妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら? 作:カジ
「おはようー、ん?その子誰?」
「よくぞ聞いてくれました!我が名はめぐ」
「以下略だ」
「ちょっとお!」
そのくだりは前回やったので省略するカズマ。ようやく起きてきたアクアも加えて、めぐみんを採用するかどうか考える。
「アークウィザードでしょ?いいじゃない、入れてあげれば。強いし、きっと役に立つわよ」
「んん、まあ…そうなんだけど」
「ふ。我の強大な力を、汝も欲するか?」
何時? めぐみんの言動に、アクアもちょっと不審に思えてきた。
「我と共に行きたいのなら、深淵を覗く覚悟をせよ。深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」
「どういう意味ニャン?」
「あー、これはつまりあれですよ。女風呂を覗く時は、こっちも覗かれる覚悟をしなさいって意味でウィス」
「いや、多分違うと思うぞ」
あー、この感じアレだ。全国の中学2年生に続出するアレだ。ダークフレイムマスターとか、黒いノートに呪文を書いちゃったりして、数年後に死ぬほど恥ずかしい思いをしたりするんだ。
「冷やかしならお帰り下さい」
「違うわい!私は誇り高き紅魔族です!必殺の爆裂魔法は、どんな山や岩でも砕くんですよ!」
紅魔族。生まれつき知能や魔力が高く、紅い瞳が特徴である。魔法のエキスパートが多い、変な名前も多い。
「カズマくん、どうするんでウィス?この子をパーティーに入れるんですか?」
「んー…変わり者だけど、アークウィザードには違いないしなあ」
「変わり者ならもうアクアがいるニャン!」
「あはは、確かに」
「どういう意味よ!」
ジバニャンやウィスパーと話しているカズマとアクアを見て、めぐみんは不思議そうに首をかしげる。
「あの、さっきから気になってたんですが、誰と喋ってるんですか?」
当然ながら、めぐみんにはウィスパーとジバニャンが見えていない。めぐみんの目には、二人が誰もいない空間に向かって話しているように見えて不気味だった。
「ああ、そっか。普通の人には妖怪は見えないんだっけ」
「妖怪?」
カズマはウォッチの所有者だから見えて当たり前。アクアも一応女神様なので、妖怪を見ることが出来る。
さて、どうしようか。めぐみんに妖怪の存在を教えれば、いちいち誤魔化したりの必要がないので、今後のやり取りが楽になるだろう。
めぐみんは今、俺達が何かヤバい薬でもやっているんじゃないかという疑念の目を向けている。
「ウィスパー、教えてもいい?」
「別にいいんじゃないですか?見える人には見えることもありますし」
「オレっちも別にいいニャン」
二人が構わないと言うので、めぐみんに妖怪の存在を教えることに決めるカズマ。よく考えたら、この世界にもでっかい蛙とかエルフとか存在する。妖怪の存在を教えたところで、大して違いはないのかなと思った。
「ちょっと、このウォッチに触れてみてくれ」
「これですか?一体何があるんです?」
「まあ、いいから」
よく分からなかったが、とりあえずカズマのウォッチをちょんっと触る。
「…?何も起きな」
「ウィッス!どうも〜」
「こんにちはニャン!」
「!!」
妖怪ウォッチに一度でも触れた者は、妖怪の姿を見ることが出来る。急に目の前に現れたウィスパーとジバニャン。初めて妖怪を目にし、めぐみんは目を見開いた。
「驚いた?これが妖怪。変なやつらだけど、取って食ったりはしないから」
「カズマくん!変なやつらとはなんでウィス!」
「そうニャン!オレっちは変じゃないニャン!変なのはウィスパーニャン!」
「んだとジバ野郎!」
赤い猫っぽいのと、ふわふわ浮いてる謎の白い物体が喧嘩している。何とも奇妙な光景を前に、めぐみんはあ然としていた。
「こら、喧嘩はやめろ二人とも。まあこんなやつらだけど、仲良くしてやって…ん?」
何やらめぐみんが小刻みに震えている。どうしたんだろう?いきなり妖怪を見てビックリしたのかな?
「心配しなくても、害はないから安心して…」
「…か、かわいい」
めぐみんの目がキラキラしている。妖怪というモンスターとは違った未知の存在。しかし、その愛くるしいフォルム。めぐみんの好みにピッタリだった。
それに少しでも触れてみたくて、めぐみんは歩み寄る。
「あの…」
「あ〜ら、気付いちゃいました〜?このあたくしの可愛さに気付いちゃいました〜?モテる敏腕妖怪執事は辛いでウィスね〜。初めましてお嬢さん、あたしはカズマくん専属の妖怪執事、ウィスパーでウィ」
「邪魔です、どいてください」
「ああん!お約束ううう!!」
薔薇を咥えて八頭身にスーツを着込んだウィスパーだったが、案の定どかされた。めぐみんはジバニャンと目線を合わせるように、少ししゃがんで中腰になる。
「私はめぐみん、あなたのお名前は?」
「オレっち、地縛霊猫妖怪のジバニャンニャン!」
「ジバニャンですか、かわいい名前ですねえ。これからよろしくお願いします」
「ニャン!」
嬉しそうにジバニャンと握手するめぐみん。早くも打ち解けたようで、カズマも安心した。
「けっ!つまんねー、ああつまんねー」
「まあまあ」
ジバニャンばっかりで自分は相手にされず、鼻をほじって不貞腐れるウィスパー。それはともかく、カズマはめぐみんをパーティーに入れることに決める。上級職のアークウィザードがいれば、もう蛙なんて怖くない。
そして再び、ジャイアントトードの討伐に向かった。
「それにしても、めぐみんなんて変わった名前でウィスねえ」
「あなたに変わってるなんて言われたくありません。私からすれば、あなた達の方が変わった名前だと思います」
例の蛙が出る草原まで、ゆったり歩きながら進む。めぐみんはジバニャンを相当に気に入ったみたいで、前に抱きかかえながら歩いていた。
「ちなみにご両親のお名前は?」
「母はゆいゆい!父はひょいざぶろーです!」
「皆ー、もうすぐで草原に着くぞー。準備しろよー」
「お、おい!何か言いたいことがあるなら聞こうじゃないか!」
紅魔族は良い魔法使いが多いらしい。だからこの子もちょっと残念なだけで、根は良い子なのだろう。めぐみんをスルーしつつ、カズマ達は草原に到着した。
「あれですか、ジャイアントトード」
眼下に広がる草原、そこを我が物顔で飛び跳ねている二匹の蛙。それぞれ戦闘準備に入り、この場が緊張感に包まれる。
「やっこさん、こちらに気付いたようでウィス」
「よし、後は作戦通りだ!」
めぐみんをその場に残し、残りのメンバーは近い方の蛙の足止めにかかる。爆裂魔法は威力が強大ゆえに、それを発動するまでに時間がかかる。
遠い方をまずめぐみんにやって貰って、その後こっちを任せるという作戦だ。
「積年の恨み!今日こそ晴らしてやるー!」
「あ、待てアクア!」
「一人で出過ぎニャン!」
「戻って来いでウィスー!」
カズマ達の制止も聞かず、ドドドッ!と蛙目掛けて一直線のアクア。
「震えて眠れ!ゴッドレクイエム!」
杖にありったけの力を込め、蛙の腹に真っ直ぐ突き刺す。
「ゴッドレクイエムとは!女神の愛と悲しみと、ええと…愛しさと切なさと…心強さと、あと…悲しみと」
「めっちゃ考えてる!」
「攻撃直前に喋り過ぎニャン!」
「悲しみ2回言いましたね」
「とにかく!相手は死ぬ!」
蛙に渾身の一撃をお見舞いするアクア。その後の展開は、お決まりのように食べられたのでした。
「さすが女神、身を挺しての足止めとは。恐れ入ったぜ」
「カズマくん!そんなことよりあれ見てください!」
ウィスパーの指差す方を見ると、めぐみんから大量の魔力が溢れ出ているのが分かる。黒い渦を巻いたその魔法は、蛙もろとも辺りの地形を変えるほどの威力だった。
「凄え、これが魔法の威力か…」
「カズマ!あっちにも蛙がいるニャン!」
「なにっ!?」
めぐみんの近くに、地面からもう一匹蛙が現れる。恐らくさっきの爆音で目覚めたのだろう。
「めぐみん!一旦離れ…」
近くに蛙が出たというのに、めぐみんは逃げるどころかうつ伏せに倒れている。様子がおかしいと思い、カズマ達はめぐみんに駆け寄る。
「ど、どうした?大丈夫か?」
「我が爆裂魔法は、威力も強い分…使った後の反動も大きいんです。具体的には、一日一発が限界です。というわけで、しばらくは動けません…」
「はあああああ!?」
「ちょっ、動けないってあーた!新しい蛙がこっちに近付いて来るんでウィスよ!」
「新しいのが出るなんて聞いてません。さあ早く、私をおぶって逃げてください。食われますよ」
蛙の長い舌が、めぐみんに巻き付く。
「私がね」
「言ってる場合かああああ!」
2匹討伐出来たとはいえ、アクアとめぐみんの足が蛙の口から出ている。まずは二人を助けなきゃ、そう思った時、また別の蛙が地面から顔を出した。
「うおっ!?また出た!」
「やばウィですよカズマくん!」
「大ピンチニャン!?」
ジャイアントトード3匹に囲まれるカズマ達。このままでは全滅してしまう。カズマは、友達妖怪の力を借りることを決めた。
「ウィスパー!メダル!」
「ウィスー!」
ウィスパーからメダルを受け取り、ウォッチにセットする。カズマが呼び出した友達、それは…
「ブシニャンでござる!」
甲冑を着込んだ猫妖怪、ブシニャン。イサマシ族のレジェンド妖怪。ジバニャンのご先祖様だ。
「ブシニャン!ジャイアントトードを倒してくれ!」
「承知した!」
ブシニャンは高く飛び、刀に手をかける。蛙達の長い舌が、一斉にブシニャンを襲う。
「でっかい蛙真っ二つ斬り!!」
長い舌が届くより速く、ブシニャンの必殺技が決まった。そのままの技名だが、その威力は抜群の切れ味を誇る。
「よっしゃあ!ジャイアントトード5匹討伐成功!」
ブシニャンがまとめて3匹斬ったおかげで、何とかクエストクリアすることが出来た。アクアとめぐみんも粘液塗れではあるが、一応無事みたいで良かった。
「ありがとうブシニャン、助かったよ」
「礼には及ばんでござる。ほほう、ここが噂の異世界でござるな」
妖怪達の間で異世界は話題になってるようだ。ブシニャンは初めてこっちに来たみたいで、辺りをキョロキョロ見回している。
「また困ったことがあれば呼ぶでござる。
ブシニャンはそう言って、どこかに歩いて行った。
「いや〜、十二時は…あ、間違えた。一時はどうなるかと思いましたよねカズマくん」
「ああ、ブシニャンのおかげで助かったぜ。あとは…」
カズマ達の目の前に転がっている、二人の粘液塗れの女の子二人。こいつらを連れて帰らなきゃと思うと、カズマは溜息をついた。
「この困ったさん達を連れて、さっさと帰りましょう」
「…そうだな」
動けるアクアには自分で歩いて貰って、めぐみんは仕方ないからカズマがおぶってあげることにした。粘液の感触が背中に伝わり、凄く気持ち悪い。
「蛙の中って、結構温かいんですね」
「いらん情報言うな」
「うっ、うぐっうううぅぅ!…うえっ、ええぇぇ。ぐすっ、おえっ」
粘液の臭さと、号泣し過ぎてえずいてるアクア。
「ちょっとー、アクアさん。頼みますから戻さないでくださウィスよ。ただでさえ粘液で臭うのに」
「なによ!ちょっとは心配しなさいよ!このエセ妖怪執事!」
「誰がエセ妖怪執事ですか!あたしは立派な妖怪…うわっ!ちょっと!あたしで粘液拭くのやめてくださウィス!」
ウィスパーとアクアが小競り合いを始めているが、周りの人達はアクアが一人で暴れているようにしか見えない。
同類だと思われたくないので、カズマは知らん振りをした。
「爆裂魔法はよっぽどの時以外禁止な。これからは別の魔法で戦ってくれ」
「あ、無理です。爆裂魔法以外使えないんで」
その一言に、カズマはピタッと足を止める。
「え、マジ…?」
「マジです」
とんでもない事実が発覚した。爆裂魔法は確かに威力は強力だが、発動まで時間がかかるだの、その威力ゆえにダンジョンクエストの時は使えないなど、言ってしまえば応用が悪い魔法だ。
そんでもって、それしか使えないだと?
「確かに、他の魔法も覚えれば有利に戦えるでしょう。しかし、私は爆裂魔法を愛しているのです!爆裂魔法以外の魔法など、有りえません!」
俺の背中でなんか力説してる。しかもアクアがめぐみんに同調し始めやがった。まずい、この流れは非常にまずい。
「そうかー。とりあえず、今日のところはお疲れさん。報酬は後で渡すから、その後はご勝手にっ…!」
見放されることを察して、めぐみんがカズマの首を後ろから絞めにかかる。
「あなたの魂胆は分かってますよ。どうせこの後、私を追い出すつもりでしょう?そうはいきません。私も色んなパーティーを追い出されて後がないんです。せっかく見つけた居場所、簡単に手放しませんよ」
ぐっ!やはりそうだったか。冗談じゃない。こちとら既に問題児を一人抱えているのに、これ以上は面倒見きれん。
「カズマー、パーティーに入れてやったらどうニャン?」
「おお、優しいですねジバニャンは。ほらほら、あなたのかわいいお友達がこう言ってますよ。ここはもう、素直に諦めて、私と長期契約をですねえ…!」
「じ、ジバニャン…!余計なことを言うんじゃない。お前には俺の苦労が分からないから、そんなことが言えるんだ…!」
カズマも抵抗して、めぐみんの手から逃れようと必死だ。しかし、魔法使いで女の子の割に中々力が強い。
「ねー、あの男なにー?」
「ぬるぬるの女の子二人を侍らせているわよ」
「引くわー」
「!!?」
いつの間にか周りの女の子達に、白い目で見られている。めぐみんはこれを利用しようと、悪い笑みを浮かべた。
「どんなプレイも構いませんからー!蛙を使ったプレイも大丈夫ですからー!私を捨てないでくださーい!」
「ばっ!や、やめろ!そんなこと言ったら…」
めぐみんが大声でとんでもないことを叫び、周りの女の子達はドン引きしている。
「やだー。あの男、あんな小さな子を捨てようとしてるわよ」
「最っ低のクズ野郎ね」
「本当、ありえないざますニャン」
「超〜最悪〜。あんな男がご主人たまだったなんて、マジム〜リ〜なんですけど〜」
「あいつら〜!」
ジバニャンとウィスパーも女装して、周りの女の子達と一緒にカズマを攻める。もう逃げ場がなくなったカズマは、仕方なくめぐみんをパーティーに正式加入させるのだった。
良い歌ですよねえ