妖怪ウォッチを手に入れたのが、ケータではなくカズマだったら?   作:カジ

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ウィスパーの廃城散策

 「ウィスパー、新しい杖買ったんです。一発エクスプロージョンさせてください」

 

 「嫌でウィス!なにどこぞのガキ大将みたいなこと言ってんですか!?」

 

 「冗談ですよ。せっかくの新品を、ウィスパーなんかに使うわけないじゃないですか。もったいない」

 

 「それはそれで複雑な気分でウィス…」

 

 キャベツの報酬でめぐみんは新しい杖を買い、その色艶にうっとりして頬ずりしている。ダクネスも鎧を新調したが、カズマに褒めて貰えず興奮していた。

 

 「カズマ!さっそくクエストに行きましょう!雑魚モンスターを一掃するクエストが良いです!」

 

 「いいや、どうせ戦うなら強い奴が良い。一撃が重くて、体の芯まで衝撃を届かせてくれるモンスターに会いに行こう!」

 

 新しい装備を早く試したいのか、二人はうずうずしている。クエストにやる気なのは結構だが、カズマは一人ため息を吐いた。

 

 「盛り上がってるところ悪いが、クエストは当分無理だぞ」

 

 「え?」

 

 「な、何でですか!?」

 

 カズマがさっき受付のお姉さんに聞いたところ、どうやらこの街の付近に魔王軍幹部が住み着いてるらしい。それを怖がって近くの弱いモンスターは逃げ出し、残っているのは駆け出しには不可能の高難度クエストばかり。

 

 「つまり、凄腕の冒険者が派遣されるまで、私達の出番はないということか」

 

 「えー。せっかく新品の杖で爆裂魔法出来ると思っていたのに、つまんないですよぉ」

 

 めぐみんが頬を膨らませているが、こればっかりはしょうがない。元の状態に戻るまで、各自自由行動になった。

 

 「そういうことならカズマ。妖怪の中に、剣の達人はいるか?いたら紹介して欲しいんだが」

 

 「いいけど、なんで?」

 

 「クエストが無い間は、実家に帰って剣の修行をしたいんだ。そういう妖怪に教えて貰えれば、私の攻撃もマシになるかと思って」

 

 確かに、ダクネスの攻撃がいつまでたっても当たらないのは問題だ。ダクネスなりに色々考えてるらしく、カズマは快く協力した。

 

 「ブシニャンでござる」

 

 「ブシニャン?ジバニャンと似てるな」

 

 「ジバニャンのご先祖様だからな。剣、というか刀だけど、ソードマスターくらいの力はあると思うぞ」

 

 ソードマスターは文字通り剣の達人。そんな達人に教えて貰える機会なんて滅多にない。ダクネスは喜んでカズマにお礼を言った。

 

 「話しはカズマから聞いたでござる。ダクネス、某の修行は厳しいぞ。ついてこれるか?」

 

 「ああ!どんなキツい修行でもドンと来いだ!はぁ…はぁ…!」

 

 厳しい修行と言われ、ダクネスがまた変な妄想をしている。

 

 「…か、カズマ。この者、大丈夫でござるか?」

 

 「大丈夫ではないけど、気にするなブシニャン。悪いやつじゃないから」

 

 初めて真正のMを見て、ブシニャンはダクネスを気味悪がっている。

 

 「こ、こほん。では行くぞ。ダクネス、某について参れ」

 

 「心得た!ブシニャン殿!」

 

 「某のことは師匠と呼べ!」

 

 「はい!ブシニャン師匠!」

 

 走っていくブシニャンの後を追いかけるダクネス。二人の姿が見えなくなるまで、カズマ達は見送った。

 

 「さて、俺もやることがないし、適当にバイトでも…」

 

 「カズマ、暇なら私に付き合って欲しいのです」

 

 「俺に?」

  

 「おやおや〜?付き合って欲しいって、めぐみんたんおデートのお誘いでウィス〜?いや〜、カズマきゅんも幸せ者で」

 

 「ふん!」

 

 「ホームラーーン!!」

 

 デリカシーの欠片もないお邪魔虫のウィスパーを、めぐみんが豪快なフルスイングでふっ飛ばす。ウィスパーはギルドの窓を割り、キラーンと星になった。

 

 「そ、そういう意味じゃありませんから。カズマには、日課の爆裂魔法の手伝いをして欲しいのです」

 

 「あ、ああ。分かった」

 

 めぐみんは、一日に一回は爆裂魔法を撃たないと気が済まない。たとえクエストが無い日でも、爆裂魔法は欠かした事はないのだ。

 

 「そういえば、アクアはどうしたのです?まだ姿を見ませんが」

 

 「ああ、あいつは俺に借金を返すためバイト中だ。ついでに見に行ってやるか」

 

 アクアはカズマにツケを払って貰った借金をしており、近所の八百屋でバイトをしている。めぐみんの爆裂魔法に付き合う前に、アクアにもクエストが無い事を知らせておく。

 

 「いらっしゃーい!新鮮な野菜がいっぱいあるわよー!そこのお兄さん!今野菜を買うと、もれなく無条件で我がアクシズ教に入れてあげる!」

 

 「い、いや…自分エリス教なんで」

 

 「はああん!?エリス教なんて、あんなパッドの女神の事信じてんの!?悪いことは言わないわ、アクシズ教に宗旨変えしなさい。そうすれば、あなたの人生はより良いものに…」

 

 「アクアさん、ちょっと」

 

 強引な客引き&勧誘で、アクアは店長のおじさんに怒られた。怒られたアクアは半泣きになっており、納得いかないとぷんぷんしながら野菜を売っている。

 

 「おーい、アクアー」

 

 「あ、カズマ!めぐみん!どう?稼げそうなクエストは見つかった?」

 

 クエストで一発稼げるなら、ちまちまとバイトなんかしなくて済む。ワクワクしながら聞いたアクアだが、カズマは落ち着いて状況を説明する。

 

 「それなんだが、かくかくしかじかというわけだ」

 

 「カズマ、それじゃあ何も分かりませんよ」

 

 「ええ?!魔王軍幹部がこの付近に住み着いて、高難度のクエストしか無くなったって!?」

 

 「何で分かるんですか」

 

 地味なアルバイト生活が長引くことが確定し、もし相手がアンデッドなら成敗してやると、アクアは指の関節を鳴らした。

 

 「まあ、そういうわけだから、俺への借金返済頑張れよ」

 

 「…か、カズマさん。私達、パーティーメンバーの仲じゃない。ちょっとくらい大目に見てくれても…」

 

 「店長さーん。こいつひたすらこき使ってくださーい」

 

 「か、カジュマしゃああああん!!」

 

 アクアの叫びを無視して、カズマはめぐみんと共に移動する。めぐみんの爆裂魔法は威力が高いため、辺りに被害が出ないよう街から離れる必要がある。

 

 「なあめぐみん、何で俺が付き合う必要があるんだ?別にジバニャンでもいいだろ」

 

 「ジバニャンじゃ小さくて、私を運べないじゃないですか」 

 

 爆裂魔法を撃つと、めぐみんはしばらく動けなくなる。カズマはその運び役として連れてこられたわけだ。

 

 「そもそも、今日ジバニャンいないじゃないですか。どこに行ったんです?」

 

 「あー、確か今日はニャーケービーのライブがあるから、夜までは帰らないって言ってたな」

 

 「にゃ、ニャーケービー?」 

 

 ニャーケービーとは、日本で大人気のアイドルグループ。ジバニャンはそこのファンクラブに入ってるくらい、筋金入りの大のファンである。ライブの日はうんがい鏡を使って日本に戻り、元気にサイリウムを振り回しているのだ。

 

 「お、カズマ。ちょうど良い感じの廃城がありますよ」

 

 二人の視線の先に、崖の上にそびえ立つ廃城が見える。寂れてはいるが、大きさは中々の立派なお城だった。

 

 「廃城ではありますが、この新品を試すには申し分ないお城ですね」

 

 確かにお手頃な大きさの城だが、万が一誰かがいたら大変だ。もしかしたら、ホームレスのおじさんとかが住んでるかもしれない。

 

 「でも、調べるには遠いですよ。それに、私は一刻でも早く爆裂魔法を撃ちたいのです」

 

 まるでご飯を待たされる犬のように、めぐみんは早く撃ちたそうにウズウズしている。

 

 「うーん、誰かすぐに調べてくれる奴がいると助かるんだが」

 

 「そんな都合の良い人がいるわけ…」

 

 「ただいまでウィス〜。もう〜、めぐみんさん。もうちょっと手加減してくれても良いんじゃありません?危うくお星様になるところでしたよ」

 

 「「いた」」

 

 「え?何がでウィス?」

 

 めぐみんにふっ飛ばされたウィスパーが、ちょう良いタイミングで戻ってきた。

 

 「ウィスパー。ちょっとあの城に行って、誰かいないか見てきてくれ」

 

 「ええ〜、あの城なんか不気味で嫌なんでウィスけど…」

 

 「敏腕妖怪執事のウィスパーにしか、頼めない重要なことなんです」

 

 「是非あたくしにお任せくださウィッス」

 

 ウィスパーが敏腕執事なんてめぐみんは当然思ってないが、チョロいウィスパーは喜んで廃城まで飛んで行った。

 

 「ごめんくさーい、お邪魔しまウィス〜」

 

 廃城の大きな門をすり抜け、ウィスパーは中に入る。陽の光が殆ど届いていない中は、昼間だというのに不気味に薄暗かった。

  

 「…うぅ〜、お化けが出そうで怖いでウィス〜」

 

 妖怪なのにお化けを怖がるウィスパー。怯えながら城の中を見て回り、無人の廃城だと確認する。

 

 「ふぅ、どうやら誰もいないようで…ぎゃあ!」

 

 目の前に誰かがいると思ってびっくりしたが、よく見ると甲冑を来た兵士の銅像だった。

 

 「なんだ〜、ただの銅像でウィスか。ぷぷっ!この銅像、自分の頭を脇に抱えているじゃあ〜りませんか。よっぽど弱い間抜けな兵士だったんでしょうね〜」

 

 こういう城に飾られる銅像というのは、威風堂々とした立派な物が普通である。首が無い兵士の銅像は、きっと戦場で活躍出来なかった兵士をモデルにしたんだろうと、ウィスパーは思わず吹き出してしまった。

 

 「さて、そろそろ戻って、カズマくんとめぐみんさんに報告を…」

 

 「待て、そこの貴様」

 

 後ろから声をかけられたが、振り返っても誰もいない。

 

 「おんや〜?気の所為ですかね?まさかこのダサい銅像が喋ったり…な〜んて、そんなわけ」

 

 「そのまさかだ。この白いほにょほにょ野郎…!」

 

 「…ウィ?」

 

 恐る恐る、ウィスパーは銅像を見る。すると、小脇に抱えてる首の目がビカッ!と光りだし、ギギギッと音を立てて動き出した。

 

 「…で、出たーーーー!!」

 

 まさか銅像が動き出すとは思わず、ウィスパーは一目散に逃げ出す。しかし、銅像がウィスパーの尻尾みたいなほにょほにょの部分をガシッ!と掴み、逃げられなかった。

 

 「…貴様。さっきは俺のことを、よくも馬鹿にしてくれたな?」

 

 「…う、ウィ、それは…その」

 

 さっきまで散々銅像のことを、弱いとか間抜けとかダサいとか言ってしまった。それを銅像はしっかり聞いており、怒りで体が小刻みに震えていた。

 

 「あー!よく見ればなんて格好いいお方!ご自分の頭を小脇に抱えるなんて、とってもキュートでチャーミング…」

 

 「今更褒めても遅いわあ!!」

 

 「ひー!ごめんなさウィスー!ちょっとした出来ごころでして、イキってすんませんでしたー!」

 

 掴まれている部分をスポッと抜き出し、ウィスパーは甲冑の兵士から必死に逃げる。

 

 「待て貴様ー!」

 

 「ぎゃー!お助けー!」

 

 甲冑の兵士が手にする剣で、ウィスパーは真っ二つにされる。しかしそれくらいでは死なないので、持っていたセロハンテープで斬られたところを貼り付けて治した。

 

 「な、何だこいつは?!何故死なん!?」

 

 ウィスパーの不死身っぷりに、甲冑の兵士も驚いている。斬っても斬っても、セロハンテープで自分の体を補修している。

 城門をすり抜け、何とか外に出たウィスパーだったが、そこでまたしても捕まってしまった。

 

 「ちょ、ちょっと離してくださウィス!」

 

 「貴様!ここが魔王軍幹部の根城と知ってのことか!」

 

 「知りませんよそんなの!あたしはただ、カズマくんとめぐみんさんに言われて来ただけで…」

 

 ……ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

 「な、何だ?」

 

 「これは…はっ!ま、まさか…」

 

 突如、二人の周りだけ夜になったみたいに暗くなる。空を見上げてみると、巨大な魔力の塊が渦を巻いていた。

 

 「…あれはもしや、爆裂魔法か」

 

 「お、おい甲冑の人!さっさと逃げんぞ!このままじゃあたし達…」

 

 ウィスパーは、猛烈に嫌な予感がした。あの爆裂魔法を発動した人物は知っている。人を城に送り出しといて、まだここにいることを知っていて狙うのは、あの頭のおかしい小娘しかいないことを。

 

 「うおおおおおっ!?」

 

 「嫌ああああああ!?」

 

 ドオオオオオォォォォォンンンン!!!

 

 爆裂魔法の衝撃が周囲に振動し、小鳥達が驚いて飛び立っていく。廃城が爆炎に襲われる瞬間を、離れたところでカズマとめぐみんは見ていた。

 

 「…私の爆裂魔法で、燃え尽きるが良い」

 

 「いやいやいや、なんで撃ってるんだよ!まだウィスパーがあそこに…!」

 

 「何か問題でも?」

 

 「まあ、いいか。ウィスパーだし」

  

 ウィスパーなら、たとえ爆裂魔法を直撃で受けても死なないことを二人は知っている。待ちきれなかっためぐみんは、ついつい爆裂魔法を撃っちゃったのだ。動けなくなっためぐみんを、カズマがおんぶしてその場を去っていく。

   

 「お、おのれ…!俺の城に爆裂魔法を撃ち込むとはッ!」

 

 爆裂魔法を喰らったが、甲冑の人はまだ生きている。城も魔法耐性のおかげで、大した被害は出ていない。しかし、魔王軍幹部の城に爆裂魔法を撃ち込むというテロ行為。今は見逃してやるが、今後も更に撃ってくるようなら容赦はしない。

 魔王軍幹部、ベルディアは目に光を宿し、城に引き返して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ウィスパー、ある意味無敵、
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