妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

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ウィズ&ウィス

 「カズマくん、これなんてどうでウィス?」

 

 ウィスパーが、白地に紫色のラインが入ったマントをカズマに見せる。

 

 「ウィスパーみたいでなんか嫌」

 

 「ウィス〜…」

 

 二人は今、装備屋でカズマの新装備を選んでいる最中だ。キャベツのクエストでそれなりにお金が入り、そろそろ見た目だけでも冒険者らしくしたい。

 いつまでもジャージ姿じゃ、異世界感がぶち壊しだからだ。

 

 「どうだウィスパー、似合ってるか?」

 

 「おお、中々格好いいですよカズマくん!」

 

 緑のマントを羽織り、身軽さを保った装備。せっかく魔法が使えるのだから、小回りが利く格好がいい。目指すは魔法剣士スタイル。少しは様になったと、カズマはウキウキ気分で着て帰った。

 

 「おー、いいじゃないですか」

 

 「似合っているぞ」

 

 ギルドに戻り、めぐみん達に新装備をお披露目する。

 

 「ようやく世界観に合った格好になったわね。こういうの、日本じゃなんて言うんだっけ?馬鹿にも衣装?」

 

 「それを言うなら馬子にも衣装…って、何だとこの駄女神!!」

 

 「ひーっ!冷たっ!鼻に!鼻に入って痛い!」

 

 アクアにだけは馬鹿と言われたくない。カズマは覚えたての初級魔法、クリエイトウォーターをアクアに放つ。カズマは今や、風、水、火、土の4大属性の初級魔法を使えるようになっている。

 

 「水責めか、それも良いな…」

 

 「…ダクネスさん、また変なこと考えてるでウィスね」   

 

 「ついてけないニャン…」

 

 ボソッと呟いたダクネスの問題発言に、引いてるウィスパーとジバニャン。ダクネスも妖怪ウォッチに触れ、今はめぐみんと同じように妖怪が見えるようになった。

 最初は驚いていたが、今はその存在に大変興味深く思っている。前にカズマに、息を荒くしながら程良い刺激を与える妖怪はいないかと聞き、カズマを引かせたくらい興味を持っている。

 

 「このパーティーも中々の顔触れになったわね。4人中3人が上級職なんて、そうそうないわよ。私もリーダーとして鼻が高いわ」

 

 「誰がリーダーだって?」

 

 アクアが勝手にリーダーを名乗っているが、当然ただの自称である。ちなみにウィスパーも何故かリーダーを自称しおり、度々アクアとリーダーを争って小競り合いしている。

 

 「とにかく、さっさとクエスト行こうぜ。このパーティーでの最初のクエストだ。手始めに、ジャイアントトード討伐でい」

 

 「「それは嫌」」

 

 アクアとめぐみんが食い気味に拒否する。前に呑み込まれたことが、よっぽどトラウマになっているみたいだ。

 

 「なんで二人はそんなに嫌がるんだ?」

 

 事情を知らないダクネスがカズマに聞く。

 

 「こいつら、前にカエルに喰われて粘液塗れになったんだよ」

 

 「ね、粘液塗れ…だと!」

 

 「全く、情けないでウィスね〜。あたしなんか、体半分溶かされてもこの通りピンピンしてるのに」

  

 「ふ、服だけ溶かされる…!?」

 

 「いや、そうは言ってないでウィス」

 

 ダクネスがまた良からぬ妄想をしているが、4人の内2人も嫌がるならジャイアントトード討伐は出来ない。まずはお手軽なクエストで経験を積んで、パーティーの連携を研こうと思っていたのに。

 

 「大丈夫よ。上級職が3人もいれば、どんなクエストだってクリア出来るわ」

 

 「カエルに食われて、しわくちゃんにお婆ちゃんにされただけの奴はちょっと黙ってろ」

 

 アクアが上級職3人と言うが、めぐみんとダクネスはスキルが趣味に偏り過ぎている。そしてアクアは1番役に立っていない。宴会芸しか取り柄のない、穀潰しだとカズマは言い放った。

 

 「わああああん!カズマの馬鹿ああああ!!」

 

 カズマの容赦ない言葉責めに、アクアは子供のように泣き喚いている。

 

 「カズマくんー、ちょっと言い過ぎじゃないでウィス?」

 

 「言っとくがウィスパー、お前もアクアと大して変わらないからな」

 

 ウィスパーもアクア同様、大した活躍はしていない。カエルに食われ、お爺ちゃんにされ、キャベツにボコられ、知ってると言いながら妖怪パッドでカンニングする。おまけに何のスキルも持っていないから、ある意味アクアより使えない。

 

 「酷い酷いー!そこまで言うことないじゃないですか!あたし達だって頑張ってるんでウィスよ!ねえアクアさん!」

 

 「一緒にしないで」

 

 「ええ?!」

 

 さっきまで大泣きしていたアクアだったが、ぴたっと泣き止んでウィスパーを突き放す。落ち込んでいるウィスパーは放っておき、カズマは話しをアクアに戻した。

 

 「アクア、お前の回復魔法のスキルを教えろ」

 

 「ひ、人の心が無いの!?私の存在意義を奪おうとするなんて、この鬼!悪魔!クズマ!」

 

 アクアの罵りに、カズマの顔にピキッピキッと線が浮き出る。どう言い返してやろうかと考えてると、強面の男二人組がアクアに近付いて来た。

 

 「アクアさんー、溜まってるツケ早く払って下さいよー」

 

 「このままじゃ、利子がどんどん膨れ上がりますぜ」

 

 「わ、分かってるわよ!もうちょっと、もうちょっとだけ待って!」

 

 借金をしているというまずい場面を見られ、この場に気不味い雰囲気が漂う。アクアはコホンと咳払いして、揉み手をしながらカズマに近寄っていく。

 

 「あ、あんのー…」

 

 「鬼で悪魔でクズマの俺に何の用だ?」

 

 「えっ!?え〜と…カズマさん、キャベツの報酬は、おいくら万エリス?」

 

 「だいたい百万くらいかな」

 

 なんと、カズマはキャベツで百万もの大金を稼いでいた。カズマが収穫したキャベツは特に良いものだったようで、それで他より報酬が多く貰えたのだ。

 

 「カズマさん、いえカズマ様。お願いがあります」

  

 「断る」

 

 急に敬語になるアクア。大体の察しはつくので、聞くまでもなく却下する。

 

 「お願いいい!お金貸してえええ!さっきの見てたでしょ?!このままじゃ私、いかがわしいお店で働かなくちゃいけないのよおおお!」

 

 「知るか!ツケがあるなら、自分で払えばいいだろ」

 

 腰辺りにしがみついてくるアクアを、カズマはうざそうに押し退ける。実はアクアは、キャベツ報酬が大量に入ることを見込んで、お金を使いまくっていたのだ。

 しかし、実際にアクアが収穫したのは殆どがレタス。雀の涙程の報酬しか貰えなかった、

 

 「キャベツとレタスの区別も出来ないとか、ウィスパーと同じだな」

 

 「嫌ああああああ!ウィスパーと同じは嫌ああああああ!」

 

 「お二人とも、あたくしにも悲しいという感情はあるんでウィスよ」

 

 このままでは埒があかないので、カズマは仕方なくアクアにツケ分のお金を貸してあげた。 

 

 「さあ、早くクエストに行くわよ!一文無しだから、今日の食事代くらい稼がなきゃ!」

 

 急にやる気を出したアクア。カエル以外のクエストなら、もう何でもいいようだ。

 

 「それなら、ゾンビメーカーの討伐とか良いんじゃないか?」

 

 ゾンビメーカーとは、アンデッドモンスターの一種。死体に憑依し、ゾンビを操る悪霊の事である。アンデッドに対し、プリーストの職業は相性が良い。アクアのレベルアップにも持ってこいなので、カズマ達はゾンビメーカー討伐に向かった。

 

 「は…は…は……ぶええッッくしょおおおおん!!ッラアこんちくしょおおおい!!」

 

 「おっさん臭いぞ」

 

 「唾飛ばすニャン!」

 

 夜の墓場でウィスパーが盛大にくしゃみをかます。カズマ達は腹ごしらえをしながら、ゾンビメーカーの出現を待っているところだ。

 

 「ちょっとカズマ、肉だけじゃなく野菜も食べなさいよ」

 

 「キャベツ収穫以来、野菜は飽きたんだよ。たまには肉も食わせろ」

 

 「山盛りのキャベツの日々でしたもんね〜」

 

 朝昼晩とご機嫌なキャベツ生活が続き、少し野菜が嫌いになってきた。

 夜も更けてきて、冷たい風が肌を撫でる。寒い中コーヒーを飲みながら待っていると、カズマの敵感知スキルに反応があった。

 

 「…来たか」

 

 クリスから教えて貰って助かった。食事を止め、全員で静かに移動を開始する。

 

 「…おかしいな」

 

 「どうしたんでウィス?」

 

 「ゾンビメーカーが操るゾンビは精々3体くらいの筈なのに、5…いや6体いるんだが」

 

 違和感はあるが、近くのお墓に隠れて様子を見る。そこには予想通り6体のゾンビが徘徊しており、その中心にフードを被った謎の人物がいた。 

 

 「ここからじゃ、何をしてるのかよく分からねえな」

 

 「運動会、じゃなさそうでウィスね」

 

 「当たり前ニャン」

 

 その者は足下に光る魔法陣を出現させ、その近くにゾンビが集まってくる。カズマには何となく、その光を浴びるゾンビ達が喜んでるように見えた。

 

 「あーーーー!!」

 

 「うおっ!びっくりした!」

 

 アクアが突然叫びだして、そのフードの人物目掛けて突撃して行く。

 

 「リッチーー!覚悟ーー!!」

 

 「え?え?!きゃあ!!」

 

 アクアの右ストレートを何とか避け、地面にへたり込む。リッチーと呼ばれたその者は、長い髪で片目が隠れている女性だった。

 

 「リッチーがこんなとこで魔法陣広げて何してたの!どうせやましいことしてたんでしょ!はいと言いなさい!」

  

 「ひいいい!な、なんですかあなたは!?」

 

 リッチーの胸倉を鷲掴んで、アクアが横暴過ぎる尋問をする。どうやらこの女性は、この墓地で彷徨ってる無成仏霊達を天に還していたらしい。

 夜な夜なここに現れて、墓地に霊が溢れないようにしていたのだ。

 

 「それならこの私が代わりにやってあげるわ。あんた諸共、天に送り還してあげる!」

 

 アクアが魔法を発動させると、周りのゾンビ達が一瞬で成仏していく。そして、この女性の体も薄く透け始めた。

 

 「いやーー!やめてーー!誰か…誰かあああああ!!」

 

 「あーはっはっはっ!この私と遭遇したのが運の尽きよ!大人しく消滅し」

 

 「やめんか」

 

 もうどっちが悪者か分からない。カズマがアクアの頭を叩き、とりあえず魔法を止めさせる。

 

 「何すんのよ!もう少しで、リッチーを成敗出来るとこだったのに!」

 

 「とりあえず事情くらい聞いてやれよ。それと、お前の魔法でウィスパーとジバニャンも昇天しかかってんだよ」

 

 近くにいたウィスパーとジバニャンも巻き添えをくらい、魂が体から抜け出して天に昇ろうとしている。ダクネスとめぐみんが二人の魂を掴んで、なんとか止めていた。

 

 「し、死ぬかと思ったニャン…!」

 

 「お花畑が見えたでウィス〜…」

 

 「あ、なんかごめんね…」

 

 気を取り直して、カズマはリッチーとやらの女性に話しを聞く。

 

 「助けていただき、大変ありがとうございました。私はウィズ(・・・)、ノーライフキングをやっています」

 

 「ウィズはここで何」

  

 「ほうほう、あなたウィズと言うんでウィス?」

 

 似たような名前でシンパシーを感じたのか、ウィスパーが会話を遮ってウィズに話しかけた。

 

 「えと…あなたは?」

 

 「申し遅れました。あたくし、妖怪執事のウィスパーでウィス。以後お見知りおきを」

  

 「は、はあ…」

  

 手書きで作った名刺を渡され、ウィズは戸惑っている。

 

 「いや〜、奇遇ですねえ。あたしウィスパー、あなたウィズさん。あたし達ぃ、気が合うと思いません?」

 

 「そ、そうですね…」

  

 気を使って同意したが、明らかにウィスパーの対応に困っている。初対面なのにこんな訳のわからない絡み方をされ、ウィズはちょっと面倒くさいと思っていた。

 

 「あそうだ!二人で妖怪の漫才ナンバーワンを決める、妖ワンに出場しましょうよ!コンビ名は、ウィズ&ウィスで」

 

 「ええ…?い、いや結構です」

 

 「まぁまぁそう仰らずに!」

 

 まるで家に急にやってくる迷惑セールス。ウィズが涙目でカズマに助けてと視線を送り、カズマもこのままでは話しが進まないのでウィズを助けてやる。

 

 「ウィスパー、邪魔」

 

 「しょぼ〜ん…」

 

 ウィスパーをどかし、ようやくウィズに事情を聞く。お金が無くて供養されない霊達に同情し、今日みたいにこっそり来て天に還してやっているそうだ。

 街のプリースト達も、お金が出ないところで働く気はないらしい。それでウィズが一人で供養してあげてるのだ。

 

 「まったく、聖職者が聞いて呆れるぜ」

 

 「守銭奴の背徳主義者ばかりなんですね」

 

 「同じ街の冒険者として情けない」

 

 「ねえ、皆。こっち見ながら言うのやめない?」

 

 ウィズの事情は分かったが、それはそれとしてゾンビを呼び出されるのは困る。実際にそれで討伐依頼が来ているわけだし。

 

 「でも、私が呼び起こしてるわけではないんです。私の魔力に反応して、それで勝手に…」

 

 つまり彷徨う霊がいなくなれば、ウィズがわざわざここに来る必要もなくなる。そしてゾンビが現れることもなくなる。

 

 「というわけで、頼んだぞ」

 

 「へ…?」

 

 ウィズの仕事をアクアが引き継ぎ、定期的に除霊することに決まった。ウィズを倒せなくてアクアは納得していなかったが、めぐみんが言うにはリッチーはかなり強力なアンデッドらしい。

 もし戦っていたら、確実に犠牲が出ていたであろう。

 

 「それにしても残念でウィスね〜。是非ウィズさんとあたしで、妖魔界を爆笑の渦に巻き込むコンビを結成したかったでウィスのに」

 

 「ウィズ&ウィスで?コンビ名からしてダサいぞ」

 

 「ウィスパーがいるから絶対売れないニャン」

 

 「確かに、ウィズだけ人気出そうだな」

 

 ウィズは人気が出て引っ張りだこになり、ウィスパーだけピンで売れない芸人。それを想像してカズマとジバニャンは笑っており、ウィスパーは絶対に売れて人気妖怪になるとキレたのだった。

 

 「総入れ歯、いやそういえば、結局クエストの報酬はどうなったんでウィス?」

 

 「あ」

 

 「ただ働きだったニャンね」

 

 

 

 

 

 

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