変身ヒロインですが悪の手先です   作:ちゅぴま

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春が近づいて来ましたね


手持ち無沙汰ほど辛いものは無い

「あー、空が青いなー」

 

 

拝啓お父様、私は現在公園のベンチに身体を預けて空を眺めています。春先だからか少し暖かめで過ごしやすいです。ですが流石に1000円だけ持たせて放り出すのはどうかと思います。お陰で野宿になるかもしれません。

 

というか野宿になります。お昼ご飯のパンで既に資金がカツカツになってしまったしSCFの連中が私を見つけてくれそうな気配は微塵もありません。

 

まあ日向ぼっこは気持ちいいから構わないのだけど、流石に食べ物はどうにかしたい。

 

でもどうにかする手段なんて自販機の下漁りとかそんなのしかないしなぁ…

 

 

「極めつけにやることがない…」

 

 

いや、別に働きたいとかそういうのではないんだ。働く、というか何かをさせられるのは嫌いなのだがこうもやることがないと手持無沙汰で暇死してしまいそうだ。

 

そもそもなんでこんなことになったのかといえば…

 

 

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時は遡ること今朝。高級ホテルにて

 

 

「アイリス、お前にはある程度の資金を与える。それで少しの間路上で過ごしておれ。」

 

 

と、父は自らの財布の中を覗き込みながら言う。確かにSCFに捕獲されるまで何時間かかるか分からないからね…流石父さん、私のことを考えてくれてる…

 

 

「ある程度っていくら?」

 

 

 

「ーー1000円だ」

 

 

 

「Why?何故?」

 

 

1000円でいつ来るか分からない奴らを待っていろと?せめて1万ぐらいはくれよとーちゃんのケチ!!と少し文句を言うと

 

 

「……本物の路上生活者は小銭すら持っておらんぞ」

 

 

そう言うと同時に私に変装用衣装一式を投げ渡してくる。もちろんしっかりとキャッチしたのだけど…なにやらこいつは生乾き臭いようだ。やるならとことんやれ、という事なのだろうか。それにしてもよくこんなモノを年頃の女の子に着させようと思ったものだ。

 

 

「それが嫌ならすっぽんぽんで行ってくるがよい…」

 

 

ぶかぶかのコートにすり減った靴。伸びきった下着に所々穴の空いたズボン。そして生地の傷んだシャツ。典型的なホームレスの衣装に私は笑うしかなかった。

 

 

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「暖かい…」

 

 

しばらくしたら目を開けるのが辛くなってきた。眠くなってきたともいうが断じて私は認めない。目を瞑っているだけだから問題ない。そう、私はねむってなどいないのだかr「えっと、大丈夫?」

 

 

「ゥヘアッ!?」

 

 

飛び起きようとしたらゴツン、と聞こえてきそうな勢いで頭と何かがぶつかった。暫く痛みに悶えたがいててて…と当たった部分を摩りながら目を開ける。いきなり声をかけられたらこうもなろう…!的な怒りを若干燃やしつつ私は声をかけてきて恐らくぶつかったであろう人物を視界に捉える。

 

 

「うう…」

 

 

うむ、春の桜を連想させるような髪色にサイドテールが似合ってる女の子だ。可愛らしい私服に片手には…サンドイッチじゃねえか…。まさか私の目の前で食べるとかいう最低最悪の行いをする気だったのかよコイツ…!?なんて私が邪推しているうちに桃髪子ちゃんは痛みが引いてきたのかゆっくりと目を開けていた。

 

 

「あ、あの…これ、よかったらどうぞ!」

 

 

開口一番、そう言いながら彼女はサンドイッチを差し出してきた。

 

 

「…え?」

 

 

ただの善行…!?いやまさかきっとそれを受け取ったら“受け取りましたね?これで私に恩ができた!”とかいうエロサイトのワンクリック詐欺みたいな事をする気なんだ!いくら私が空腹だからってこんな甘い話に乗るのは無謀…!この瞬間的な頭の回転の速さから生み出された結論を私は反射的に口に出す。

 

 

「…ありがとう、マジ本当に、ありがとう」

 

 

これは人の三大欲求の一つ。そう、よって仕方のないこと。男にはーー女だけどーー恥を忍んででもやらなきゃいけない時がある。それは今なんだよ…と自分に言い聞かせながらサンドイッチを頂戴した。

 

 

「それにしても、どうして私にわざわざ?」

 

 

サンドイッチの中身を零さないように慎重に食べながら桃髪子ちゃんに聞いていみる。どうかんがえてもホームレス(ごっこ)をしている私に食べ物を恵んだって彼女になんのメリットもないだろうに。それにこれ朝見たけど結構値の張るものだぞおい。

 

 

「それはね、わたしの趣味だから!」

 

 

それを聞いて私は趣味?と思わず聞き返してしまった。まさか人助けが趣味とかではない…ないよな?

 

 

「そ、そんな良い理由じゃないよ!?ほら、徳を積むって言葉があるでしょ?それが私の趣味!!」

 

 

ばばーんと効果音が聞こえてくるような胸の張り方…あ、こいつ結構でかい。というのは置いといて不思議な趣味だなぁとぼんやりと思っていた。

 

 

「あ、そういえばさ。名前!なんていうの?」

 

 

と、彼女が聴いてきたので名前を教えてあげることにした。

 

 

「アイリス・アンリバー。そっちは?」

 

「私は赤峰 桜!いい名前だね、アイリス!」

 

 

ほうほう赤峰…赤峰?赤峰 桜って言ったこの子?M2アームズのデータに記載あったよね赤峰 桜。もしかして同姓同名の人違いだったりしないかな…いや!目的的には彼女と接触できたからOK寄りだ。なのでセーフ!

 

 

「…そっちこそ、いい名前じゃん。赤峰。」

 

 

…仮に本物で、バレたら殴り殺されるのだろうか。

 

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side 赤峰 桜

 

「…そっちこそ、いい名前じゃん。赤峰。」

 

「もー!名前で呼んでくれてもいいじゃんアイリス!」

 

 

私はこうやって名前で呼んでるんだからさあと頬っぺを膨らませながら文句を言うと…

 

 

「まあ、私がそう呼びたいだけだから気にしなくていいよ」

 

 

確かに人の呼び方は自由だけど…こう、雰囲気的なモノが台無しというか…うーん。

 

 

「どうせ一期一会の関係なんだし、どうだっていいでしょ?」

 

 

そうアイリスは言う。なんだか冷たい子だなと私は思った。他人の心はよくわかんないから上手く言えないけど…

 

 

「アイリスみたいな子はみんなそうなの?」

 

「知らないかな…私以外に私みたいな人見たことないし。」

 

 

へーそうなんだーと言おうとした時に通信機が鳴った。相手は神崎司令だ。SCFのリーダー、みんなに優しくお気楽そうな人だけど意外としっかりして頼りになる凄い人だ。

 

 

「アイリス、電話が来たからちょっとごめんね…?はい、神崎司令。どうしました?」

 

 

聞かれるとまずい内容も多少はあるので断りを入れてから少し離れて通信に出る。

 

 

『あー、休息中に悪いのだけどちょっと頼み事があってね』

 

 

頼み事…?声の感じからして出動とかではないみたいだけど…

 

 

「あー、いいですけど何ですか?」

 

『今から送る写真の人物が周囲にいないか見て欲しくてね。なに、片手間でいいさ。』

 

 

人探し…?SCFがなんでそんな事をするんだろうとは思ったが、命令は命令なので素直に従う。というか片手間でもいいらしいから気を詰めなくてもいいだろうし。

 

 

「はーい分かりましたー」

 

 

私が返事をするとまもなく通信は切れた。そして次に写真ファイルが送られてきたので見てみると…

 

 

「あ、アイリスだ」




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