉球を特別にくらわせてあげるニャン」

 

 「い、いいのか!?じ、実は前からその威力を是非とも味わってみたいと思ってたんだ。まさか、その夢が叶う日が来るとは!」

 

 「一応聞くけど、手加減しなくていいニャン?」

 

 「手加減なんてもったいない!全力で来て欲しい!」

 

 ダクネスは全力でと言うが、ひゃくれつ肉球をくらった経験があるカズマは心配になった。

 

 「おいおい大丈夫か?ジバニャンのひゃくれつ肉球、結構強烈だぞ」

 

 「いいじゃないか!私はクルセイダーだ、仲間のクリスマスプレゼントを一身に受け止める準備は出来ている!」

 

 これ以上の説得は無駄と感じて、カズマはダクネスのやりたいようにやらせることに決めた。 

  

 「さあジバニャン、クリスマスプレゼントをありがたく頂戴しよう!」

 

 「分かったニャン!行くニャンよ〜、ひゃくれつ肉球〜!!」

 

 「んにゃああああっ!?柔らかい肉球で攻撃してるとは思えない凄まじい威力っ!実に…イイッ!最高だああああ!!」

 

 ひゃくれつ肉球をまともに食らい、ダクネスは10メートルほどふっ飛ばされる。その表情はまるで天国に昇るかのように、ジバニャンのクリスマスプレゼントを満喫していた。

  

 「そして、カズマにはこれニャン」

 

 「おお…!マフラーか、今の季節にぴったりだな。ありがとうジバニャン、大切にするよ」

 

 赤色のマフラーを首に巻いて、カズマはその温かさを身に沁みている。まさかこの年になっても、クリスマスプレゼントを貰える日が来るとは。

 

 「ねぇねぇ、明日は皆でクリスマスパーティーやらない? チキンやケーキを用意して、パーっと盛り上がりたいわ!」

 

 「そうだな。このままクリスマスを終えるのも寂しいし、こうなったらとことんクリスマスを満喫してやるか!」

 

 「私も、クリスマスパーティーは初めてだから楽しみだ」

 

 アクアの提案に、カズマとダクネスも喜んで受け入れる。そうと決まったら、今日は早く休んで明日に備えよう。

 

 「カズマ。オレっちはもう一つだけプレゼントを配りに行くところがあるニャンから、カズマ達は先に帰っててニャン」

 

 「行くところ?他にプレゼントを配るとこなんて…」

 

 「カズマくん。ほら、あそこでウィスよ」

 

 「…あ、そうか。そうだったな。よし、行ってこいジバニャン」

 

 「ニャン!」

 

 ジバニャンサンタはプレゼントが入った袋を背負って、鈴の音を鳴らしながら走って行く。

 

 「ねえカズマ、ジバニャンは最後に誰のとこに行ったの?」

 

 「…ジバニャンにとって、決して忘れない大切な人のところだ」

 

 ジバニャンがまだカズマと出会う前、まだアカマルと呼ばれていた時代。当時女子高生だった女の子に飼われ、楽しい毎日を過ごしていた。

 しかしある日、トラックに轢かれそうになったその女の子を守ってジバニャンは死んでしまう。

 

 「車に轢かれたぐらいで死ぬなんて、ダサ…」

 

 死に際に聞こえたその一言。何かの間違いであって欲しいと願うと同時に、そんな酷いことを言われたショックで失望もした。

 でも、実際はそうじゃなかった。後に分かったことだが、あの言葉は決してジバニャンを蔑んだ言葉ではなく…

 自分を残して逝ってしまうなんて酷い。そういう悲しみの意味が込められていた言葉だった。誤解が解けたジバニャンは今でもその女の子、エミちゃんのことを大切に思っている。

 

 「…エミちゃん、メリークリスマスニャン」

 

 大人になり、エミちゃんはデザイナーになるという夢を叶えた。立派に成長したその姿に、ジバニャンは目に涙を滲ませる。枕元にプレゼントの箱をそっと置いて、その場を静かに去っていった。

 

 「…アカマル、大好きだよ」

 

 夢の中で、アカマルを自転車のカゴに乗せて下り坂を疾走する。たとえ傍にいなくとも、エミちゃんの中でアカマルはずっと生き続けていた。 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 

 

 

 「あ〜、昨日は疲れたからよく寝れたなあ」

 

 「カズマ、おはようございます」

 

 「おはようめぐみん。ん?そのマグカップ、新しいやつか?」

 

 めぐみんがコタツに入り、見慣れないマグカップを使用している。黒色と赤色の猫の模様が描かれた、可愛らしいマグカップだ。

 

 「朝起きたら、枕元に置いてあったのです。カズマが用意してくれた物じゃないのですか?」

 

 「いや、俺じゃないぞ」

 

 「そうですか。ではアクアか、ダクネスでしょうか」

 

 「…きっと、サンタさんからのプレゼントだろうな」

 

 コタツの上で丸くなってるジバニャンを、カズマは優しく撫でる。

 

 「めぐみん、今日はクリスマスパーティーをやるぞ。美味いご馳走を沢山用意するから手伝ってくれ」

 

 「ほ、ほんとですか!?それでしたら、買い出しでもなんでも…」

 

 「めーぐーみーーん!!いるんでしょー!出てきなさーい!!」

 

 外からゆんゆんの声が聞こえ、めぐみんは仕方なく玄関のドアを開けた。

 

 「なんですか?こんな朝っぱらから押しかけて来るなんて、流石に非常識ですよ」

 

 「うぐっ!?め、めぐみんに非常識呼ばわりされるなんて…」

 

 「おや、その手袋はどうしたのです?新しく買ったのですか?」

 

 ゆんゆんの手には、温かそうな手袋が付けられている。左右それぞれに、白と黄色の犬の模様が描かれていた。

 

 「いやこれは…なんでか分からないけど、朝起きたら枕元に置いてあったの」

 

 ゆんゆんの話によると、この日はアクセルの子供達が同じような現象に起きてるという。目覚めるとプレゼントの箱が置いてあり、差出人不明という不思議な出来事。

 

 「なんとなくだけど、怪しいって感じはないの。可愛くて、温かいから使ってるんだけど、いったい誰からの贈り物なんだろう…」

 

 「それは恐らく、サンタさんの仕業ですよ」

 

 「サンタ…さん?」

  

 「クリスマスの夜に訪れる、プレゼントを配る素敵なおじさんです」

 

 「クリスマス…?」

 

 聞き慣れない言葉の連続に、ゆんゆんは首を傾げる。

 

 「それより、ゆんゆんもクリスマスパーティーに参加しますか?どうせ暇なんでしょう?ぼっちですし」

 

 「し、失礼なこと言わないでよ!で、でもそうね。めぐみんがどうしても私に参加してほしいなら、考えてあげても…」

 

 「嫌ならいいです。それでは」

 

 「待って待って!冗談、冗談だから〜!クリスマスパーティーに私もまぜて〜!!」

 

 めぐみんの腰辺りにしがみ付き、ゆんゆんは必死にすがりつく。めぐみんはやれやれといった感じで、ゆんゆんを連れて一緒に買い出しに出かけた。

 そして夜。飾り付けが終わり、カズマ達の屋敷が豪華に彩られる。

 

 「あの、カズマさん。私達もお邪魔してよかったのですか?」

 

 「もちろん、大勢いた方が盛り上がるからな。ウィズも遠慮せず、パーティーを楽しんでくれ」

 

 「フハハハ!お招きいただき感謝する!今宵は存分に楽しもうではないか!」

 

 「おいバニル、お前悪魔だろ。悪魔がクリスマスパーティーに参加してもいいのか?」

 

 「細かいことは気にするな。我輩は何事も楽しむ主義なのだ」

 

 ウィズとバニル、そしてプレゼント配りに協力してくれた妖怪達もこの場に集う。カズマ達だけだと広いこの屋敷も、今は少し狭く感じるくらい賑やかだ。

 

 「よーし、みんな!グラスは持ったな!!」

 

 「カズマくん、乾杯の音頭をお願いしまウィス!!」

 

 「それじゃあ…かんぱーーい!!」

 

 「「「かんぱーーーい!!!」」」

 

 グラスを合わせる心地良い音が、あちこちから鳴り響く。この聖なる夜、カズマの屋敷では人も女神も悪魔も、そして妖怪も寝落ちするまで騒ぎ続けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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