妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

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パンツスティーラーカズマ誕生

 「おはようございますカズマくん。もうお昼ですよ」

 

 「…んん、もうそんな時間?」

 

 今日も馬小屋で目覚め、一日がスタートする。昨日のしわくちゃん騒動と、トドメに変な女騎士のせいでよく眠れなかった。

 これから朝ご飯兼昼ご飯を食べに、ウィスパーとギルドに向かう。ジバニャンは先に起きて、めぐみんと一緒にギルドにいるらしい。

 

 「あ、カズマやっと起きたの?ほらほら、私の華麗なるスキルどう?これぞ水の女神って感じでしょ?」

 

 「…あー、良いんじゃない?」

 

 アクアは宴会芸というスキルを習得して、ギルド内の冒険者に披露している。戦闘には何の役にも立たないと思うが、結構ウケているようだ。

 カウンターに座っているめぐみんとジバニャンを見つけて、カズマもその隣に座る。

 

 「はいジバニャン、あーん」

 

 「あーんニャン!」

 

 ジバニャンとめぐみんがなんかイチャついてる。昨日ジバニャンにしわくちゃんから守られたことで、めぐみんはさらにジバニャンを気に入ったみたいだ。

    

 「これそんなに美味しいのですか?」

  

 「チョコボーはオレっちのお気に入りニャン!めぐみんにも、オレっちのチョコボー分けてあげるニャン」

 

 「ありがとうございます。確かに、甘くて美味しいですね」

 

 腹巻きからチョコボーを2、3本出してめぐみんにあげる。カズマが欲しいと言っても中々あげないのに、めぐみんにはあっさり渡した。

 

 「ジバニャン、俺にも一本頂戴」

 

 「えー」

 

 「おま…!何でめぐみんは良くて、俺は駄目なんだよ」

  

 「めぐみんは可愛いから特別ニャン」

 

 ジバニャンは猫だが、ニャーケービーの追っかけをやるくらい可愛い女の子は大好きだ。ジバニャンが妖怪になる前の普通の猫だった時、飼い主だった女の子も可愛いかったらしい。

 猫と言っても、そこは雄の本能ということか。

 

 「…はあ、まあ良いや。ところでめぐみん、スキルについてちょっと教えて欲しいんだが」

 

 「なんですか?」

 

 「俺もそろそろスキルを覚えたいんだが、ポイントの使い方がイマイチよく分からないんだ」

 

 ジャイアントトードを倒してレベルが上がり、そしてポイントも少し溜まってきた。ここいらで何かスキルを覚えて、そろそろまともな冒険者らしくなりたい。

 

 「そこまで難しいことはありません。誰かに使い方を教えて貰って、カードの項目にポイントを割り振るだけですよ」

 

 「なるほどウィスほど。つまり、カズマくんもめぐみんさんの爆裂魔法を使えるようになる。というわけでウィスね」

 

 「そうなのです!爆裂魔法において、この私の右にも左にも出る者はいません!爆裂魔法こそ至高のスキル!私と共に、爆裂道を歩みましょう!」

 

 急にテンションが上がっためぐみん。やはり爆裂魔法となると、目の色が変わるようだ。

 

 「…お、おう。気持ちは分かるが、一旦落ち着けロリっ娘。俺も3ポイントしかないから、慎重にスキルを選びたいんだ」

 

 「ろ、ロリっ娘…!」

  

 ガーンと落ち込んでいるめぐみん。どうやらロリっ娘は禁句だったらしい。

 

 「カズマ、オレっちもレベルが上がってるニャン」

 

 「え?でもジバニャン、ジャイアントトード倒してないだろ?」

 

 ジバニャンがどさくさに紛れて作った冒険者カード。よく見ると、レベルがカズマと同じくらいまで上がっている。確かにジバニャンはジャイアントトードは倒していないが、しわくちゃんをジバニャンはやっつけている。

 どういう仕組みか知らないが、どうやら妖怪を倒してもレベルが上がるみたいだ。

 

 「ほほ〜う。ならば当然、このあたくしもレベルが上がってる筈でウィス〜」

 

 「いやウィスパー、お前は何も倒してないだろ」

 

 ウィスパーはジャイアントトードには食われ、しわくちゃんに老人にされただけだ。特に活躍はしていない。

 

 「いやいやいや!たとえ倒すに(いた)らなくとも、あたくしだって頑張って戦ってるんですから、ちょっとくらいレベルアップしていても…」

 

 ウィスパー。レベル、−12 。

 

 「減ってるーーーー!!」

 

 上がってないどころか、何故か逆にマイナスまで下がっているウィスパー。めぐみんと並んで、二人で落ち込んでいた。

 面倒くさいから放って置くとして、カズマはそろそろ昼飯を注文する。

 

 「こんなとこにいたのか」

 

 「げっ!」

 

 振り返ると、そこには昨日のやばい女騎士がいた。それとなく断ったというのに、まだ諦めてないのか。

 

 「昨日の続きだが、是非とも私をそちらのパーティーに…」

 

 「お断りします!もう問題児はたくさんと言いますか、これ以上は面倒見きれないと言いますか…とにかく、来てくれたのは嬉しいんですが、今回はご縁がなかったということで…どうか諦めてください!」

 

 「ああ!これからよろしく頼む!」

 

 「話聞いてた?」

 

 駄目だ、言いたいことの意図が全く伝わってない。確かに美人だし、上級職のクルセイダーだから何かと頼りになるだろう。

 しかし、こんな特殊性癖持ちは俺には荷が重い。性格さえまともなら、俺だって喜んで受け入れたいのに。

 

 「ダクネス。いきなりそんなに迫ったら怖がられちゃうよ」

 

 ダクネスの後ろから、顔に傷のある少女が出てきた。こっちは比較的まともそうな感じで、カズマは安心する。

 

 「私はクリス、職業は盗賊だよ。君がダクネスの言ってた人だよね、よろしく」

 

 「カズマです、よろしく」

 

 クリスと握手を交わし、お互いの紹介を終える。しかし、クリスは手を離そうとせず、何だかカズマをじーっと見つめている。その視線はカズマの妖怪ウォッチや、普通の人には見えていない筈のジバニャンとウィスパーを捉えていた。

 

 「あの…」

 

 「ん?ああごめんね。珍しい魔道具持ってるな〜って、思っただけだから」

 

 職業柄ゆえか、色んなアイテムを目にする事が多いクリス。この世界には存在しない妖怪ウォッチを目に、興味津々な様子だ。

 

 「カズマくん、この人あたし達のこと見えてるみたいでウィス」

 

 「オレっち、2回くらい目合ったニャン」

 

 妖怪ウォッチを触らずとも、妖怪が見える人は稀にいる。いわゆる霊感が強い人や、純粋な子供とかは妖怪が見えたりする。クリスも恐らくその類の人だろう。

 

 「ちらっと話し声が聞こえたけど、スキル欲しいんだって?よかったら、私の盗賊スキル教えてあげよっか?」

 

 「え、い、いいんですか?!でも俺、3ポイントしかありませんよ」

 

 「大丈夫だよ。謝礼として、シュワシュワ一杯で手を打ってあげよう」

 

 思いの外安く教えてくれるようで、カズマはすぐに乗っかった。クリスがシュワシュワを飲んでる間に、カズマも急いで昼ご飯を食べ終える。

 

 「ねえ、それ何ていうアイテムなの?」

 

 ギルドを出て手頃な場所を探す道すがら、クリスが妖怪ウォッチの事を聞いてきた。

 

 「あー、これは…」

 

 カズマは少し言葉に詰まる。パーティーメンバーでもない今日会ったばかりの人に、妖怪ウォッチを教えてもいいものかと。

 ジバニャン達は別にいいと言っていたが、だからと言ってホイホイ言い触らすのはなんか違う気がする。

 

 「もしかして、君と一緒にいるモンスターと関係ある?」

 

 「!?」

 

 クリスはカズマの耳元に寄り、他には聞こえないように耳打ちする。

 

 「クリス?」

 

 「何でもないよ。この先にあんまり人が通らない路地裏があるから、そこで待ってて」

 

 ダクネスを先に行かせ、クリスはカズマ達に向き直る。

 

 「…やっぱり、見えてたんだ」

 

 「うん、最初からね」

 

 見えているなら仕方ない、カズマはクリスに妖怪ウォッチの説明をした。これをかざせば妖怪が見えること、メダルを入れれば妖怪を召喚できるなど。クリスは頷きながらまじめに聞いている。

 

 「へー、初めて見たよこんなアイテム。で、君たちがその妖怪ってわけだね」

 

 「は〜いどうも。あたくし、カズマきゅん専属敏腕妖怪執事、ウィスパーでウィス。お見知り置きを、クリスマスさん」

 

 「クリスね」

 

 さっそく名前を間違えるウィスパー。お前がまずクリスをお見知り置きしろ。

  

 「オレっち、ジバニャンニャン!」

 

 「おお、君はこっちのと違って可愛いね」

 

 「こっちのとは何ですか!失礼しちゃウィますよねカズマくん!」

 

 「ウィスパー、諦めろ」

 

 ジバニャンに可愛さ対決で負け、ハンカチを噛んで悔しがるウィスパー。

 クリスに妖怪の事を教えたところで、ダクネスをあまり待たせるのも悪いのでそろそろ移動する。

 

 「やっと来たか。何をやってたんだ?」

 

 「まあ、ちょっとね」

 

 ダクネスの質問に曖昧に答え、クリスは約束通り盗賊スキルをカズマに伝授する。すると、カズマの冒険者カードに新しいスキルの項目が増えた。少ないポイントでも会得出来るから、カズマには有り難い。

 

 「特にイチオシはこれ。ちょっと、そこに立ってて」

 

 カズマが言われた通りに立っていると、クリスが手の平を向けてスティールというスキルを発動した。

 眩しい光の後、何をされたか分からなかった。しかし、いつの間にかクリスが自分の財布を得意気に持っているではないか。

 

 「これがスティールっていうスキル、相手の持ち物をランダムで奪い取るの。幸運値が高い程、目当ての物を取れるよ」

 

 「おー!これは面白いな!」

 

 便利そうなスキルを教えて貰ってカズマは喜んでいるが、クリスは何故か財布を返そうとしない。カズマが手を伸ばしても、ひょいひょいと躱される。

  

 「せっかくスティールを覚えたんだからさ、それで財布を奪い返してみなよ」

  

 「お、おいクリス。それはちょっとあんまりじゃ…」

 

 初心者相手に大人気ないクリスだが、これは挑戦だとカズマは受け取った。冒険者なら、危ない橋も渡れと言うことだろう。

 

 「あらら、シュワシュワ一杯が随分と高くついちゃいましたね。カズマくん、大丈夫でウィス?」

 

 「へっ、臨むところだ。やっと冒険者らしいイベントが来たんだ、やってやるぜ!」

 

 「ちなみに、大当たりはこの40万エリスの剣。ハズレはこの小石だから、頑張ってね」

 

 ハズレの小石を混ぜたせいで、財布や剣を引き当てる確率は減った。カズマは意識を集中させて、クリスにスティールを放つ。

 

 「どうですカズマくん?」

 

 「何か取ったニャン?」

 

 「…ん、何だこれ。なんか柔らかくて、生温かいような」

 

 「!!??」

 

 カズマの手の中に、布のような感触。そしてクリスは顔を真っ赤に染め、何かを確かめるように下半身を押さえている。

 カズマから取った財布は懐にあるし、剣も腰にちゃんと装備されている。しかし、カズマに取られたのはそんな物ではなかった。むしろ、財布や剣を取られた方がマシだっただろう。

 

 「お、おおおおおお!こ、これは…!!」

 

 手の中にある物を、恐る恐る広げる。それは女性用の白いパンツ、さっきまでクリスが履いていた物だった。

 

 「大〜当たり〜!ヒャッハーー!」

 

 「いやあああああ!パンツ返してーー!」

 

 クリスのパンツを大喜びで振り回すカズマ。その悪魔の所業にジバニャンとウィスパーはドン引きし、ダクネスは自分の目に狂いは無かったと喜んでいる。

 

 「…か、カズマくん。あーた今自分が何やってるか分かってます?」

  

 「なーに言ってんだよウィスパー、仕掛けて来たのは向こうなんだぜ。俺は正々堂々と勝負しただけだ」

 

 確かにカズマの言うことも一理あるが、それは流石にあんまりじゃないかとウィスパーは思った。

 

 「そ、そうだ!もう一回、スティールで奪い返してやる!」

 

 クリスは取られたパンツを取り返そうと、カズマにスティールを放つ。

 

 「そうは行くか!」

 

 「ウィス?」

 

 しかしカズマも、そう簡単に戦利品を手放すほど馬鹿じゃない。ウィスパーを盾にし、スティールからパンツを守った。

 カズマの代わりにスティールを受け、ウィスパーの頭の触覚みたいな部分が奪われた。

 

 「あー!あたくしのチャームポイントの、頭のほにょほにょが無くなってますー!」

 

 「いやああああ!気持ち悪いー!」

 

 「ちょっと!もっと丁寧に扱ってくださウィス!」

  

 ビタン!とウィスパーのほにょほにょを地面に叩きつけるクリス。本体から離れてもくねくね蠢いているので、確かに気持ち悪い。

 

 「お、お願いパンツ返して!財布返すからー!」

 

 「おっと、その必要はないぜ。自分で取り返すから。スティール!」

 

 クリスの懇願を拒否し、二度目のスティールで見事に財布を奪い返した。

 

 「さ〜て、次は何を取ろっかな〜?」

 

 「ひ、ひ〜!」

 

 「あ、あの下劣な目…!普通の人にはあんな目は出来ない、あいつは天才か!?」

 

 「何のニャン…?」

 

 もうスティール勝負はカズマの勝利で決まったのだが、まだまだこんなものでは下衆(カズマ)は満足しない。

 

 「あ、よく考えたらスティール使わなくても、相手の持ち物を奪える妖怪いたわ」

 

 カズマはポケットからメダルを取り出し、ウォッチにセットする。

 

 「ヨコドリ!」

 

 ウォッチから出てきたのは、ブキミー族のヨコドリ。紫色のずんぐりむっくりした鳥である。

 

 「行け、ヨコドリ!クリスから何か奪え!」

 

 見た目に似合わない素早い動きで、ヨコドリがクリスのマフラーを奪った。

 

 「な、何だ?どうして急に、クリスのマフラーが…」

 

 ヨコドリを見えていないダクネスには、何が起きたか分からない。

 

 「よくやったぞ、ヨコドリ。よしよ〜し」

 

 「ヨコドリ〜」

 

 「うぅ〜、これじゃあ取り返せない…」

  

 カズマとヨコドリの悪魔のコンビが完成し、クリスは完全に戦意喪失している。

 

 「ね、ねえ。いくらでも払うから、せめてパンツだけでも返して…」

 

 容赦のない辱めを受け、クリスはもう半泣きだった。

 

 「カズマくん、そろそろ返してあげましょうよ」

 

 「可哀想ニャン」

 

 「はいはい、分かったよ。ん〜、そうだなあ。よし、それなら自分でパンツの値段を決めて貰おうか」

 

 自分で自分のパンツの価値を決めろという、なんとも鬼畜の所業。クリスの後ろで、ダクネスがずっとハァハァと息を荒くしている。

 

 「そ、それは…」

 

 「ん〜?言えないのかな〜?俺はここで、君を素っ裸にしてもいいんだけどなあ?」

  

 「ひい!」

 

 何とも悪い笑みを浮かべて、座り込んだクリスを見下すカズマ。

  

 「ほら早く〜。あと十秒で決めなかったら、このパンツは家宝にして奉るから」

  

 「あ、あぁぁ…」

 

 「はい。9、8、7、6」

 

 「ちょっ、ちょっと早っ!」

 

 「5、4、3、2」

 

 「分かった分かった!決めるから待ってええええ!!」

 

 そしてクリスは有り金を全て毟り取られ、ダクネスはカズマの才能に心底惚れ込んだのであった。

 

 「グヘヘヘへへ〜、毎度あり〜」

 

 「…カズマくん。主人公がしちゃいけない顔と笑い声になってますよ」

 

 「最低ニャン…」  

 

 スキルも覚え所持金も増えたところで、カズマ達はギルドに戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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