「今のところ竜王たちが介入してくる様子は見受けられんな」
スレイン法国の最奥に今日も国の重鎮たちが集まり会議を開いていた。
「エイヴァーシャー大森林から溢れ出た亜人やモンスターどもの状況は?」
それはスレイン法国にとっても予想外の展開だった。破滅の竜王がもたらした影響はスレイン法国の読みを遥かに上回るものだった。本来の想定では破滅の竜王を派遣した周辺のモンスターたちのみに影響を与える程度だと考えていたが実際はエイヴァーシャー大森林のほぼ全域と言って良い程の範囲で影響を及ぼしたのだ。その結果大森林から溢れ出たモンスターや亜人が与える影響も本来の想定を遥かに凌駕したのだ。
「法国側に溢れ出た亜人やモンスターどもの対応は漆黒聖典を中心に対応させておる。―――が、数が足りんの。やはり陽光聖典が居なくなった穴がデカい」
「6色聖典の他の舞台は直接的な戦闘や防衛には向かん部隊が多いからの、致し方ない。引退した者たちにも無理をして出張って貰っておるがそれでもまだ数が足らん」
「いざとなれば番外席次にも戦ってもらう必要があるか」
「目立たんようにな」
「……それで、聖王国の方はどうなっておる?」
問われたレイモンが説明を始める。
「極めて厳しい状況の様ですね。このままでは2・3日中には城壁を突破される恐れがあります」
「先日の報告では優秀は冒険者が現れ、その冒険者がかなりの数の亜人たちを駆逐したとか。その者は現在聖王国に滞在していると報告を受けたが、その者の力を持ってしても対応出来ないのか?」
レイモンは首を振る。
「報告によれば、今のところその冒険者は防衛に参加していない様です」
「何?どうしてだ?」
「そこまでは分かりかねますが。まぁ冒険者ですからね。元々矜持も無く金の為に動くような者なのでは無いですか?」
「だからこそ、聖王国に恩を売り、名を上げるチャンスではないか」
「命あっての物種、という事なのでは無いですか?それに報告では件の冒険者は元々帝国の人間だとか、愛国心も無いでしょう」
「……ふん、下らん人間だ」
「まぁ、憶測ですがね」
「王国の方に被害は出てないのか?」
別の方から来た質問にレイモンはそちらを見て答えた。
「今のところは……全方位に亜人やモンスターが逃げ出したとして、王国に向かうには距離と山がありますからね。被害が出るとしてもかなり後、それも損害は軽微で済むと予測出来ます」
「っち、どうせなら王国の人間を間引きしてくれれば良いものを」
おおよそ人類の守護者を自称する者の台詞とは思えないが、それを否定する声はどこからも上がらなかった。
「王国は兎も角、帝国から戦力を聖王国に回させる訳にはいかんのか?」
「あの鮮血帝が他国の為に兵を派遣するとは思えませんね。仮に自国に利益があれば別ですが。いえ、メリットはありますね。しかしデメリットが大きい。恐らく帝国は静観を決め込むでしょうね」
「人類の生存圏がまた減ることになるのは避けたいが、聖王国には自力で困難を乗り越えて貰うしかないかの」
まるで他人事だが、そもそも原因は自分たちが操った破滅の竜王だ。その事をこの場にいる全員が分かっているが、口には出さない。そもそも必要な犠牲、程度にしか考えてはいない。
「それで、エルフどもの方はどうなっている?現在の戦果はどれ程だ?」
「竜王に破滅の竜王と我が国との接点を気取られる訳には行きませんからね。現在は巫女姫に情報系魔法で監視させております。そろそろ提示報告が上がる時間です」
レイモンの言葉が終わるのとほぼ同時に爆発音が轟いた。
前回の巫女姫の爆発死亡事件の原因が情報系魔法を用いて覗き見していたせいなどとは毛ほども思っても無かった法国は、特に対策も立てずに情報系魔法を使っていました。
そもそも情報系魔法を使える人物は少なく。それに対抗できる魔法やアイテムを使う人物はほぼゼロって感じだと筆者は解釈しおります。