妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

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4人目

 女性陣が風呂で粘液を洗い落としてる間、カズマはギルドの受付でクエストの報酬を受け取る。

 

 「おお、いっぱい貰えましたねえ!」

 

 「お金持ちニャン!」

 

 ウィスパーとジバニャンは呑気に喜んでいるが、皆で山分けすれば手に残る分は当然少なくなる。命懸けで働いたのだから、もっと貰えないと割に合わない。

 

 「なあウィスパー、手っ取り早く金になりそうなクエストなんかないか?出来るだけ簡単なやつで」

 

 「そう言われましてもねえ、ペーペーの初心者が出来そうなやつなんて中々ないでウィスよ」

  

 ジャイアントトードを倒していくらかレベルが上がったものの、まだまだ駆け出しの冒険者。高難度のクエストをクリア出来るレベルには程遠い。

  

 「だよな〜。やっぱり地道にやっていくしかないか」

 

 「まあ、新しい助っ人が入ってくるまで待ちましょう」

 

 「カズマ、次はどんな人が入って欲しいニャン?」

 

 めぐみんが入ったから、とりあえずアタッカーは確保出来た。後は敵の攻撃を受け止めてくれるタンクがいれば、俺達が無茶して敵の囮になる必要もなくなる。

 しかし、タンクは敵の攻撃をその身で受ける役割。つまり敵にひたすらボコられるポジションだ。数ある職業の中から、そんな罰ゲームみたいな役を選ぶ物好きなんて、そう簡単に現れるはずが…

 

 「仲間募集の張り紙を見たんだが、まだ受け付けているだろうか?」 

 

 マジ?このタイミングで声をかけるということは、つまりはそういうことだよね?

 突如後ろから声をかけられ、その声色で綺麗な女性だと察した。心臓がドキドキと高鳴り、鼓動が早くなっていく。

 

 (お、落ち着け俺。ここで変にきょどったら、童貞だと思われるぞ)

 

 「いや、実際その通りじゃないでウィスか」

 

 「は、ハイ!まだ募集してますよ…」

 

 「声裏返ってるニャン」

 

 緊張感と期待を胸に、カズマはゆっくり振り向く。するとそこには、綺麗な金髪を束ねた若い女性が…

 

 「…しょ、しょうか。しょれはよかった」

 

 「あれええええ?!」

 

 てっきり若い女性かと思ったが、振り返るとそこにいたのは、金髪で鎧を着たお年寄りの女性だった。

 

 「いやいやおかしいおかしい!さっきの声と全然違うし!」

 

 あの声は紛れもなく若い女性のものだった。それがまるで、たった今急に年をとったみたいに。

 

 「ウィスパー、これ絶対妖怪の仕業だろ」

 

 「いやいや、人間とは日に日に年老いていく生き物。ある日急に60才くらい老けるなんてよくある…」

 

 「あってたまるか!きっと妖怪が…ほらいた!」

 

 「ウィシュー!?」

 

 妖怪ウォッチで光を当て、隠れている妖怪の姿を発見する。金髪の女性の横でボロボロの杖を持ち、薄汚いローブを着た老婆の妖怪がいた。

 

 「お前はしわ」

 

 「はーいちょっと通りまーす。こっからはあたしのターンでウィス!!もちろん知ってますよ〜、お婆ちゃん系妖怪なので…バーババ!じゃない、ババロア大好き!違う。お前のようなババアがいるか、でもなく…」

 

 「早くしろよウィスパー」

 

 「お前待ちニャン」

 

 毎回毎回知ってると言いながら、妖怪パッドでカンニングするウィスパー。カズマとジバニャンも呆れながら待っている。

 

 「ぜぇ…ぜぇ…あ、ありました!あれは妖怪しわくちゃん!あらゆるものを皺くちゃにし、時には人の若さまでも吸い取っちゃう妖怪でウィス!」

 

 しわくちゃんに取り憑かれ、この金髪の女性は若さを吸い取られてしまったのだろう。着ている鎧が重いせいか、辛そうに腰を曲げている。

 

 「しわくちゃん、その人から離れてくれるか?せっかく仲間になりに来てくれたのに、これじゃあ一緒に戦えないだろ」

 

 「綺麗なお姉さんがお婆ちゃんにされて、残念なんですよねカズマくん」

 

 「下心見え見えニャン」

 

 「う、うるせえ」

 

 確かに二人の言う通り美人さんを期待していたが、いきなりお年寄りにされたら普通に迷惑だ。ここは妖怪ウォッチを持っている自分が、何とかしてあげるしかない。

 

 「悪いけど、そうはいかないねえ。もっともっと若さを集めて、若返らなきゃいけないからねえ」

 

 しわくちゃんは人から若さを吸い取って、昔の頃の若くて綺麗な姿を取り戻すことが目的。その為には、もっと多くの若さを集める必要がある。

 しわくちゃんはその場から逃げ出し、カズマ達は後を追う。しわくちゃんは逃げながらも、ギルド内の人々から若さを吸い取っていく。

 

 「あれ〜?何だか文字が読みにくく…」

 

 「あいたた…腰が」

 

 受け付けのお姉さん達も、しわくちゃんに若さを吸い取られてお婆ちゃんにされる。

 

 「ああああああ!!受付のお姉さん方がああああ!」

 

 若くて綺麗なお姉さんがしわしわのお婆ちゃんになって、カズマが絶叫する。

 

 「ちっくしょう!好き放題やりがって!」

 

 「カズマくん!モヒカンのおっちゃんも、しわっしわのお爺ちゃんに!」

 

 「そうか」

 

 「男には塩対応ニャンね…」

 

 もうこれ以上しわくちゃんの好きにはさせない。しわくちゃんがある場所に逃げ込み、カズマ達も突入する。

 

 「しわくちゃん!そこまで…」

  

 「きゃああああああ!」

 

 「な、なんで入って来るんですか!?」

 

 しわくちゃんが逃げ込んだのは、何と女湯。カズマは気付かずに女湯に飛び込み、アクアやめぐみんと鉢合わせしてしまった。

 

 「こ、この変態!いくら私が美しいからって、女湯に堂々と入るなんて何考えてんのよ!」

 

 「は、早く出てってください!」

 

 二人は急いでタオルを体に巻いて、裸を見られないように隠す。そして入ってきた変質者(カズマ)を追い出すため、桶や石鹸を投げつける。

 

 「ま、待て!ぶへっ!勝手に入ったことは謝…痛っ!でもここに妖怪が…ひでぶっ!」

 

 「アクアさん!めぐみんさん!二人とも餅ついて…あいや落ち着いてゲヴォッ!」

 

 話しを中々聞いてもらえず、ボコボコにされるカズマとウィスパー。ジバニャンが間に入って状況説明して、何とか分かって貰うことが出来た。

 

 「どんな妖怪なの?」

 

 「人から若さを吸い取って、お年寄りにする妖怪だ。アクア、もしやられたら、その胸が萎んでお婆ちゃんになるぞ」

 

 「ええ?!」

 

 「めぐみんも……悪い、何でもない」

 

 「カズマ、後で話しがあります」

 

 暗に子供体型を指摘され、めぐみんのこめかみにピキッと線が走る。

 警戒しながら辺りを見回してみるが、しわくちゃんの姿がない。恐らくどこかに隠れて、隙きを見て襲うつもりだろう。

 

 「とにかく、アクアとめぐみんは出た方がいい。ここは俺達に任せ…」

 

 その時、しわくちゃんがお湯の中から勢い良く飛び出した!

 

 「シュビドゥバ、シュワシュワ!!」

 

 「ぐわああああああ!!」

 

 「カズマ!?」

 

 「大丈夫ですか!?」

 

 しわくちゃんの杖から発する、しわくちゃビームをくらってしまったカズマ。アクアとめぐみんも、自分達の身代わりになったカズマを心配して駆け寄った。

 

 「…あー、何だって〜?」

 

 「カズマーーー!!」

 

 「か、カズマが…カズマお爺ちゃんになってしまいました!」

 

 若さを吸い取られ、一瞬にして80代くらいまで老けたカズマ。顔がしわしわになり、杖を付いて腰を曲げている。

 

 「くっ!しわくちゃん、なんて恐ろしい妖怪なのかしら…!」 

 

 「ひ〜っひっひっ。お前達からも、若さを吸い取ってやるぞい〜」

 

 しわくちゃんがビームをアクアに向けて放つ。しかしアクアは、近くにいたウィスパーを咄嗟に捕まえた。

 

 「ゴッドガーディアン!」

 

 「ぎょえええええええ!?」

 

 アクアに身代わりにされ、ウィスパーも皺だらけのお年寄りになる。

 

 「…あ、アクアさん。あたしを盾にしないでくれます〜?」

 

 「何言ってるの、女神を守れたことを光栄に思いなさい」

 

 基本的に自分第一で行動するアクア。たとえ誰かを犠牲にしてでも美を保とうとするその性根に、カズマお爺ちゃんは呆れていた。

 

 「ちっ、それなら次はこっちの小娘じゃ」

 

 「めぐみんはオレっちが守るニャン!」

 

 「ジバニャン…!」

 

 めぐみんを守るため、ジバニャンが堂々と前に出てくる。小さな背中ではあるが、めぐみんはとても頼もしく思えた。

 

 「かかって来なさい、若いの」

  

 「臨むところニャン、古いの」

 

 ジバニャンが顔の濃いハードボイルド風に決める。この風呂場が静けさに包まれ、二人の視線が熱い火花を散らす。

 そして、二人の気が重なった瞬間、ジバニャンが先に飛び出した。

 

 「百烈肉球ー!」

 

 百烈肉球はジバニャンの必殺技。拳を高速で突き出し、相手をノックアウトさせるのだ。

 

 「シュビドゥバ、シュワシュワ!」

 

 ジバニャンの百烈肉球に、しわくちゃんも杖からビームを出して対抗する。二人の攻撃が重なり合う直前、それは起こった。

  

 「ニャニャアッ!?」

 

 まず一つ。足元の石鹸に気付かず、ジバニャンは足をつるっと滑らせる。

 

 「なんと!?」

 

 二つ。それによって偶然にも、しわくちゃんの攻撃を掻い潜る。

 

 「うわっ!?」

  

 「え?ちょ、ちょっと…いやああああああああ!!」

 

 三つ。流れビームをめぐみんはギリギリで避け、運悪くその線上にいたアクアに被弾!

 

 「ニャアアアアン!!」

 

 「ぐわああっ!」

 

 そして四つ。石鹸の滑りの勢いを利用した滑走で、ジバニャンはしわくちゃんに体当たりをかます。その衝撃で杖を手放してしまい、それをキャッチしためぐみんがへし折った。

 

 「う…お、おお!元に戻った!」

 

 「カズマくん、復っ活!そしてあたくしも復っ活!」

 

 「うわああああああん!良かったよおおおお!さっきまでしわしわのお婆ちゃんに…胸が、胸がああああああ!!」

 

 杖を破壊したことで、奪われていた若さが本人達に戻ってきた。特にアクアは戻れたことが嬉しいようで、心の底から号泣している。

 

 「ああ、せっかく集めたのに…」

 

 「さあて、この私をあんな目に合わせた罪をどうやって償わせようかしら〜?」

 

 「ひ〜!命だけはお助けを〜」

 

 「まあ、待てアクア」

 

 指の関節をバキバキ鳴らして、しわくちゃんを浄化しようとするアクア。しかしカズマは、しわくちゃんをどうこうするつもりはなかった。

 一時的に老人になったことで、年を取ることの大変さが分かった。体の節々が痛くなり、声も聞き取りづらい。しわくちゃんは若さを追い求めていただけで、今回はそれがちょっと暴走しただけだと。結果的に誰も大事にならなかったので、今回は大目に見てやろうと言ったのだ。

 

 「ちょ、ちょっと待ってよ!それじゃあ私の気が済まないのよ!」

 

 「お前の気なんか知るか。あんまり駄々をこねると、そのタオルをひん剥いて、風呂場から外に追い出すぞ」

 

 その言葉を、風呂場の出入り口付近で誰かがこっそり聞いている。その情け容赦ないセリフに体をゾクゾク震わせ、頬を赤く染めて息遣いを荒くしていた。

 

 「カズマくん。そもそもここは女湯なので、むしろ出ていくのはあたし達の方では?」

 

 「そうよ、早く出てってよ変態引きニート」

 

 アクアには後でビームをくらったことをイジってやるとして、他の人が来る前にカズマ達は女湯から退散する。

 風呂場を出たところで、しわくちゃんに花子さんを紹介した。花子さんは妖怪界では有名なプロデューサー。これまで、何人もの妖怪達をプロデュースしてきた実績を持つ。

 花子さんが開発した美容クリームのおかげで、しわくちゃんの見た目が若返り、老いらんという花魁風の綺麗な妖怪になった。

 

 「おー、凄く綺麗になったじゃん」

 

 「見違えたニャン」

 

 「もはや別人でウィスね」

 

 しわくちゃん、もとい老いらんはカズマ達に感謝し、嬉しそうにこの場を後にしたのであった。

 

 「いや〜、大変な騒ぎでしたね」

  

 「まあ、皆元に戻ったみたいで良かったよ」

 

 受付のお姉さん達や、モヒカンのおっちゃんも元の姿に戻ってる。何が起きたかよく分かっていないみたいだが、これでしわくちゃん騒動は幕を閉じたというわけだ。

 

 「あー、色々あって疲れたな。今日はもう寝るか」

 

 「その前に、少しよろしいか?」

 

 「はい?あ…」

 

 カズマに声をかけたのは、メンバー募集に来た金髪の女性だった。今は元の若い姿に戻っており、思ってた通りの美人さんだった。

 

 「あの時はすまない。何故か急に体の調子が悪くなってな」

 

 (おおいウィスパー!やっぱり綺麗な人だったぞ!)

 

 (良かったですねカズマくん)

 

 思わずテンションが上がるカズマ。あの二人と違ってまともそうだし、こんな綺麗な人なら大歓迎だ。アクア達と話し合うまでもなく、即決でメンバーに入って貰おう。

 

 「私はダクネス、クルセイダーだ。是非前線に放り出して、ひたすらこき使ってくれ」

 

 「はい!……え?今なんと?」

 

 おっかし〜な〜?聞き間違いかな〜? 後半部分に変なセリフが出た気がするが、老人になったせいでまだ耳が遠いようだ。

 

 「ああ、すまない。間違えた」

 

 「で、ですよね〜!びっくりしましたよ〜!」

 

 「謎の液体でぬるぬるになるまで酷使してくれ」

 

 「もっとびっくりしたわ!」

 

 我慢出来ずについ大声でツッコんでしまった。何なんだこの人は、顔も赤いし、ハァハァ息遣いも荒いし。

 

 「ハァ…ハァ…あ、あの女性二人は、あなたのお仲間だろう?あんな年端もいかない少女が、ぬるぬるになってまで戦うなんて…羨ましい!あ、間違えた。嘆かわしい!」

 

 何をどう間違えたらそうなるんだ。あ、この人駄目だ。俺の危機管理センターが警報を鳴らしまくってる。

 

 「あちゃー、ま〜たとんでもないのが来ちゃったでウィスね」

 

 冗談じゃない、問題児はアクアとめぐみんだけで沢山だ。適当に理由付けて、さっさとお帰りいただこう。

 

 「いや〜、うちみたいなパーティーに、あなたはもったいないですよ」

 

 「私は構わん」

 

 「俺は最弱の冒険者だし、他の二人もポンコツで…」

 

 「臨むところだ」

 

 くっ!折れねえ!何でそうまでして、うちのパーティーに執着するんだ!

 

 「…言いにくいのだが、私は体力や耐久性には自信はあるが、攻撃の方はからっきしでな。他のパーティーでも長居は出来なかったんだ。だが安心して良い、盾や囮なら誰にも負けない自信はある。だから、遠慮なく私をしごき回してくれ!ハァ…ハァ…!」    

 

 どうしよう、美女に迫られてるけど嬉しくない。目が血走っている、怖いよお。

 

 「こいつ怖いニャン!」

 

 「どうするんですカズマくん?」

 

 とりあえず俺は、疲れていることを理由にその場を後にした。妖怪が取り憑いてるかもと思ったが、ウォッチをかざしても反応なし。

 どうして俺の周りは、あんな変な女ばかり集まるのだろう。と、カズマは布団に包まって頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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