せーのっ、御幸くん! 作:槙明
「席前後で笑った」
「分かる」
翌日。教室で御幸くんに会ったら怪我の具合を聞こうと思っていたら、まさかの席が前後だった。
毎日彼の頭を視界に入れて授業を受けていたのに存在を認識していなかっただなんて申し訳ない。
「御幸くん顔いいのになぁ、何で知らなかったんだろ勿体ない」
「唐突な褒めありがとう」
「いえいえ、怪我の具合はどう?」
「お陰様でちょー元気」
それは良かった。
それはそうと、私はガサゴソとカバンから一冊の雑誌を取り出してあるページを開いた。
「何それ」
「ふっふっふっ、私は昨日見つけてしまったのですよ」
これ、と指を差してページに写る御幸くんを見せると、本人は顔を赤くして「はぁ!?ざけんな仕舞え!」と雑誌を閉じた。
「え!なんで!」
「クラスメイトに見られるのは恥ずかしいだろ流石に」
期待のルーキー、とか天才、とか書かれた雑誌にはいかに御幸くんが凄い人物かを細かく書き連ねてあった。
「はぁ、よく見つけたよなそれ」
「たまたまね。コンビニで雑誌読み漁ってたら載っててびっくりしちゃった。御幸くん凄い人だったんだね」
「だろ、俺すげぇよな」
「そこは謙遜して」
。* ❤︎… …❤︎*。
運動部に入部すると必ずついてくるのが"試合"と"大会"だ。
バレーボール部に入部した私は勿論どちらも回収し、これから行われる地区大会に向けて皆で頑張っている。
「一年生はボール拾いからなのに凪沙はスタメンだから免除って……ズルいよぉ…」
「私もボール拾いしようか?」
「冗談だよこのスポーツ推薦め!!」
ボールを抱えたルナにビシッと言われてしまい苦笑した。
「おーい富永さんこっち来てポジション確認するよー」
「はーい!」
*
「わー、御幸くん頑張ってるじゃん!……凪沙?」
「え、あぁうん。凄いよね」
部活終わりに野球部でも見て行くか、とルナが言い出したので何となく了承して着いてきた。
「御幸くん一年なのに先輩と張り合ってるのすごすぎ」
「どれが御幸くん?」
「はぁ?さっきテキトーに返事したな~?ほら、あれだよ。防具つけてて…あ、こっち見た」
え?、と視線をさまよわせ、漸く一人の男子がこっちに手を振ってるのを見つけた。
あぁ本当だ、よく見たら御幸くんだって分かる。
「凪沙に手振ってんじゃん?振り返してあげなよ」
「え、えぇ~…が、頑張れ御幸くーん!」
ルナに急かされるままぎこちない笑顔で手を振って応援すれば、御幸くんはちょっと固まったあと笑顔を見せてくれた。
「御幸くんやっぱり顔いいよね」
「凪沙も顔いいよ」
「あ、ありがとう?」
野球部はまだ練習を続けるようで、御幸くんはガタイのいい先輩に引っ張られてどこかへ消えてしまった。
フェンス越しだったけど、彼が元気そうに部活をやっているのを見て少し嬉しくなった。
「帰ろっか」
「うん」
グラウンドを後にした私達は帰路に着きながら野球部って大変そうだね、と話した。
「寮で生活してるらしいよ、御幸くん」
「へぇー」
「私も寮が良かったなー!家遠いし!!」
そうだね、楽そうだしね。
そう言うとルナに「アンタは家近いでしょーが!!」と怒られた。なんでぇ…