仮面ライダーSPIRITS〜混沌の死者達〜 作:仮面ライダーハードエボル
side:夜の協会
「うぅ・・・・・・」
ペトレクス神父が赴任して来た廃墟の協会・・・この場所には神父が食事に誘ったホームレス達がいた。
しかし彼等は苦しみながらのたうち回っていて、その近くに静かに立っていたペトレクス神父は害虫を見る様な冷たい目で見ていた。
「ひ・・・ひ・・・ひもじぃよぉ・・・なん・・・とかしてくれよ、神父さぁん・・・」
そう言って神父に助けを乞うホームレス達の顔を痩せこけ、見る見る姿が変わりつつある。
「ひもじい・・・そうでしょう?生まれ変わるには沢山のカロリーが必要になりますからね・・・今宵は月の下で外食でもどうです?神の恵みのパンを頬張りながら・・・紅い・・・ワインを・・・」
ペトレクス神父はそう言いながら目を黒く変色させ、ホームレス達を嘲笑っていた。
「!」
すると教会の扉が開く音がし、入口に目を向けたそこに昼に出会ったFBI捜査官の滝和也がいた。
「・・・・・・おや?滝さんでしたね、何か?」
「神父さん1人かい?」
「えぇ・・・皆さん食事を済ませた後帰られました」
一見何ともない世間話だが、2人の目は互いに信用していなかった。
「なぁ神父さんよ・・・最近市長が変わって治安が良くなった
「丁度・・・アンタとチェイスってのがこのハーレムに来た時期にな。教会やハーレムには人が集まりやすいからな・・・何か知らねぇかな?」
連続失血死事件とハーレム失踪事件が同じ時期に来た2人の男達と何か関係あると滝は睨んでいたが、神父は笑いながら申し訳なさそうにはぐらかした。
「う〜〜ん・・・申し訳ありません。そのような噂は何も・・・・・・ねぇ」
「そうか・・・・・・邪魔したな。また来るよ・・・懺悔でもしにな」
「えぇ・・・・・・何時でも・・・・・・」ニヤッ
用が済んだと帰る滝を見送る神父の立つ教会の中から蝙蝠のような鳴き声が静かに響いていた。
side:スパイク
「おー、やるじゃねぇかスパイク!アマチュアナイトの出場が決まったって!?」
「まぁね」
「お前なら絶対いい話が来るぜ!!」
「まぁね」
「かァーー!余裕だねぇ〜!?」
スパイクがアマチュアナイトという大会の出場が決まり、上手く行けばアメリカのスターへと成り上がれるビッグチャンスだった。
それを受けてハーレムに住む大人も子供も皆が成功する事を祈りながらスパイクに激を送った。
(俺はマイケル・ジャクソンの様に成り上がるんだ!そんでもって俺達も捨てたもんじゃないって所をあいつらに教えてやるんだ!!)
(1人もギャング何かにはさせねぇ・・・俺はこいつらの夢になるんだ!夢に・・・)ポンッ
「あ」
「ペトレクス神父・・・?」
「スパイク・・・少しいいですか?」
スパイクに声をかけたペトレクスは笑顔だったが、その冷たい目は獲物を見定めた
side:チェイス
(俺はあの時・・・確かに自爆したハズ・・・・・・)
スパイク達に拾われ、一緒にハーレムに住むチェイス───その正体は人間を守る為に生きた機械生命体ロイミュード
かつて108体のロイミュードによって行われた大規模テロ〝グローバルフリーズ〟から世界を救う為に仮面ライダープロトドライブとして戦った戦士。
しかし進化したハート・ロイミュードに敗れ、ブレン・ロイミュードに洗脳された彼は魔進チェイサーに変貌し、仮面ライダードライブ達と対立した。
しかし仮面ライダードライブ達とのぶつかり合い、悩み苦しみながらも仮面ライダーチェイサーとして共に戦い、最後は霧島剛こと仮面ライダーマッハを守る為にゴルドドライブを巻き添えに自爆した。
だが次に目を覚ませば自分が居た場所は日本ではなく、アメリカのニューヨークだった。
スパイク達少年に拾われたチェイスは恩返しに金を稼ぎつつ、自分の現状を知る為に情報を集めていた。
その情報でチェイスは自分がいる場所が何十年も前の時代であり、〝グローバルフリーズ〟もクリス・スタインベルト
の家系も存在しなかった。
そんな状況に途方に暮れていたある日、女性が襲われている事に気づいたチェイスは何故か手元にあった破壊されたハズのマッハドライバー炎で仮面ライダーチェイサーに変身し、救出して警察署へ届けた。
(先日遭遇した吸血鬼の様なあの生物・・・あれは人間をベースにした生命体だった・・・)
(つまりあれは人間を滅ぼす為に造られた生物兵器・・・蛮野の様な科学者が存在しているという事か・・・)
かつて相対したラスボス───蛮野の様な悪が存在する事に気づいたチェイスは静かに拳を握り締めた。
次にチェイスが調べていたのは昨日やって来た滝和也の情報だった。
(滝和也・・・かつて日本を中心に暗躍していた狂信的カルト集団ショッカーとゲルショッカーを壊滅に導いた男・・・しかし奴はそれを自分の手柄ではなく、〝仮面ライダー〟という存在のおかげ・・・か・・・・・・)
チェイスは自分が調べられる限りを尽くし、滝の情報を探った。
この情報で子供達が叫んだ仮面ライダーが存在する事を知ったチェイス静かに笑った。
しかしその笑みは血相を変えてやって来た子供達を見て直ぐに消えた。
「大変だ、チェイスー!!」
「エミリオが、エミリオが・・・!!」
「・・・・・・何があった?」
「エミリオが怪物に襲われて、病院に・・・・・・!!!」
子供達の悲痛の叫びを聞いたチェイスはマッハドライバー炎を持ち、外に駆け出した。
side:教会
「ギ・・・ギギ・・・・・・!!」
ペトレクス神父が赴任して来た廃協会の中に苦しむ小さな吸血鬼がいた。
その吸血鬼の正体はペトレクス神父が声をかけたスパイクだった。
吸血鬼に変異してエミリオを襲ってしまったスパイクは夜のニューヨークを逃げ回り、ビルの屋上に身を潜めていた所を滝に遭遇。
エミリオを襲ってしまった罪悪感や変異した影響による頭痛により、自分を心配して声をかけた滝も襲ってしまった事でスパイクは教会まで逃げて来た。
「何故殺さなかったのです、スパイク?私の声は聞こえていたハズですよ?」
そんなスパイクに冷たい声をかけたのは充血させ目でゴミを見る様に見下すペトレクス神父がいた。
「もうよろしい・・・あなたはそのまま
この神父こそが連続失血死事件とハーレム失踪事件の全ての元凶だった。
巧妙に隠していた本性をさらけ出したペトレクス神父は邪悪な笑みを浮かべ、変異させた吸血鬼達を従えた。
「さぁて皆さん・・・外には美しく・・・・・・細い三日月が下がっています。罪人を串刺しにしたくなる様なね」
ペトレクス神父は改造した吸血鬼の群れを引連れ、ニューヨークへ赴こうとしたその時、教会の窓から何者かがバイクで突進して来た。
その人物は全身黒スーツ身を纏い、骸骨の絵が描かれたヘルメットを被っていた。
「晩餐の前に無粋な方だ・・・・・・どなたです?」
「・・・・・・」
「仮面・・・ライダー・・・・・・」
自分をそう名乗った侵入者にペトレクス神父はピクっと反応し、吸血鬼達は侵入者に襲いかかった。
侵入者はそれを焦る事なく背負っていたショットガンを発砲して対処。吸血鬼達が怯んだ隙にショットガンを投げ捨て、改造メリケンを装着して殴りかかった。
「ライダァーーッパァーーンチ!!!」
「オウラァーーッ!!!」
「!!」
「ライダァーーッキィーーック!!!」
改造メリケンが吸血鬼の一体に直撃と共に爆破し、侵入者は跳躍して高圧電流を流す改造ブーツで蹴りを浴びせた。
「ぉぉおおお!!」
仮面ライダーを名乗った侵入者は撃破した勢いに任せ、吸血鬼達に戦いを挑んだ。
そんな侵入者を見て顔を俯いていたペトレクス神父は怒りと憎悪を込めた静かな声で語り始めた。
「仮面ライダー・・・私を愛してくれたあの方達を破壊したのも奴らでしたね・・・」
「!」
「誰もが罵った私の力を・・・彼等だけが認めて下さったのにぃぃぃ!」ガパッ!キーーーーー
「貴様、ショッカーの・・・・・・!!」シュカッ
ペトレクス神父の正体に気づいた侵入者のセリフと共に被っていたヘルメットが縦に割れ、素顔が露になった。
侵入者の正体はスパイクを助ける為に教会に乗り込んで来たFBI捜査官のだった。
その正体を知ったスパイクは教会を出て、夜の空へ飛び立ってしまった。
「!タ・・・ギ・・・サァン・・・ヴ・・・ヴァ・・・・・・!!」
「∑スパイク!!おい、逃げたって何も・・・「何処を見ている?」!!」
逃げるスパイクに気を取られていた滝はペトレクス神父の攻撃をモロに足にくらってしまった。
(み・・・見えな・・・・・・)
「しかしね・・・今新しいパトロンが私を愛してくれている」
ペトレクス神父は肉体を変化させながら翼のような触手で繰り出され、滝はなす術もなく傷を負ってしまう。
「ご・・・・・・ぶふ!!(つ・・・つえぇ・・・・・・)」
「カメンライダー・・・だって・・・?どこが?ククク・・・あんな小さき者も救えずに・・・・・・」
「クッ・・・・・・」
そう言って滝を血祭りにしたペトレクス神父は本来の姿である3m台の巨大な蝙蝠怪人に変身し、滝の首を掴まえて持ち上げた。
「オマエガカメンライダー・・・?コノオオウソツキノ・・・ニセモノメガ・・・・・・ヒ・・・ヒヒ・・・ギヒヒヒヒヒヒ!!!」キィィィィ
「ク・・・ソォ・・・・・・」
蝙蝠怪人が滝にトドメを刺す為に超音波を放とうとしたその時、滝がバイクで突進して来た窓から1人の男が入って来た。
「それ以上は止めてもらおうか・・・」
「ン?」
「お・・・前・・・・・・」
入って来たのは蝙蝠怪人と同じ時期にハーレムに住み着いた青年───チェイスだった。
蝙蝠怪人にトドメを刺されそうになっている滝を見てチェイスは静かに拳を握り締めた。
「お前がスパイクを・・・この街の人間を傷つけた真犯人か・・・!」
「ダトシタラナンダ?コノマチノニンゲンガドウナロウガキサマニカンケイアルノカ?」
「それだけ分かれば十分だ・・・」
ペトレクス神父だった蝙蝠怪人の答えを聞いたチェイスは手に持っていたマッハドライバー炎を装着し、シグナルチェイサーを差し込んだ。
ベルトの音声と共に合わせてシグナルチェイサーを差し込んだフレームウィンガードを中に設置する事で〝R〟のアイコンが標示されると同時にあの言葉を発した。
「変身ッ!!」
変身と同時にタイヤ状の紫色のサークルがチェイスを囲み、銀を中心にした紫と黒のスーツを纏い、肩や仮面は左右非対称の意匠を出しつつ、仮面の正面は滝が何時も見ていた仮面ライダーに近い物だった。
完全に変わったチェイスの姿を見た蝙蝠怪人と滝は計らずしも同じ驚嘆の顔を見せた。
「ナンダ・・・キサマハ・・・・・・!?」
「俺はチェイサー・・・仮面ライダーチェイサーだ!!!」
「仮面・・・ライダー・・・・・・!?」
2人が驚いている間にチェイサーは専用武器の〝ブレイクガンナー〟をガンモードにし、滝を捕まえてた腕に撃ち込んだ。
「∑グゥッ!!」
「大丈夫か・・・?」
「お前・・・・・・」
痛みに怯んで空に投げ出された滝をチェイサーが直ぐに抱きとめ、蝙蝠怪人から離れた所に下ろした。
「後は任せろ・・・」
「オノレェ・・・・・・!ヤツヲコロセェェ・・・!!」
改造吸血鬼達は蝙蝠怪人の命令と共にチェイサーに襲いかかった。しかしチェイサーは〝ブレイクガンナー〟を屈指して銃撃し、近接武器にして対処していた。
滝は1人で改造吸血鬼の群れを捌いていくチェイサーの強さに驚きを隠せなかった。
「つ・・・強ぇ・・・・・・」
「クソ・・・キサマノアイテヲシテイルヒマハナイノダゾ・・・・・・!!」
そう言って蝙蝠怪人は改造吸血鬼達ごと超音波を浴びせようと構えたその時、教会正面の入口が開き、新たな乱入者が現れた。
轟音に響くバイクのエンジン音に強烈なライトの光にその場にいる誰もが乱入者に釘付けになった。
乱入者のシルエットはバイクの逆光で分かりずらかったが、滝はバイクが友の専用マシン〝サイクロン号〟と気づいて笑みを浮かべ、蝙蝠怪人はその人物に驚嘆の声を上げた。
「マサカ・・・コンナトコロデェェ・・・・・・!?」
「お前・・・」
「・・・・・・?」
「すまない滝・・・遅れてしまった・・・!」
この乱入者こそショッカー及びゲルショッカーを壊滅に導いた男であり、全ての仮面ライダーの原点となった存在───
───彼の放つ存在感は滝やチェイサーを安心させ、蝙蝠怪人達を萎縮させた。
「バッ・・・カヤロォ・・・・・・!!」
本郷猛は左手を腰の〝タイフーン〟に当て、右腕を左斜め上に掲げた。
その右腕を左斜めから右斜めに移動させ、右手を勢いよく引くと同時に左腕を斜め右へと突き出してあのワードを発した。
その瞬間、本郷猛の体の一部である〝タイフーン〟の蓋が開き、ベルトの中にあるプロペラが高速回転した事で周囲に強風が発生した。
その強風は変身ベルト〝タイフーン〟に吸収されていき、本郷猛の体は緑の鎧と銀の手袋とブーツが纏わり、顔の面は赤い目の飛蝗に変わった。
この姿に変身した彼こそが数多の世界に生まれた全ての仮面ライダーの原点であり、多くの組織や怪人達を恐れさせた最高の英雄の姿・・・・・・。
昭和に生まれた始まりの仮面ライダー。
〝グローバルフリーズ〟という災厄から人間を守る為に平成に生まれた孤高の仮面ライダー。
本来交わることの無い仮面ライダーが交わった瞬間であり、長い戦いの始まりの瞬間だった。