「皆さま、本日、この良き日にお集まりいただき誠にありがとうございます。既に皆様の耳にも届いているとは存じますが、こちらにいらっしゃる冒険者、アルシェ様の活躍により、長年この国を苦しめていた亜人たちが駆逐され、今やその数は1ケ月前と比べ半数近くにまで減少しています。そこで、我々は彼女の活躍に感謝する為に今回の催しを開きました。皆さま、救国の英雄であるアルシェ様に盛大な拍手を―――」
カルカの言葉で、会場に拍手が巻き起こる。が、南部の貴族たちが集まるスペースから聞こえてくる拍手は疎らだ。
北部の貴族たちもこの女冒険者が1人で亜人たちを駆逐したという情報には懐疑的だが、ケラルトの根回しもあり、内心は兎も角、最大限の敬意を示していた。
拍車が鳴りやむと、カルカに促されたアルシェが一歩前に出た。
「ご、ご紹介に預かった冒険者のアルシェです。本日は私の為にこの様な素晴らしい催しを開いてくださり、誠に感謝します」
アルシェは短い挨拶を済ますと、ペコリと頭を下げ、直ぐに一歩さがった。それを確認したカルカが再び会場に向かって話し始める。
「我が国は、彼女の活躍を称え、褒賞を授ける事に致しました」
カルカの言葉に身なりの良い初老の男が手に短剣を持ってケラルトに近寄る。ケラルトがそれを受け取ると男性は一礼してその場を後にした。ケラルトがその短剣をカルカに手渡し、一礼して下がる。
そんなやり取りを、相変わらず王侯貴族の世界は面倒だなと思いつつ眺めていたアルシェの前にカルカが短剣を持って立った。
アルシェは片膝をつき頭を垂れる、カルカの短い台詞の後アルシェがそれを両手で受け取ると、会場には再び拍手が鳴り響いた。
その後、感謝の品の目録などがアルシェに渡され、食事やダンスといった華やかなパーティが行われ、パーティが終わりに向かいかけた頃、アルシェは多少疲れたため壁を背もたれに休憩していた。カルカとケラルトは南部の貴族たちの対応をする為に少しの時間アルシェの元を離れる事になり、その間レメディオスがアルシェに付いていた。
そのアルシェの元に3人の男たちが近づいて来た。3人とも笑みを浮かべているが、あまり友好的な態度には見えない。
「初めましてアルシェ殿。今回は凄まじい活躍だったとか。これだけの活躍をする冒険者ならばさぞ高名な方とお見受け致しますが、しかし、お恥ずかしながら我々はアルシェという名を始めてお聞きしました。はて?これは一体どういうことでしょうなぁ?」
先頭の男、頭は禿げ上がり、顔は脂ぎっている。体は不健康に肥え太っているその男は、着ている物以外に貴族らしさなど感じられない。いや、アルシェの知っている貴族の多くはこういう者たちだったが、それらは皆現皇帝に粛清された。アルシェは貴族社会に辟易しながらも対応しようとした時、予想外の方向から予想外の声が上がった。
「それは私も気になるな」
レメディオスだ。突如会話に加わってきた彼女に貴族たちも驚きの色を見せる。
「それに貴さ―――貴女は第6位階の魔法を使えるそうだが、それで亜人たちを駆逐出来るとは思えん。一体どんな手品を使ったのだ?」
今度はアルシェも呆気にとられた。
行使できる魔法の位階を勝手に漏洩する事にも驚いたが、何より国の恩人に対する態度では絶対にない。
アルシェから少しでも情報を聞き出そうと近づいた貴族たちもこれには驚きを隠しきれなかった。
えんもたけなわは盛り上がりに盛り上がってる時らしいので、宴の締め付近と言う意味ではないらしいですよ。